2000年3月21日

杉田会長記者会見(第一勧業銀行頭取)

菅野副会長・専務理事報告

 会長会見に先立ち、菅野副会長・専務理事から次のとおり報告した。
 本日の理事会では、福岡銀行の佃頭取が4月1日をもって副会長を辞任されることとなったので、今期中の後任の副会長として、広島銀行の宇田頭取を4月1日付で選任することとした。
 また、平成12年度についても、広島銀行の宇田頭取を副会長に選任することを内定した。なお、正式な選任は4月の定例総会後の理事会において行われる。
 次に、準会員として、オーストラリア・アンド・ニュージーランド・バンキング・グループ・リミテッドおよびブラジル銀行の4月1日からの加入を承認した。
 なお、4月1日現在の全銀協の会員数は、正会員が、三井信託銀行と中央信託銀行の合併および大阪銀行と近畿銀行の合併によって2行減少するため145行に、また準会員が40行になり、72協会の特別会員とあわせて、合計257会員となる。


会長記者会見の模様


(問)
 東京都の大手銀行に対する外形標準課税案が30日の都議会で可決される見通しであるが、行政訴訟について、今、全銀協ではどの様な検討がなされているのか、例えば、時期、方法等も含めてお聞かせ願いたい。
(答)
 東京都の銀行業等に対する外形標準課税に関し、全銀協では、2月7日に公表されて以降、様々な形で反対活動を展開してきた。
 こうした中にあって、3月13日には、私自身が都議会予算特別委員会に参考人として呼ばれて、利害関係者の立場から、意見を申しあげた。私からは、まず、都側から十分に理解・納得のできる説明がないということ、それから、導入プロセスに問題があって、本当の意味での民主主義のプロセスを踏んでいるのかという疑問があること、さらに、法的にも疑問点が多いこと、などを指摘したうえで、都議会には本問題を純粋税制の問題として捉え、公平かつ十分な審議を行って頂くようお願いした次第である。 現時点では、参考人として申し述べた、これらの内容について都議会にきちんと受け止めて頂くことを、まずは切に願っているところである。
 都の条例案が可決された場合の訴訟ということであるが、法的な検証の結果次第では、最後の選択肢として認識しているということは、かねてより申しあげているとおりである。
 現在もその考え方に変わりはなく、法律面を中心に様々な観点から検討している段階である。
 従って、訴訟の時期や、方法等について、今、この場で具体的にお話できる段階ではない。
 ちなみに、みなさん既にご存知かと思うが、法的な検証を行うにあたっての論点は、まず地方税法第72条の22の9項、すなわち「著しく均衡を失してはならない」という規定があげられる。
 次に地方税法第72条の19があげられる。これは所得以外の課税標準を用いるにあたっては、その対象者に特有の「事業の情況」がどういうものなのかについて明確で合理的な説明が必要、ということである。
 さらには、憲法第14条第1項の法の下の平等に由来する租税公平主義ということも論点になろうかと思う。
 こうした、法的な論点について、幅広く検証を加えていきたいと考えている。


(問)
 先般、三和銀行、東海銀行、あさひ銀行が統合を発表したが、これについて全銀協会長としてどのように受け止めているか。また、これで大手都市銀行は4グループに再編・集約されることとなり、差別化や選択と集中が言われる中、結果的にどのグループもユニバーサルバンクを目指す方向で一致したと思うが、今後の金融界の方向性やあるべき姿、戦略等について、当事者のお一人としてどのようにお考えか。
(答)
 まず、感想ということであるが、やはり、新世紀を見据えたうえでの、思い切ったご判断があったのだと思う。新しく誕生することになるこの金融グループを含めて、金融機関が切磋琢磨しながら、より利便性・効率性の高い金融商品・サービスを提供していくことは、金融の活性化、ひいては日本経済の活性化につながるものだと思っている。また、こうした動きは、わが国の金融システムの一層の安定化・強化にも資するものと思っている。
 「今後の金融界の方向性」ということについてのお尋ねであるが、私見を申しあげれば、大変使い古された言葉ではあるが、やはり、「お客さま第一主義」というのが、キーワードではないかと思っている。ただ、同じ「お客さま第一主義」とは言ってもその具体的な達成の方法は、今後大きく変わってくるのではないかと思っている。
 つまり、金融界を巡る経営環境は大きく変化しており、自由化の進展に伴い、銀行業の枠組みそのものも、従来の資金仲介業から金融サービス業あるいは金融情報サービス業と言ってもいいかもしれないが、そういうふうに変わろうとしていると思う。そして、金融ビッグバンにおける規制緩和の進展、急速なIT技術の発展などにより、銀行が採り得るビジネスモデルの選択肢は、急速に拡大しつつあるのではないかと思っている。
 その中で、各銀行は、様々なお客さまのニーズにどのように応え、どのようにビジネスを展開していくのか、という課題にそれぞれの回答を出し、ビジネスモデルを競い合っていくことになるのだと思っている。
 その結果として、あるところではインターネット・バンキングを重視し、またあるところではコンサルティング型営業を得意とするといったように、今後、それぞれの銀行の特色や、持ち味が見えてくるのではないかと思っている。


(問)
 3月2日から、特別公的管理下にあった長銀が新生長銀としてスタートしたが、頭取を社長と言ったり、海外の取締役を交えてデジタル回線などで取締役会を開くなど、従来の日本の銀行の経営形態とは意識して一線を画した形で、新しい経営を目指しているようだが、このようなスタンスについてどの様な感想をお持ちか。
(答)
 この3月2日に新たな形で長銀がスタートを切ったわけであるが、公表されている資料でその特徴というのを拝見すると、まず1つには取締役会と経営執行陣との責任と役割の明確化を図るとされている。2つ目に世界レベルでの経営手法を導入する、3つ目に外部取締役を委員とする委員会を設置して、経営の透明性の向上を図る、などとされており、コーポレート・ガバナンスという点では大変特徴のある経営になろうかと認識している。
 なお、経営陣には外国の方も入っておられるわけであり、一味違った経営を展開されるのではないかと思っている。また、米国流の金融技術と金融商品とを競いながら学べるということであれば、私ども邦銀にとっても大変刺激となってよいことではないかと思っている。


(問)
 外形標準課税への対応というのは全銀協としての形をとってやっていくことなのか、個別行として各行が検討していくことなのか。
(答)
 これまで全銀協として検討しているし、全銀協として都議会に対して我々の意見・考え方をご理解頂くための活動を行っている。一方、個別行としても、それぞれ各行の考え方を踏まえて反対活動を行っている。いわば、全銀協と個別行が一体となって活動を行っていると理解して頂きたい。


(問)
 先日の都議会での外形標準課税に関する参考人としての発言の中で、「銀行界への風当たりという点で、永年培ってきた信頼を失った。これについて回復に努めたい。」という趣旨の発言があったかと思うが、具体的にはどんなことを念頭に置いているのか。
(答)
 先般13日に参考人として招かれ、都議会で意見陳述を行う機会を与えられた中で、今、お話のあったように、改めて銀行に対するご批判が強いということを認識したと申しあげたつもりだが、正直申しあげて、この10年で失ったものはあまりにも大きいと言わざるを得ないかと思う。色々な形で申しあげているが、一朝一夕に信頼を回復できる特効薬はなく、我々としてはやはり早期に健全性を取り戻し、社会的公器たる存在として、その使命を果たすということで、信頼を回復していくということしかないのではないかというふうに思い、着実な努力が必要であると認識している。