2018年1月 4日

一般社団法人全国銀行協会
会長 平野 信行

年頭所感

 平成30年の新春を迎えるにあたり、所感の一端を申し述べ、新年のご挨拶に代えさせていただきます。

 わが国の経済は、海外の政治・経済の不透明感や地政学的リスクには引き続き留意が必要なものの、景気は全体として底堅く成長、企業部門全体の業績も好調に推移しています。ただし、銀行界にとっては、少子高齢化や人口減少といったわが国の構造的な問題、あるいはマイナス金利の影響から、伝統的な金融仲介の収益性の低下が今後も続く可能性があり、そうした環境下、銀行界は強い危機意識のもと、持続的成長のための未来志向の改革が求められている状況にあると思います。

 そのような中、全銀協では、29年度を「様々な環境変化への対応を着実に実行し、日本の持続的成長の実現に貢献する一年」と位置づけ、活動して参りました。今年も活動方針として掲げた3つの柱を中心に、引き続き出来得る限りの貢献を果たして参りたいと考えています。

 まず、第一の柱、「日本の経済成長・成長戦略への一層の貢献」では、個人のお客さまの長期安定的な資産形成の実現に向け、多くの銀行において顧客本位の業務運営に係る取組方針を公表、KPIを設定する銀行も増加していますが、引き続きそれら方針やKPIを実現するための施策に取り組んで参ります。つみたてNISA等の普及促進に向けた周知・広報活動等に関しても、制度の活用が確実に進むよう取り組んでいきたいと考えています。
 また、各行は中小企業等の事業力や成長性に着目した新たな金融仲介モデルの構築に努めていますが、「経営者保証に関するガイドライン」のより一層の活用等を通し、担保・保証に必要以上に依存しない融資に取り組み、質の高い金融サービスを提供して参りたいと考えています。
 さらに足元では、ESGやSDGsを意識した取組みも始めており、今年はその対応を深化させていきたいと考えております。
 銀行カードローンに関しては、広告・宣伝や審査のあり方等、業務運営の見直しについて進めるとともに、計数の公表や専用相談窓口の設置等も実施してきましたが、今後も状況をよく確認しながら、健全な消費者金融市場の育成に向けた更なる取組みを進めて参ります。

 第二の柱、「IT技術の革新も踏まえた、顧客利便性が高く、安心・安全な金融インフラの整備・構築」では、オープンAPIへの対応に加え、XML電文への移行準備やブロックチェーン連携プラットフォームの実証実験等を進める等、決済高度化に向けた施策に取り組んできましたが、今年はその実用化に向け、取組みを加速して参ります。また、社会全体のコスト削減や、人手不足への対応に資するべく、手形・小切手の電子化や税公金収納の効率化に係る検討を関係省庁等と進めて参ります。
 さらには、金融犯罪被害撲滅に向けた活動を継続、また、BCP態勢の整備や銀行等セプターを通じた官民連携態勢、業界横断的なサイバーセキュリティ演習への参加促進等によるセキュリティレベルの底上げに関しても引き続き取り組んで参ります。金融経済教育に関しても第一の柱である国民の長期安定的な資産形成の実現のため、日銀、他団体等と協働のうえ業界横断の共通教材の作成等を通じて国民の金融リテラシー向上支援に取り組んでいきます。

 第三の柱、「公正・健全な金融システムの維持・進化」では、透明性・公正性の更なる向上を企図したTIBOR改革を昨年7月に実施しました。また、バーゼルIIIの見直し等の規制に関しては、これまで海外当局等に対する意見発信を実施してきましたが、官民一体で活動した努力が結実し、今般漸く合意に至りました。

 このように、銀行界として将来の成長に向けて、様々な施策に取り組んでいるところです。

 平成30年の干支は戊戌(つちのえ・いぬ)ですが、字義に鑑みれば、「更なる飛躍を目指すため、様々な問題や課題に対し、果敢に決断し、対応することが必要な年」と解釈されます。銀行界を取り巻く環境は、引き続き厳しく、また取り組むべき課題も多く存在しますが、本年が、「未来を切り拓き、持続的成長の実現を果たす年」となるよう、銀行界としても、引き続き政府や日本銀行と緊密な連携を保ちつつ、一つ一つの課題にしっかりと取り組みながら、金融面からわが国経済をしっかりと下支えし、お客さまの長期安定的な資産形成の実現、および企業の持続的な成長ならびに地域経済の活性化、に貢献して参りたいと考えております。

 最後になりますが、本年が皆さまにとって、大きな飛躍の年となることを祈念いたします。