2012年1月 3日

一般社団法人全国銀行協会
会長 永易 克典

年頭所感

 平成24年の新春を迎えるにあたり、所感の一端を申し述べ、新年のご挨拶に代えさせていただきます。

 就任時、「2011年は新しい日本を創り上げていく"起点となる年"」と申しあげましたが、まさに内外経済ともに、未曾有の困難を克服し、次のステージに踏み出すための、「生みの苦しみ」を味わった年でした。
 東日本大震災に見舞われたわが国では、被災地の早期復興に、全力で取り組んできましたが、この間、電力供給の制限や歴史的な円高、海外経済の減速といった試練が押し寄せる大変厳しい展開となりました。一方、海外でも、欧州債務問題が深刻化しており、「包括戦略」の具体化を含め、解決に向けた正念場が続いています。

 こうしたなか、銀行界は「3つの柱」の実現に尽力しています。「震災復興への貢献」では、被災地域における金融取引の円滑化に努め、二重ローン問題に対しても、8月より「個人債務者の私的整理ガイドライン」の運用を開始したほか、法人に対しても、「産業復興機構」および「東日本大震災事業者再生支援機構」の設立準備が進められており、銀行界としても、人材派遣を通じてサポートしております。また、全銀協の営業支援サイトを活用したビジネスマッチング等にも、積極的に取り組んでおります。新年においても、引き続き、被災地の実態を踏まえ、木目細かく対応していきたいと考えております。

 一方、「より安心・安全な金融取引環境創り」では、円高を受けて金融ADRの申立案件が急増するなか、あっせん委員会の地方展開等、機能強化に取り組んでいます。また、振り込め詐欺防止イベントを開催し被害抑制を図ったほか、インターネットバンキングの不正払い出し防止に向けてセキュリティレベル向上を進めます。システム面でも、11月に第六次全銀システムを稼動させたほか、今年5月の「でんさいネット」営業開始に向けて入念に準備しております。
 最後の「新たな法制度の枠組み創り」では、バーゼルIIIやG-SIFIs等、国際金融規制のほか、IFRS、さらには会社法や民法(債権関係)等の見直し議論が進められています。全銀協としては、こうした内外法規制の見直しが、経済活動の萎縮を招くことなく、わが国経済・金融市場の健全な発展に資するよう、しっかりと意見発信して参ります。

 ちなみに、干支「壬辰(みずのえ・たつ)」の字義に鑑みれば、2012年は「物事が解決に向けて動き出すと共に、新たな成長に向けた原動力が宿る年」と解釈できます。わが国が「生みの苦しみ」を乗り越え、力強く前進できる年となるよう、銀行界としても、円滑な金融仲介機能を始め、果たすべき役割を全うしたいと考えております。

 結びに、本年が銀行界にとって大いなる飛躍の年となることを祈念いたします。