2002年4月16日

山本会長記者会見(みずほFG特別顧問)

菅野専務理事報告

 (特になし)


会長記者会見の模様


 全銀協会長記者会見の冒頭をお借りいたしまして、一言申しあげさせていただきます。
 この度のみずほフィナンシャルグループの統合に伴い発生致しました、ATMの障害や、口座振替処理の遅延等により、多くのお客さまをはじめとしご関係の皆さま方に多大なご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申しあげます。
 現在、グループ一丸となって、事態の復旧に向けて全力を挙げて取り組むと共に、再発防止のための徹底した原因究明を行っているところでありますが、決済機能が銀行の果たすべき重要な社会インフラの一つであることを考えますと、今般このような事態に陥りましたことは、誠に申し訳なく、その責任を痛感しております。
 引き続き、問題解決に向け、全力で取り組み、お客さまをはじめ皆さま方の信頼を早期に回復すべく努力してまいる所存でございます。


(問)
 前CEOとして、トラブル発生に関する進退問題も含めたご自身の責任などについては、どうお考えか。
(答)
 今回の一連の問題における責任は、極めて重大であり、統合準備過程での最高責任者であった3CEOの一人としてその責任を痛感している。
 現在、グループ一丸となって早急に原因の究明を図り、全力を挙げて早期正常化に努めているところである。私自身も、現経営陣からの報告を受け、アドバイスを行うなどのサポートをしているところである。
 一方、多くのお客さまをはじめとし、ご関係の皆さま方には、多大なご迷惑をお掛けしていることについて、誠に申し訳なく思っており、心からお詫び申しあげる。
 この様な事態に至ったことの責任は、基本的には統合段階の最高責任者であった私を含めた3CEOにあると考えており、責任問題についても、事態の復旧目処がたち原因究明がなされたところで、具体的に明らかにしていきたいと考えている。


(問)
 「具体的に明らかにする」とのことであるが、明らかにする事項について何か念頭にあるのか。
(答)
 現時点で具体的なことについての言及は差し控えさえていただきたい。


(問)
 その点について3CEOで何か責任問題についての協議は始めているのか。
(答)
 3人とも、今回の一連の問題について、統合準備過程での最高責任者として、その責任を痛感している点は同じである。
 具体的にどのような話をしているかは、ご容赦いただきたいが、今まで私が申しあげたことは、3CEOの一致した考えである。


(問)
 12日に金融庁が特別検査の結果を公表した。特別検査の効果や、問題点についてどのようなご所見をお持ちか。併せて発表された「より強固な金融システムの構築に向けた施策」において、「不良債権処理の促進」が盛り込まれより一層の加速が求められているが、銀行界としての決意はどうか。
(答)
 昨年秋の改革先行プログラムの公表以降、多くの銀行が、債務者の業況が急激に悪化するような昨今の経済情勢の中で、「改革先行プログラム」の趣旨を踏まえた格付けや自己査定を主体的に実施するなど、政府の方針を踏まえ、不良債権問題の早期正常化に向けて更なる努力を行ってきたところである。
 一方、過剰債務や非効率性といった産業側の抱えている問題についても、こうした銀行側の不良債権処理への取組みの中で、より迅速に問題の解決が求められるようになり、企業の問題解決に向けた様々な取り組みや整理が進展したと考えている。
 こうした中で、特別検査を受検し、当局と銀行と会計士が更に直近のデータをもとに、様々な議論を重ねたことで更に不良債権問題の正常化に向けて、大きく前進したことは事実ではないかと考える。
 また、今回公表された「より強固な金融システムの構築に向けた施策」においても、改めて不良債権処理の促進が盛り込まれている。
 銀行界としても、引き続き政府の方針を踏まえ、不良債権問題の正常化に向けて最大限の努力を重ねてまいりたいと考えている。


(問)
 システムトラブルの関連で、見切り発車ではなかったかという指摘が大臣をはじめ各方面からあったかと思うが、この点についてはどうお考えか。
(答)
 技術的なことになるので、表現が不正確になるかもしれないが、銀行の勘定系の基本になるオンラインシステムについては、3行分を2行に再編する、いわゆる勘定の移行、システム移行という言葉も使うが、これについては、予定どおり順調にいった。問題は、今、いろいろご迷惑をお掛けしている口座振替の件である。これは勘定系の4月1日に向けての再編、あるいはオンラインのシステムに係る部分の問題ではなく、バッチ処理対応の部分であり、いわゆる見切り発車とご指摘されているのは、ここに遅れの部分があったにも関わらず全体を動かしてしまったということについてであろうかと理解している。
 このバッチ処理の口座振替については、私の承知する限りでは、「30日現在で一部遅れがあるが、ただし、一部の遅れは4月1日中の処理に間に合う」というのが30日の認識であった。すなわち4月1日の振替分について1日中に処理することが出来るという認識である。31日に私自身もみずほホールディングスに出勤して、この段階でも1日中の処理について、ほとんど処理できるという見込みであったと記憶している。そういう意味で、見切り発車であるということは、必ずしも正確なご指摘ではないのではないか、と思っている。


(問)
 そうすると、確実にできるということを確認したうえで4月1日に臨んだのではなく、4月1日中に処理ができるという情報があったということであり、前もってテストは行っていなかったということか。
(答)
 テストはしていたと報告は受けている。ただ、テストはしているが、現実にそこに存在するものを処理するというのはその時でないとできないわけである。


(問)
 一部「最初の段階でシステムをリーテールとコーポレートにするという話があったが、それが1年後に白紙になった」との報道がある。この報道についてどのようにお考えか。また、なぜもっと早い段階でシステムを統合しなかったのか。
(答)
 当初は、システムを一挙に統合するという案があったことは確かであるが、実際の作業を進める過程において、分割・統合を早期に実現するためには、以前に前田社長も説明したと思うが、リレーコンピュータというもので3つの既存のシステムを繋いで営業サービスを行うことがシステム面・事務面の移行リスクを極小化する観点から現実的であるとの判断をして変更をしたわけである。
 つまり全てを一緒にするためには、商品の統一、手続の統一、その他非常に大量の作業・準備が発生するわけであり、そうしたことが分割・統合を遅らせることになってはならない、また、リレーコンピュータで繋いでサービスを継続することについて十分に可能であるという評価をしてスタートしたものである。
 今後の予定としては、できるだけ早期にシステムの統合を行う計画で走っているように承知している。


(問)
 電力会社等いろいろなお客さまに経費負担が発生していると思うが、そうしたお客さまへの損失補填とか損害賠償の影響で、今後、決算に影響が出るとの見通しをお持ちか。
(答)
 私は今、執行部に属していないため、そうしたことについて責任のある回答はできないが、お客さまとの関係というのは、私自身も基本理念に「お客さま第一」を掲げてまいったところでもあり、みずほでも、統合の経営理念の最初に、「お客さまの信頼」というものを一番大事にするということを謳っている。お客さまの信頼なくして銀行は成り立ち得ないので、誠意を持って個別にいろいろご相談をさせていただくことになろうかと思うが、それ以上具体的なことは、私からは責任のある回答はできない。ご容赦いただきたい。


(問)
 責任は基本的に3CEOにあるとの説明があったが、責任の取り方として特別顧問を辞任する以外に方法はあるのか。
(答)
 現時点で具体的なことを申しあげるのはご容赦いただきたい。まず、現在行われている原因の究明を待って私どもは最終判断したいと考えている。


(問)
 退職慰労金の返上について、3人の間で何か話したことはあるのか。
(答)
 3人の間での話は具体的には申しあげられない。先ほど申しあげたところまでが現時点で3人で共通した考え方としてお話しできるところである。


(問)
 特別顧問の制度は、みずほの経営の継続性を保つために導入されたと聞いているが、継続性は保たれたとお考えか。
(答)
 特別顧問に就任してまだ16日あまりであるが、この間、多くのお客さまから取引の継続性という観点から、一挙に長い付き合いの経営陣達がいなくなってしまうことには不安があるという言葉をいただいており、現実に、この2週間の間にもお客さまからいろいろなご相談を受けたり、あるいはお客さまとの取引について、現在の執行部から相談を受けたりというようなこともある。我々の都合で統合するわけであり、お客さまとの取引の継続性を維持しつつ、お客さまに迷惑をかけないようにする上で、必要であると考えている。


(問)
 先ほど30日の時点で、一部遅れがあったとのことであるが、これは金融庁へはどのような形で報告したのか。金融庁はそれにどのように答えたか。
(答)
 私が直接、その段階で金融庁との関係について指示、あるいは接点を持っていないので、私から答えるのは適当ではないと考える。責任ある回答は、今のみずほホールディングス社長ができるだろうと思う。


(問)
 30日の時点では最高責任者3人のうちの1人であったので、当時、金融庁にどのように報告し、どういう返事を受けたかについては、最高責任者として当然知っていることではないのか。
(答)
 30日の作業の遅れは、深刻な遅れであるとは認識していなかったので、その段階で金融庁に報告することはなかったと記憶している。


(問)
 それ以降も4月1日まで報告はしていないということか。
(答)
 私の知る限り、4月1日までしていない。あるいは、30日、31日の移行本部が報告していれば別であるが、そのような報告は受けていない。


(問)
 30日、31日のトラブルについて時間が経ってから開示しているようだ。報道を受けて、後手後手で開示しているように感じられるが、現経営陣の責任についてどう考えるか。
(答)
 現経営陣の責任についてコメントする立場にないことはお分かりいただけると思う。1日以降、実際にどういう形で対外的にご説明をしてきたのかということについて、詳細、正確に私からは申しあげられない。「隠していた」とか「隠し続けたい」という意図があったとは思っておらず、おそらく問題の深刻さの認識が少し遅れたのかもしれないという印象は持っている。


(問)
 隠す、隠さないの問題ではなく、そもそも積極的に開示すべき問題なのではないか。
(答)
 このように影響に広がりのある問題については、銀行の社会的責任というものを考えると、できるだけ早く問題の所在を開示してご理解を得ることが必要であると考える。


(問)
 責任を感じているとのことであるが、これまでを振り返って、どこに手抜かりがあったと思うか。
(答)
 今、原因究明についてようやく本格的な作業が始まった段階であり、それを先取りして申しあげるのはいかがかと思うが、前CEOとして個人的な考えを申しあげる。システム開発については、3つのシステムを生かしつつ、ある部分は統合し、ある部分は繋ぐという形で、リレーコンピュータで繋ぐことを決めた。開発全体のマネジメントというのはディテールに下りると難しい巨大なものであり、私どもが選択した開発の体制というのは、各銀行にシステムの分野毎に開発責任を分担させるというやり方であった。それぞれの銀行が現在持っているシステムを中心に開発をするものについて責任を持つという体制で、詳細な分野の規定をし、これを各銀行の頭取が責任をもって開発にあたるという体制を取ってきた。したがって、富士銀行が関連するシステムについては、私が責任を持って開発を行った。みずほホールディングスは、CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)が、これら計画の進捗状況の報告を受けて、進捗状況について問題がないかモニターし、問題があれば、計画の練り直しをさせていた。また、この仕組に横串をいれるために、業務監査委員会を設けた。この委員会が各銀行において、きちんと開発が行われているかということを、第三者の立場で見て、我々に報告を行った。これらにより、みずほホールディングスとしては、下からの報告と、横串を入れたモニターで確認するという体制であった。
 私としては万全の体制で臨んだつもりである。特に最終の6ヶ月については、詳細な報告を経営会議外の場でも求めており、それぞれが責任を持って開発をしているということを些かも疑わなかった。したがって、あのような問題があのような大きな規模で発生し、本当に驚いている。一体何が起こったんだ、というのが4月1日、2日の報告を受けた時の率直な印象である。何が欠如してたのかを考えると、おそらくコマーシャル・ユースのシステムとしては世界でもあまり例を見ないほどの巨大なものであり、システム構築のためのマネジメントの仕組について、我々が考えたものでは、あるいは足りないものがあったのか、あるいは、銀行毎にやっている開発体制のどこかに問題があったのか、実際のところまだ正確には把握していない。そういう意味で私は、一生懸命やってきたのに、このようなことになって大変残念である。


(問)
 各行が責任を持って開発してきたということだが、バッチ処理等の口座振替システムはどちらのシステムか。
(答)
 第一勧銀のシステムである。


(問)
 そこからの報告というのは、まずDKBのほうで上まであがって、それからホールディングスに情報が流れるということなのか。
(答)
 少なくとも私がみずほホールディングスのCEOとして接する報告というものは、それぞれの銀行からホールディングカンパニーのCIOにあがってきて、そこでまとめられたものの報告を受けるという形である。それぞれの銀行単位で開発をしているので、当然それぞれの銀行の責任において報告があがってきているわけである。


(問)
 事後的に、3月の始めの段階なりに、もう少し長引かせたほうがいいのではないか、1ヵ月なりゴールデンウィークまでなり落ち着いてやったほうがいいのではないかという声がグループの中にあったという指摘も色々後から出てきているわけであるが、公式・非公式に、山本さんなりに、あるいは3CEOの話し合いの中で一部の懸念材料としてそういう声もあるという認識はあったか。
(答)
 ない。非公式にもそういう話をシステムの関係者から聞いたことはない。先ほど申しあげたように、特にこの6ヵ月は富士銀行のシステム担当の役員とは頻繁にディスカッションをしてきた。世界で初めてのようなことをやるわけであり、私自身も心配であるので、それについて報告を聞き、何が問題なのか進捗状況をチェックしてきたということである。その過程で間に合わないという判断は、少なくともディテールを承知している富士銀行のシステム部門の中にそういう考え方が部長とか常務とかいうレベルであったという認識はしていない。


(問)
 3月上旬の口座振替強化テストは、ボリュームは非常に大きかったそうだが、質的な面での足りなさはあったと思うのだが、その点はどうお考えか。
(答)
 問題が起こってから原因究明という形でそういう見方があるいは出てきているのかも知れない。しかし、その段階ではそれぞれの責任でそれぞれのテスト環境を作って、例えばボリュームとかその他、そういうことをやってテストをしているということを私どもは確認しているので、それが充分であったか充分ではなかったというのは実はその段階では詳細にCEO自身が踏み込んで把握するということは現実に能力もないし無理があった。今日も参議院の委員会で非常に専門的な知識のある先生から、色々コンピュータのベーシックなことについてご質問があったが、その先生もおっしゃっていたが、日銀でシステムをやっていらした大塚先生であるが、やはりトップが相当程度、理解をしなければいけないということは主張されながら、そうは言っても最後までトップ自らが本当の細かいところまで見るということは現実的ではないだろうということもおっしゃていた。ただ、システムについて相応の知識を持たなければならない、そしてそれをもとに判断しなければならないというのは特に銀行のような装置産業ともいうべきシステムに依存した営業をやっているところは、非常に大事なことだというふうに前々から私は思ってやってきた。それだけに、今回のようなことが起こって非常に残念であるし、銀行として本当に基本のところで信用を損なったという意味で申し訳ないという気持ちで一杯である。


(問)
 30日のトラブルの件なのだが、これはまさに富士銀行の顧客データに関するものだったと思う。トラブルがあったという報告自体を山本さんはどこで聞かれて、具体的にどのような指示をされたのか。31日はみずほホールディングスのほうに出勤されたとのことだが、30日は何か具体的に現場に指示をされるとか、陣頭指揮をとられるということはあったのか。
(答)
 対策本部を、みずほホールディングスは前田社長、みずほ銀行は工藤新頭取、コーポレート銀行は斎藤新頭取、この3人がそれぞれの銀行あるいは会社の本部長になって本部体制を敷いて、それぞれが自分の分野についてやっていたわけである。私は、みずほホールディングスの対策本部に話を聞いた。金曜日の夜、かなり遅い時間まで確認をして帰った。土曜日は電話で確認をした。日曜日は実際にみずほホールディングスのオフィスに行って、色々な状況を聞きアドバイスをしたということである。指揮自体は本部長に私どもは委任をしていたので、本部長の決定について、特に問題があれば相談があるので、それについては我々の責任で決定をするということであったわけだが、実際の問題としてはそういうふうな短時間でキャッチアップできる程度のものであるという認識であったので、その方向で行くということは私も承知していた。


(問)
 30日の段階でトラブルが発生しているということを山本さん自身が承知されていたということだが、その時にどういう指示をすべきだったとお考えか。
(答)
 後から問題の大きさが認識されたわけで、指示というものがどういうものであるべきかというのは後からであれば色々なことがあるかもしれない。しかし、その段階で私が言ったことは、若干の遅れであるということであるから、これは専門家の立場でキャッチアップをし、お客さまに迷惑が掛からないような対応を十二分に採るようにという以上のことは言っていない。


(問)
 30日の報告の件だが、事前のテストの話などを伺うと、バッチ処理でスムーズにできないものがある程度出るのは折り込み済みというところがあったのではないかという気が私はしているのだが、というのもパターンテストしかしていなかったわけであるから、個社対応の部分である程度のものがあっても人手で対応できるという、30日の報告では、ある程度想定したものなので大丈夫だという報告ではなかったのか。
(答)
 パターン云々というディテールの報告は聞いていない。全体として作業が少し遅れ気味だが、今のこの時点で考えられる作業のスケジュールからすると、30 日の時点では早い時間で完了できるという見通しだったと記憶しているが、少なくとも1日の勘定で全部が処理できるという見通しをその段階では持っていた。現場のスケジュール感がそういうものであったと記憶している。


(問)
 大きな話になってしまうが、2年8ヵ月前に3行が合意されて、3行の間で色々な話し合いが行われて、あるいは昨日、日銀総裁も指摘されていたが、取引先とか企業グループとか色々なしがらみを乗り越えながら進めてこられたと思うが、やはりお互いに遠慮しがちなところがあるままここに来てしまったとか、あるいは3行間の軋轢といったものが背景にあったという指摘についてどうご覧になっているか。
(答)
 99年12月16日だが、この段階で私どもは外部のコンサルタント、具体的にはATカーニーであるが、ATカーニーのシステムについての評価報告書というものをもらっている。これは専門家の立場で、銀行のサービスのレベルとか効率性とか色々な観点をこちらから要求して、それについて専門家の立場から評価をして欲しいと依頼したものである。評価報告書は、富士をベースにした勘定系システム、DKBをベースにした勘定系システム、どちらに集中してもいずれも優劣は付けがたい、経営判断をするに充分な検討がこの段階でなされてきているという評価であった。私どもが考えていた枠組みについてATカーニーからは特に大きな問題は指摘されていない。これは今日初めてお話することになるのかもしれないが、私どもはその16日のATカーニーの評価報告書をベースにして 12月22日にシステムの大枠を皆様に発表させていただいたという流れである。
 当然に、3つのシステムを持っているわけであるから、それぞれのシステムの担当は自分のシステムが一番良いと思うのは当然である。そのことが今日の問題を決定的にした、問題の根底にあるというようなご指摘もあるかと思うが、私どもは3つの銀行を一緒にしていくビジネスモデルを選んだということであり、そうしたシステム上の色々な問題あるいは色々なシステム間の主導権争いというようなことが当然に予想していて、そういうことはないというような奇麗事では済まないわけであって、そういう前提で色々なことを進めてきたわけである。しかし、そういったものを越えて新しい戦略に沿った再編をやりたいというのが我々の気持ちであって、その方向に沿って今日までやって来たということである。


(問)
 システム監査が金融庁のガイドラインでも指示されているが、今回、システム監査はどうなっていたのか。また、システム開発にはトラブルがつきものであるので、フォールバックプランのような危機管理策について経営上の議論はされていたのか。
(答)
 第1点の監査がどう行われているかということであるが、監査については、業務監査部にシステム部門の監査をやらせていた。この監査の方法が適切な方法であるか、監査の状況については適切であるかということについて、2001年の3月、KPMGによる「監査の方法および状況についての評価書」というものをとり、我々としては直接、業務監査がそういう機能を十分果たしているかはよく分からないので、我々の目ではなく第三者のプロに見てもらって、その評価を得ようということで、3月に評価をしてもらい、我々はその評価を報告として受け取っている。監査報告のあり方というものについては、その後、我々も注文を付けたが、KPMGの色々なアドバイスなども受け入れて、精度を上げてきたというのがこの1年の動きである。
 2番目の、ある段階で期日に間に合わない、あるいはシステムがうまくいかない場合には元に戻すことがあるではないかということについては、おっしゃる通りであり、私どもはクリティカルポイントを何個所か経由してきており、2月、3月とそういう段階をひとつひとつクリアをし、経営会議で確認をして前に進めてきた。3月22日には最終のシステム移行の作業、最終段階に入るということについて現状と今後の方針について、CIOから提言を受け、我々はそれについて経営会議で色々と議論をした。最終この方向で行って間違いないということを決定してきた訳である。そういう意味で、今のお話なども含めて、やりうる限り色々な知恵を集めてやってきたつもりであるが、最後の最後にこうした問題が起こってしまって、ご迷惑をお掛けしたという点について、私としては大変に悔しい思いをしているというのが今の状況である。大変に申し訳なく思っている。


(問)
 今回のみずほ銀行の問題が、金融機関の不信につながる可能性があると思うが、これについて全銀協会長としてどう考えるか。また、全銀協として何らかの対応を検討する必要はないのか。
(答)
 この点については、私自身が問題を起こした責任ある者であるので、全銀協かくあるべしということを申しあげにくい立場にあるが、金融庁および日銀がこのような問題が今後発生しないように、監督あるいは指導の強化をしたいということを、担当大臣および日銀総裁がおっしゃっておられた。具体的なアクションプランもできつつあるという印象を持った。そうしたものを受けながら、全銀協としてもやることがあれば、次期全銀協会長の仕事になろうかと思うが、全銀協としても金融システムの健全性確保という観点から、やれることがあればやるということになろうかと思う。


(問)
 口座振替の手順は、現在は3行に振り分けるというやり方でやっているが、昨年の暮れ近い段階でそれ以前の手順を変更した点があるという話を聞いたことがあるが、手順を変更したことはあるのか。
(答)
 技術的なことで私の表現に間違いがあるといけないが、従来第一勧銀が単独で使っていたシステムをベースに、3つの銀行のお客さまのものが入ってきて、それを2つの銀行に仕分けするという作業がこの3月31日をはさんであったわけである。その仕分けのための機能は当然に付加しなければならない訳で、変更をしたということであれば、そのことをおしゃっているのかなと思うので、そうだとすれば、そういう変更をしたということである。


(問)
 
それ以前はどういうやり方をすることにしていたのか。
(答)
 第一勧銀のシステムでお客さまから受け入れた、例えばテープを、支店別に割り振っていく、お客さま別に入ってきたものを支店別に割り振ってコンピュータにかけて引落としをするという、そういう作業である。ところが、1行だけではなく、前の銀行ベースで入ってきたものを新しい銀行ベースに振り分けるというような作業がある。お客さまとの間では半年位まえからこの転換その他色々やってきたわけであるが、実際に3月のそこのところになると、大変な数のお客さまであるから、中にはデータが間違っているものがあるとか、銀行側の手続き変更が必ずしも十分に浸透していないお取引先もあるとか、色々なことがある。そういったものが新しい開発したシステムのところで引っかかって前に進まなかったということがあったというように認識している。


(問)
 伺いたかったのは、そうではなく、口座振替について、着地点としての移行後の姿について、この半年位の間にやり方を変更したことがあったのか。
(答)
 枠組みはずっと前に決めているので、それを変えたというようには考えていない。お客さまが入れ替わるということはあったかも知れない。


(問)
 原因究明の行内調査で一番話を聞きづらいのは3CEOであると思うが、調査に既に協力したのか、また、今後協力をするのか。
(答)
 今までの決定では我々CEO3人だけの議論というのは実はなく、必ずシステム担当の役員が入っているとか副社長が入っているとか、そういう場で議論・決定され、あるいは経営会議の場で議論されているので、記録がはっきりしている。もちろん、ご指摘のように原因究明のために、この時どうであったかというようなことについては、我々が責任を果たすためにも、積極的に協力をする、むしろ是非我々からも話を聞いて欲しい、という位の気持ちである。


(問)
 原因究明は第三者が入った形でやるのか。また、最終的に出てきた報告書は公表していただける形になるのか。


(答)
 第三者を入れた原因究明グループを作るかどうかということについては、そういう報道があったことは承知しているが、具体的に現在の執行部からそういう話を聞いていないので、何とも申しあげられない。
 結果の公表については、どういう形になるにしろ、原因の究明というのは金融システム全体をこれから金融庁・日銀その他関係のところが金融システムの安定という意味でこれから色々な対応をしていく際の一つの問題の事例ということで参考になると思うので、こういうものについては、どういう形になるかわからないが、公表して皆さんの参考に供するということがあって良いのではないか。
 ただ、それがあまねくあらゆる銀行にあてはまるかどうかわからないし、公表することによって問題が起こるようなものについて公表するかどうかというのは、また、いろいろな議論があると思う。というのは、あまり技術的なところに降りると、理解が得られないだけではなく、システム犯罪等に格好の情報を与えてしまうというような問題もある。
 公表については、私は今申しあげたように、公表はした方がいい、した方がいいというより、すべきである。これだけお騒がせした訳だし、新しい金融システムの安定化のためには今回の問題をノウハウとして提供することは意味があると考えている。


(問)
 システム間の主導権争いは当然に予想していたと言われた。ディシジョンを誰かが適切にできずに遅れてしまったということはなかったか。また、システムの問題に限らず、ともすると意見調整みたいになってなかなか決まらないという話を聞いた。決定が適切に行われなかったということはないか。
(答)
 私としては、適切な時期に重要な事項については決定をしてきたと思っているが、実際の個別の作業段階にいると、もっと早く決めて欲しかったというような意見があろうかと思う。これは通常の会社においてもあるような問題に、少し調整という時間がかかったというようなことはあろうかと思う。ただそれが、今回の問題と直接つながってくるというようなものであるかどうか、今回の問題は、CEOが入って分担の大枠を決め、更に各銀行のCIOが技術的なレベルの議論を含めてそれぞれの作業分担を決めて、それに基づいて責任を持ってやろうということを決めている訳であるので、その限りでは、色々なことが3行の調整を要して決まらなくて開発作業が遅れたというようなことを一般化して議論するのは、この枠組みから考えられないなというように考えている。
 いずれにしても、先程来申しあげているように、私どもとしては精一杯やってきたつもりであるが、問題が起きたということは事実であり、この結果については大変に申し訳ないと考えている。


(問)
 最後にこの1年間を振り返り、山本会長からご挨拶いただきたい。
(答)
 この一年間、我々銀行界を取り巻く環境が大変厳しい中で、不良債権問題に関する諸施策、あるいは株式取得機構の設立といったことを中心に取り組んでまいりました。私自身も微力ながら精一杯諸問題に取り組んできたつもりでありますが、このことは、関係者の皆さま方のご支援・ご協力によるものであり、この場を借りて、厚くお礼申しあげます。
 報道関係の皆さまにおかれても、私の物の言い方、生来の癖から、お腹立ちの部分があったかもしれないが、私としては正確にご理解いただくということに努力してきたわけである。ご無礼がありましたら、ここでお詫び申しあげたい。
 来週からは、全銀協会長にUFJ銀行の寺西頭取が就任される予定であるが、引き続き、寺西新会長には色々とご苦労をお掛けすることになると思います。しかし、皆さんもよくご存知の通り、寺西頭取は、国際感覚に溢れておられ、大変卓越したご見識と力強いリーダーシップをお持ちの方であります。引き続き厳しい環境の中ではありますが、銀行界を必ずや適切に導いていただけるものと確信しております。
 最後に、この一年間、皆さまには大変お世話になりました。この場を借りて、厚くお礼申しあげます。寺西新会長に対しても、一層のご支援を宜しくお願い申しあげます。