平成23年1月 3日

全国銀行協会会長 奥 正之

年頭所感

 平成23年の新春を迎えるにあたり、所感の一端を申し述べ、新年のご挨拶に代えさせていただきます。

 新年の内外経済は、先進国における不均衡の調整や、新興国のインフレ懸念といった課題が持ち越されるなかで、わが国経済も、海外経済の減速による輸出の伸び悩みや、政策効果の剥落等による個人消費への影響が見込まれます。これに対して、当面する内外の不確実性に適切・迅速に対処するとともに、持続的な成長に向けた基盤づくりを確りと進めていくことが、わが国にとって喫緊の課題となっています。

 こうしたなか、わが国銀行界においては、金融危機後のパラダイムシフトに対応するとともに、金融機能の更なる発揮等を通じて、日本経済の活性化の一翼を担うことが求められています。
 私は、昨年4月に全銀協会長に就任した際、銀行界全体が自らの「ミッション」を確りと果たすこと、そして、そのために国内外の金融マーケット関係者等と円滑な「コミュニケーション」を行うことを活動の二本柱として取り組んで参りたいと申し上げました。新年も引き続きこの二本柱を中心に据えて、積極的に活動を進めて参ります。

 まず、活動の第一の柱である、銀行界としての「ミッション」を確りと果たすという点につきましては、「安心・安全」「社会的責任」「利便性」の3つをキーワードに取り組みを進めてきています。
 1つ目の「安心・安全」の取引基盤の強化の面では、従来より取り組んできた金融犯罪の防止を目的とする活動として、「振り込め詐欺撲滅強化推進期間」を設け、啓発イベントの開催や関係当局との連携等を通じ、相応の効果をあげておりますが、本年も、引き続き、関係当局と連携の上、積極的な対応が必要と考えています。
 2つ目の「社会的責任」の面では、全銀協として、各加盟行による金融の円滑化への取組をフォローするとともに、自ら主体的・能動的に金融円滑化対応を進めてきています。従来からの取り組みに加えまして、昨年7月には、中小企業等に対する金融円滑化について銀行界が共有すべき理念を取り纏めた「中小企業者等に対する金融の円滑化に向けた行動指針」を公表しました。本年も銀行界として中小企業のお客さまの事業発展や個人のお客さまの生活向上に必要な信用供与を自主的に行うことにより、引き続き国民経済、地域社会の安定的な発展、公共の福祉に貢献すべく努めて参ります。
 3つ目の「利便性」については、全銀協は決済等に関する社会インフラ基盤の一層の高度化を図るため、昨年4月に、「資金決済に関する法律」に基づく資金清算機関として、「一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク」を設立し、10月1日より全銀システムの運営主体を東京銀行協会から全銀ネットに移行しました。また、本年11月には、第六次全銀システムの稼動を予定しています。その安全・安定稼動を最優先させつつ、国際化・標準化への対応や決済リスク削減等を進めることで、安心かつ利便性の高い資金決済機能の提供を一層高いレベルで実現して参りたいと思います。

 次に、第二の柱である国内外の金融マーケット関係者等との「コミュニケーション」ですが、これまで全銀協として積極的に取り組んできた国際的な金融規制の見直しや国際会計基準(IFRS)の導入、郵政改革といった重要課題を中心に、引き続き積極的に意見発信を行って参ります。
 国際的な金融規制の見直しについては、全銀協は、昨年4月にバーゼル銀行監督委員会に提出した意見書において、規制強化による実体経済や市場への影響、一律規制と各国規制とのバランス確保、ビジネスモデルの多様性等に充分配慮した規制とするべきといった主張を行ったほか、海外有力紙への寄稿や国際会議で意見表明を行う等、積極的に発言を行い、新規制の策定に係る議論に関わって参りました。今年は、持越しとなった規制項目の実施に向けた検討・準備を行う段階へ進んでいくことが見込まれます。新たな規制・監督の枠組みが国民経済の発展に真に寄与するものとなるよう、銀行界として確りと対応するとともに、今後も関係者等との円滑なコミュニケーションを進めて参ります。

 なお、今年の4月に、全銀協は公益法人制度改革を踏まえた組織変更として、東京銀行協会を母体として事業の全てを集約するとともに、名称を「一般社団法人全国銀行協会」と変更する予定です。新組織におきましても、わが国における銀行の健全な発展を図り、延いては経済の成長と国民経済の繁栄に寄与するべく、銀行業務及び銀行事務の改善に関する調査企画、銀行利用者の保護及び利便向上等に資する活動等に取り組んで参ります。

 当面の世界経済は不確実・不安定・不透明な状況が続くと考えられますが、それはグローバル化や技術革新に支えられた成長の基盤が損なわれたことを意味している訳ではなく、むしろ世界経済が大きな過渡期にあるが故の不確実性と申せましょう。我々が成すべきことは、わが国経済ができるだけ早く安定成長を取り戻す道筋をつけ、持続的成長に向けた基盤を強化していくことであり、そのために銀行界が果たすべき役割は大きなものがあります。「安心・安全」「社会的責任」「利便性」をキーワードとする我々の「ミッション」を確りと果たし、そのために関係者等との円滑な「コミュニケーション」を一層強化するべく、更に力を尽くして参りたいと考えております。

 結びに本年が銀行界にとって大いなる飛躍の年となることを祈念いたします。