平成24年9月13日

郵政民営化を考える民間金融機関の会
一般社団法人全国銀行協会
一般社団法人全国地方銀行協会
一般社団法人信託協会
一般社団法人第二地方銀行協会
一般社団法人全国信用金庫協会
一般社団法人全国信用組合中央協会
JAバンク・JFマリンバンク

郵政民営化を考える民間金融機関の会 共同声明

 われわれは、国民経済の健全な発展を促すという観点から、これまで長年にわたり、郵政事業における金融事業の問題点を指摘し、改善を求めてきた。郵政改革の本来の目的は、国際的に類を見ない規模に肥大化した金融事業を段階的に縮小し、将来的な国民負担の発生懸念を減ずるとともに、民間市場への資金還流を通じて、国民経済の健全な発展を促すことに他ならない。

 特に、間接的な政府出資が残るゆうちょ銀行が新規業務へ参入するにあたっては、その大前提として、将来的な完全民営化の実現を担保するとともに、「経営の抜本的な効率化」と「民間企業としての内部管理体制の整備」を徹底することが不可欠であり、そのうえで、個別業務ごとの新規参入の是非は、(1)公正な競争条件の確保、(2)適正な経営規模への縮小、(3)利用者保護、(4)地域との共存等を総合的に検討し、判断する必要がある。

 しかしながら、先般、ゆうちょ銀行が関係当局に対して行った認可申請の内容は、ゆうちょ銀行の完全民営化にかかる具体的な計画が何ら示されていない中で、実質的に貸付け業務を早期に全面解禁することを求めるものとなっており、官業のまま業務拡大を追求し、民業を圧迫する姿勢を見せている。

 こうしたゆうちょ銀行の行動は、郵政民営化法第一条で示された「民間に委ねることが可能なものはできる限りこれに委ねる」との理念や、同法第二条で示され、先の国会審議でも確認された「同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置を講じる」との理念をまったく無視したものと言わざるをえず、断じて容認できるものではない。また、郵政民営化法等の改正を受け、現在、郵政民営化委員会において「郵政民営化委員会の調査審議に関する所見」の見直しが行われている段階でゆうちょ銀行が認可申請を行ったことは、誠に遺憾である。

 以上の認識の下、われわれ民間金融機関は、下記事項を総意として確認し、その実現に向けて一致団結して取り組むことを決議するとともに、関係当局および郵政民営化委員会において、郵政民営化法の基本理念に則り、長期的な国益を十分に踏まえた深度ある審議・検討が行われることを強く要望する。

 

 

一 政府関与が残るゆうちょ銀行による貸付け業務については、「暗黙の政府保証」を背景とした資金調達面での優位性による民業圧迫の懸念が極めて大きい。「暗黙の政府保証」の払拭に向けて、ゆうちょ銀行の完全民営化に向けた具体的な計画が早期に公表される必要があり、こうした取組みすら行われていない中での貸付け業務への参入は決して認められるべきではない。

一 巨大な規模を維持したままでのゆうちょ銀行の民営化は、地域経済の健全性維持への懸念が大きく、また、将来的な国民負担に繋がるおそれもある。ゆうちょ銀行が民間金融機関として持続的に経営の健全性を確保するためにも、まずは適正な規模への縮小を進めていくことが不可欠であり、安易な新規業務への参入は行うべきではない。

一 金融業としての健全性が強く求められるゆうちょ銀行が、適切なリスクコントロールを行うことができなければ、経営の健全性が大きく損なわれ、わが国金融システムを不安定化させる懸念もある。したがって、郵便事業の損失が金融事業に転嫁されること等がないよう、事業毎の損益の明確化等を通じ日本郵政グループ内での適切なリスク遮断措置を講じることや、内部管理体制の整備を徹底する必要があり、こうした措置が講じられない中での貸付け業務への参入は認められるべきではない。

郵政改革を考える民間金融機関の会 共同会見

【全国銀行協会 佐藤会長】

 「郵政民営化を考える民間金融機関の会」の8団体を代表し、私から一言申しあげたい。
 まず、ご説明に先立ち、この度の松下郵政民営化・金融担当大臣の訃報に接し、謹んでお悔みを申しあげたい。松下大臣におかれては、本年6月のご就任以来、金融界の様々な難題、課題について先頭に立ってご尽力をいただいた。私自身も大臣と何度かお会いし、金融だけではなくて、日本経済全体についても、いくつかのご意見をいただき、またご教示をいただいたということで、今回の訃報については、未だに信じられないという気持ちでいっぱいである。心よりご冥福をお祈り申しあげたいと思う。
 さて、ゆうちょ銀行からの新規業務の認可申請が出されたことに関する私どもの共同声明について、一言申しあげたいと思う。
 まず、新規業務の認可申請が、郵政民営化委員会における「調査審議に関する所見」の見直し作業中に行われたことについて、正直、驚きを隠せないと申しあげたい。このことは、所見の中で、「事前に当委員会の方針を示すことで、予見可能性を与え、透明性を高めることが必要」と謳われた趣旨を損なうものであり、極めて遺憾である。
 さて、今般、貸付業務に関する新規業務の認可申請がなされたが、その一方で、ゆうちょ銀行の完全民営化にかかる計画について何ら具体策が示されていない点は、大変大きな問題であると考えている。
 その理由としては、政府出資が続くことで「暗黙の政府保証」が残存し、これを背景とする資金調達面での優位性がある以上、今回の貸付業務への参入拡大は、民業圧迫の懸念が極めて大きいと考えられるからである。
 ゆうちょ銀行は、完全民営化を目指しているものの、間接的な政府出資が残る一方で、完全民営化への道筋が不明確である以上、引き続き官業に位置付けられると言わざるを得ず、その間は、あくまでも民業補完に徹し、民間が取り組み可能な業務に新規参入を図ることは基本的に慎むべきである。
 この民営化のプロセスに関して更に申しあげれば、所見案でも言及されているとおり、適正な競争関係を確保する観点からも、株式処分のスケジュール等が早期に明確化されることが極めて重要であり、それを前提として、新規業務の参入について検討されるべきである。
 次に、認可申請の内容に関して申しあげると、「個人向け貸付は平成25年4月以降のできるだけ早期に開始」、「法人向け貸付は可及的速やかに開始」とされており、実質的に貸付業務の「全面解禁」を求めるものである。
 すでに競争が激しい貸出マーケットに、ゆうちょ銀行が世界的に例が無いほど肥大化したままで全面進出すれば、市場の資源配分が歪められたり、地域経済に悪影響を与えることも十分に懸念される。逆に、ゆうちょ銀行自身にとっても、信用コストや事務コスト等に見合う適正な収益が確保できなければ、かえって財務基盤を損ない、改正民営化法の諸目的の実現を困難にするとともに、将来的な国民負担に繋がる懸念もあるのではないかと思われる。
 仮に、個別具体的な業務についての認可申請であれば、国民経済への影響等が検証でき、建設的な議論も可能になるかもしれないが、貸出業務の全面解禁を求める申請に対しては、全面的に反対意見を述べるより他にない。
 以上申しあげたとおり、今回の認可申請は、郵政民営化法第一条の「民間が出来ることは可能な限り民間に委ねる」、第二条の「対等な競争条件を確保する」という基本理念を全く無視したものと言わざるを得ず、断じて容認できるものではない。
 こうした点も十分に踏まえられたうえで、郵政民営化委員会におかれては、中立・公正な立場から十分なご検討をいただくことを、民間金融機関として一致団結して、強く要望するものである。


(問)
 ゆうちょ銀行側と真っ向から意見が対立しているわけだが、今、地域経済にも影響が出るかもしれないという話もあったが、具体的に新規業務を認めると、国民にとって、どう困るのかというところを、もう少し具体的にわかりやすく説明いただきたい。
(答)(全国銀行協会 佐藤会長)
 ただ今のご質問は、具体的に新規業務が認められると、どういうかたちで国民に影響が及ぶのかというお話だが、ゆうちょ銀行の健全性が新規業務への参入によって仮に損なわれる場合には、これが国民経済に大きな影響を与え、結果として全ての国民に悪影響を与える可能性があるということが第一点である。
 共同声明の中にもあるように、ゆうちょ銀行は非常に大きいバランスシートを有すると同時に、資産サイド、負債サイドに大きな金利リスクを抱える世界最大級の金融機関である。この金利リスクを抱えたまま、信用リスクを伴う貸出業務に新たに参入することになると、資産サイドの運営に更に大きな懸念が出てくることとなる。我々金融機関は、貸出業務等については、かなり長い期間あるいは長い経験の中でリスク管理あるいは内部監査といったものを整えて経営をしている。ゆうちょ銀行のリスク管理態勢について、そうしたことが十分に果たされることなく、新規業務に参入し、万が一、ゆうちょ銀行に大きな問題が発生した場合には、金融システム全体の問題として、金融に関わる者のみならず、全国民にその問題が降りかかってくる。そういった観点から、ゆうちょ銀行の大きさ、あるいは影響を鑑みれば、新規業務の参入には、極めて慎重になる必要があるであろう。我々金融機関としてもこれまでいくつか申しあげてきたところであるが、やはり国民負担の問題のみならず、公平な競争条件あるいは利用者利便といった観点から、慎重な検討がなされたうえで、そういったことが議論されなければならないと思う。
 もう一点付け加えると、巨大な規模を有するゆうちょ銀行が、例えば、貸出市場に参入してきた場合には、当然のことながら、地域経済あるいは地域金融といったものに非常に大きな影響が出てくる。それが、当該市場のプレイヤーにとって、大きなマイナスになることは明らかであり、そうしたことを通して、日本の金融システムに大きな負の作用を及ぼすということになれば、国民経済にとってもマイナスであると考える。


(問)
 今後、郵政民営化委員会ないしは政府に対して、具体的にはどのようなアクションなり、訴えというのをされていく予定か。
(答)(全国銀行協会 佐藤会長)
 現在、郵政民営化委員会において、所見の見直しについても、我々からの意見を取りまとめられているところであり、基本的にはこの流れのなかで、今いろいろ申しあげたことも含めて、私ども金融界の考え方をきっちりと郵政民営化委員会の方にお伝えしていくことになろうかと思う。
 そのなかで今ご指摘いただいたような点、先程申しあげた点について、具体的にご説明をして、郵政民営化委員会の方に公正で適正なご判断をいただけるように、一生懸命、働きかけていきたいと考えている。


(問)
 佐藤会長にお願いしたいが、今日の午前中に、在日米国商工会議所やヨーロッパの商工会議所も、共同声明で、ゆうちょ銀行の新規業務参入について懸念を表明した。彼らのプレスリリースには、WTOでの話し合いといったことも書いてあったが、今回の声明でそういった団体と連携するといったことはお考えか。
(答)(全国銀行協会 佐藤会長)
 そのことは特に考えていない。今ここにお並びの方々の団体全体の総意として、今回の共同声明を発表しており、それ以上でもそれ以下でもないとご理解いただきたい。


(問)
 今回、圧力といったものも一緒に出てきていると思うが、競争が歪んできているといった点で、どのように見ているか。海外からも日本の不公正な競争ということで、ゆうちょ銀行に対して新規業務に厳しい意見があるが。
(答)(全国銀行協会 佐藤会長)
 海外からの意見に対してコメントする立場にないが、そういった意見が海外、特にアメリカなどからあることは十分承知している。一方、我々の今回の新規業務参入に対する反対の声明は、そういった海外からの意見とまったく異なる立場で、我々自身の考え方、あるいは我々自身の置かれている立場から、そして国民経済全体に与えるネガティブインパクトということに焦点を当てて、発出している。また、もともと約束していたプロセスをしっかり守っていただくということが、郵政民営化の基本的な考え方であり、その基本的な約束事をしっかり守っていただくのが当然という観点から、今回このようなかたちで全員で共同声明を出させていただいている。したがって、ご質問のようなご意見があることは承知しているが、それとは直接の関係はない。


(問)
 今まで小泉改革のときから、民営化するに当たって、全銀協が様々な協力をしてきた。全銀ネットの問題を含め、いろいろと協力してきた。そういうことを振り返ってみて、今回のようなことになったことについて、どういう感想を持たれているか。何らかの対抗措置というか、そういうことに対する撤回を含め、協力関係の問題をどう考えていくのか。
 また、もう一つ、地銀の問題でいうと、地域の金融機関で貸出業務が苦しい状況にあるかと思うが、そういう立場で貸出業務にゆうちょ銀行の金が入り込むことについて、どういうネガティブな状況が考えられるか。もう少し具体的にお答えいただけるとありがたい。
(答)(全国銀行協会 佐藤会長)
 最初の質問について申しあげたい。ご指摘のとおり、私自身も4月に国会に参考人として参加して我々の立場を申しあげた。審議の中で確認されていることとしては、郵政民営化については、なるべく早い時期にゆうちょ銀行を100%完全民営化していくことが、法案成立のベースにあり、その道筋を早くつけるという了解があったと理解している。この観点からは、その道筋を全く示すことなく、順番として先に新規業務の認可申請が出されたことについては、先ほど申しあげたように極めて驚きをもって受け止めているところである。これは、今までの議論の前提を、ある意味では本質的に覆すものであるという非常に強いネガティブな印象を持っている。
 もう一つは、暗黙の政府保証という観点について、例えば郵政民営化委員会の所見案の中でも、誤解によるものと位置付けられているが、その払拭に向けて今後努力していかなければならないとはっきり謳われており、その問題を横に置いて新規業務参入を議論するのは、本質的な了解事項に反する、そのように私は理解している。我々としては、特段対抗措置は考えておらず、今申しあげたような前提を踏まえ、我々の主張を整斉と民営化委員会に対して申しあげていくこと以外、特に考えていないが、その主張が当然通っていくものと認識している。
(答)(全国地方銀行協会 佐久間会長)
 ゆうちょ銀行は非常に大きな金融機関で、全国各県で相当なシェアを持っている。預金シェアで20%前後のところもあり、そのような金融機関が全面的に貸出業務に参入してくると、地方銀行だけでなく、信用組合、信用金庫など、いろいろなレベルで経営に大きなインパクトを与えると考えている。

以上