2014年12月26日

一般社団法人全国銀行協会
会長 平野 信行

日本郵政株式会社による「日本郵政グループ3社の株式上場について」の公表について

 本日、日本郵政株式会社(以下「日本郵政」という。)が「日本郵政グループ3社の株式上場について」を公表されました。

 今回の計画では、日本郵政の株式、並びに、同社が100%の株式を保有する、ゆうちょ銀行を含む金融2社の株式を、来年度半ば以降、東京証券取引所に同時に売出し・上場することが示されております。

 政府が現在保有する日本郵政の3分の2未満の株式については、郵政民営化法により早期処分義務が課されているほか、復興財源確保法により、東日本大震災の復旧・復興財源に充てることとされており、その実現に向けて着実に進んでいるものと理解しています。

 一方で、ゆうちょ銀行の完全民営化に向けては、日本郵政が保有する株式の一部を売却し、まずは、保有割合が50%程度となるまで、段階的に売却していくと示されているものの、それ以上の具体的な道筋は示されておりません。郵政民営化法の改正に際しての附帯決議では、日本郵政が保有するゆうちょ銀行の株式全部処分に向けた具体的な説明責任を果たすことが求められておりますが、今回の計画では、十分な説明責任を果たしているとは言い難く、引き続き政府関与が残ることから、民間金融機関との公正な競争条件が確保されない状況が続くこととなります。

 私どもはかねてより、郵貯事業改革の本来の目的は、国際的に類を見ない規模に肥大化した郵貯事業を段階的に縮小し、将来的な国民負担の発生懸念を減ずるとともに、民間市場への資金還流を通じて、国民経済の健全な発展を促すことにあると主張してまいりました。まずは、この点をしっかり実行いただくことが重要だと考えております。

 その上で、ゆうちょ銀行が新規業務に参入するにあたっては、完全民営化への道筋が具体的に示され、その確実な実行が担保されるとともに、経営の抜本的な効率化と民間企業としての内部管理体制の整備を徹底することが、最低限必要であり、個別業務ごとの新規参入の是非は、公正な競争条件の確保や適正な経営規模への縮小等を総合的に検討し、判断する必要があると考えております。

 また、預入限度額に関しては、「当面は引き上げない」ことが改正郵政民営化法の附帯決議に盛り込まれており、現状その内容が遵守されておりますが、郵政民営化法において「他の金融機関等との間の競争関係に影響を及ぼす事情等を勘案して定める」とされているとおり、引き続き、政府関与が残る期間は、その限度額が引き上げられるべきではないと考えております。

 郵政民営化法では「民間に委ねることが可能なものはできる限りこれに委ねる」「同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置を講じる」といった理念が掲げられています。私どもとしては、関係当局および郵政民営化委員会において、こうした郵政民営化法の基本理念に則り、長期的な国益を十分に踏まえた深度ある審議・検討が行われ、今後、郵貯事業改革が本来の目的に沿って進められることを強く希望いたします。