2000年4月18日

杉田会長記者会見(第一勧業銀行頭取)

菅野副会長・専務理事報告

 会長会見に先立ち、菅野副会長・専務理事から次のとおり報告した。
 本日の理事会では、まず、全銀協の本会計と特別会計の平成11年度決算および12年度予算案について審議を行った。
 次に、お手許の資料のとおり、「銀行取引約定書ひな型」を廃止することを決定した。
 銀行取引約定書ひな型は昭和37年に制定し、これまで融資取引に関する基本約定書の参考例として、銀行取引契約の合理化・明確化等の点において大きな役割を果たしてきたが、金融自由化の進展や自己責任原則に基づく創意工夫の要請等、近年の銀行界を取り巻く環境の変化、および「ひな型」に対する公正取引委員会からの指摘等を踏まえ、その取り扱いについて検討した結果、今般、ひな型を廃止することとしたものである。
 なお、別添の「銀行取引約定書に関する留意事項」は、この「ひな型」の廃止にあたり、今後各銀行において留意すべき事項を参考までに取りまとめたものである。 私からの報告は以上である。


会長記者会見の模様


(問)
 昨今、大手行の中小企業向け貸付が、1月以降特に急増したということが巷間言われており、まず、この要因についてどのように考えているか。つまり、今日も国会に会長は呼ばれたわけであるが、期末の健全化計画との兼ね合いで目標達成のためのつじつま合わせのために、銀行の子会社向け融資であるとか、SPC向け融資であるとか、そのような操作ともとられかねないようなことをやったのではないかという声が、特に国会の方から強く出ている。この点についても併せて伺いたい。
(答)
 去る4月4日に、大蔵委員会で業態代表として、参考人として意見を述べる機会をいただいた。誠に異例ではあったが、各行から自発的に期末の中小企業向け貸出についての達成見込み、実績見込み値をいただき、これをまとめて提出させていただいた。その中で下半期が大変な増加をするということで、ただ今の質問にもあったようにいろいろと論議を呼んだわけである。
 4月4日の段階ではあくまでも実績見込み値ということで、各行の状況について仔細に承知しているわけではないが、そういう前提で申しあげると、それぞれ各行ともいろいろな知恵をしぼったり、あるいは施策の面で工夫をこらして取り組んでこられたということだと思う。また、上半期に実施した様々な施策が下期になって実を結び、その効果が現われ始めたこと、全銀協あるいは金融再生委員会でも貸出については特段の配慮をするようにという話が何度か年末から年始にかけてあったこと、各行ともそれぞれ計画達成に向けて懸命に取り組んできたということで、成果が出てきたのではないかと思っている。
 当行で申しあげると年間増加見込み額のうち、上期が4割、下期が6割となっている。
 私ども民間金融機関には、円滑な資金供給を行うという社会的使命が課されており、企業の資金需要に円滑に応えていかねばならないと考えている。特に、資本注入をいただいている銀行としては、早期健全化法の趣旨に則り、とりわけ中小企業向け融資の拡大に向けて、引き続き最大限の努力をしていかなければならないと思っている。
 お尋ねの期末だけの一時的な貸出依頼により残高を積み上げたのではないかという点であるが、当行について申しあげれば、お客様に対して取引をセールスしていくことは、銀行の営業上当然あるが、お取引先の意向を無視して無理に融資を行うようなことはないと認識している。
 お尋ねのもう1点の、大企業向け貸出を子会社の中小企業にシフトしているのではないかという点については、大企業グループの中では、子会社が直接資金調達を行うことはごく一般的であり、そのような先に対して銀行が融資を行うことは当然あり、一般的である。「無理にシフトしているのではないか」という点については、先ほど申しあげたとおり、当行ではお取引先の意向を無視して無理に中小企業向け融資にシフトするようなことは行っていないと認識している。


(問)
 先週末、ニューヨーク市場を中心に米国の株式相場が大変な下げを記録し、今週に入って、東京の日経平均が昨日相当下げて、今日、前場の最初の方では盛り返す動きもあったが、後場に入って特に下げ足を深めていて、不透明さが増しているような感じがある。ここまでの動きを踏まえたうえで、現在の日本の株式市場の動向についてどう見ているか。また、株式市場の不透明さが景気に与える影響のようなものについてどう考えるか。
(答)
 日経平均株価は、今月に入り2万円台で推移し12日には年初来高値も更新したわけである。ところが、先週末に米国株価が急落したことを受けて、週明けには一時1,800円を超す大幅な下落となった。今日もまた、お話のように下げている。アジア主要国でも週明けの株式は大幅に下落している。
 今回の株価下落はまさに米国の株価急落に端を発しており、先行きについても当面は米国の株式市場の動向如何によるところが大きいのではないかと思っている。しかしながら、日本企業の収益状況や景況感、設備投資などは基本的に改善傾向が続いていることから、わが国の株価がさらなる調整を必要としているとは考えにくいのではないかと思う。今日の東京株式市場では、確かに下げたが、パニック的な売り圧力というところまではいっていない。日本はもとより主要国市場で株価が早期に安定を取り戻すことを強く望んでいるところである。
 株価の大幅な下落が続けば、企業や家計のマインド悪化に繋がるほか、保有している株式の評価額が下落して企業のバランスシート面にも悪影響を及ぼす懸念がある。今回の株価調整が一時的なものにとどまり、回復途上にある日本の景気に深刻な影響が及ぶようなことのないよう願いつつ、状況を注視して参りたいと考えている。


(問)
 異業種の銀行業参入について、自民党の金問調では法改正が先、その一方で金融監督庁は現行法制下でも十分やれると言っているが、会長はどう考えているか。
(答)
 法の改正を要するか否かという点については、私自身、まだ、考え方に整理がついているわけではないが、個人的な見解として、異業種による銀行業参入の一般論として意見を申しあげれば、まず、わが国においては一般事業会社が銀行を支配するという状況になった場合に、その一般事業会社に当局の監督権限が及ばないのではないか、といった問題点が指摘されており、この点を踏まえた対応が必要かと思う。二つ目に、一般事業会社が銀行を支配することは、現状法的に禁止されてはいないが、その逆については厳しく制限されている、というアンバランスな点についても、この機会にあらためて、議論されてもいいのではないかと思っている。三つ目に、銀行である以上は、その業務活動にあたって、銀行に本来的に求められている公共性が十分に発揮されるだけの基盤、例えば、基礎的な収益力がその銀行において確保されているかどうか、その蓋然性はどうなのか、というような点について、個別に判断されなければならないものと理解している。
 なお、各金融機関が創意工夫をこらして、公正な競争をしていくことによって、より利便性・効率性の高い金融サービスを提供していくことは金融ビッグバンの趣旨にかなっているものであり、新世紀に向けてわが国経済を活性化させるためにも重要なことであると認識している。


(問)
 会社分割法の整備が遅れるのではないかという懸念が出ているが、これについてはどうお考えか。
(答)
 会社分割制度創設に係る商法改正案が提出されているはずであるが、衆議院が解散し、審議未了となった場合どうなるのかというお尋ねかと思うが、私ども金融界はもとより、産業界においても、会社分割制度の創設を前提として、企業の経営・組織形態の再編・再構築を計画している企業が多数あると認識している。
 産業界や金融界が経営環境の変化に対応して、経営・組織形態の再編・再構築を行い、経営の効率化・競争力の強化を図っていくことが、わが国経済を活性化させるためには不可欠である。会社分割制度の創設が遅れることは、こうした動きに水を差すということにもなりかねない。会社分割制度の早期創設は、日本経済の再生という観点から、極めて優先度が高い喫緊の課題であると認識している。
 個別行のことを申しあげて恐縮であるが、この秋に3行統合し、2002年4月に分社化をする予定であるが、この会社分割制度の活用を予定しており、前提となる法制面・税制面の整備が早期に行われるよう強くお願いしたいと思っている。


(問)
 中小企業向け融資の関連でもあるが、与野党ともにであるが、選挙直前でもあり、銀行を悪者にすれば票に繋がるという発想で、今日も大蔵委員会、明日も与党の会合で銀行を懲らしめてやる、というようなことをいう政治家もいるが、特に自民党に対して、こうした姿勢で、銀行に対して選挙直前にこのようなことを行うことについてどう感じているか。
(答)
 銀行を批判すると票がどの程度伸びるかの相関関係について、私も検証したことがないのでなかなか答えが思いつかないところではある。
 外形標準課税の問題の際にもたびたび申しあげたことではあるが、バブルの生成から崩壊の過程で、やはり銀行が演じた役割について世間のあるいは国民の皆さまの批判を浴びることは、そういう点があったということであろうし、しばしば私も重く受け止めて、社会の信頼をどうやって回復していくかについて、一朝一夕にあるいは一夜にして回復する方策はない、地道にやっていくしかないとたびたび申しあげているわけである。中小企業貸出については、今般、経営健全化計画の目標は一応各銀行とも達成する見通しであるということは冒頭申しあげたとおりであり、今後においても早期健全化法の下で資本注入されている銀行は、少なくとも経営健全化計画を掲げているわけであり、それに基づく目標を達成することはもちろんのこと、それ以上の努力が必要であろう。せっかく資本も増強されたわけであり、バブルの崩壊の過程で何が問題であったか、反省すべき点は何であったかということについては十分学んだはずであり、今後においては、しっかりしたリスクテイク能力を高め、金融仲介能力を果たしていくということが望まれているのだろうと思っている。
 その過程でいろいろと満足していただけない点が批判に繋がってくるのではないかと思っている。


(問)
 自民党についてはどうお感じか。
(答)
 政党との関係は、特段の見解を申しあげるものではないと思っている。


(問)
 外形標準課税問題に関しては、できるだけ早期に訴訟を検討したいとのことだが、現時点はどのような状況か。
(答)
 30日に残念ながら本会議で可決され、4月1日に公布、施行されたわけだが、私どもの今後の方向性についてはステートメントを出させていただいたとおり、早期に、極力早期に訴訟に向けて詰めに入るということである。
 具体的には課税の対象行となる各行と実務的に打ち合わせが始まろうかという状況にある。


(問)
 個別行、第一勧業銀行としてはどうか。
(答)
 私どもとしては外形標準課税の構想が出た段階から、司法界の大御所先生方にいろいろと意見を聞いており、既に論点がどこにあるかについてはいろいろと詰めを行っているところである。協会長の立場からも、勉強については、それなりに進んでいると思っている


(問)
 今月中になんらかの具体的な行動を取る予定はないか。
(答)
 詰めというのは時間のかかるもので、私の任期が来週の火曜日までということを考えると、なかなかそれまでにということは難しいと思っている。


(問)
 銀行批判とも関係があるのだが、最近、債権放棄が増えており、額も大きくなってきたように思う。今後ともそういうことが出てくる可能性が高い。借り手の経営責任とか、あるいは経済合理性があるかとかいった3原則はあるのだが、貸し手側の経営責任、銀行側の経営責任について、やや曖昧なまま不良債権処理が進んでいるのではないかと思う。そういった批判もあって銀行批判があるのではないかと思う。
 債権放棄問題と不良債権の処理について、銀行がどう責任を取るべきだとお考えになっているか。
(答)
 釈迦に説法なのかもしれないが、あらためて債権放棄をする時の銀行の考え方について、おさらい的に言わせていただくと、私どもとしては融資の業務遂行にあたっては、「公共性」、「安全性」、「成長性」、「収益性」の4原則を基本理念としているが、個別の融資に際しては、これらを踏まえて、融資事情や返済可能性などについて所要の検討を行ったうえで、最善を尽くして融資判断を行っている。
 しかしながら、いわゆるバブルの生成の過程、そして崩壊という中で、銀行だけがバブルの主役を演じてきたわけではないが、その一端を担ったということは否定できないと思っている。今にして思えば、資産の価値が右肩上がりの中で、物的担保のみに注目して融資を行ってきたなど、融資規範が緩んでいた部分があったことも否定できないと思っている。
 そうした反省に立って、今は融資規範の徹底や融資のあり方の見直し、審査能力やリスク管理能力の向上などの改善に努めているところである。
 債権放棄について、一般論として言えば、銀行が債権放棄を行う場合には、債権放棄によって経営支援を行う合理的理由があるのか、再建計画が妥当で実現可能性が高いものであるのかどうか、他の方法と比べて経済合理性があるのか、社会的意義の高いものかどうか、関係者の負担が合理的であるかどうか、経営責任やリストラなどが十分に果たされておりモラルハザードの発生の懸念がないのか、といった観点から、ケースバイケースで、慎重に検討を行うものであるかと思っている。銀行としても究極の選択肢として限定的に適用するものであって、決して安易に行うものではないと思っている。
 そこで、貸し手側の責任についてのお尋ねであるが、大変、考え方は難しいと思う。というのも、それぞれのケース、事案については、都度その時点で最善の判断をしてきているかと思う。結果、何年かして、経営環境が悪化し、経済状況が悪化し、そこで債権放棄を金融機関に要請して、合理的であるとの結論を得た時に債権放棄はなされるわけだが、その時の金融機関の貸し手責任というのは、特段の融資の過程で違法性があればともかく、なかなか問い方あるいは問われ方も難しいのではないかと思っている。


(問)
 午前中の大蔵委員会で、公的資金の前倒し返済の話があったと思うが、個別行としてでもかまわないので、具体的にどれくらいのタイミングで返済できそうだといった感触をお聞かせいただきたい。
(答)
 個別行として申しあげるにしても、基本的には三行統合を前提としてお話すべきかと思うが、目下のところ三行統合後の経営健全化計画の見直し作業を行っている最中であって、この時点で当初予定されていたスケジュールよりも早まって、この時点で返済できそうだといったことまでは、いろいろ作業を行っている最中であって、まだ固まっていない。
 配当後の剰余金がどのくらいのスピードで蓄積されていくかということがポイントなわけであるが、そういう意味で外形標準課税でスポッと一行あたり100 憶円とられると、三行合わせると結構な金額になるので、影響は小さくない。外形標準についてお話させていただいているわけではないが、そのような要素もあり、計画の作成作業に時間がかかっているということである。
 精神としては、やはり、一刻も早く、一円も毀損することなくお返ししなければいけないと思っている。


(問)
 アメリカの株やアジアの株は反発したにもかかわらず、日本だけ株価が続落している。景気の弱さを反映したものであるという指摘もあるが、どう考えるか。
 また、景気に若干不透明感が出てくると、金融政策についても、微妙な影響が与えられるという考えもあるが、どう考えるか。
(答)
 まず、一点目の株価についてだが、確かに日本の株価だけ2日続けて下落ということのようである。本日の午前中、大蔵委員会に出席していたため、つぶさにフォローしていないが、結果的にはそのようになったようである。ただ、私は、2日こういう動きがあったからといって、ただちに日本経済の先行きに大きな影響が出るとか、あるいは、日本経済の回復自体が思ったほど強くないと思い込む必要があるのかなと思っている。いましばらく、様子をみたらどうかと考える。
 二点目の金融政策についてであるが、当局におかれては、政策が市場に与える影響や景気に与える影響等をいろいろ検討したうえで判断されていく、金融政策を展開されていくと思っている。


(問)
 トヨタ自動車が本日、金融統括会社として証券子会社を設立するとの記者会見があった。銀行を設立する等については今のところ考えていないとの発表であったが、トヨタの場合、世界的にサービスを広げていきたいとのことであり、銀行への異業種参入が金融ビッグバンともあいまって大きな動きになってきたと感じる。トヨタの動きを中心に、コメントを伺いたい。
(答)
 トヨタの記者会見についての情報にまだ接していないので、直接トヨタの構想についてここでコメントを述べることは差し控えたい。
 先ほども申しあげたとおり、私ども、言わば既存の銀行という言い方をすれば、我々にとって異業種から色々な形で金融業に進出するということは、刺激のあることである。言い方を変えれば、既存の銀行業界がこれまで出来ていなかった金融サービスの提供について、そういった刺激を受けて、自分達がやれるならやるし、やれないものはやれないし、ということで、私としてはウエルカムな動きだと思っている。


(問)
 来週25日で任期を終えられてご交代されるということだが、お別れ会見と銘打っても、明日以降もまたかなりタフなスケジュールが待っていると聞いている。この一年間会長としていろいろなことがあったと思うが、それらを含めてこの一年、うれしかったこと、苦しかったこと等を挙げていただいて、最後に百点満点で自らの働きを評価していただければと思う。
(答)
 いちばん易しい質問だと思っていたが、今のご質問のされ方だといちばん難しい問題になってしまったような気がしないでもない。
 平成10年度の岸前会長は、「金融再生元年」と総括されたというように記憶しているが、この平成11年度の金融界全体の動きは、次の3点に要約されようかと思う。
 まず、第一点目は、金融機能再生、金融機能早期健全化に向けた取組みの進展である。特別公的管理銀行の処理が進展したほか、早期健全化法に基づく、地銀、第二地銀等への資本増強も進み、また、一方では、特例措置終了後の預金保険制度のあり方が議論され、現在、まさに、預金保険法改正法案が国会において審議されているところである。このような一連の動きもあり、金融システムは一層の安定化・強化が図られたと思う。
 第二点目は、金融ビッグバンの着実な進展である。昨年10月に業態別子会社に対する業務範囲の制限が原則撤廃・廃止されるなど、業務の自由化・多様化が一段と進んだほか、商法改正により株式交換制度と株式移転制度が創設されて、持株会社制度が活用しやすくなった。一方で、来るべき自己責任原則の時代の到来に備え、消費者保護等、新たなルールの整備も急ピッチで進められてきた。金融商品の販売ルール、消費者契約法などの検討が行われたことも大きな動きといえるのではなかろうかと思う。
 そして、第三点目は、今申しあげた2点に呼応するように始まった本格的な金融再編である。みなさんよくご存知のとおり、大手銀行の統合・再編のほか、地域金融機関においても、徐々に、再編の波が押し寄せつつある。従来のグループ等にとらわれない形での統合・再編が活発化した。
 こうした1年の動きを総括するのであれば、金融システム安定から金融再編のうねりが生じた歴史的な1年であったといえるのかと思う。
 このような中にあって、私ども全銀協は、昨年4月20日から、個別銀行を直接の会員とする「全国銀行協会」として、新たなスタートを切った。集団運営体制の導入と正副会長会議の設置、委員会組織の簡素化、事務局の強化といった改革を実践してきた。
 この一年間、全銀協として取り組んできた大きな課題としては、Y2K問題、預金保険制度の見直し、BIS規制の見直し、郵便貯金の自主運用のあり方に対する提言、金融サービス法制定に向けた動きへの対応、苦情・紛争処理体制の充実、マネーローンダリング問題、円の国際化に向けた提言などがあげられるが、さまざまな取組みの中でも、私にとって、特に印象に残るのは、ほかでもないが、東京都による銀行業等に対する外形標準課税導入への反対運動の展開である。本件については、誠に遺憾ではあるが、私どもの全力を尽くした反対活動にもかかわらず、条例案が3月30日に都議会本会議で可決され、4月1日には、条例が施行されている。今後については、極力早期に訴訟を提起するということを前提に、対象銀行で具体的な詰めに入ったところである。
 このように、実にさまざまな課題があったわけだが、副会長をはじめとする関係各位のご支援・協力を得て、そのいずれに対しても、全力で取り組んできたつもりである。みなさん方からすれば、ご不満があるかもしれないが、一つ一つについて、私なりに精一杯の努力をしてきたつもりである。
 今後の全銀協に対する期待という点で申しあげると、一昨年の改革の議論の際には、組織運営の透明性・効率性の向上、共通の問題意識に関する政策提言や情報発信機能の強化といった点が、全銀協の目指すべき方向だとされていた。後をお願いする住友銀行の西川頭取には、いろいろとご苦労をおかけすることになるかもしれないが、大変卓越したご見識と力強いリーダーシップをお持ちになった方である。したがって、この新全銀協を、改革の理念に沿った方向にしっかりと導いてくださるのではないかと思う。
 この一年間、その重責に比べてはなはだ微力な私が新全銀協の舵取りを任されてきたわけだが、関係各位のご支援・ご協力により、何とか、あと一週間というところまで参ったという感じである。みなさま方をはじめ、私を支えていただいた方々に、この場を借りて、厚く御礼申しあげる。
 採点については、自分は、昔から、小さい時から、自分で合格点をつけることがない。あえて何点ということはこの場では控えさせていただきたい。皆さんにお任せしたい。
 本当にありがとうございました。