平成24年9月14日

各 位

金融調査研究会

金融調査研究会第2研究グループ報告書「国債市場の持続可能性」について(金融調査研究会)

 金融調査研究会(座長:貝塚啓明東京大学名誉教授・日本学士院会員)の第2研究グループ(主査:井堀利宏東京大学教授)は、今般、標記報告書を取りまとめました。

 わが国の財政を取り巻く環境をみると、歳出が税収を上回る状況が長らく続いており、その差額は拡大を続け、歳出のおよそ半分を国債発行で賄っている状況にあります。この結果、わが国の公的債務残高は国際的にみても極めて高い水準となり、財政再建の必要性について再三指摘されています。
 一方、このような状況下にあるものの、多額の個人金融資産が銀行等の間接金融を通じて国債に投資されていること等を背景として、現在、わが国の国債は安定かつ低利で消化されています。しかし、今後、少子高齢化の進行に伴い個人金融資産が減少することで、国債市場の持続可能性に影響が出る可能性があります。さらに、円高等を受けて国内生産拠点の海外移転が勢いを増しており、今後も貿易収支の悪化傾向が継続する場合には、超低金利の国債による国内での調達という仕組みが崩れ、資金不足分を海外から調達することが必要となることも考えられ、現在の国債をめぐる環境が大きく変化する可能性もあります。

 上記のような問題意識に立ち、金融調査研究会第2研究グループでは、平成23年度のテーマとして、国債市場の持続可能性を取りあげて研究を行い、今般、その成果を報告書として取りまとめました。本報告書に所収された論文は、研究グループのメンバー各人の責任で執筆されたものであり、執筆者の所属する機関の意見を反映したものでも、また、全国銀行協会の意見を表明したものでもありません。
 本研究会としては、この報告書が学術面だけでなく、わが国の財政状況の実態を踏まえた財政健全化に関する議論と持続可能な国債市場の実現に対し、有益な示唆を与えるものと期待しています。

【本件に関するご照会先】
金融調査研究会事務局
一般社団法人全国銀行協会 金融調査部 石井、大峰
〒100-8216 東京都千代田区丸の内1-3-1
Tel.03-5252-3741
Fax.03-3214-3429

 

別紙

 

「国債市場の持続可能性」の概要

第1章 国債市場の持続可能性(提言)

 本年2月に取りまとめた当研究会の提言を再録している。具体的には、わが国の財政収支の推移から、財政赤字および公債残高が拡大した経緯と財政再建に向けた動きを概観するとともに、国債市場の現況・予想される情勢変化や国債市場におけるこれまでの取組みを踏まえて、今後の持続可能な国債市場の実現に向けた財政健全化への道筋、国債市場の中長期的な安定につながる取組みについて考え方を提起している。

 

第2章 政府累積債務の帰結 危機か?再建か?

(岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授)

 ギリシャをはじめとした欧州辺縁国で財政危機が深刻な問題となり、財政の持続可能性に世界の関心が集まっている。わが国の政府債務は、先進国では最高の水準(対GDP比)に達しており、危機を招くことなく財政の持続可能性を維持することは日本経済にとってきわめて重要な課題である。
 本稿では、政府債務残高が高水準に達した事例を抽出し、その後の帰結を「破綻」と「再建」に分類して、所得水準の違い、時期の違い、債務残高の違いのような要因にどのような影響を受けるのかを検討している。

 

第3章 債務上限と財政維持可能性

(櫻川昌哉 慶應義塾大学経済学部教授)

 90年代前半以降、GDPをはるかに上回るペースで国債は大量発行され、OECD諸国の中でも圧倒的に高い値を示すに至っている。政府は、2011年度に基礎的収支を黒字化するという目標を掲げたものの、リーマン・ショックによる世界同時不況の影響を受けて大幅な財政支出増をはかった結果、財政改革は大きく後退することとなった。
 本稿では、成長率と利子率の関係を日本経済の実情に合った形で定式化し、財政の維持可能性の検証を行うほか、債務上限の定義に関する検討を行っている。さらに、わが国の債務残高が巨額でありながら、国債金利が低位で安定している理由について考え方を述べている。

 

第4章 公的債務と国債金利 -金利低下は財政信認のシグナルか?-

(小黒一正 一橋大学経済研究所准教授)

 近年、先進国では、公的債務(対GDP)が累増しつつある。そのような状況の中、急速に少子高齢化が進む日本の公的債務(対GDP)は、他の先進国と比較して突出しているが、国債金利は他の先進国よりも低い状況にある。しかも、日本の国債金利(長期金利)は公的債務の増加にもかかわらず、低下傾向にある。
 本稿では、簡単な理論モデルを構築し、Oguro and Sato(2011)モデルをベースに、国債金利が急騰する「閾値」との関係も含め、市場が抱く「財政規律の見通し」や「財政調整ルール」が国債金利に及ぼす影響を説明するほか、国債金利の低下と公的債務の増加との関係を明らかにしている。

 

第5章 政府債務の利子率に関する中長期的推計

 

(川出真清 日本大学経済学部・経済学研究科准教授)

 わが国はこれまで繰り返された際限のない財政支出によって、膨大な政府債務を抱えており、今後、少子高齢化の進展、世界的な金融不安、東日本大震災にも見舞われた厳しい環境のもとで、財政再建を進めなければならない。
 そこで、本稿では現状の日本の政府債務や財政運営を前提として、中長期的な政府債務が民間資産および政府債務の利子率に与える影響を評価している。特に利子率の面から内生化した世代重複型シミュレーションモデルを用いて、累増する政府債務が人口動態の中でどのように消化され、利子率にどう反映されるかを調査している。

 

(※ 肩書きは平成24年3月現在)

以上