2001年7月24日

山本会長記者会見(富士銀行頭取)

菅野専務理事報告

 本日の理事会では、まず、経団連が地球温暖化対策や循環型経済社会の構築に向けて産業界の自主的かつ積極的な取り組みを推進するために取りまとめた「経団連環境自主行動計画」に、全銀協として参加することを決定した。今後、秋頃をメドに、銀行界としての「自主行動計画」を策定する予定としている。
 次に、準会員として、イーバンク銀行およびトロント・ドミニオン銀行の8月1日からの加入を承認した。
 この結果、準会員が46行となり、全銀協の会員数は8月1日付で合計260会員となる。 私からは以上である。


会長記者会見の模様


(問)
 今日は若干持ち直したようであるが、東京株式市場の値動きが、昨日はバブル後の最安値を更新するという不安定な動きが続いており、この株価の低迷が銀行経営に与える影響、特に9月には時価会計の導入によって株価低迷による保有株式の含み損の拡大により、配当が出来なくなるあるいは出来なくなる恐れがあると市場では懸念されているが、これについての会長の認識を伺いたい。
(答)
 銀行経営に与える影響は、自己資本比率に与える影響、配当政策に与える影響、の2つがある。
 自己資本比率に与える影響は、先ごろの森金融庁長官のご発言の報道を見ると、日経平均が11,000円程度で主要行の自己資本比率が11.2%という試算があり、影響は限定的であるとコメントしておられる。時価会計を導入しても主要行のBIS自己資本比率については十分余裕があるということである。
 銀行界はこれまでも経営の最重要課題の一つとして、自己責任のもとで保有株式の売却を推進してきていることもあり、個人的見解としては、現在の株価水準でその他有価証券の時価会計が導入されたとしても、BIS自己資本比率への大きな影響はないものと考える。
 一方一般論であるが、配当政策についてはある程度影響を受ける場合もあろう。株価下落により含み損が発生した場合、税効果を勘案してその含み損の約60%を剰余金から差し引く必要があるため、一般論としては、配当政策が影響を受けることになる。但し、その影響度合いは、期末の株価水準は勿論のこと、各行の株式ポートフォリオや収益動向によって大きく変わってくるものであり、一概には何とも言えない。なお、各行とも株式残高の圧縮はもとより、株価ヘッジの活用など保有株式のリスク削減策を推進中であるとともに、健全化計画に基づき、徹底した収益力強化やリストラ推進に注力して配当原資の確保に努めているところである。収益力の増強に今後も一段と努力することが必要だと認識している。


(問)
 株価全体が下落する中で特に銀行株の下落も目立っているが、銀行株の下落について伺いたい。それに加えて、昨日、塩川財務大臣が金融界に対して働きかけ、連絡をしたいという報道もあったが、これについては具体的に連絡を取られたのか。
(答)
 塩川大臣からの連絡が先ほどあった。電話をいただき、久しぶりにお元気な声を拝聴し、懐かしく思った。現状の株価問題を中心に意見交換を行なった。株式の持合い解消売りについてマーケットが非常に神経質になっているという市場関係者の話から、銀行保有株式取得機構の設立について話があった。私からは取得機構の設立について早期立ち上げに向けて引き続き金融庁に最大限の協力をして実現に努力をしたいと回答した。併せて株式市場の構造改革のためには、個人投資促進税制の早期導入が不可欠であり、是非とも実現を急いでいただきたい旨の要望をした。以上が塩川財務大臣との本日の電話のやり取りである。
 銀行株の下落であるが、このところの株価下落について、米国IT不況の波及や景気の悪化、銀行経営に対する不安などが指摘されているが、必ずしも実態を反映したものではないという印象を強く持っている。
 5月初旬から現在まで、日本の代表的なIT企業の株価は3割以上下落しているが、インテルやマイクロソフトは6~7%の下落にとどまっている。足下の景気の悪さも、日米で大きな差があるとも思えない。両国ともに製造業、設備投資・輸出は低迷しているが、非製造業、個人消費は健闘している。4-6月期の実質経済成長率はともにゼロ・プラスマイナス・アルファにとどまる見込みで、先行きの不透明感も強い。
 銀行株の下落については、保有株式の下落による自己資本への影響や不良債権問題の不透明さを反映していると言われるが、確たる根拠があってこうした動きになっているとは思えない。
 保有株式の問題については、現状程度の株価下落であれば、先程も申し上げたとおり、自己資本比率に対する影響は限定的である。
 いずれにしても、株価下落の一つの要因と思われる不良債権問題の不透明さについては、不良債権問題について、これまでも申しあげているが、広くマーケットやマスメディアの方々に正確に理解していただくべく、金融庁の協力も得ながら努力してまいりたい。


(問)
 マーケットでは銀行の自己査定について「査定が甘く、引当も不十分である」「さらに厳格に行なうべきである」などの批判がなお根強くあるが、全銀協会長としてどのように考えているか伺いたい。
(答)
 「銀行の自己査定をもっと厳格に行なうべきである」とのご意見をお聞きすることが多々あるが、我々としては、銀行界全体が自己査定を導入して3年を超え、その間99年7月に適用開始となった金融検査マニュアルを自己査定ルールに反映させるなど、最大限の努力を重ね、厳格な自己査定を行なってきている。
 銀行の自己査定について、富士銀行の例で申しあげると、(1)期間損益の状況、(2)キャッシュフローの状況、(3)バランスシートの状況、(4)親会社の支援状況などから総合的な判断を行なって決めている。期間損益の状況について言えば、単なる表面的な数字ではなく、償却不足はないか、また黒字体質が確保されているか、あるいはキャッシュフローの状況はどうかなども検証を行なって結論を出している。
 またバランスシートについては、有価証券や不動産のみならず、売掛金や在庫・繰延税金資産などについても含み損益を把握し、実態バランスシートの検証を行なっている。
 さらに担保評価は、専門の不動産調査会社の評価を利用し、特に要注意先以下の取引先については、原則半年に一回の評価の見直しを行なっている。
 この様に、自己査定を半年に1回行なう中で、常に査定が取引先の実態を正しく反映したものになるように、自己査定ルールの改訂・改良を行なっている。自己査定が開始されて、わずか3年程度ではあるが、その間行内でも議論を重ねていくことで、金融検査マニュアルに沿った自己査定の精度は大幅に向上していると感じている。
 引当についても金融検査マニュアルに則り、過去の貸倒実績率等に基づき適切な引当を実施している。
 要注意先に対し、もっと引当を積むべきとの議論があるが、要注意先は、営業活動を経常的に続けているものの、業況が低調等、文字どおり「今後の管理に注意を要する先」である。
 その要注意先に対し、個別行が恣意的に引当を増減させることは、安定性・透明性という点で問題が生じるケースが考えられ、この点について議論を重ねる必要があろうかと思う。
 今後も、今申しあげたように、自己査定ルールの精度を一段と向上させ、引き続き厳格な自己査定を行なっていきたいと考えている。


(問)
 銀行が多額の不良債権処理を進めていった場合、自己資本を毀損する恐れがあり、その場合には「公的資金再注入論」が出ている。改めて公的資金再注入の必要性について伺いたい。
(答)
 一般論で申しあげれば、緊急経済対策に基づく不良債権のオフバランス化の促進に伴い、一時的にはある程度与信関係費用は増加することになると考えている。但し、オフバランス化の対象と考えている破綻懸念先以下の債権については既に必要な財務的手当てを実施していることから、現状の収益力の中で十分に対応が可能であり、結果として追加的なコストは限定的であり、自己資本への影響も軽微なものと認識している。
 要注意先・要管理先については、過去の貸倒実績率等に基づいて算出した引当率によって、適正な引当を行っており、景気動向次第ではあるが、今後の要注意先・要管理先の内容劣化に伴う処理コストについても、既にある程度は収益計画等に織込み済みであることから、自己資本への影響も軽微なものと認識している。
 大手行の自己資本比率は3月の決算の数字を見ても11%台を確保しており、また、その他行についても必要な資本手当ては既に済んでいるとの観点から、柳沢大臣や森長官も言及されているとおり、公的資金の再注入は必要がないものと認識している。


(問)
 塩川大臣との意見交換に関連して2点伺いたい。まず大臣が持合い解消売りにマーケットが神経質になっていると話したとのことであったが、株の売りを少し抑制してくれという要請があったと解釈してよいか。
 また、昨日からの報道ベースでは、銀行界に対して企業の設備投資を促すような貸出しの方法を考えて欲しいとの話があるとのことであったが、今日、実際そのような話はあったのか。
(答)
 まず、銀行の持合い株の売りについて抑制して欲しいというような話があったのかという質問についてであるが、これは「ノー」である。そういう短期的な話ではなく、先ほど話したように、株式取得機構の問題について話があっただけである。また2点目の銀行の融資に関わる件であるが、報道されたような融資に関わる話は、特になかった。


(問)
 特殊法人改革について伺いたい。住宅金融公庫や日本政策投資銀行のような政府系金融機関は民間銀行と競合しているが、こういったところをゼロベースで見直したり、廃止・民営化した場合の民間銀行の収益への影響について伺いたい。
 また、こうした機関は、現在リスクがないということで、金融当局による検査・考査が一切行われていないが、この現状について伺いたい。
(答)
 金融活動をしている特殊法人が、民営化されたり、廃止された場合に民間金融機関にどのくらいの影響があるかということであるが、特に試算をしていないので正確なところは申しあげられない。例えば、住宅金融公庫をみると、現在、住宅金融公庫は、全国の住宅ローンの40%のシェアを持っており、こうしたものを民間の金融機関が担うということになると、大きな収益源になるということは間違いないが、どの程度かは、いろいろな前提を置かないと正確には言えない。単純に住宅ローンのみならず、それに関連した我々の新しいサービスの提供もできると思うので、影響は相当に大きいのではないかと考える。その他の政府系金融機関についても、プラスの影響がかなりあると言えるが、現段階では先程申し上げた通り、試算を行っていないので正確な数字はご容赦頂きたい。
 政府系金融機関の資産内容の検査については、「金融機関として」あるいは「政府の機関として」などいくつかの切り口があろうかと思う。個人的見解であるが、政府の金融活動における一つの大きな問題は、それぞれの機関が政府の管理の仕組みで行われるのか、金融機関の管理の仕組みで行われるのか、いろいろな切り口があることだと思う。この10年から20年の間に、金融界では、世界的にリスク管理の手法が非常に高度化しており、それに伴い、民間金融機関についてはリスク管理手法が高度化し、監督当局の検査のスキルも非常に上がってきている。そういうものが政府系金融機関の管理に十分に活用されていないという問題がある。したがって、政策目標に照らして、国民的合意のもとにその金融機関の存続意義があるということになったとしても、金融機関の管理は民間金融機関の管理と同様に、特に資産の管理については、どういう形態になるかは別として、きちんとした管理が第三者の手によって行われなければならない。それが、監査という形であったり、監督当局の検査という形であったり、いろいろなことがあろうかと思うが、いずれにせよ、経営あるいは業務を行っている人とは別の第三者がその内容について評価をするということが必要だと考える。特に、政府系金融機関の場合は、政府の信用に基づいて、政府のコストで行われている政策的な金融機関であるから、最終的には国民の負担になるというものであるので、これについては、厳格な管理がなされなければならないと考えている。


(問)
 柳沢大臣が、主要行に対して年1回検査を行い、検査結果が反映されているか監視していくと話していたが、それについて、会長の考え、評価を伺いたい。
(答)
 そうした方針であるということは金融庁から聞いている。主要行については、年1回の検査を行なうということである。また、その検査結果が適正に決算に反映されているかどうかについて、決算の前に立ち入り検査をして、フォローアップ検査を行なうと決めたということである。このフォローアップ検査については、恒常的なものになるかどうかはっきりしていないが、スケジュールとしては、8月または1、2月という決算の前あたりで立ち入り検査をして、内容を見たいということのようである。
 金融機関の不良債権について、その実態が正確に理解されていないということが非常に大きな問題であり、正しく理解していただくため努力を惜しんではならないと考えている。こうしたなかで、99年7月に金融検査マニュアルが適用開始となり、それを、自己査定の行内ルールに反映させ、都度自己査定を行ってきた。そういう意味で、ようやく金融検査マニュアルが出来て2年ということであるが、その間いろいろな工夫をし、検査を通じて、我々の自己査定の精度をさらに上げていくということは必要である。検査を年1回実施するという考え方、またそれが決算に、あるいはディスクロージャーの数字に適正に反映されているかということについての立ち入り検査を行なうということは、現在数字について不透明感があるわけであるので、我々が実際に開示している債権額、さらに引当が十分かどうかということを金融庁という第三者あるいは監督者の目で見て、それを言わば裏書きするということであり、マーケットの信認を得るという意味では適切な対応であると私は思っている。


(問)
 塩川財務大臣から株式取得機構の設立に関して具体的な要請はあったのか。
(答)
 現在議論されている株式取得機構の設立は株価の低迷に対する非常に重要な施策と考えており、是非早期に成案を得て実行に移したいと考えているので、銀行界も協力して欲しいとの話があった。現在金融庁からのご提案を受けて、我々も建設的に議論しているところであり、こうした点でその方向は全く変わらないものなので、現状についてお話をし、できるだけ早期に設立できるよう私どもも努力したい旨お伝えしたところである。


(問)
 そのような話は金融庁の柳沢大臣が要請するのであれば分かるが、財務省は所管外ではないのか。それ以外に本当に塩川大臣から要請はなかったのか。
(答)
 株式取得機構についてお話があり、それ以上のことはない。財務省の所管外ではないかというご指摘については、私はコメントする立場にない。


(問)
 塩川大臣とのやり取りは会長から見て何であったとお考えか。挨拶か、それとも要請か。
(答)
 大臣は以前から存じあげているところであるが、現在の株価あるいは景気の状況について心配をしていらっしゃって、そのなかで銀行の関連する部分について、「よろしく頼むよ」ということをおっしゃったのだろうと理解している。特別にそれ以上のものがあったとは感じていない。


(問)
 「よろしく頼む」というのは要請ということか。
(答)
 先ほど申しあげたように具体的にお話のあったのは株式取得機構の問題だけであり、早期に立ち上げるよう努力して欲しいとのことである。


(問)
 株式取得機構を立ち上げる際に、優先拠出金をどう分担するかが問題になると思うが、銀行協会としてはどのようなスタンスで臨むつもりか。また、拠出問題に関する議論の進捗状況は如何か。
(答)
 取得機構については、現在まさに議論されているところであり、特に優先拠出についてどうするかという点は神経を使わなければならない問題でもある。今日のところはコメントは差し控えたい。


(問)
 個別行の話で恐縮であるが、金融庁の検査を受けて、みずほグループの不良債権の残高が1兆円程度増える見通しという報道があったかと思う。それが事実かどうかということと、事実であるとすれば、検査を受けて、これまでの査定のやり方を見直した部分があるのかどうかについて伺いたい。
(答)
 みずほの個別行問題についてのご質問であるが、「1兆円」という報道があったことは存じあげている。自己査定というのは先ほど申しあげたように、色々議論をしながら都度精度を高めていくというものである。1兆円という数字は今年の9月の自己査定額との関係での話と思うが、今期の自己査定はまだ作業を実施していないので、金額については何とも申しあげられない。
 それから、先ほど申しあげたように、金融検査マニュアルは、その主旨を解しながら、それぞれの銀行が自己責任のもとで自己査定ルールに反映させてきたというものであり、その細部についての議論が、今回の検査の中でもあった。そういう議論を取り込んで、みずほの中で自己査定ルールをより精度を上げていく、こういうプロセスになる。
 ちなみに、99年の7月に、金融監督庁検査部長名で検査の担当官宛に出された検査マニュアルについての指示を読むと、「金融検査マニュアルはあくまでも検査官が金融機関を検査する際に用いる手引書として位置づけられるものであり、各金融機関においては自己責任原則の下、このマニュアル等を踏まえ創意・工夫を十分に生かし、それぞれの規模・特性に応じたより詳細なマニュアルを自主的に作成し、金融機関の業務の健全性と適切性の確保に努めることが期待される。」ということが書いてあり、このマニュアルの細部の解釈というのは監督当局にあるわけであるが、我々もこのマニュアルに基づいた自己査定ルールというものを行内で作り、そして自己責任で管理している、というのが今の状況である。
 今回は、みずほにとって金融検査マニュアルが適用されてはじめての検査であった。細部についての色々な考え方の議論があり、そういった議論を取り込み我々なりの責任で、自己査定ルールの精度を上げ、これを9月の我々の自己査定に反映させていきたいと考えているところである。


(問)
 東京三菱銀行が金利基準という形の査定の仕方、要注意債権に対するスプレッドを見直して、それに足りないものについては要管理債権に落としていくというやり方をとっているということであるが、そういった考え方はみずほグループではとらないのか。
(答)
 東京三菱銀行がどのような基準で行われているのか公表されていないので、何とも申しあげられない。ただ、みずほでは金利のレベルによって要注意先のうちの一部を要管理にするということは既にやっている。


(問)
 オフバランス化の対象を確認させていただきたい。緊急経済対策で破綻懸念先以下の11兆7,000億円が対象になっているかと思うが、その他に地銀・第二地銀が持っている破綻懸念先以下の額を考えれば、その対象は倍以上に拡がるという考え方もあるのだが、全銀協会長として、不良債権の最終処理、オフバランス化の対象となるのは、あくまで11兆7,000億円なのか、地銀・第二地銀もそれに準じて早期処理をすべきとお考えなのか伺いたい。
(答)
 緊急経済対策の中では、主要行における破綻懸念先以下の債権について2年・3年ルールでオフバランス化するよう指示されている。ただ、地方銀行にもそうした債権はある。
 不良債権の処理については、2つの段階でやってきており、財務的な処理、つまり引当金を積む、あるいは直接償却をする、あるいは売却をするというようなことが1つ、つまり与信関係費用というものをバランスシートに反映させていくというプロセスである。
 もう1つは、お客さまとの関係で債権・債務の関係を処理をしてバランスシートから落としていくということである。
 このうち、その2つ目のほうのプロセスのことに今回政府は重点を置いている。これについては、私ども主要行が持っているポートフォリオについて、私どもの経験では大体3年ぐらいあればかなりのものが目処がつけられる。逆に、それを超えてなお処理できないものは、なかなか大変だということになる。いずれにしても我々は自己資本比率という問題があるのでバランスシートから不良債権を落としていくことによって、バランスシートをきれいにしていこうという強い動機をもっている。この観点から、主要行にかぎらず、銀行というのはそもそもそういった方向で動くというのが一般的であると思う。
 主要行が2年・3年のオフバランス化を進めていくことで、地銀のオフバランス化も進んでいくというのが政府の考えだと思う。多くの頭取にお聞きしても今申しあげたようなバランスシートから外していく、最終処理を急ぐということが、経営の最重要課題の1つであるとして、ご努力をされていると認識している。ただ、政策の優先順位として、監督当局による明確な指導というようなものがないということだろうと思う。


(問)
 柳沢大臣が最近、一部の報道機関などのインタビューの中で、将来的に検査官を主要行に常駐させたいという話をしているが、それに対して賛成するかどうか考えを伺いたい。
(答)
 柳沢大臣が常駐させることも考えているとおっしゃったかどうかということについては、正確には私は存じあげないので、正確なコメントはできない。しかし、例えば、アメリカのような監督体制をとった場合、富士銀行のニューヨーク支店にはFEDの検査官が、3名程度であったかと思うが、常駐している。日本と違って、銀行のコストで常駐しているわけであるが、どうして常駐しているのかというと、要は非常に大きな銀行で、市場に対するインパクトが大きい銀行については、常に監督当局が直接日々のオペレーションをウォッチする必要があるということで常駐しているわけであり、日本の銀行の中では当行を含めて3行が対象となっているのではないかと記憶している。
 そうした監督のやり方があるし、常駐をしないでやっているような、例えばロンドンのFSAのようなやり方もある。
 常駐するかどうかというのは、監督の仕方の問題であるので、私の立場から、そういうことが良い事かどうかというのは申しあげられないが、監督のあり方というものが議論される中で議論されるべきことであって、常駐が良いか、常駐する必要がないかということだけを取り出して議論すべき問題ではないと思う。


(問)
 私的整理に関するガイドラインにおいて、対象企業の債務超過解消年限について3年ということが中間取り纏めに盛り込まれたが、その後のシンポジウム等での関係者の発言を聞いていると、必ずしも3年ということについて解釈が統一されていないようである。銀行側はあくまでも目処であるといい、一方、経団連側は3年をキッチリと守って欲しいと言っている。これについてどう考えるか。
(答)
 中間取り纏めでは、例えば3年というような期限を定めることが必要、というような表現になっていたと思うが、要はそういう議論があったということである。実際に議論をしているのは弁護士とか会計士とか実際に銀行でやっている実務家の集団であるので、その期間というものが実態からみて適切かどうか、適当な期間がどうか、長過ぎないか短過ぎないか、そういう議論をしていて、3年というものが書かれたということである。3年の解釈についても、3決算期なのか、歴年で3年なのか、足掛け3年なのか、いろんな議論がある。現時点で詳細な報告は聞いていないが、ワーキンググループではその辺について検討を行っており、9月末の最終報告までに実務的にワーカブルなものができることを期待している。


(問)
 対象企業の債務超過解消年限の問題は、現時点で私的整理に関するガイドラインに関して主要な意見の収斂をみていない論点のひとつであるとみて良いか。
(答)
 いくつかある論点のひとつだと思う。


(問)
 銀行保有株式取得機構の設立について、金融界と金融庁との間での最終的な合意時期はいつ頃になるのか。
(答)
 金融庁側のスケジュールの目処としては、例えば9月に臨時国会が招集されるとすればそれまでに法案化したいという考えがあるようであり、それを前提とすれば8月末迄には大枠が決まらなければならないというスケジュール感と認識している。


(問)
 株式取得機構に係る100億円の優先拠出金の取扱い等に関する大体の感触はどのようなものか。
(答)
 金融庁案について、細部はともかく、大枠について大きな反対はしていない。ただ、100億が適当なのかどうかということについても結論が出ているわけではない。なにぶん議論の最中であるので、申し訳ないが、詳細についてはお話はできない。