1999年9月14日

杉田会長記者会見(第一勧業銀行頭取)

 会長会見に先立ち、菅野副会長・専務理事から次のとおり報告した。
 本日の正副会長会議で、住友銀行の西川頭取を次期会長に推薦することを決定し、理事会で了承された。
 なお、会長の正式な選任は、来年4月の定例総会後の理事会にて行われる。
 また、本日の理事会では平成12年度の税制改正要望、苦情・紛争処理体制の充実策および「西暦2000年問題」対応のための年末手形交換に係る基本的考え方を了承した。
 まず、税制改正要望の骨子は次の通りである。要望の柱は「金融市場の活性化および金融システム安定のために」等4つの柱からなっており、要望項目は全部で11項目である。
 このうち、重点要望項目は、第1の柱の3項目と第2の柱の3項目の計6項目である。
 第1の柱では、いわゆる日本版ビッグバンが本格的な実施段階に移行し、金融市場の活性化および金融システムの一層の安定化が喫緊かつ重要な課題となっていることから、こうした課題に対応していくための税制上の手当を要望している。具体的には、「資産流動化関連税制の拡充」「確定拠出型年金税制の整備」「海外投資等損失準備金制度の延長・拡充」の3点を要望している。
 次の第2の柱では、金融機関の組織形態の多様化の観点から、税制面において早急に制度の整備・見直しを行うことを要望している。具体的には、「持株会社関連税制の拡充」「会社分割に係る税制の整備」「連結納税制度の導入」の3点を要望している。
 次に、苦情・紛争処理体制の充実策であるが、お手許に資料をお配りしているように、全銀協では、銀行界全体で円滑な苦情・紛争の解決を図る仕組みを作るため、苦情処理に関する全国共通のルールとして、弁護士会の「仲裁センター」の利用等を含めた「苦情の受付と解決促進に関する規則」を制定し、10月1日から実施することとした。
 これにより、例えば、苦情が3か月以上にわたって解決していない個人のお客さまは、弁護士会との間で協定等を締結している銀行協会の銀行よろず相談所に対し、その解決のため弁護士会仲裁センターの利用を求めることができる。この場合、相手方の会員銀行は、裁判等で解決を図ることを明確にする等の合理的な理由がない限り、その利用の求めに応じることになり、これまで以上に迅速な苦情解決が図られることになる。
 これを受けて、東京銀行協会では、本日、東京弁護士会、第一東京弁護士会および第二東京弁護士会との間で、仲裁センターの利用に関する協定を締結することとしている。
 最後に、「西暦2000年問題」対応のための年末手形交換についてであるが、(1)手形交換については、危機管理計画の策定など種々の措置を講じているところであるが、リスク軽減のため平成12年(西暦2000年)1月4日における手形交換業務を本年末の12月31日に実施することが望ましい、(2)しかし、手形交換所によっては通常通り1月4日に交換を行っても問題ないことも想定されるため、年末手形交換については、各交換所が参加銀行の所在地や処理等の状況を勘案して実施の是非を決定することとする、という基本的考え方を全銀協として取りまとめ、各地の銀行協会に通知することとした。
 なお、本件は、銀行間の事務処理を前倒しで実施するというものであり、お客さまに何らかの影響を与えるものではない。
 また、東京手形交換所では、全銀協の基本的考え方を受けて、来年1月4日の手形交換業務を本年末の12月31日にも実施することとした。  


杉田会長記者会見


(問)
 景気の現状について、先日発表された4-6月期のGDPが2期連続のプラス成長となった。景気に明るい兆しが見えてきたという意見もあるが、その一方、銀行の貸出については前年比マイナスの状況が続いている。どうしてこういう齟齬が起きるのか、その辺も含めて、景気の見通しと現状についての見解を伺いたい。
(答)
 4-6月期の実質GDPが前期比+0.2%と、2四半期連続のプラス成長となったことは、わが国の景気が回復過程に入りつつあることを示す動きではないかと考えている。また、企業収益が持ち直してきたことも、景気や株価の先行きにプラス材料と言えよう。
 しかし、一方で個人所得の減少傾向が続いているほか、設備投資も低迷している。企業における設備や雇用の過剰感が高止まりした状況になっていることも考えれば、まだまだ民間需要の先行きについては楽観できない状況ではないかと考えている。また、これまで景気を下支えしてきた公共支出がやや息切れしているということや、このところ円高が急速に進行しつつあることも大変気がかりである。こうしたことから、今後もしばらくは、景気回復に向けた前向きの変化が損なわれることのないよう、注意深く見守っていく必要があると考えている。
 貸出金の状況について見てみると、今申しあげたような国内の民間部門の回復力の弱さを反映し減少傾向が続いている。先に全銀協より発表した都長銀信託三業態の貸出残高動向は、11年8月末については、特殊要因、具体的には、不良債権処理に係るバルクセールや共同債権買取機構への持ち込み等々を調整した後で、前年同月比の末残で2.9%の減少、都市銀行では3.1%の減少となっている。運転資金の伸び悩みや、設備投資の減少、さらに、企業がリストラの過程で債務の圧縮に動いていることなどを反映して貸出金が減少しているのはないかと考えられる。
 当行の状況について申しあげれば、住宅ローンが持ち直しつつあるほか、マンションプロジェクト資金や都心の大型の再開発型プロジェクト資金、パソコン・ゲーム機関連資金、企業のリストラに伴うM&Aに関連した資金など、一部に前向きな資金需要が見られるなど変化の兆しも見える。
 ただし、実際に審査部門に上がってくる案件の内容や件数を子細に見ると、全体としてみれば、国内の民間部門の需要の回復の遅れを反映して資金需要は未だ弱いという状況にあるのではないか。私どもとしては、現時点では資本を増強し、リスク管理能力、リスクテイク能力も高まっており、前向きの資金需要には是非応じたい、またそれが我々の社会的使命ではなかろうかと考えている。早期に本来の資金需要が盛り上がってくることを期待している。


(問)
 ペイオフの論議が始まり、決済性預金、金融債、利子について保護対象とすべきとの議論があるが、どのように考えるか。
(答)
 平時におけるわが国の金融システムの在り方を考えた場合、市場規律を機能させる、つまりモラルハザードをなるべく小さくすることが望ましい。モラルハザードが増大することは社会的なコスト負担が増大するということである。従って、恒久的制度を考える際には、基本的に「小さな制度」を目指すべきであると考えている。
 こうした中、まず決済性預金についてであるが、そもそも金融機関の破綻処理を進める際に重要なことは、預金者の流動性を最大限確保し、また、資金決済や資金仲介など金融機能の継続性・連続性を確保することである。
 その観点から、例えば、米国で行われている資産・負債継承方式、いわゆるP&A方式は、大いに検討に値すると思う。
 こうした手法により、破綻にかかわる一連の処理が円滑になされれば、預金が全額は保護されない可能性は残るものの、決済機能そのものの連続性は確保されることになるのではないかと考える。
 その上でなお「決済性預金を全額保護すべきである」ということであれば、負担の増大やモラルハザードの増大に繋がることからも、そもそもこれを現在の預金保険制度の枠組みの中で考えるのか、誰がそのコストを負担するのかという点も含めて更に議論が必要になってくるのではなかろうかと考える。
 次に、金融債については、転々流通する有価証券であり、名寄せが技術的に困難であること等から現在付保対象になっていない。しかし、例えば、個人の貯蓄手段となっている名寄せ可能な保護預りのものであれば、付保対象とすることが考えられるか、その場合、今後発行が解禁される金融機関の社債をどう扱うべきか等が検討課題になろう。
 さらに、預金利子については、預金者及び金融機関の経営者のモラルハザードを助長するという観点から、現在付保対象になっていない。郵便貯金とのイコールフッティングの観点からこれを付保対象とすることが考えられるかどうか等が検討課題になろう。
 このあたりの問題は、いずれも7月に発表された中間的論点整理でも論点にあげられており、更に金融審議会の場で議論が進められ、深められていくものと思う。


(問)
 金融債について、10月から銀行に普通社債の発行が認められることになっているが、このような中で、今後も金融債という商品が必要かどうか。また、3行の統合により新しい銀行が誕生するが、その後も長信銀として金融債を発行すべきかどうか。普通銀行にも金融債の発行を認めるべきとの議論もあるが、どう考えるか。
(答)
 今後の金融債のあり方については、これまで全銀協としては議論していないので、全銀協会長としてのコメントは差し控えさせていただきたい。
 ただ、3行事業統合の一当事者としての立場で申しあげるとすれば、金融債は投資家にとって流動性の高い貯蓄運用手段である一方、調達サイドからみれば、中長期の調達手段として、金利リスクや流動性リスクのコントロールに活用できるものとして定着し、それなりの市場規模を有していることから、存続意義はあると思う。
 わが国金融界では、日本版ビッグバンが進展する中、金融機関の事業再構築、提携、合併、統合等の形態も多様化してきている。そのような中で、金融債発行に係わる制度対応・制度運用については、こうしたわが国金融界を巡る環境が大きく変化していること、またこうした新たな動きに適合したものとなるよう、然るべく検討がなされるものと期待している。
 3行統合の当事者の立場としては、その時の金融制度に沿って金融債が発行できることが望ましいと考えている。


(問)
 本日、次期会長に住友銀行の西川頭取が内定したとのことであるが、どのような理由で決定されたのか。
(答)
 会長の選任方法については、全国銀行協会規約第15条において、正副会長会議による推薦を経たうえで、理事会において互選する旨、定められている。
 選任の時期については、特段の取り決めはないが、会長行になるには相当の準備期間を必要とするので、年度の半ばであるこの時期にそろそろ決めてはどうか、ということで、本日の正副会長会議で西川頭取を推薦することを決定した。
 先週の9日および本日と2回にわたる正副会長会議で次期会長についていろいろ審議した結果、西川頭取を推薦したわけであるが、その際には、当然ながら昨年10月13日の理事会での決定事項である会長行輪番制の廃止等を念頭に置きつつ、推薦の審議をした。
 また、同じく昨年の10月に取りまとめられた「組織運営に関する答申」において、会長選任に関する基本的視点について、「会長は、業界団体の長として相応しい見識と経験を有することに加え、銀行経営を巡る最新の状況を把握しうる立場にある人物から選任する」、「会長を業界内から選任する場合には、出身行の規模、本部機能の所在地およびこれまでの全銀協活動に関する経験等を考慮する」としており、こうした基本的視点も踏まえて、いろいろ審議した結果、結果として住友銀行の西川頭取を推薦することを決定した。
 なお、先程、菅野専務理事からも説明のあったとおり、来年4月の定例総会後の理事会で正式な選任が行われることとなる。


(問)
 金融債は長期信用銀行、商工中金などが扱っているが、長期信用銀行制度がどうなるかわからないなか、その表裏の関係として金融債の存続についてどのように考えているか。むしろ、金融債から社債に一本化していったほうが、イコールフッティングという面から見ても、良いのではないかという議論もあるのではないかと思うが、全銀協としてどのように整理しているか。
(答)
 長信銀の話については、先ほどもお答えしたように、全銀協として議論はこれまで一切していないので、全銀協会長としてのコメントは差し控えさせていただきたい。また、三行事業統合の当事者として、全銀協会長会見の場で、あまり意見なり考え方を述べるのは、公けの場でもあるので、ご容赦を頂きたい。この辺りについては、また別の機会に個別行として考え方を述べさせていただくなり、聞いていただく機会はあろうかと思う。


(問)
 郵貯が確定拠出型年金において、個人分野に参入しようという動きを見せていることについて、一部の銀行から民業圧迫ではないかという議論が出ていると聞いている。全銀協として郵貯が401Kプランに参入してくることについてどのように考えているか。
(答)
 郵貯の確定拠出型年金の問題は、そのような動きがあるということについては直接、間接に聞いている。いずれにしても全銀協としては、これまで郵貯が我々民業を圧迫し、国民に見えざる負担を強いていること、また、イコールフッティングではない、ということで、郵貯のあり方について疑問を投げかけてきたわけである。それを延長すれば、こうした確定拠出型年金制度への進出というようなことについて、私どもとしては、当然反対の立場であると申しあげることができる。


(問)
 2000年問題に対して金融界で行ったコンピュータシステムのテストの結果、これで2000年問題はクリアできたという安全宣言は出せるような状況にあるのか。取引先との関係もあり難しいというならば、これから年末にかけて取引の自粛を求めるということも考えているか。
(答)
 西暦2000年問題に対する我が国の金融機関の対応については、先般、金融監督庁から「98%の金融機関が6月末までに重要システムの修正の作業を完了した」と発表された。総じて順調に進んでいるという評価ではなかろうかと認識している。
 主要決済システムについても、日銀ネットなどの主要決済システムと金融機関との間の、昨年12月から今年7月にかけての6回にわたるインダストリーワイドテストを通じ、2000年問題対応が順調に進んでいることが確認されている。
 各金融機関のコンティンジェンシープランについても、金融監督庁は、「94%の金融機関で6月末までに策定済みである」と発表している。今後は、各金融機関や決済システムにおいて、模擬訓練等を通じて、コンティンジェンシープランの完成度を高めていくことと共に、実際対応にあたる人の錬度を高めることが必要な段階に来ていると考える。
 年末年始についての特別な対策を具体的に申しあげると、まず、各銀行は万が一の場合でも、お客さまの預金データが消失することがないよう、年末時点におけるお客さまの預金データのバックアップをとることとしている。全銀協ではすでに6月に法人向け、9月に個人のお客さま向けのリーフレットを作成し、その中に、こうした内容を織り込んで、銀行の対応状況を利用者の方に広くご理解いただくよう努めているところである。
 また、多くの金融機関では、明年1月2日に日銀ネットとの接続確認テストを行うことにしているが、翌3日にはこれらのテストの結果等を踏まえた対応を行い、万全の態勢で4日の営業初日を迎えることとしている。
 また、さきほど、専務理事からご報告した通り、来年1月4日における手形交換業務を12月31日に繰り上げて実施することがリスク削減のために望ましいとの考えを全銀協としてとりまとめた。本日、東京手形交換所においては、12月31日には手形交換所を開き手形交換業務を行うことを決定している。なお、これは、1月4日の取引を12月31日に先日付でオペレーションを行うということであり、1月4日に手形交換所を開かないということではないので申し添える。
 また、9月1日に全銀協西暦2000年問題情報センターを設置し、年末年始において問題が発生した場合には、情報を収集し、各金融機関へ還元するという活動を24時間対応で行うべく、特別対応体制を敷く予定である。
 さらに、全銀協ホームページにも掲載しているが、お客さまがリスクを軽減するという観点からあえて1月初めや2月29日の取引について避けるという考え方もありうるということを案内している。
 2000年問題については、どこまでやれば100%と断言できるようなものではない。コンティンジェンシープランの完成度を高めるということで、全銀協としては万全を期していくという姿勢をとっていくと共に、一般の預金者の皆さん、お取引先の皆様向けに広報活動を行っていくこととしている。