平成28年1月 4日

一般社団法人全国銀行協会
会長 佐藤 康博

年頭所感

 平成28年の新年を迎えるに当たりまして、所感の一端を申し述べ、新年のご挨拶に代えさせていただきます。

 内外経済について申しあげますと、世界全体としては力強さを欠くものの、米国を中心とした持ち直しが世界経済を下支えすることから、緩やかな拡大傾向が続くとみています。一方、リスク要因としましては、中国景気下振れ、原油安や米国の利上げステージ移行のインパクト、新興国経済のさらなる減速リスク、地政学的リスクなどが挙げられます。一部金融市場にボラティリティの高い動きが見られ、今年はマーケットの動きにさらに留意すべき1年になると考えています。

 わが国経済は、昨年7~9月期のGDP改定値が上方修正され2四半期連続のマイナス成長は回避されたものの足踏み状態が続いています。ただし、原油安・円安を背景に企業収益は増加、雇用情勢の改善基調も維持されており、こうした点は引き続き内需の下支えとして働くことになると考えています。

 私は、昨年4月の全銀協会長就任に当たり、わが国経済の状況がマクロ的には緩やかな回復軌道に戻りつつあることを踏まえ、「政策主導による景気回復」というフェーズから「民間自身の活力の発揮により景気回復を確実にする」フェーズへ移ってきたところであると申しあげました。
 そのうえで2015年度を「日本経済の好循環の広がりに貢献する一年」と位置づけ、様々なことに取り組んできました。今年も引き続き、民間・経済界がその活力を十分発揮し発展していくことにより、日本経済の回復への足どりを確固たるものとしていくために、全銀協の活動方針として掲げました「三つの柱」を中心に最大限の貢献をして参りたいと考えています。

 まず、第一の柱「成長機会創出に繋がる、あらゆる金融仲介機能の発揮」では、日本を支える中堅・中小企業が抱える様々な課題に対し積極的な取組みを行って参りました。地方創生につきましても、銀行界が持つ資金供給機能、コンサルティング機能や、PPP/PFI、6次産業化、各種産業知見などの活用による貢献に努めて参りました。今年も、目利き力を活かした事業性評価にもとづく融資等の多様な資金供給手段の提供や「経営者保証ガイドライン」などの一層の活用に取り組むとともに、環境変化やお客さま自身が気付いていない経営課題やニーズを的確に把握することにより、総合的なコンサルティング機能の発揮に努めて参ります。
 また、近時大規模な自然災害の発生が頻発していることに伴い、昨年9月には全銀協を事務局として「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会」を発足させ、先般新たなガイドラインを取りまとめました。今年は、東日本大震災から5年が経ちますが、復興をさらに加速させるとともに、その経験を最大限活かし、被災者への適切な対応がなされるよう会員各行に周知徹底して参ります。

 次に、第二の柱「安心・安全かつ利便性の高い金融インフラの構築」では、手口がますます巧妙化している振り込め詐欺犯罪への対応が挙げられます。昨年は、10月を「振り込め詐欺等撲滅強化推進期間」とし、警察とタイアップした啓発イベントを全国7都市で実施するなど注意喚起を強化いたしました。今年も銀行界全体で振り込め詐欺などの金融犯罪の撲滅に全力で取り組んで参ります。
 また、全銀システムの稼働時間拡大に関しましては、2014年12月の方針決定以降、本格的な業務・システム要件の検討を進めてきましたが、昨年11月に要件定義書を承認し、今後、具体的な作業に入っていく予定であります。
 また、ICTの急速な発展を背景に注目を集めているFinTechにつきまして、海外の銀行ではすでに伝統的な銀行業務の領域を越えて革新的なサービスを行う事例も出てきています。わが国でも、こうした環境を踏まえ、昨年は金融審議会の2つのワーキング・グループで議論が行われましたが、今年は、銀行界として利用者保護や決済システムの安全性確保を踏まえつつ、利便性向上やイノベーション促進の観点から、各種取組みの具体的な検討や実行などを進めて参ります。

 最後に、第三の柱「より健全な金融システムの確立」について申しあげます。
 昨年11月に日本郵政グループ3社の株式上場が行われましたが、今後とも完全民営化に向けたプロセスがしっかりと進むことを強く期待するとともに、その中で、ゆうちょ銀行がいかに円滑に既存の民間金融システムに融和していくかということにつきましては、わが国の金融システム安定化にとって引き続き重要な課題であります。
 また、この1月からはマイナンバーの利用が始まりました。これまで全銀協は、関係当局と連携しながら事務取扱や情報管理のガイドラインなどを整理し、銀行界としての態勢整備に取り組んで参りました。今年は、制度開始に当たり進めてきた準備にもとづき万全の対応に努める所存であります。
 次に、国際金融規制の枠組みにつきまして、昨年はTLACの最終規則文書がFSBから公表されました。関係当局のご努力により我々銀行界の意見が反映されたものになったと認識しています。現在も銀行勘定の金利リスク(IRRBB)や標準的手法の見直し、資本フロアなど重要なテーマが残っています。一つ一つの規制はそれぞれ相応の政策目的があるものの、それらの規制が全体として経済や金融システムにどういう影響を与えるかという相互連関の視点も含め、今後も金融庁・日本銀行とも十分にコミュニケーションを取りながら、わが国銀行界としての意見を積極的に主張して参りたいと考えています。

 結びに、本年が皆さまにとって、大きな飛躍の年となることを祈念いたします。