2001年5月22日

山本会長記者会見(富士銀行頭取)

 菅野専務理事報告

 本日は、都合により、理事会の開催に先立って記者会見を開催させていただくこととした。
 本日の理事会では、まず、5月17日に行われた第二地方銀行協会の会長交替を踏まえて、東日本銀行の吉居会長から副会長を辞任したいとの申し出があったので、その後任として、新たに第二地方銀行協会の会長に就任された、愛媛銀行の一色頭取を副会長に選任する予定としている。
 次に、正会員として、アイワイバンク銀行の5月23日からの加入を、また、準会員として、ソニー銀行の6月1日からの加入を、それぞれ承認する予定としている。この結果、6月1日現在の会員数は、正会員が142行、準会員が45行となり、72の特別会員とあわせて、合計259会員となる。
 なお、お手元に、 今年度の全銀協の委員会・検討部会一覧 をご参考までにお配りしている。私からは以上である。


会長記者会見の模様


(問)
 小泉政権が発足して1ヵ月となるが、新政権への評価を伺いたい。
(答)
 全銀協会長は政権の評価をするような立場ではないので、個人としての感想を申しあげる。
 昨今のマスメディアの報道を見ていると内閣支持率が非常に高く、国民の小泉政権に対する期待の高さをうかがわせるものがある。社会全体に閉塞感が漂う中で、政治、経済、社会の全般に渡って変革あるいは改革を求める国民の期待が高まっているということが背景にあると見ている。
 総理がかねてから主張されており、所信表明演説の中でも述べられていた「構造改革なくして日本の再生と発展はない」という信念には個人としては共鳴するものがある。先般の所信表明演説の中にも、経済・社会の全般に渡る「徹底した規制改革」や「証券市場活性化のために個人投資家の積極的な参加を促進する幅広い制度改革」などが盛り込まれており、それら諸施策の具体化と確実な実行を期待している。


(問)
 緊急経済対策に盛り込まれた「私的整理のガイドライン」について伺いたい。先週、経団連の今井会長と会合を持たれたようだが、内容は平行線であったと受け止めている。このガイドラインの検討に関する現状と、全銀協としてこのガイドラインをいつの時点までにどのような形に持っていきたいとお考えか。
(答)
 先日の経団連今井会長との会談では、緊急経済対策全般について意見交換を行なった。その直後にも申しあげたが大変有意義な意見交換であったと感じている。
 特に、今ご質問の債権放棄に関連しては、「きわめて限定的に対応すべきものだ」とおっしゃっている今井会長の立場は私どもと大きな差はないと認識している。「ガイドライン研究会」については、より実体的に幅広く議論を進めていくためには、産業界からも参加いただき、幅広い議論をしていただきたいと考えており、引き続き参加について要請していきたいと考えている。
 「私的整理に関するガイドライン研究会」は、早期にメンバーを揃え、研究会を立ち上げて、活発に議論を行い、実効性のあるガイドラインを作る場にしていきたいと考えている。取りまとめ時期については、まだ立ちあげていないので、何とも言えないが出来るだけ、早期に成果物が得られるように努力していきたい。


(問)
 本日、柳沢大臣が「近々スタートする」という見通しをおっしゃっているが、時期の幅みたいなものとか、内容についてももう少し言及いただけないか。
(答)
 現時点で、いつからスタートできるかということは明確に申しあげることは出来ない。最終の期限を、政治・行政の側は6月頃までにと考えているようであり、私としても出来るだけ、その頃までに目処がつけば良いという気持ちはある。内容が非常に広範に渡る議論を必要としており、キチンとした成果物が6月末までに出来るかどうかは確固たる自信があるとは言えないが、今申しあげたとおり、大変に大事な、国策とも言うべき不良債権処理に関連したことでもあり、最大限の努力をし、早期に取りまとめたい。


(問)
 緊急経済対策の中で、株式の買上機構については、本国会への法案の上程は見送られたが、もう一方で金融審で銀行の株式保有制限の議論が始まっている。一種の食い逃げみたいな状況であるが、現状についてどう考えているか。また、買上機構と株式保有制限についての考えを再度、伺いたい。
(答)
 保有制限の議論については、前回も申しあげたが、株式の保有によるリスクについて銀行界は大変強い問題意識を持っており、多くの銀行は健全経営の観点からこれを圧縮する方向で動いている。これについては各銀行の戦略に基づき、自己責任のもとで、保有株式の売却を行ない、残高を圧縮している。これは先程申しあげたとおり、株式保有のリスク、つまり銀行の現在の自己資本の関係から見ても過大であるという認識があり、これまで対応をしてきている。そのような状況の中で、銀行の株式の保有額について、リスク管理の観点から、政府も言い始めたわけであるが、その点については現在、銀行界が持っている方向感と一致しているということである。 問題は、どの程度まで株式保有残高を減らすのが適当か、そこに達するまでどの程度のスピードで行くことが適当かということである。
 どのレベルまで落とすかということについては、様々な議論があるが、銀行のポートフォリオは株式だけではなく、貸出や債券も含まれているものである。そうした銀行のポートフォリオの中で、全体のリスク管理の観点から、各銀行が戦略に従って、どの程度のリスクを株式という形で保有できるかということであり、必ずしも一律に株式の保有額・保有比率というものが適当であると言えるかどうかということもある。
 他方で金融システムの安定化という観点から、一つの基準を作ろうという動きがあることは承知しており、その際にどういったものが適当かどうかについては、金融審議会の場で議論をされているところであり、その場で、私どもも発言をし、識者の意見を伺っている状況である。
 取得機構の問題は保有制限を仮に急速に行う場合というコンテクストの中で、位置付けられていると認識しており、仮に極論すれば、現在の保有株式を1年の間に半分にするような規制が導入されたとなると、マーケットに甚大な影響を与えるため、そういう意味では取得機構がショックアブソーバーの機能を持つということには意味があるということだと思う。いずれにしても、問題は株式の保有構造を変える、という構造改革の問題であり、株式の発行者である企業を含めて広範な議論が必要である。


(問)
 先般の小泉首相への代表質問の中で銀行界からの政治献金に関する質問があり、小泉首相からは「公的資金を注入しているところからは政治献金は受け取っていないし今後受け取るつもりもない」との発言があったが、現実問題はともかくとして、政治献金に対する今後のスタンスについて説明願いたい。
(答)
 全銀協は、従来から政治献金については、個別行の問題と考えており、全銀協会長としてコメントする立場にないことをまず断っておく。
 私個人の考え方を以下申しあげる。
 本来、政治献金は、「個人献金」と「政党助成金」で賄われることが望ましいと考える。しかしながら、識者も指摘しているように、現実にはそれだけで賄われることは難しく、一企業また社会の一員として、政治資金規正法の範囲で応分の献金を行うことは、社会的責任を負う企業としてやむを得ない状況であると考えている。銀行については、公的資金の投入を受けているという事実も考慮に入れながら検討していかなければならない問題であると認識している。


(問)
 個別行の話題であるが、週刊文春でみずほグループ3行の自己査定の債務者区分なる一覧表が掲載されていたが、顧客との関係からいうとこうしたものは外に出てはならない銀行のトップシークレットであろうかと認識している。この問題についてどう考えているのか、また、今後の情報管理にみずほグループとしてどのように対応していくつもりか。
(答)
 週刊文春に掲載された債務者区分相違先一覧表なるものについては、守秘義務遵守の観点からコメントは差し控えさせていただく。
 情報管理体制については、金融機関の社会的使命に鑑みて、不断の改善を進めているところである。本件については、みずほグループのお取引先各社の信用に不適切な影響を及ぼしかねない記事内容であることから、万が一にもこうしたお取引先各社の信用に関する情報が外部に漏れていないか否か調査を実施するとともに、情報管理体制の再点検を行って、従来にも増して情報管理体制の強化を図っていきたいと考えている。


(問)
 足許の景況感についてお聞きしたい。4~6月期が底に近い状況になっているのではないかとか、銀行界でも貸出需要が低いという話をよく聞くが、どうお考えか。
(答)
 年明け以降調整局面に入ったということが言われるが、私もそういう見方をしている。生産活動が落ち込んでいるし、企業は設備投資や雇用に慎重になってきている。経営者の景気認識も急速に厳しくなっており、日銀短観の業況DIも輸出関連産業を中心に大幅に悪化している。
 この主因は、米国の経済成長の急激な減速に伴い輸出が減少していることであると認識している。昨年末以降の米国の経済成長の悪化は予想以上であり、特に IT関連市場の冷え込みが厳しく、これが日本の米国向け・アジア向け輸出の減少を招いている。つまり現在の景気停滞は、米国経済の鈍化とそれに伴う生産減少に起因する在庫調整にあると見ている。米国経済の悪化については改めて細かい説明は不要かと思うが、ITに関連したブームとその調整ということであろうかと考えている。
 ただ、注目すべきは、日本において経済のファンダメンタルズが損なわれるような状況かということであるが、これについては悲観論もあるが、私はそれは悲観し過ぎだと見ている。97年~98年の不況時と比較すると、リストラ等その後の企業努力やいろいろな政策もあり、経済、企業の体質は格段に強化されている。随分長い間指摘されたいわゆる「3つの過剰」についても、ご存知のとおり、指標を見る限り随分問題は縮小されてきている。その結果、最近発表されている企業収益も大幅な改善をみているという状況にある。
 そこで、これからどうなるかという問題であるが、なかなか明るい状況は見えてこないわけであるが、先ほど申しあげたとおり、日本経済のファンダメンタルズが問題になっているわけではなく、米国経済の減速が最大のファクターであることから、現時点では、ウォールストリートの多くのエコノミスト達の間ではU 字型の回復がコンセンサスであると認識している。これについてもいろいろな議論があるが、自動車や半導体の在庫調整が進み景気が底に近づいているというサインもあるし、政策のサポートも、連銀の相次ぐ利下げ、さらには秋に予定されている減税というようなものから米国の景気が持ち直してくることは確実な情勢になってきた。1万1千ドルを回復したダウの株価からも、米国あるいは世界の投資家の見方がそのようになってきたと考えている。
 日本であるが、今申しあげたような状況の下で、ファンダメンタルズの面から長い間懸念されてきた個人消費に底離れの兆しが見えてきている。どんどん落ち込んでいくということではなく、自動車や旅行などいわゆるビッグチケットアイテムズが好調であり、小売業の売上についても回復しつつあると見ていいかと思う。家計調査の数字や百貨店の売上高等を見ても、実質購買力の回復、マインドの好転、企業側の需要開拓努力により、消費の底離れの兆しが見えてきている。そうしたことから、今年度は、上期の急速な回復は希めないまでも横這いで推移し、下期には回復してくるだろうと見ている。私どもの研究所の試算では上期0%、下期2%、年間で1%の経済成長と見込んでいる。


(問)
 債権放棄のルール作りについて伺いたい。行政側は6月頃までに固めたいと考えているようだが、債権放棄のルールは誰が何のために作るのかという論点があいまいになっているようである。銀行界としての見解をお聞きしたい。
 また、二度目の債権放棄という問題についてはどう考えるか。
(答)
 まず、なぜこの時点でこうした私的整理のガイドラインが必要なのかということについてお答えする。これについては、銀行の不良債権処理を進めていく方向において、例えば民事再生法に代表されるような法的手当てがある一方で、法的整理になじまない、例えば法的な対応を行うことが企業価値を著しく損なう、経済的にマイナスが大きい等の理由から、むしろ私的な整理をする方がいいというようなケースがあり、そうしたものについて私的な整理を行うということは意味があるという認識があった。そうした上で、私的整理というものは、なかなか関係者間の明確なルールがないのでスムーズにいかない。これをスムーズに行かせるために、ルール、あるいは私的整理をする場合の指針とすべきものができれば、私的整理がもっとスムーズにできるのではないかとの議論があった。そこで、政策の補完の手段として、こうしたものを民間で作れないかということが行政の側からの問題提起であったと認識している。
 よく指摘されるのは、私的整理に伴う債権放棄が安易に行われているのではないか、それによって第1にはモラルハザードを起こしていないか、第2には公正な競争を阻害していないか、つまり債権放棄がなされた企業がそれで楽になり、競争力がついてしまうというのは、一生懸命頑張ってきた企業からみれば不公平な競争を強いられるのではないか、というような問題である。
 また、債権放棄はしたが、その後の再建計画がスムーズに行っていないようにみえる企業もあり、それは入口のところでどういう判断をしたのかという指摘があり、そういうところから、金融機関その他関係者が行う私的整理に伴う債権放棄について、何がしかの共通の認識、あるいは共通の指針を持つべきではないかという意見が少なからずあると認識している。つまり、私的整理についての考え方というものに共通の認識ができないかという問題意識と、関係者が多い場合に調整の手続きに手間取ることで、その間に企業価値を大きく損なってしまうということがあるので、そうしたことを解決できないか議論していくことに意味があるのではないかと考えてきた。ここのところ、議論はだんだんつまってきていると思う。
 したがって、私は、適切な私的整理というものが、法的整理とは別に、企業の再建に意味があるということも過去の経験から事実であると思うので、共通の認識が出来上がればスムーズに行くのではないか、無用な混乱、無用な時間を使わないで済むのでないかというふうに考えている。全銀協としては、関係者としては最も大きな部分を占めると思うので、事務局となってこうした勉強会を行い、共通の認識をくみ上げていくことは意味があると考えている。
 二度目の債権放棄の問題については、私が認識しているところでは、「二度目の債権放棄は、再編を条件に容認する」という趣旨のことを柳沢大臣がおっしゃられたということである。これは、個人的な意見になるが、このご発言は「二度目の債権放棄を許さない」と言い切ってしまうと、再編の芽を摘むことになるので、再編が実現できるのであれば、二度目の放棄も否定しないということだと思う。
 一般論として申しあげれば、本来あってはならないことだろうと前回申し上げたが、二度の債権放棄をした前例は記憶にないので何とも言えないが、様々な再編もこれから予想されるところだろうから、そうしたものについて、画一的に二度はないと決めつけるのはまずいという主旨の大臣のお考えも一つの考え方だと思う。ただ、一般論として申しあげれば、私的整理に伴う債権放棄というものは厳しくなければならないと考えているので、そうしたことはないように関係者が努力をするということではなかろうかと考えている。


(問)
 私的整理のガイドラインが対象とする私的整理は、不良債権処理で言うところの破綻懸念先以下と重なる部分もあるが、必ずしもそのなかに全て包含されるというわけではないとの理解でよいか。
(答)
 整理・処理という場合には、経営が不具合になった、経営が円滑にいかなくなってきた、というところで初めて法的処理とか私的整理というものに入っていくわけで、そういう意味では、非常に大雑把に言えば、破綻先は当然のことであるが、破綻懸念先が主要な対象になる。ただ、区分で言えば、要管理先の中にもそういう状態になった中で、非常に悪いと経営者が判断した場合に法的処理ということで民事再生法に入っていくということもあり、明確に一対一で対応すると言うわけではない。しかし、多くのものは、破綻懸念先以下が対象となる。
 通常の処理では、一般的には、法的な手続きで処理をするということが多いと考える。例えば裁判所で調停をする、それでもうまくいかなくなった場合には清算となるが、再建をするという前提で処理・整理を行うものであっても、法的なものをかませるというものが最近多くなってきている。様々な角度から検討した上で、法的整理ではなく私的整理を選ぶということが合理的なケースがあるので、そういうものに限定して私的整理というものは行われると理解している。


(問)
 ガイドラインについての経団連の今井会長との会合は全般的に有意義であり、合意できるところもあったとのことだが、一方で、全銀協と経団連との間の不協和音も聞かれる。どの部分の話が合わなかったのか、また歩み寄りは可能なのか。
(答)
 ガイドラインや指針について、共通認識を作っていこうということで、いろいろ議論した。今井会長は私どもと同じように安易な債権放棄はしないとの考えであり、それは、経団連会長が従来からおっしゃっているような、供給過剰、つまり市場の中で淘汰が行われていくようなものについてマイナスな影響があるような安易な債権放棄をするのはまずいという立場であると思う。会談の詳細は、お互い話さないということになっており、これ以上細かいことは申しあげないが、私どもも安易な債権放棄については、そのようなことはするべきではないという点で、経団連会長と全く同じであり、基本的方向は違わないと認識している。
 不協和音ということが報道されているが、お互い相当に理解が深まったと認識している。あと若干議論をすべきところが残っているが、初回から即日一致しないと不協和音があると言われてしまうのは困る。また再度お目にかかってお話すべく、事務方もお互いの意見交換を含めてやっており、今後の方向としては、説明不足の問題があれば、また会って理解を深め、実りあるディスカッションができるような研究会を立ち上げたい。


(問)
 先程、週刊文春の記事の話が出たが、我々としてもあれが本当にみずほのものであるかどうかは分からないのであくまで一般論で申しあげるが、あれを見て通常受ける印象としては、1つは経営統合をしたときに債務者区分を悪いほうにもっていくというのが各グループとも大変なのだろうということと、2つめは破綻懸念先以下を2年以内とは言いつつも、まだまだ要注意の部分で多々甘い部分があるのではないかということを一般的な印象として受けたが、その2点についてどう思われるか。
(答)
 一般論として区分に差があることについての指摘だと思うが、一般論として申しあげると、銀行間あるいは同一グループ内でも最終の評価というのは違うことがある。
 どうしてそういうことが起こるのか、みずほの場合について説明すると、みずほでは査定基準というものを作り、これを統一的なものにしている。これは、昨年みずほとして統一的な基準を作って、それに基づいて個別に区分をしているわけであるが、何分、個別行の個別のお取引先に関する情報をお互いに交換し合うことが、独立した銀行であるので制約がある。そういった点で、それぞれの銀行が同一の定められた基準に基づいて格付けをするという手続きになる。
 同一の基準でどうして差が出るかということについては、大方のものは差がでないが、例えば、取引の地位であるとか、取引の状況、取引の内容、そういったものから顧客の情報に関する情報についての質や量に差が出てくるのが実態である。そうしたことから、限られた情報の中で最大限の努力をして格付けをしていくわけであるが、取引先によっては、希にではあるが、差が出てきてしまうということがあるわけである。
 みずほについては、来年4月に分割・合併するため、これから前倒しでできるだけ一致させるようにしたいと考えているわけで、この上期中には大方のものを一致させるような対応を考えている。
 もう1つの質問は、要注意先について甘いのではないかという質問かと思うが、甘いか辛いかということになると、これは難しい話になるが、少なくとも我々は金融検査マニュアルに基づいた判断についてチェックする別の部をそれぞれ持っており、こういった内部の監査体制、それから監査役によるチェック、外部の公認会計士によるチェック、そうした二重三重のチェックを経て、企業の信用の区分、格付けをやっているわけであり、そういった意味では、我々としてはきちんとした仕掛けで最大限の努力をやってきているということである。
 しかし、なかなか減らないではないかとか、あるいは、結果として要注意のものが一挙に破産したりするではないかと、こういうことであるが、この点については先程申しあげたように、情報が十分でないというようなこと、時に不正確な財務データを我々に提供しているというようなことが希にあるわけだが、そういったことを含めて急速な変化というものが現実に起こってしまうということである。
 景気が今のような低迷した状態で、例えば流通業界における、製造を含めてかもしれないが、ユニクロのような新しいビジネスモデルが出てきて、それがあっというまにマーケットシェアを大きくとってしまうというような非常に急速な産業構造の変化とでも言うべき構造変化が起こっているので、企業盛衰というものも非常にスピードが上がってきている。
 私共も、できるだけこれに対しては、従来以上にモニターに気を付けているが、そうした意味での取引先の信用格付けの変化というものが急速になっているということは経済の現状から否定できないという状況である。


(問)
 先程の債務者区分の一致の件であるが、上期中に大方のものを一致させるとおっしゃったが、99年の8月に統合を発表し、2000年の9月に実際に経営統合をして、まだ債務者区分が一致できないというのは、スケジュールとして遅れているということにはならないのか。
(答)
 取引先の情報を、みずほの場合では3つの銀行であるが、X社という会社との取引が3行であるとすると、3行でそれぞれ情報の量・質が違う。これは、例えば、主取引の場合と本当に下位のお付き合いの場合というようなことを見れば分かるわけであるが、担当者の接点、経営者同士の接点も格段に違ってくる。そうした状況にあって、なお、個別の銀行毎に守秘義務を負っており、個別の取引先に関する情報交換はできない。従って、今のように、情報の差がある、取引の地位の差があるという状況で、お互いに取引先の信用について情報交換ができないという制約のもとにいるわけであるので、どうしても、そう多くはないが、先程申しあげたように希にではあるが、3つの銀行間で格付けが違う、債務者区分が違うというようなことが起きるのは仕方がないことである。


(問)
 一致していないのは全体の何割ぐらいか。
(答)
 「何割」というほど大きな数字ではないと認識している。 ごく希にしかないということである。


(問)
 景気の話で会長は、米国の輸出がらみの状況と、日本の経済についての需要動向について説明いただいた。そこで不良債権の話は出てこなかったが、不良債権の景気全般に与える影響というのは無視しても構わないという認識か。
(答)
 不良債権が、金融のルートを通じて、経済にマイナスの影響を与えているという意味でおっしゃっていると思うが、これについては更に悪化するという状況ではないので、景気に対して特別なインパクトはないであろうということである。
 ただし、2、3年で処理をするというものが景気に対してマイナスの影響を与えるであろうという指摘があり、エコノミストにもそういったものについて計算をしている人もいるが、この問題というのは下期以降徐々に顕在化してくる問題であって、これについてどの程度の失業率・失業者かとか、連鎖反応による企業の倒産が増えるのかといったことについては、現時点で正確な評価はできないわけで、失業者についても三十万~百数十万とか、あるいはもっと大きな数字がエコノミストの間で出てきたりしているが、今年度の景気ということで言うと、それほど大きなインパクトを与えるという状況にはまだならないという認識である。

別添資料:山本会長記者会見(富士銀行頭取)