2010年8月16日

各 位

金融法務研究会

金融法務研究会第2分科会報告書「動産・債権譲渡担保融資に関する諸課題の検討」について(金融法務研究会)

 金融法務研究会は、金融法務分野における研究者をメンバーとして、全銀協により平成2年10月に設置された研究会です。
 本研究会では、2つの分科会を設置し、金融法務・法制に関するテーマの検討を行っています。
 本報告書は、第2分科会における研究テーマに関する成果をとりまとめたもので、概要は下記のとおりです。
 なお、本報告書は研究会としてとりまとめたものであり、全銀協として意見を表明したものではありませんので、念のため申し添えます。

  1. 趣旨
     本研究会では、平成15年および平成17年において、担保法制について研究を行い報告書を取りまとめている(金融法務研究会報告書(10)「債権・動産等担保化の新局面」、(14)「担保法制をめぐる諸問題」)。最近では、ABL(Asset Based Lending、企業が保有する在庫や売掛債権、機械設備等の事業収益資産を活用した金融手法)を含む動産・債権譲渡担保融資が注目されており、加えて、動産・債権譲渡登記特例法や電子記録債権法など立法や判例の進展も見受けられる。
     こうした状況を踏まえて、動産・債権譲渡担保融資に関する諸課題について検討を行っている。

  2. 概要
     報告書の各章の概要は以下のとおりである。

第1章 ABLと担保

(学習院大学 能見善久教授)

 本章では、ABLについて担保法の観点から、まず、ABLの概要について触れ、ABLにおける包括的な担保の提供方法として、集合動産譲渡担保および集合債権譲渡担保の問題につき検討している。
 そして、ABLにおける担保設定後の担保目的物の管理について、担保対象資産の価値の変動などのモニタリングについて指摘するとともに、ABLの法的重要論点の一つとして、集合物を構成する個々の動産の処分の問題について検討している。さらに、譲渡担保における後順位担保権の可否および債権回収としての当該担保目的物の換価処分の問題についても取り上げている。

第2章 将来又は多数の財産の担保化

(東京大学 中田裕康教授)

 本章では、複数の財産の担保化をめぐる問題として、流動性のある資産の包括的担保に関し分析・検討している。構成としては、複数の債権・動産の担保化について、将来性の問題と多数性の問題を分けて検討し、そのうえで両問題の統合を試みているものである。
 まず、債権譲渡担保について、「単発の将来債権」、「単一債務者との間で継続的に発生する将来債権」および「複数の又は不特定の債務者に対する将来債権を含む多数債権」の三段階に分けて検討している。そこで、将来・多数の債権の譲渡担保の問題点を整理、分析し、当該担保については、単に当事者間の利益問題にとどまらず、債権発生原因となる法律関係における規律、公序、社会的利益、金銭の法的評価など、より広い観点からの評価が問われているとしている。
 次いで、動産譲渡担保について、「将来の動産」および「多数の動産」の二段階に分けて検討したうえ、問題点を整理している。
 そのうえで、将来性と多数性が掛け合わされた問題と、動産担保と債権担保が連続的に足し合わされた問題について検討している。

第3章 複数債権者・複数担保権者に係る問題

(神戸大学 山田誠一教授)

 本章では、複数債権者・複数担保権者に係る問題として、1個の財産に複数の債権者が担保権を設定する場合と、1個の財産に設定された1個の担保権が複数の債権者に帰属する場合とに分けて検討している。
 まず、抵当権・根抵当権の複数担保権者の法的問題に関しては、登記例の取扱いを踏まえて検討している。具体的には、1個の抵当権が当初1人の債権者に帰属していたが、後発的に複数の債権者に帰属する場合や1個の抵当権が当初より複数の債権者に帰属する場合などを取り上げている。次いで動産質権、債権質および譲渡担保権について検討している。
 また、セキュリティ・トラスト終了の際の問題として、当該信託の対象となっている抵当権について、複数受益者への移転の可否などの問題について検討している。

【本報告書に関する照会先】
金融法務研究会事務局
全国銀行協会 業務部
大野 Tel.03-5252-4310
永田 Tel.03-5252-4714