令和4年1月 4日

一般社団法人全国銀行協会
会長 髙島 誠

年頭所感

 2022年の新春を迎えるに当たり、所感の一端を申し述べ、新年のご挨拶に代えさせていただきます。

 昨年を振り返ると、世界経済は国や地域ごとにばらつきはありますが、先進国を中心にワクチン接種の進展や各国のマクロ経済政策に支えられて回復を続けたと言えます。国内経済は、海外経済の回復を背景とした堅調な外需が下支えしたことで、持ち直しが続きましたが、変異株の流行による行動制限の長期化を受けて、個人消費の回復が遅れる等、業種間で業績の差が鮮明となりました。ワクチンの普及により、企業や家計のセンチメントの持ち直しもみられ、社会経済活動の正常化に向けた道筋は視野に入りつつありますが、新たな変異株の影響を含め、感染症の帰趨とその実体経済への影響は不透明な状況が続くと考えられます。

 このような環境下、私は、昨年7月に全国銀行協会会長に就任して以降、2021年度を、「わが国における現下の難局の克服と新たな社会・経済の創生を支える年」と位置付け、三つの柱を掲げて活動を進めて参りました。以下では、その具体的な取組みについて、申し述べさせていただきます。

 まず、活動の第1の柱は、「経済・社会的課題解決への取組み」です。銀行界では、新型コロナウイルス感染症の拡大初期から、一貫して、お客さまの資金繰り支援を最優先に取り組んでおり、今後もこの方針は不変です。加えて、ポストコロナにおける事業者の方々の事業再構築・事業再生をしっかりと支援していくため、全銀協を事務局とする「中小企業の事業再生等に関する研究会」を設置し、新たな事業再生ガイドライン策定に向けて検討を進めております。また、グローバルに喫緊の課題となっている気候変動問題への対応については、全銀協にサステナビリティ推進室を設置し、昨年12月、銀行界としてのカーボンニュートラルの実現に向けた取組方針を取り纏めたイニシアティブを策定しました。さらには、銀行法改正や銀証ファイアーウォール規制の見直しへの対応、金融経済教育の推進等、わが国の多岐にわたる経済・社会的課題の解決に向けた取組みを、今後も継続して行って参ります。

 次に、第2の柱は、「デジタル時代にふさわしい金融インフラの整備」です。全銀協では、2026年度の手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画を策定したほか、総務省と協同で2023年度からの活用を目指す地方税統一QRコードを策定しました。また、企業間取引における受発注から決済までの一連のフローのデジタル化を促進するべく、昨年10月、全銀ネットにワーキンググループを新設し、電子インボイスと全銀EDIシステムのシームレスな連携について、関係当局や産業界と共に検討を進めております。

 第3の柱は、「健全かつレジリエントな金融システムの構築」です。昨年9月、金融庁からバーゼルIIIの国内実施に関する告示案が公表されました。全銀協で銀行界の意見を集約の上、パブリックコメントを提出する等、2023年3月末の適用開始に向けた対応を進めております。また、昨年末に公表が停止された円LIBORの移行対応は、関係当局や業界横断的な連携のもと、円滑な移行を実現することができました。さらに、わが国が重点フォローアップ国と認定されたFATFの第4次対日審査報告書を受けて、関係当局とも連携し、AML/CFT業務の共同化に向けた検討や海外事例の研究等を進めております。

 このように、全銀協として、三つの柱のもとに活動して参りましたが、銀行界が直面する課題はいずれも容易に解決できるものではなく、様々な関係者との緊密な連携のもと、一歩一歩着実に取組みを進めていくものばかりです。

 こうしたなかで、2022年、わが国は重要な局面を迎えると考えております。マクロ環境を見通すと、グローバルに経済活動の正常化が進み、景気の回復基調が続くもとで、わが国においても、コロナ禍によってダメージを受けたお客さまの事業の再生・再構築に向けた動きは一層加速していくと見込まれます。また、気候変動問題や、デジタライゼーションへの対応については、具体的な実践につなげていくことができるかが、今後のわが国の発展に大きく関わってくると考えております。

 銀行界としては、引き続き高い緊張感と使命感を持って、わが国を取り巻く環境を俯瞰し、困難な課題に正面から向き合い、様々なステークホルダーとの真摯な議論を通じて、新たな社会・経済の創生を支えて参りたいと思っております。

 結びに、本年が皆さまにとって、大きな飛躍の年となることを祈念いたします。