2000年2月22日

杉田会長記者会見(第一勧業銀行頭取)

菅野副会長・専務理事報告

 会長会見に先立ち、菅野副会長・専務理事から次のとおり報告した。
 本日の理事会では、まず、次期の副会長のうち空席であった信託銀行からの副会長について、4月1日に設立される中央三井信託銀行の社長に就任予定の古沢社長を選任することを内定した。
 この結果、次期のすべての正副会長および担当委員会が資料のとおり内定した。
 なお、正副会長の正式な選任は4月の定例総会後の理事会において行われ、また、担当委員会の正式な決定は正副会長が正式に選任された後の正副会長会議において行われる。
 次に、準会員として、スカンジナビスカ・エンシルダ・バンケン・エービー・パブリック カンパニーの加入を承認した。これにより、全銀協の会員数は、正会員147行、準会員39行、特別会員72協会となり、合計258会員となる。


会長記者会見の模様


 本日は、皆さんからのご質問をお受けする前に若干の時間をいただき、私のほうから、2月7日に発表された東京都による銀行業等に対する外形標準課税の導入構想に対する私どもの考え方について、改めてご説明させていただく。
 本件に関する私どもの考え方については、発表当日の2月7日に出させていただいた「絶対反対」のコメントおよび2月10日に公表させていただいた反論の意見書により、すでに皆さんにはご理解をいただいているかと思うが、本日は、新たに作成したお手元の資料に沿って、ご説明申しあげる。
 まず、本件は、検討のプロセスも公開されず、我々納税者への説明も不十分なまま極めて唐突に発表されたうえ、明日23日に開会される都議会定例会前に主要会派の賛成をとりつけたとされるもので、大変遺憾に思う。大きな制度上の変更については、きちんとしたプロセスを経て納税者と徴税者の信頼関係に基づいて、行われるべきである。
 新税が導入されると、都の発表によれば、対象行30行の合計で、年間1,100億円、5年間では5,500億円の事業税負担が発生する。加えて、会計上の理由で、対象銀行のうち全銀協加盟銀行24行の合計で、当期利益が4,300億円減少するなど、銀行への影響は誠に甚大である。さらに、こうした事業税負担の増加、利益の減少により、公的資金注入行にあっては、その分、公的資金の返済原資が減少し、経営健全化計画の履行にも支障をきたす。
 資料の4頁をご覧いただきたい。年間で1,100億円、5年間で5,500億円の事業税負担が発生する。全銀協会員銀行24行合計で、新税がもし導入されたら、現行制度では14億円であった事業税が、約900億円となり、約60倍に跳ね上がることになる。
 5頁をご覧いただきたい。平成9年3月期から平成11年3月期の法人事業税の納付実績はグラフの実線のとおりである。その後、現行制度ベースであるとその予測値は破線のとおりであり、平成17年3月には706億円となる。新税が導入されると、平成13年3月期以降は24行合計で900億円となり、5年たっても、900億円がいかに大きいかということがご理解いただけると思う。
 6頁をご覧いただきたい。新税が導入された場合であるが、税効果会計の影響により、当期利益は4,300億円減少するが、これは平成12年3月期計画の当期利益9,500億円の概ね半分に相当する。
 7頁をご覧いただきたい。そもそも、銀行業は、今回の外形標準課税の対象にはなじまないと考える。課税標準の特例を適用するためには、対象となる納税者の「事業の情況」、すなわち、事業特性、収益構造が、外形標準課税に相応しいかどうかを検討する必要があるが、銀行の「構造的ではない一時的な赤字決算、事業税納付額の減少」は、一般企業と何ら変わりなく、外形標準課税適用に必要な事業特性、収益構造には該当しないと考えている。それにも拘らず、銀行だけに新たな税をかけるのは不公平ではなかろうか。
 8頁をご覧いただきたい。唐突かつ恣意的な税制変更は、東京都政に対する信頼性を低下させ、東京マーケットの活性化を阻害する。東京のみならず、日本そのものについて行政リスクが高い国と判断される懸念もある。こうした疑念については、すでに海外有力紙で報道されているところでもある。
 1頁へ戻っていただきたい。6.にあるとおり、資金量5兆円という線引きによって課税標準が変わるとなると、本件が、合併、統合などの金融再編にとって、抑止力として働くことも懸念される。
 また、「銀行は都に1円も税金を払っていない」、「銀行はリストラを行っていない」などと批判されているが、これは誤解である。9頁をご覧いただきたい。新税の対象銀行は平成10年度に固定資産税、事業所税、法人住民税など約500億円の税金を東京都に納めている。次に、リストラであるが、10頁をご覧いただきたい。全国銀行の過去5年間のリストラ実績であるが、平成6年3月末から平成11年3月末までの実績では役員数は12%削減、従業員数は15%削減している。また、資本注入15行の経営健全化計画におけるリストラ計画では、平成10年3月末から平成15年3月末までの計画で、役員数は562人を 329人に減らし、率として41%削減、従業員数は約22,000人、15%の削減計画を実施中である。
 11頁をご覧いただきたい。資本注入行における役員・従業員処遇の見直し実施状況の一覧表である。ちなみに、当行の実績で言えば、過去10年間のピークである平成5年度の従業員数は19,189人であったが、平成11年度見込では15,590人となる予定である。この間での減少は3,599人、率にすると18.8%の削減である。また、人件費は平成5年度1,812億円であったが、平成11年度見込では1,530億円の予定であり、282億円の減少、 15.6%削減となる見込である
 12頁では、資本注入15行の平成10年度から14年度の5年間で役職員数が22,000人、年平均であると4,000人の削減となることを示している。
 13頁をご覧いただきたい。外形標準課税については、従来から政府税制調査会を中心に、議論がなされてきているが、いまなお、多くの論点が残されており、今後、十分な合意形成が必要なテーマである。今回、そういったプロセスを省略して、銀行業のみに外形標準課税制度導入が提案されたことは、その手法に強い疑問を感じざるを得ない。
 今回、作成した説明資料の説明は以上であるが、昨日、東京都との意見交換会を開催した。これまで、一切何の説明もなく、2月7日に唐突に発表され、昨日初めて意見交換を行ったわけであるが、ここで、その模様について一言申しあげる。昨日は、主税局総務部長、税制部長などから今回の構想に関する説明をいただいた後、関係銀行の専務・常務級役員との間で意見交換をさせていただいたが、都の説明および私どもからの反論に対する回答は、納得できるものではなかった。
 私どもとしては、引き続き「絶対反対」の立場で、都議会、国会議員、関係当局、国民の皆さんなど、各方面への働きかけを行なっていく方針である。なお、本日、「銀行業等に対する東京都の外形標準課税について-閣議口頭了解―」、いわゆる政府見解が発表されたが、その内容は東京都の案に様々な問題点があるとの私どもの主張と軌を一にするものであり、大変、心強く思っている。今後とも、私どもの考え方を何卒ご理解いただき、冷静で、公平で、かつ十分な議論をしていただくよう、お願い申しあげたい。


(問)
 いま、会長が最後に触れられた、「政府見解」であるが、銀行業界あるいは金融システム安定性の面などから一定の理解を示しており、東京都に慎重な議論を求めているが、これによって今後の局面に何らかの変化が出てくるなど、期待することはあるか。
(答)
 私どもとしては、先ほど政府見解を入手し、拝見したわけであるが、ただ今申しあげたとおり、様々な問題についての認識は、「疑問がある」とのことであり、私どもがこれまで主張してきた考えと軌を一にしているということで、大変心強く思っている。私どもとしては局面の打開も然る事ながら、今後とも関係各方面(都議会、国会等)にただ今申しあげたような我々の考え方を理解し納得していただけるよう、愚直なまでに働きかけていきたい。


(問)
 これまで全銀協として、今回の東京都の外形標準課税に対して様々な理屈を立てて反論してきたと思うが、その声は、都議会や最近の世論調査を見ても都民に殆ど聞き入れてもらえない状況にある。こういう状況になったというのはやはり、ある程度銀行業界に問題があったからだと考えざるを得ないと思うが、そのあたりはどのように思うか。
(答)
 今回の件を通じ、銀行に対する国民の目がいかに厳しいものであるかを改めて認識した。そこには、バブルの生成の過程、崩壊そして現時点という大きな問題が背景にあろう。銀行だけがバブルを演じたわけではないと思うが、その一端を担ったということは事実であり、また、当時は資産の価値が右肩上がりの中で物的担保だけに注目して融資を行うなど、融資規範が緩んでいた部分があったことは認めざるを得ないと私は思っている。その反省に基づいて、融資のあり方、規範の見直しを行い、取り組んでいるところである。
 また、資本注入を受けた銀行については、「経営健全化計画」で各々リストラの計画および進捗状況について公表している。その内容については金融再生委員会の承認と厳しいフォローアップを受けている一方で、それを公表していることで、国民の皆様からモニタリング/チェックを受けているということであり、私どもとしては緊張感をもって取り組んでいるところである。
 このように懸命に取り組んでいるにも拘らず、様々なご批判を受けている点については、大変残念ではあるが、今後とも私どもとしては経営健全化計画を着実に履行しながら、社会的公器たる銀行への理解を求めていくとともに、きちんと金融仲介機能を果たしていくことによって、信認の回復に努めて参りたいと思っている。


(問)
 明日から都議会が始まり、来月の末あたりには条例が成立するとの見方も強い中、一部報道では、成立した場合、行政訴訟の手段も検討すると伝えられているが、どの法律のどの部分を根拠として検討しているのか、具体的にお聞かせ願いたい。
(答)
 今回の都の構想に対して全銀協としてはさらに粛々と反対活動を進めていこうと考えており、現にその方針で進めているわけであるが、主要な論点の一つとして公平性等の税の基本原則に反しないかという問題があろうかと思う。
 私どもとしては、単に地方税法の問題にとどまらず幅広く検証を加えていきたいと考えている。訴訟云々について現時点で具体的に考えているわけではないが、検証の結果次第では、私どもが取りうる最後の選択肢であるという認識はもっている。
 法的な論点ということであるが、まず、地方税法第72条の22の9項があげられると思う。所得を課税標準とする場合における負担と「著しく均衡を失することのないようにしなければならない」という規定であるが、この部分は論点の一つではなかろうかと考えている。
 次に、地方税法第72条の19があげられるかと思う。所得以外の課税標準を用いるにあたっては、納税者の「事業の情況」、すなわち、事業特性や収益構造が外形標準課税に相応しいかどうか、検討する必要がある。
 さらには、憲法第14条第1項の法の下の平等に由来する租税公平主義ということも論点になるのではなかろうかと思っている。
 こうした、法的な論点については、幅広く検証を加えていきたいと考えている。
 いずれにしても、私どもとしては、先ほど来、申しあげてきたとおり、今は何よりも各方面に私どもの考え方をご理解いただき、冷静で、公平で、かつ十分なご議論をお願い申しあげたい。


(問)
 新税が導入された場合、経営健全化計画達成に支障が出かねないとおっしゃったが、個別行の立場として、新税が導入された場合、当局に経営健全化計画の見直しを求めざるを得ないとお考えなのか。それとも、更なるリストラ等でこの辺は吸収できるのか、あるいは消費者等に転嫁せざるを得ないのか。どういうスタンスなのか。
(答)
 他の銀行の状況についてつぶさに存じあげているわけではないので、個別行としてお答えさせていただく。
 計画に基づいて公的資金を返済するには、計画どおりの利益をあげていく必要があるが、こうした多大な負担増を伴う税制変更が突然行われることになると、計画の前提を見直す必要性が生じてくることになり、影響は甚大なわけである。
 当行についても、算出根拠は基本的に全銀協試算と同様であるが、当期利益が大幅に、試算によると約400億円減少することをはじめとして、時限措置とされる5年間における納税額負担が急増するなど、個別行としても大変影響が大きいことは確かである。急増する実額とか、実際に具体的な影響がどうなるかについては、何しろ本件は2月7日に公表されたばかりであり、これから検証することになろうかと思う。
 私ども特有な事情として、昨年8月に富士銀行、日本興業銀行との統合を発表させていただいたが、ちょうどこの3月は経営健全化計画を見直す時期になっており、その要因をどういうふうに読み込んでいくのか、大変苦慮しているところである。いずれにしても、その影響は小さくないということだけは申しあげられる。
 また、転嫁云々の話については、こうした新税による負担増について、経営の中でどうに吸収していくかについては、まだ検討しているわけではないが、一般論としては、新たな税負担に対しいわば対抗手段的に手数料や金利の引上げ等によって転嫁するという考え方は、利用者の方々の理解が得られるわけもなく、難しいと思う。


(問)
 石原都知事は、今の銀行から税を取って良いのではないかという理由の一つとして、配当による社外流出は続けているではないかということを言っているが、この点については、健全化計画の中でそういった考え方を示されているかとは思うが、改めて伺いたい。
(答)
 経営健全化計画を提出し、それが認められる過程では、いろいろ当局との間で、ヒアリングという形で、意見を双方申し出る機会があったわけだが、そこでもやはり安定的な配当をしていくことは、企業の価値を維持し、株式会社として企業経営をやっていくうえでは、ある程度の配当をしていくことが求められる、そして、それは容認できるとされているところであり、実際配当しない株式を投資家にずっと永く持ち続けていただくのも大変難しい問題である。安定的に一定の配当をしつつ、公的資金を返済できるように剰余金を積み増しして、定められたスケジュールどおりに返済していくという考え方に基づき、経営健全化計画が作成されているところである。その点についてもご理解いただきたい。


(問)
 今日の政府見解では理解を示して軌を一にしているとおっしゃたが、その一方で、青木官房長官が今日の記者会見で銀行の努力がなお足りないという趣旨の発言をしたと聞いているが、この点についてはどうお考えか。
(答)
 官房長官がどういうコンテクストでどのような具体的な言葉でお話しされたかいまここで存じあげていないので、直接的なコメントをすることはできないが、もしリストラ計画の甘さということのお話であれば、先ほども申し述べたとおり、私ども個別の銀行のリストラの実績なり、あるいは資本注入15行の健全化計画におけるリストラ計画というのは、それなりに私どもとして懸命に努めているということである。


(問)
 二点ある。
 まず、今回の構想そのものは、石原さんが突然発表して、昨日初めて東京都のほうから、事務方の人がきて説明したわけだが、なぜ、銀行業界として、石原知事本人と直接にやりあわないのか非常に疑問である。
 また、世論調査などで、増税を支持するほうが多いわけだが、それぐらい都民とか国民から銀行に対する評判がよくないということのほうが、課税額よりも、サービス業をやっていく中で深刻な問題であると思う。 その二点について伺いたい。


(答)
 都知事に直接会って、なぜ話をしないのか、というご趣旨の第一点目であるが、事実としては、2月7日以来2月21日まで2週間我々が求めていて、やっとご説明にきていただいた。なおかつ、東京都の主税局長がおみえになったわけではない。私としては、もし機会があれば、都知事にお目にかかって直接、我々銀行業の一部の銀行にこうした外形標準課税という形で税が課された場合の税の公平性の問題だとか、あるいはそれが金融システムに与える影響とか、マクロ経済に与える影響とか、それなりに自分の言葉でご説明したいと思う。機会があれば、是非そのようにご説明をしたいと思っている。
 それから、確かに銀行に大変人気がなくて、いわゆる世論では圧倒的に今度の構想が支持されているというお話については、先ほども少しお答えさせていただいたつもりであるが、バブルの生成・形成の過程、それからそれが壊滅していく過程で、不良債権という形で銀行・金融業という業態に、最後にバブルのいわゆる澱みたいなものが残った。この処理に懸命に取り組んでいるわけではあるが、その過程で、資本充実のために公的資金が入った。これは銀行が貰っているような印象でお話される方もあり、それは誤解であるわけだが、そういったこともあり、この構想が出された時点で銀行に対するそういうイメージがまた皆さんの脳裏をよぎる、そういう形で支持率になって出ているのかと、私なりにそのように反省を持っているわけである。ただ、いずれにせよ、一夜にして魔法使いがごとくイメージを変えるということは難しい。懸命に額に汗して努力して銀行が健全性を取り戻すことによって、また、なおかつ、銀行が本来の社会的公器として、それぞれの機能を果たしていくということによって、そのイメージの回復・信頼の回復をはかっていく、特効薬というものがあるわけではないので、そうした地道な努力を引き続き続けていかなければいけないと私は思っている。


(問)
 とは言え、導入不可避となれば、目前の3月決算に向けて、第一勧銀は何らかの利益確保策をもう始めているのか。ないしは、これからであればどういうことをお考えになっているか教えていただきたい。
(答)
 これは、決算上の処理をどうするのかと、具体的にどうやってそれに対応するのかということについてのお尋ねか。


(問)
 そういった点でも結構だし、資産を売るとかをお考えになっているのかどうかについてである。
(答)
 条例が成立すると、4月1日からの導入ということになるので、翌年度に修正をするという考えもあるだろうし、4月1日に導入されるということになれば、やはり事実上、資産のうえでマイナスに働くと、投資家や市場関係者は見るわけであるから、直ちに、後発事象として処理するかどうか、その対策も含めていろいろ考えられるが、いまこの時点でこういう方法で考えていると申しあげるものはない。


(問)
 そうすると、3月決算はもうすぐなわけだが、これについては、特に資産売却とか保有株の売却だとかは、今のところ考えていないし、やっていないということか。
(答)
 それも含めて今は、お答えをご容赦いただきたい。
 発表すべき時期や、適時、開示等で必要が生ずれば、当然ながら発表させていただくことになる。


(問)
 昨日の都との会談で、5年の時限措置が切れたら、所得課税に戻すとは考えていないという説明が初めてあったと昨日の記者レクチャーで言われているわけであるが、その点についてはどう考えるか。
(答)
 確かに、公表された時には時限措置5年ということだったので、昨日の専務・常務級の意見交換会では、「5年が経過したらどうするのか。所得標準に戻すのか。」と質問したところ、「戻すことは考えていない」とのご説明であったようだ。一方、国レベルで外形標準課税の議論が進めば、その後で対応も変わってくるとの説明もあったようだ。先行きについては極めて不透明であって、5年の時限措置を設けておいて、それでは5年したら国レベルの議論が進めば…ということで、一言で言えば、「極めて不透明」であり、納得は得られないというふうに思う。


(問)
 配布資料の10頁から12頁を見ると、一般の人との皮膚感覚の違いを感じる。これをまともに発表したら、今以上に銀行に対する世論の反発を呼び、課税を進めるべきという議論になるのではないか。例えば、保養所やクラブ、相談役制度の廃止等については、前々から一般企業は全部やっていることであり、これを発表しても都民、国民の理解は得られないと思う。銀行業界の主張をどうやって都民、国民世論に訴えていくつもりか。
(答)
 これではリストラは不十分で、都民の納得は得られないのではないかというご指摘を併せたご質問であったと思うが、まず、どの産業のどの企業のリストラ計画と比べたら納得がいくのかということについて客観的な基準があるとは思えない。私ども業界、私ども個別の銀行としても、ある程度の事業規模を維持するためには、最低限必要な人間の数があり、店舗リストラも含め、これだけの人数を減らしてきた。あるいは、15行の資本注入された銀行については、今後こうやっていくという計画である。
 目に見えてこれだけリストラをやっているという切り口でいうと、福利厚生施設等については、本当に売却を済々と進めており、ご理解をいただけるのではないかと私は思っている。


(問)
 例えば、銀行が一般企業に対してリストラを含めた建て直しを進めさせる場合、やはり無配にするということをかなりやっているのに対して、銀行は引き続き配当を行っている。このあたりについては、どう考えているか。
(答)
 配当については、先程も申しあげたとおり、金融業であり、配当を長期に安定的に行っていかなければならない。また、配当をしないで株主に投資いただいているということは、銀行に限らず、株式会社としてどうかと思うし、それが違法性のある配当であるのなら問題だが、健全化計画においてきちんと配当可能利益の中から配当するということであるので、それはご理解いただけるのではないかと思っている。


(問)
 現実問題としては難しく、突拍子もないことなのかもしれないが、資料8にニューヨークタイムス紙の引用があるのでお聞きするが、5年間で終わらず、将来にわたってこれを続けるのなら、本店を東京から移すなどの考えはあるのか。
(答)
 2月7日に発表されて、今日は22日である。先ほどの金利の引上げ、手数料の引上げという対抗措置については理解もされないし、そういうことは考えていないと言ったが、この短時間に、「では本店を移す」という対抗措置や税回避行動を取るかどうかというところまでは、正直考えていない。米国のように、州ごとに税制なり、税率が違うことにより、現実に低税率のところを求めて色々と企業が移動するという例はよくあるが、やはり、日本の場合、何といっても東京都というのは巨大な商業集積地域であり、人口も多く、マーケットとしても巨大なわけで、そこに事業所を置かず、営業するということが現実的にできるのか、という根本的な疑問もある。2月7日の後の22日であり、そういったことについてはまだ考えたこともない。


(問)
 東京都の構想とは違って、薄く広い外形標準課税という考え方自体は、税制を考えるうえではあまり景気に左右されないあり方として、そういう考え方の一つとして認知されつつあると思う。今回の反対の論点は銀行業だけにというところなのだが、薄く広くという条件での外形標準課税についてはどういう考えか。
(答)
 外形標準課税導入には、薄く広くという今のお話にもさまざまな論点があり、十分な合意形成が必要であるというのが私どもの根本的なスタンスである。資料の13頁をご覧いただきたいが、外形標準課税導入に係る論点として、これは税制調査会の地方法人課税小委員会の報告であるが、景気の状況、雇用への影響、税負担の変動、中小法人・創業期法人の取扱い、既存地方税の調整など、いろいろな論点があり、これらの論点について、税というのは十分な合意形成が必要ではなかろうかというのが私どもの考え方である。だから、今回は銀行業に対する課税なので、私どももこれまで縷々申しあげているような考え方で絶対反対だと申しあげているが、それなら仲間が増えればそれで良いのかというように、短絡的に考えているわけではない。


(問)
 絶対反対というお考えはよく分かったが、今回の条例案は都議会で可決される公算が強い中、具体的に成立を阻止する手段を考えているか。
(答)
 2月7日に構想が発表され、具体的な条例案が示されたのは16日、都議会が明日から始まる。その前に都議会の多数というか、主要会派は賛成の意を表されているという、この出され方といい、短さといい、私どもとしては大変な異常さを感じる。ご質問のこれからどういう風に阻止に向けて行動していくのかということであるが、はっきり申しあげて、これが決め手というものがあるわけではない。ただ、私どもとしては議会でいろいろと審議される過程で公聴会が設置されて意見を述べる機会がいただければ、そこでも意見を述べるし、あるいは委員会で参考人という形で招致されるような機会が得られれば、それはそれで粛々とご説明申しあげ、ご理解いただくことを繰り返していくということである。


(問)
 広く薄く課税する外形標準課税が全国で導入された場合、銀行業界として賛成できない不都合はどこにあるのか。
(答)
 外形標準課税が導入されるということについては、先ほど申しあげたようにいろいろな問題点がある中で、十分な合意が形成されたうえで導入されるべきだと考えている。


(問)
 そういう問題がクリアされれば業界として導入には反対ではないということか。
(答)
 十分な合意が形成されるということが、導入される際の前提であると申しあげている。


(問)
 野田企画委員長が、今後、外形標準課税の一律実施を求めていくという発言を昨日されているが、これについてどうお考えか。
(答)
 そういう発言をしたとは聞いていない。


(問)
 新税はそもそも都の財政難に端を発して出てきた構想なわけであるが、逆に会長のほうから知事に対して、都の財政を立て直すにはどうあるべきかなど、ご意見があったら伺いたい。
(答)
 大変難しい、厳しい質問であるが、私が都政の当事者であったらどうすべきかというようなことは考えたこともないので、いまご質問されて思いつきを申しあげるのも無責任であるし、回答についてはご容赦いただきたい。


(問)
 日銀総裁が先日、都の財政失政について反省を求めるというコメントを会見で述べられた。今回100億円の減税と1,100億円の課税をし、1,000億円で財政の不均衡を直そうということだと思うが、都の放漫財政という面もある。この点について会長はどういうご意見をお持ちか。
(答)
 私どもがバブルの過程でどうであったかについては、先ほども少し触れたが、都の状況がどうであったかについては不勉強であり、都のこれまでの問題点、都の財政のあり方等について、いまここで申し述べるだけの意見もなく、容赦願いたい。