2021年12月16日

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一般社団法人全国銀行協会

「カーボンニュートラルの実現に向けた全銀協イニシアティブ」の策定について

 一般社団法人全国銀行協会(会長:髙島誠 三井住友銀行頭取)は、本日開催の理事会において、「カーボンニュートラルの実現に向けた全銀協イニシアティブ」を策定いたしました。

 わが国政府は、2020年10月に2050年カーボンニュートラルを宣言し、さらに2021年4月には野心的な目標として2030年度における温室効果ガスの排出を2013年度比46%削減することを表明しています。これを受けて、現在、わが国では官民を挙げて、カーボンニュートラルの実現に向けたさまざまな取組みが進められています。

 さらに、2021年11月に開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した「第6次評価報告書第1作業部会報告書(注1)」を踏まえ、パリ協定において定められた1.5℃努力目標を追求する重要性を改めて確認したうえで、2030年までを「決定的な10年」(critical decade)と位置づけ、すべての締約国に対して更なる行動を求めています。

 こうしたなか、わが国銀行界においても、自らの温室効果ガスの排出削減に取り組むとともに、1.5℃目標の達成に必要とされる社会経済全体のカーボンニュートラル/ネットゼロへの「公正な移行(注2)」(Just Transition)を、金融面からしっかりと支えていくことが喫緊かつ重要な課題であると認識しています。また、足許、国際的にも金融機関に対して、お客さまが受ける物理的リスクや移行リスクを含めた、気候変動リスクの管理の要請が強まるなか、これらのリスクについてお客さまとのエンゲージメント(対話)を通じて共通の理解を深め、お客さまそれぞれの状況に応じてカーボンニュートラル/ネットゼロに向けた取組みをサポートしていくことは、お客さまと金融機関双方における気候変動リスクに対処するとともに、わが国経済の国際競争力の維持・強化を図るうえでも重要となっています。

 こうした観点から、当協会は、これまで進めてきた気候変動問題への取組施策の体系化を図るとともに、中長期的な視点に立って、基本方針や重点的に取り組むべき分野を定め、カーボンニュートラルの実現に向けた銀行界としての取組みをさらに強化していくため、「カーボンニュートラルの実現に向けた全銀協イニシアティブ」を取りまとめました。

 当協会は、本イニシアティブにもとづいて、金融・社会インフラとして銀行界に期待されている役割の発揮に取り組んでいくとともに、産業界・政府関係省庁とも連携し、産・官・金一体となって、わが国における2050年カーボンニュートラル/ネットゼロの実現に貢献してまいります。

 なお、本イニシアティブの作成に当たっては、会員銀行のほか、温室効果ガスのいわゆる多排出業種企業や先駆的な取組みを行っている企業、地域経済を支える企業等に対してインタビューを実施し、これらインタビューを通じて得られたさまざまな課題認識や意見、要望等も参考とさせていただいており、ご協力いただいた皆さまに改めて厚くお礼申しあげます。


(注1)
2021年8月にIPCCが公表した「第6次評価報告書第1作業部会報告書」では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」としたうえで、「向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球温暖化は1.5℃および2℃を超える。」と指摘。

(注2)
「公正な移行」(Just Transition) とは、ICMAの定義によれば、グリーン経済への移行による実質的な利益が広く共有されるよう確保するとともに、経済的な不利益を被る立場にある者(国、地域、産業、コミュニティ、労働者、消費者を含む)を支援することを目指すもの。公正な移行の概念は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)と紐付いている。

【本件照会先】
一般社団法人全国銀行協会 企画部サステナビリティ推進室 Tel.03-6267-7533