2023年1月19日

各 位

一般社団法人全国銀行協会

スタートアップ支援に関する申し合わせについて

 一般社団法人全国銀行協会(会長:半沢淳一 三菱UFJ銀行頭取)は、本日開催の理事会において、スタートアップの育成や支援を社会的使命と位置付け、スタートアップへの取組強化を共通認識とするため、以下のとおり申し合わせを行いましたので、ご連絡申しあげます。
 

スタートアップ支援に関する申し合わせ

一般社団法人全国銀行協会


 スタートアップは、日本経済のダイナミズムと成長を促し、国際的な競争力を回復していくための重要なファクターである。一方、諸外国との比較において、日本のスタートアップの育成や市場拡大は劣後している状況にあり、スタートアップエコシステムの活性化は、社会全体として取り組むべき重要なテーマである。
 また、政府は、2022年6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」において、スタートアップへの投資を4つの重点投資の1つと位置付けた。スタートアップ育成5か年計画においても、スタートアップ育成のための取組方針が示されており、金融機関に対して、不動産担保や個人保証によらず、事業価値やその将来性といった事業そのものを評価して、成長資金を融資し、支援していくことが期待されている。
 会員銀行は、スタートアップの育成や支援を社会的使命と認識し、健全かつ急速なスタートアップ市場の形成を目的に、下記の取組みに努めるよう申し合わせる。

 

1.対象・範囲

 創業資金は、エクイティ性の資金、または、公的な制度融資等によって調達される性質であることにも鑑み、本申し合わせの対象は、設立後3年以上10年未満を目安とした企業、かつ、優れたアイディアや技術による事業を通じて、社会の発展やイノベーションを起こすことに貢献することが期待できる企業とする。

2.融資判断

 融資判断に当たっては、物的担保や財務実績のみによらず、事業価値や将来性を踏まえて行う。
 また、スタートアップの成長に向けた多様な資金ニーズに対して、肌理細やかに対応する。

3.保証・担保

 経営者保証に関するガイドラインの趣旨を踏まえた対応を前提とし、合理的な範囲で経営者等からの個人保証を求めることを妨げるものではない。
 ただし、業歴が浅いことや赤字であること、経営者等から十分な物的担保の提供がないことのみをもって、経営者等からの個人保証を求めることとせず、創業間もない企業は、早期に強固な財務基盤を確立した状態とすることが困難であることを勘案して、個人保証の要否を判断する。
 具体的には、経営者等からの個人保証が、経営への規律付けや信用補完に寄与するものと位置付けられることに鑑み、法人と経営者との関係の明確な区分・分離、および、財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保が確認できる状況であることに加え、以下の要素を勘案しつつ、個人保証を求めないことを検討する。

(1)企業経営のガバナンスに懸念がないと判断できること(以下いずれかのような場合を含め、これらに限られない)
 〔1〕外部の投資家(ベンチャーキャピタル等)から一定の出資を受けており、社外取締役等が配置されている
 〔2〕創業者本人が一定額(総額5百万円等)以上を出資していることに加え、親族を除くエンジェル投資家等の外部投資家から一定の出資を受けており、経営の重要事項に係る意思決定について、外部からの牽制が効いている

(2)法人の事業価値やその将来性により返済が期待できること(以下いずれかのような場合を含め、これらに限られない)
 〔1〕実現可能性が高いと判断できる事業計画やビジネスプラン等が策定(必要な見直しを含む)されており、事業に対する経営陣のコミットメントや、事業計画を履行可能な体制が構築されている
 〔2〕IPOなどによる今後の蓋然性の高い資金調達計画が策定され、将来的な財務基盤の強化が見込まれる

4.金利

 資金使途、期間、収益力、将来性、保全状況等を踏まえ、リスクに応じて設定する。

5.その他成長支援

 スタートアップの育成・成長においては、資金とともに人材の確保も必要であり、企業からの要請にもとづき、人材マッチング事業や出向等を通じて、経営を支える人材供給に対応する。
 また、スタートアップの販路拡大やグローバル展開、新たなビジネス機会の創出のため、大企業を含めた会員銀行の取引先企業とのビジネスマッチングにも積極的に取り組む。