2016年8月 2日

一般社団法人全国銀行協会
会長 國部 毅

未来への投資を実現する経済対策について

 わが国経済は緩やかな回復傾向にあるものの、年明け以降の円高・株安や中国をはじめとした新興国経済の減速、熊本地震の影響等により、個人消費や設備投資が力強さを欠いている。また、先行きについても、英国のEU離脱に向けた動向や世界経済の減速懸念など、多様なリスクファクターが存在しており、不透明・不確実な状況にある。政府には、強固な政権基盤の下、今一度アベノミクスを再加速し、わが国経済の足腰を強化していくことが求められる。

 こうしたなか、先般の日本銀行による追加的な金融緩和策に続き、政府が事業規模で28兆円に上る総合的な経済対策を決定されたことは、政府、日本銀行が一体となってデフレからの完全脱却、経済再生を成し遂げるという強い決意の表れであり、心より歓迎したい。

 とくに具体策として、観光・農業といった成長分野におけるインフラ整備やリニア中央新幹線の建設の加速、IoT、人工知能など第4次産業革命を背景とした生産性向上への取組推進、「一億総活躍社会」の実現に向けた子育て・介護等の支援、若者や女性の活躍推進等が盛り込まれており、わが国の潜在成長力の向上に繋がる「未来への投資」として期待できる。また、金融面において、NISAや個人版確定拠出年金の普及等、国民の安定的な資産形成の実現や、JBIC・JICAを通じた日本企業の海外インフラ展開支援等、重要な対策が講じられている。

 こうした対策が速やかに実行されるとともに、官民一体となってわが国が抱える課題を乗り越え、明るい未来を切り開いていくことが重要である。私ども銀行界としても、政府、日本銀行とより一層連携し、金融仲介機能の発揮や国民の資産形成に資する取組に努め、日本経済の持続的な成長に貢献して参りたい。