令和3年1月 4日

一般社団法人全国銀行協会
会長 三毛 兼承

年頭所感

 2021年の新春を迎えるにあたり、所感の一端を申し述べ、新年の挨拶に代えさせて頂きます。

 昨年を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の世界的流行という、かつて経験したことのないグローバル規模の衝撃により世界は一変しました。世界各国で感染拡大抑止のための厳格な公衆衛生措置が採られた結果、家計や企業の経済活動が著しく制限され、わが国経済も年前半には未曽有の落込みを経験しました。また、経済・社会の様々な脆弱性が露わになり、「安心・安全」や「デジタル化」といったキーワードが改めて認識されました。勤務形態、消費活動、雇用等、あらゆる分野で不可逆的な変化が起き、各企業の経営や個別の産業のあり方にも大きな変化をもたらしています。

 全銀協では、コロナへの対応を最優先課題として、金融インフラとしての責務を果たして参りました。具体的には、全銀協で指針を策定し、各行の工夫により店舗での感染拡大を防ぎながら、生活に必要不可欠な金融サービスを継続して提供するとともに、給付金振込には銀行界をあげて迅速・正確に対応いたしました。コロナ禍を受け厳しい状況にあるお客さまへの資金支援には、政策金融機関等とも連携しつつ、引き続き最優先で取り組んでいます。

 また、このような中でも、将来の日本経済の姿を見据えた種まきも同時に重要との考えのもと、2020年度を「イノベーションに取り組み、持続的成長と社会課題解決に貢献する一年」と位置付け、活動して参りました。今年も活動方針として掲げた3つの柱を中心に、引き続きでき得る限りの貢献を果たして参ります。

 まず、第一の柱、「金融サービスの提供を通じた経済・社会課題解決への貢献」では、人生100年時代にふさわしい長期・安定的な資産形成の実現に向け、各行で様々な取組みを行っていますが、引き続き、フィデューシャリー・デューティーを念頭に置きながら、積極的に推進していきます。高齢者対応では、認知能力の低下したお客さまとの取引に係る指針の策定に取り組みます。また、コロナ禍でグリーンリカバリーが提唱され、わが国でもカーボンニュートラルが宣言される中、気候変動という地球レベルの社会課題に資金供給主体として貢献して参ります。さらに、地方創生に関しては、事業性評価にもとづく融資を一層推進するとともに、経営者保証ガイドライン特則の考え方を徹底し、円滑な事業承継に貢献していきます。

 第二の柱、「デジタル時代の『安心』『安全』『便利』な金融・社会インフラの実現」では、銀行口座からの不正出金事案を契機に、「資金移動業者等との口座連携に関するガイドライン」を制定しました。決済システムに関しては、資金移動業者の全銀システム参加や多頻度小口決済の利便性向上等の検討を進めています。また、コロナ禍により非対面・オンライン取引が拡大する中、手形・小切手機能の電子化、QRコードを活用した税・公金収納の効率化を進めるべく政府・関係省庁と検討を深めております。マイナンバー制度については、預金口座付番や公金口座の登録が検討されており、政府・関係省庁と連携して利便性向上に努めていきます。さらに、中銀デジタル通貨の議論にも積極的に参画して参ります。
 また、金融審議会の議論に参画し、銀行の業務範囲規制の緩和が実現される見通しとなった一方、銀証ファイアーウォールについては骨太な議論を継続することとなっており、わが国金融・資本市場の発展に向けた適切な意見発信を続けていきます。

 第三の柱、「金融システムの健全性・信頼性の更なる向上」では、AML/CFT対策として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のAI活用実証実験への参画等を通じ、業界対応水準の底上げを図るとともに、コロナ禍での金融犯罪未然防止の啓発活動にも取り組んでいます。金利指標改革では、当局とも連携し、本邦の統一的な移行計画に沿って、年末に迫るLIBOR廃止への対応を万全に行って参ります。国際金融規制についても、コロナ禍での様々な特例措置等も踏まえ、議論のフォローとともに適切な意見発信を行います。

 このように、銀行界として将来を見据えて、様々な施策に取り組んでおります。

 さて、2021年の干支は辛丑(かのと・うし)ですが、字義に鑑みれば、「これまで実現しなかったことや注目されてこなかったことが、推進力を得て飛躍に向かう年」と解釈されます。企業経営にとっては、コロナ禍がもたらすビジネス環境の変化を捉え、「今後新たに柱となり得る事業について、方向性を定めて果敢に展開していく年」と言えるでしょう。規制緩和の後押しも受けて、銀行界には様々な選択肢が広がっているところです。本年は、感染拡大抑制/医療崩壊防止と経済活動維持のバランスを模索する中で、経済回復ペースは緩やかなものとなると想定されますが、銀行界としても金融面からわが国経済をしっかりと下支えするとともに、イノベーションに果敢に取り組み、ウィズ/ポストコロナの社会課題解決に貢献して参ります。