会長記者会見
2000年1月25日
杉田会長記者会見(第一勧業銀行頭取)
菅野副会長・専務理事報告
会長会見に先立ち、菅野副会長・専務理事から次のとおり報告した。
本日の理事会では、準会員として、ソシエテ・ジェネラル銀行の加入を承認した。 これにより、全銀協の会員数は、正会員147行、準会員38行、特別会員72協会となり、合計257会員となる。
会長会見の模様
(問)
昨年末に決まったペイオフの解禁延期の件について改めて伺いたい。まず、第一に、これによる影響をどう受け止めているか。また、解禁が延期になったことで金融界にまたモラルハザードが蔓延するのではないか、財務の健全化の動きが先送りされかねないというような批判も出ている。都市銀行として、こうした批判にどう応えていくか考えを伺いたい。
(答)
いわゆる大手行の立場としては、あくまでも政府の当初方針どおり、2001年4月にペイオフが全面的に解禁されるということを前提に、収益力の強化を中心に財務内容の強化に努めて金融ビックバンを乗り切っていく、というふうにやってきた。
そういう意味で、今回の与党三党の合意については残念ではあるが、これは与党間でいろいろな議論がなされた末の政治判断であると理解している。
私どもとしては、ペイオフ解禁が1年延期されたということに拘わらず、そういったこととは別に、引続きこれまでどおり、経営体質の強化、経営基盤の強化に邁進していくつもりである。
なお、ペイオフ解禁後の預金保険制度のあり方については、これまでも主張しているところではあるが、「小さな預金保険制度」を強く期待している。
(問)
昨今、イトーヨーカ堂やソニーなど異業種からの銀行業参入の動きが現実のものとなってきており、また、こうした流れは、今後も出てくると思うが、銀行業界としてどのように受け止めているか。また、参入に際しては、当局が参入の基準のあり方についていろいろ検討しているが、全銀協としては参入の条件はどうあるべきと考えるか。
(答)
個社の事業戦略の詳細については存じあげず、また、ご当局の審査もこれからだと思うので、あれこれ云々することは基本的には差し控えたい。影響という点についても現時点では何ともお答えいたしかねるが、報道等によれば、いろいろな意味で画期的な計画と受け止めており、その動向については大いに注目をしているところである。
参入基準についてのお尋ねであるが、これもご当局が検討されるマターであり、私としてはその条件がどうあるべきか申しあげる立場にはないが、その際、考慮することが必要と思われる論点について、あくまでも個人的ではあるが、見解を申しあげる。
例えば、わが国においては一般事業会社が銀行を支配するというような状況になった場合、その一般事業会社に当局の監督権限が及ばないといった問題点が指摘されている。これが一つの論点かと思っている。
また、一般事業会社が銀行を支配することは現状、法的には禁止はされていないが、その逆については厳しく制限されているというアンバランスな点についても議論の整理が必要かと思っている。
ただ、言えることは、各金融機関が創意工夫をこらしつつ、公正な競争をしていくことによって、より利便性そして効率性の高い金融サービスを提供していくことは金融ビッグバンの趣旨にもかなっていることであり、新世紀に向けてわが国の経済を活性化させていくためにも重要なことであると認識している。
(問)
まもなく、日銀がゼロ金利政策をとって1年になろうとしているが、その間のプラス面、マイナス面、その功罪が指摘されている。会長はこの1年間をどのように評価されているか。
(答)
いわゆるゼロ金利政策については、預金者の利子所得が減少するといった問題点を指摘する声があることは承知している。しかし、この1年は日本経済が回復の足がかりを見出せるかどうかの大変重要な局面にあり、景気の底割れを回避し、金融市場、それに金融システムの安定化と安定性の維持には寄与したことが確かであろう。全体として、日本経済にとって有効な政策であったのではなかろうかと思っている。
今年に入ってからも政策決定会合で、ゼロ金利政策を維持することが決定されているが、引続きゼロ金利政策を維持することが日本の景気回復を自律的なものにする上で必要であるとの認識の下に決定されたと理解している。
いずれにせよ、金融政策については、今後も景気や物価さらには金融・為替市場の動向等を十分に踏まえつつ、関係ご当局によって適切に対応されていくものと考えている。
(問)
先ほど異業種参入の参入条件について、一般事業会社が銀行を支配下に置くときに、現行では一般事業会社に監督権限が及ばないということが一つの論点であると言われたが、これは一般事業会社にも監督権限が及ぶようにすべきだということなのか。また、一般事業会社が銀行を支配することは現状、法的に禁止はされていないが、その逆については厳しく規制されていると言われたことは、つまり、銀行サイドが事業会社を傘下に治めることについてのルールを緩めるべきである、というように理解して良いのか。
(答)
今の時点では私はこうあるべきだという明確な基準・条件といった考えを持ち合わせていない。ただ、銀行と一般事業会社との関係がどうあるべきかということについて議論を整理することが必要であり、重要であろうと申しあげたわけである。
(問)
ゼロ金利政策の功罪のところで、銀行経営としては不良債権処理を進めながらも財務基盤を強化していくという大きな狙いがあった1年であったと思う。その部分でゼロ金利政策というのはどういう効果をもたらしたと考えるか。
(答)
ゼロ金利政策が経済全体にどういう影響を及ぼすのか、それから経済の参加者に個々にどういう影響を及ぼすかはいろいろな見方があるわけであるが、一般的に言えば、銀行業界にとって低金利政策は不良債権を処理する過程で、不良債権として残高を抱えている際のキャリングコストが低金利の分だけ低くなるわけであるので、その意味では銀行経営にとってはプラス面が多かったのかなというふうに捉えている。
(問)
ゼロ金利という低い金利で、銀行だけが救われて例えば生保などはあえいでいる、そういう状況だったので仕方ないのかもしれないが、一般論としてそういった批判が銀行界に向けられていることについてどうお考えか。
(答)
私ども銀行は、その点については当然、主たる業務として融資をしているわけだが、お借入れいただく企業にとっては、その分借入れのコストが低く抑えられる。したがって、その企業の経営にとってはプラスの効果が働いている、雇用も維持される、と循環しており、どこが一番得した損したということよりも、経済全体にとっても有効に働いているという評価をすべきだと思っている。
(問)
異業種からの銀行業への参入は、既存の銀行にとって脅威として映るのか、それとも業界の活性化のためにプラスの影響があるとお考えか。
(答)
先ほどの質問でもお答えしたつもりだが、異業種から参入してくる結果、それぞれ各金融機関が創意工夫して公正な競争していくということが、金融ビッグバンの趣旨にもかない、ひいてはわが国経済の活性化につながっていくと考えている。