2001年9月18日

山本会長記者会見(富士銀行頭取)

 菅野専務理事報告

 私からはまず、次期会長の内定について報告する。
 9月13日に開催された正副会長会議で、来年1月に発足する予定のUFJ銀行の頭取に就任される、三和銀行の室町頭取を次期会長に推薦することを決定し、本日の理事会で了承した。
 なお、会長の正式な選任は、来年4月の定例総会後の理事会において行われる。
 次に、全銀協では、先般、経団連が推進する環境自主行動計画に参加することを決定したが、本日の理事会で、銀行業界の環境問題に関する行動計画を決定した。行動計画の主な内容は、
 ・省資源・省エネルギー対策の推進による資源の効率的利用
 ・リサイクルを推進することによる循環型社会構築への取組み
 ・環境面に着目した金融商品の開発・提供等、お客様の環境意識の高まりに対応した業務展開
などである。
 なお、本行動計画に基づく会員銀行の取組み状況等については、毎年フォローアップしていくこととしている。
 私からは以上である。

※本日、午後3時32分、ビル管理者より避難命令を受け終了


会長記者会見の模様


(問)
 ニューヨークのテロ事件の影響で、ニューヨーク株式市場もかなりの下げ幅となった。東京の方も今日は多少戻しているものの、乱高下の状態である。このような中、今後の景気の動向、株価の動向をどのように見ているか伺いたい。
(答)
 テロ事件前も不透明な状況であったことに加え、テロ事件の影響もまだアメリカ、ヨーロッパ、日本で消化しきれていないところである。そうした状況の中でのことであるので、明確な意見を申しあげにくいが、現時点で考えていることを申しあげる。
 4-6月期の日本の経済成長率がマイナス0.8%であったことや、米国経済の回復が遅れていることなどを受けて、2001年度全体でもマイナス成長を見込むエコノミストが増えていた。足下の動きを見ても、輸出や設備投資の減少とそれを受けた生産の縮小、失業率の上昇、企業収益の悪化などが続いており、個人消費についても、雇用・所得環境は悪化しつつあるのが現状である。
 そこで起きた同時多発テロが米国経済に及ぼす悪影響とさらに日本、欧州への波及について、現時点で正確な評価はできないが、日米ともに景気が減速し、株価が下落するなかで生じたことであり、経済の見通しについては慎重に見ておいた方がよいと思う。米国において、マインド悪化による消費の減速や生産活動の回復の遅れ、さらにこの事件による航空や金融など産業界への打撃、金融取引の不安定化などが指摘されている。昨日のニューヨーク市場の株価も、過去最大の下げ幅となった。このような状態が長引いて米国経済の回復力を削ぐことになれば、日本の経済にも無視できない影響があるとみておくべきであろう。
 このところの株式市場の低迷は、そのような米国経済停滞を起点とする先行き不透明感の高まりを反映していると思う。しかし、日経平均株価が1万円を割り込むといった状況は、史上まれに見る同時多発テロを引き金とした、極めて特殊な事情によるところも大きく、必ずしも経済の実態を反映したものとは言い難く、さらには株価下落の行き過ぎを止めるための手段もいろいろ議論されている。
 昨日、米国連銀、欧州中銀がそれぞれ0.5%の利下げを発表したが、日銀も何らかの協調行動をとるのではないかと報じられている。政府・与党が景気の落ち込み、雇用情勢の悪化を止めるために補正予算の編成を検討し始めていると聞いている。また、個々の企業や銀行においても、新しい状況の変化に対応した事業の再構築など適切な対応が求められる事態になったと認識している。


(問)
 東京株式市場が下落傾向を強めている状況を見ると、金融機関の保有株式の含み損が大きく拡大しているのではないかと考えるが、そういったことを反映して優先株に対する配当やそれを含めた銀行決算が相当厳しくなってくるのではないか。これについて、どう考えるか。また巷で言われている公的資金の再注入の必要性について伺いたい。
(答)
 株価が下がった場合の銀行の決算に与える影響についてであるが、この9月には、時価会計が株式など「その他有価証券」に導入されることになっている。こうしたことで、銀行の自己資本に影響が生じるといったことが一つの心配事かと思う。
 もう一つは、有価証券の強制評価減を実施すると期間損益を圧迫するのではないかということである。この二つから配当ができなくなるのではないかというのが、世の中で心配されていることではないかと考えている。
 時価会計の導入などにより自己資本が不足するのではないかということについては、柳沢大臣や森長官も記者会見で再三おっしゃっている通り、自己資本への影響は限定的であり、この点から公的資金が必要となる様な事態ではないとのことである。私も私が知る範囲の資料ではそのとおりの認識である。
 一方、配当の問題についてであるが、配当は個別の銀行の状況であるので、一概には申しあげられないが、一時的に配当の原資が不足する、あるいは少なくなることによって、大きな問題が起るかということは、自己資本の厚みが如何かということを十分に考え、冷静に評価をすれば良いことであって、そのことで大騒ぎして、金融危機だということを言うべきではないと考えている。


(問)
 市場で30社問題ということが言われていて、要注意先向けの貸出金について引当不足ではないかという指摘がされているなか、先般、マイカルが民事再生法の申請を行った。それに伴いみずほフィナンシャルグループが大幅な決算修正を行わざるを得なかったといった事実を踏まえて、要注意先の引当金不足の問題についてどう捉えているのかお聞きしたい。また柳沢大臣も、自己査定のあり方について、格付変更の頻度を増やしてはどうかとか、株価なども反映させることを検討すべきではないかと言われているが、これについてどう考えるか。
(答)
 個別の取引先に関することについてはお答えしかねるので、一般論で申しあげる。 要注意先に対し引当を増加させるべきという意見があることは承知している。
 要注意先に対する引当率は、金融検査マニュアルや公認会計士協会の実務指針に則って過去の実績率等に基づき客観的に算出している。この原則の中で、客観的な根拠に基づいて引当率をより精緻に算出することはあっても、明確な根拠に乏しい中で引当率を恣意的に引き上げることは、会計慣行として難しい問題であると認識している。柳沢大臣や森長官もおっしゃっているが、「腰だめ的」に引当率を上げることはできない。
 一方で、柳沢大臣は「現状の金融検査マニュアルによる引当基準の範囲の中で、要注意先をグルーピングし市場のシグナルを、よりタイムリーに引当率に反映できるような仕組みを検討してはどうか」とおっしゃっている。また昨日、森長官も会見で「短い間の急激な信用収縮に対応できる様な自己査定システム」を探求していく必要があるとおっしゃっている。
 企業の経営環境や業績等の急速な変化にも対応できるよう、自己査定或いは引当の精度をあげるという意味で、大臣や長官のおっしゃっているとおり、足下の状況をタイムリーに反映した仕組みを検討することは必要だと思う。今後いろいろ検討を進めてまいりたい。


(問)
 みずほフィナンシャルグループのCEOの立場としてお答えいただきたい。先般、安田信託銀行が業績・配当予想の下方修正と共に経営基盤強化計画を発表しているが、今回の動きも踏まえ、みずほフィナンシャルグループにおける安田信託銀行の位置付けについて改めてお聞きしたい。
(答)
 安田信託銀行は、みずほフィナンシャルグループの中でみずほ信託銀行と共に信託部門の重要な担い手であり、今後ともその位置付けは不変である。
 安田信託銀行固有の機能や、高い専門性を持つ人材は、みずほフィナンシャルグループの強みであると認識しており、みずほフィナンシャルグループとして最大限活用していくというのが基本方針である。
 安田信託銀行の固有機能で代表的なものは、業界トップクラスの実力を誇る不動産関連業務、これには流動化も含むが、それに遺言信託関連業務、個人向け信託運用商品の取扱いなどであり、みずほフィナンシャルグループの中では唯一安田信託銀行のみが取り扱える、グループの総合金融サービスに必要不可欠の機能である。
 なお、みずほフィナンシャルグループは、安田信託銀行を含めみずほ信託銀行、資産管理サービス信託銀行と3つの信託銀行を擁しているが、機能の重複はなく、戦略的位置付けは明確である。
 このたび、平成14年4月から安田信託銀行の社名を「みずほ」を冠する社名に変更することを公表したが、これは安田信託銀行が名実ともにみずほフィナンシャルグループの一員であることを広くお客様にもご理解頂き、みずほフィナンシャルグループ内の連携を更に強化していくためである。
 さらに、資本関係の付替えについては、証券子会社であるみずほインベスターズ証券や新光証券、銀行子会社、その他の上場会社や関連会社とともに、最適な方法を検討中であり、詳細決定後一括して発表する予定である。
 また、今般発表した安田信託銀行の財務体質改善については、不良債権の抜本的な処理を行い、それに伴う欠損金を約1,000億円の減資により解消するとともに、必要な増資約500億円を富士銀行1行で引き受け資本強化を図るものである。
 これにより、安田信託銀行は、みずほフィナンシャルグループの中で、その持てる機能を存分に発揮し、みずほフィナンシャルグループの業績伸展に最大限貢献できる基盤を整備出来たと考えている。