1999年12月21日

杉田会長記者会見(第一勧業銀行頭取)

菅野副会長・専務理事報告

 会長会見に先立ち、菅野副会長・専務理事から次のとおり報告した。
 平成12年度の全銀協の会長・副会長についてはすでに理事会で内定し、皆さんにもご報告しているが、全銀協では、会長・副会長がそれぞれ委員会を担当して協会運営を担っていく「集団運営体制」を採用しており、この委員会を担当する正副会長の指名は、全銀協規約により、正副会長会議で行うこととなっている。
 このため、12月16日(木)の正副会長会議において、平成12年度に各委員会を担当する正副会長を資料のとおり内定したので、本日の理事会でそれを報告した。
 具体的には、企画委員会は住友銀行の西川頭取が担当し、税制委員会は私菅野が、業務委員会は富士銀行の山本頭取が、国際委員会は三和銀行の室町頭取が、市場委員会は日本興業銀行の西村頭取が、そして事務委員会はあさひ銀行の伊藤頭取が、それぞれ担当することとしている。また、公共委員会については、注記にあるように、信託銀行からの副会長に担当をお願いする予定である。
 なお、これらの担当委員会の正式な指名は、来年4月の定例総会後の理事会において新しい正副会長が正式に選任された後の正副会長会議において行うこととしている。 


会長会見の模様


(問)
 年末が近づいてきたが、西暦2000年問題について、銀行界の対応は万全と伝えられているが、改めて銀行界の準備状況について伺いたい。また、年末年始に傘下の銀行に万が一何か発生した場合には事故状況についてどのように周知するのか。
(答)
 いよいよ2000年まで残すところ10日となった。金融監督庁からは、11月までに全ての金融機関において、重要なシステムの修正・内部テストが完了したこと、危機管理計画も作成されたことが発表されており、金融界において2000年問題に対して十分な準備がなされていると認識している。
 年明け後の1月2日には日銀ネット等の接続確認テストが実施される予定になっており、各銀行では、そのテストの結果を踏まえ、必要に応じて翌3日に対応を行い、万全の態勢で4日の初の営業日を迎えることとしている。
 なお、銀行では危機管理計画の中で、お客さまの預金等のデータが消失しないようにバックアップをとった上で、さらに、万が一2000年問題が発生した場合でもお客さまへの預金の払出ができるよう、紙にデータを印字しておくなどの対策をとることとしている。従って、2000年問題のため、特に通帳記帳をしたり、必要以上の現金を引き出したりしていただく必要はないと思うので、この点どうか安心していただきたい。
 また、年末年始の広報について申しあげると、全銀協情報センターでは、1月2日の日銀ネット等の接続確認テストの結果および1月4日の朝の状況について、業界全体の概況を発表する予定である。
 なお、個々の銀行の状況については、リアルタイムベースで詳細な状況を最も正確に把握している各々の銀行が自らの責任をもって広報することが適当であると考えている。従って、情報センターとして行う広報の中では、障害の発生した銀行の個別銀行名は公表せず、営業に支障をきたすような障害が発生した場合には、当該銀行において責任もって情報開示していただくよう全会員銀行に対してお願いしたところである。
 その他の年末年始の対応について申しあげると、来年1月4日における手形交換業務については、法務大臣指定の全国177の手形交換所において12月31日に1月4日の手形交換業務を繰り上げ実施することを決定している。
 また、ご参考までに、当行では12月31日に本店・営業店に700人程度泊まり込むほか、1月1日には約1800人程度出勤する予定で、万全の体制を作って参りたいと考えている。


(問)
 傘下の銀行に対して、営業に支障をきたすような障害が発生した場合には、当該銀行が自分で広報するようにとの通達を出したのか。
(答)
 さようである。


(問)
 一部報道によると、自民党から政治献金の要請があったと言われており、一方で自民党は要請を全面否定しているが、事実関係はどうなのか。また、改めて全銀協としての政治献金に対する認識について伺いたい。
(答)
 全銀協としてはそのようなご要請を受けたということはない。政治献金の問題は個別行が判断すべき問題であり、全銀協として取り扱う問題ではないと考えている。
 政治献金全般のあり方について、あえて、個人的見解として申しあげれば、「企業献金から個人献金へ」との流れがある中で、全体としては企業献金は抑制の方向にあると認識している。しかしながら、現状は個人献金で賄う環境が整っているとは言い切れない状況にあるので、環境が整うまでの間、政治資金規正法の範囲内で、企業が相応の支援を行うことはやむを得ないという面もあり、いずれにしても非常に難しい問題であると思っている。


(問)
 第一勧業銀行個別行として政治献金の要請があったのか。また、公的資金を受けていることを踏まえて、仮に要請があったとすれば、どのような対応をするのか。
(答)
 個別行としては、従来から、政治献金の問題については、要請の有無、実施したか否かを含めてお答えはしていない。今回についても回答をご容赦願いたい。また、公的資金注入との関連性については、公的資金の注入により、資本を増強していただいていることは事実であるが、このことと政治献金との関係については慎重に検討すべき問題であると考えている。


(問)
 ペイオフ解禁の問題について、改めてお伺いすることになるが、金融審議会は実施した場合のいろいろな施策について今日発表する。一方で、政府、与党や金融再生委員会においてペイオフ解禁時期の全面延期論や信用組合等一部の業態について延期すべきとの議論や付保対象をどうするかとの議論が出ているようである。この点について、ここまで議論が煮詰まっている段階で、改めて全銀協会長としてどのようなことを主張されるのか。
(答)
 これまでも申しあげてきたが、金融審議会でも業態別にヒアリングを受けているので、私からは都・長銀・信託のいわゆる大手行の立場からの意見を申しあげる。
 2001年4月からのペイオフ解禁は、かねてから申しあげているとおり、政府が96年の預金保険法改正の際に公式に示した既定方針であり、その背景には、もともとペイオフ凍結が例外的・臨時的な措置であり、本来金融機関や預金者は自己責任原則に則って市場規律のもとで行動することが、今後のわが国の金融システムを強化するためには不可欠であるとの判断があるものと認識している。
 私どもとしては、2001年4月からのペイオフ解禁を前提として、それに向けて一層の財務内容の強化に努め、金融ビックバンを生き残る強い体質を作り上げていくことがまず肝要と考えている。
 政府が96年に示した2001年4月からのペイオフ解禁の方針は全ての金融機関に共通のものであり、一部の業態のみ延期ということはいかがなものかと思う。一部の業態に対してのみペイオフ解禁を延期すると、預金者間の公平性等の観点からも問題があるし、また、その負担をどうするのかという問題もあろうかと思っている。


(問)
 政治献金の問題についてであるが、公的資金を受けているから慎重に検討すべきとのことであるが、どういう意味か。つまり、公的資金を受けているから慎重に考えて、やはりやめるべきと考えているのか。
(答)
 慎重にと申しあげたのは、実施するもしないも、いずれにせよ慎重に検討すべき問題だという意味で申しあげたものである。


(問)
 わかりにくいのだが、慎重にというのは、公的資金を受けているから、より慎重に考えるべきということか。
(答)
 繰り返すようであるが、実施するもしないも、そもそも慎重に検討すべきだということである。公的資金注入の事実と政治献金とを直接結び付けて考えるかどうかについても、慎重に考えるべきである。


(問)
 根本的に政治献金を慎重に考えるべきということなのか、あるいは公的資金を受けているから、より慎重に考えるべきということなのか。
(答)
 公的資金を受けているという事実と、政治献金をするということの関係について、慎重に考えるべきだということである。


(問)
 ペイオフの関連であるが、付保対象はどこまでとすべきとお考えか。
(答)
 私どもとしては、当座預金や普通預金といった決済性預金について全額保護すべきかどうかということについては、そもそも「小さな預金保険制度」を基本的には目指しているということ、そうした決済性預金を保護する場合、誰がその費用を負担するのかということから問題を提起しているということである。


(問)
 ペイオフの関連であるが、先ほど、ペイオフの解禁に向けて一層の財務内容の強化に努めていくことが肝要であるということであったが、仮に全面的に延期となった場合、どういう影響があるとお考えか。
(答)
 私どもの意見としては、既定方針どおり、ペイオフ解禁は延期すべきではないという考えである。一部の延期については先ほど申しあげているとおり、預金者間の公平性等の問題やそのコストを誰が負担するのかといった問題がある。全面的な延期については、モラルハザードの問題が起きるのではなかろうかという問題がある。これらの観点から、ペイオフ解禁は、従来から既定の方針であるというふうに申しあげているところである。


(問)
 先ほどの決済性預金のお答えの中で「小さな預金保険制度」を目指すべきであるとおっしゃったが、それは、決済性預金は保護すべきではない、ということか。
(答)
 決済性預金を、元来少額預金者の保護を目的とする預金保険制度の中で全額保護することは、「小さな預金保険制度」を目指すという基本理念に反するものであり、モラルハザードの増大や預金保険機構による費用負担の増加、預金者間の不公平感の助長などの観点から問題があるとかねてより終始一貫して申しあげてきたところである。
 しかし、政策上の判断から、営業譲渡までに時間がかかる場合などについて決済性預金を全額保護することが万やむを得ないということであれば、先ほど申しあげた観点から、これはあくまでも例外的措置であるべきであり、この措置に時限性を設けたり、あるいは全額保護の対象預金を付利されない預金に限定するなどの措置が必要と思う。


(問)
 ペイオフ解禁後の安全ネットについてはどうあるべきとお考えか。
(答)
 ペイオフ解禁後の安全ネットについては、いわゆるシステミックリスクに至るような場合には、何らかの救済措置が働くという制度が必要であろう。その場合でもコストを誰が負担するのかといった問題は残るが、やはりそういった非常時に大権的なものが発動されるということも何らかの形で必要であると考える。


(問)
 個人向けの金融債が付保対象と書いてあるが、これについてはどうお考えか。
(答)
 審議会の答申についてはただいま時点でまだ拝見していないが、これまでの議論では、金融債は、個人の場合で、国民の貯蓄手段として定着しているということ、元本保証がなされていること、転々流通する有価証券ではあるが債権者あるいは金融債の保有者が特定できること、という3つの基準に合致しているものは実質的には定期預金と同じ性格を持っているとされてきた。そういうものであれば付保対象とすることは適当である、というような方向で議論されてきていたと思う。私も個人的にはそのように考える。


(問)
 今年1年を振り返って会長として何かあるかを伺いたい。
(答)
 今年1年を振り返り、一言で申しあげると、金融システムがようやく安定を取り戻しつつある、それから、金融ビッグバンについても着実な進展が見られた、といえる。
 1つ目の金融システムの安定化については、早期健全化法に基づき、9月末までに計19行で7兆7千億余の公的資金による資本増強が行われた。また一方では金融再生法に基づく破綻金融機関の処理も大きな混乱もなく進められたと思っている。こうした一連の措置がとられた結果、金融システム不安はようやく鎮静化しつつあるのかなと思っている。
 2つ目の金融ビッグバンについては、10月に業態別子会社に対する業務範囲の制限が原則廃止されたほか、普通銀行による社債の発行が解禁され、株式の売買委託手数料も完全に自由化されるなど、業務の自由化、多様化が一段と進んだ。また、商法改正が行われ、株式交換制度や株式移転制度が創設され、持株会社制度が活用し易くなったことは、大変意義があったと思う。
 こうした状況の中で、金融機関同士の合併・統合あるいは提携が活発化し、本格的な金融再編の到来を印象づける1年であったと思う。


(問)
 制度的な整備の話に関連して、今回の予算編成のプロセスの中で、連結納税制度の先送りが決まった。昨日、このことに対して日経連の奥田会長の「ちゃんちゃらおかしい」というコメントが報道されたが、会長はどう考えるか。
(答)
 連結納税、それから会社分割の両制度に係る税制面の整備ということは、我々金融機関にとっても経営の効率性の向上の面で、あるいは国際競争力の維持強化のために、極めて重要な要素であると考えている。私としても是非とも早期に導入されるよう引続きお願いして参りたいと思っている。