会長記者会見
2002年6月18日
寺西会長記者会見(UFJ銀行頭取)
鵜飼専務理事報告
(特になし)
会長会見の模様
(問)
今日は東京の株価もやや反発しているようだが、最近、日米の株価が軟調である。こういった点を踏まえて、景気の現状と今後の見通しについて伺いたい。
(答)
我が国の経済については、先月、この場で、輸出の増加や在庫調整の進展等を主因に最悪期を脱しつつあると申しあげたわけであるが、1―3月期の実質GDPが1年ぶりにプラス成長となったということは、基本的には、こうした見方を裏付けたものとみている。最近の経済指標をみると、雇用環境は、世帯主の失業や長期失業者が過去最大になるなど、依然厳しいものがあるが、企業マインドの改善といった明るい動きが、業種、また地域を超えて拡大しつつあるように見受けられると感じている。景気の現状は、今後、こうした回復の芽をいかに育てていくかという意味で、正念場にさしかかっているのではないかと思っている。我々民間の経営努力が大前提ではあるが、政府には、是非、民間の回復の動きを適切にサポートする施策を強く期待したいと考えている。
(問)
最近、経済財政諮問会議や政府税調で様々な税制改革案が出ているが、外形標準課税の導入とそれに伴う法人実効税率の引き下げといった論点についてどのようにお考えか。
(答)
税制改正全般については、銀行界としても、検討を開始したところであり、まだ意向集約したわけではないので、個人的見解として申しあげる。
実効税率引下げの効果は、赤字法人の割合が高いという状況があるため、限定的となるかもしれないが、一方で現下の厳しい経済情勢といったものを考えると、経済の活性化には資する施策であろうと思っている。
一方、外形標準課税の導入についてであるが、新税を導入する際には、やはり納税者の理解を得ることが非常に重要なファクターとなると考えている。この点からみると、外形標準課税の導入に関しては、経済界との間の十分な合意形成がなされたとは言いがたい状況と判断しており、こういう点を含めて慎重な検討がなされるべきではないかと考えている。
(問)
柳澤金融担当大臣が株式の銀行窓販を最近提案されたが、これについての見解を伺いたい。
(答)
証券市場の活性化という観点からみると、銀行の株式の取次業務を含む様々な議論がなされることは歓迎したい。利用者の利便性という観点からみると、我々が主張しているいわゆるワンストップ金融の実現への一つのステップとして、銀行が様々な金融商品を扱えることになるのは意義のあることだと考える。
ただし、仮に銀行に株式の取次業務が認められたとしても、各行がこぞってこの業務に参入するという図式になるかどうかという点については、議論が分かれるところではないか。株式の取次業務は、我々が行っているたとえば預金業務は勿論のこと、すでに銀行の主力業務に育ちつつある投資信託の窓販といった業務と比較しても、業務の質という点では大きく異なっていると感じており、たとえ解禁されても、業務を開始するか否かについては各行が判断をしていくということになろうかと理解している。一方で、体制整備についても、一般論で申しあげれば、システムであるとか職員の教育といった点で相当のインフラの整備・投資が必要になるのではないか。
(問)
今年度から四半期情報を開示されると思うが、開示項目と対象金融機関が決まっていれば教えていただきたい。
(答)
今年度の第1四半期(本年4月~6月)より四半期情報開示を開始する。開示時期は、第1、第3四半期(6月末、12月末)の45日~55日以内を目途にしている。従って、第1回目は6月末の数字を、8月上旬~中旬にかけて各行が開示することになる。
対象銀行は、「改革先行プログラム」で求められている主要12行となる。主要行以外の銀行については個別行判断となるため、正確なことは申しあげられないが、全銀協より全ての会員銀行に対して四半期情報開示に向けた体制整備を要請しており、多数の銀行が実施する方向で準備をされていると聞いている。
開示項目については、①不良債権額(金融再生法ベース・簡便法で算出)、②有価証券・デリバティブズの時価情報、③自己資本比率の半期末予想値(第1四半期に9月末の予想値、第3四半期に3月末の予想値を公表)となる。
今後の方向性について少し触れさせていただくと、対象銀行については、ペイオフ解禁もあり、預金者に対する情報開示の重要性が非常に高まっていることから、今後、四半期開示を実施する銀行は確実に増えていくものと考えている。また、開示の内容についても、今回の開示は第一ステップであり、東証の要請やバーゼル銀行監督委員会で議論が進められている自己資本比率規制の見直しといった議論も踏まえて、今後も開示内容の充実について議論を進めていきたいと考えている。
(問)
個別行の問題になるが、先般、住宅金融公庫からUFJ銀行が業務停止措置を受けたが、再発防止策等、今後の対応についてどのように考えているか。
(答)
6月14日に住宅金融公庫より、新規受付業務の一定期間の停止措置を受けたことは誠に遺憾なことと考えている。お客さまをはじめ関係する皆さまに大変ご迷惑をおかけしたことについて深く反省しており、心よりお詫び申しあげたい。こういった事態を引き起こしたということを真摯に受け止め、管理体制を一層強化して、再発防止に万全を尽くして参りたい。
(問)
四半期情報開示について伺いたい。業務純益や経常利益、当期利益等の暫定値を出す予定はあるか。
(答)
現段階で決まっているのは、先ほど申しあげた簡便法で算出した金融再生法ベースの不良債権、有価証券およびデリバティブの時価情報、自己資本比率の予想値の3点であるが、これから情報開示の内容を充実して参りたいと考えている。
しかし一方で、業務純益等の数値は、決算そのものを実施しなければ、なかなか数字が固まらないということもある。そのための対応はまだ各行で準備が整っていないということもあり、その点も含めて今後十分検討していきたい。
(問)
関連して、たとえば、自己資本比率の9月末と3月末の見通しを出すときに、有価証券の時価評価をすると思う。これはバランスシートに影響してくる部分だと思うが、バランスシートの方は見るが、損益計算書の方は見ないということなのか。
(答)
細かなところは、どういう形で各行が予想値を出されるのか承知していないが、暫定値というものを当然持った上で実施するのではないかと考える。それをどういう形で公表するかについては、これから各行で判断していく課題であろう。
(問)
ペイオフの解禁についてお伺いしたい。再び与党内から延期論等が出ているが、改めて普通預金のペイオフ解禁について、どうお考えかお聞きしたい。
(答)
2003年4月の流動性預金の全額保護打ち切りを前提として、預金者の信頼回復、それを果たすための財務内容の健全化、効率性の改善といったような経営努力を続けていくことが肝要だと前回も申しあげており、基本的にそのスタンスに変更はない。
ただ、ペイオフの全面解禁について、金融機関の内部のみならず、各方面で様々な議論がなされていることは、ご指摘のとおりである。こうした意見に十分耳を傾けるとともに、経済の状況、預金者の動向等について引き続き注視していく必要があると考えている。
(問)
場合によっては、ペイオフ解禁の延期もやむなしという判断もあり得るということか。
(答)
2003年4月の全額保護打ち切りを前提に色々な準備を進めていくというスタンスに変わりはない。ただ、様々な議論がなされている中で、全く耳を貸さないということではないということである。
(問)
全銀協として、前年度の税制改正において欠損金の繰越控除を要望していたと思うが、今年度はどういったことを要望していくのか。また、欠損金の繰越はどういった形で要望されていくか伺いたい。
(答)
繰越欠損金の話の前に、税制改正要望の全体の話をさせていただきたい。
今年度は、各方面で、税制改革に関する議論が活発に行われているということもあって、全銀協としてもこうした情勢を踏まえ、例年にないスピード感をもって、税制改正の要望の検討を行っている。早ければ、7月の中旬にも要望の大方を固めたいと思っているところである。足下の経済情勢が非常に厳しいということを考えると、一刻も早いデフレ経済からの脱却に資するような施策の可能性を追求したいと考えており、現在、「産業と金融の同時再生の推進」、「経済活性化」という2つをキーワードとして具体的な要望項目の洗い出しを行っているところである。
これから各行と相談していくことであるが、ご質問の、欠損金の繰越控除、それから繰戻制度の見直しといったものも、その中に含まれることとなるのではないかと個人的には思っている。
(問)
私的整理ガイドラインについてであるが、ガイドラインを使った例、使っていない例が出てきている。メイン銀行に債務が集中している場合にはガイドラインを使わなくてもいいとの議論や、規模が大きすぎると使いづらいとの意見、あるいは精神的にガイドラインに沿ったものであればよいとの解釈もあるようである。今後、日本でガイドラインが何らかの形で定着していくとすれば、どういうケースで使うべきでどういうケースで使わなくて良いのか、あるいは向き不向き等について、改めて銀行界の考えを伺いたい。
(答)
総論と各論に分かれておりお答えしにくい部分もあるが、私的整理ガイドラインは、「関係者の間で十分尊重されるべき金融界・産業界の間のコンセンサス」という位置づけと認識している。手続面で主要債権者・債務者の一時停止の申し出、債権者会議の開催、再建計画の内容についても3年以内を目処とした黒字化、株主責任・経営者責任の明確化、法的整理に比べた経済合理性等、様々な規定があるが、実際に私的整理を行う中で、最も合理的な私的整理の仕方といったものが選択されていくということではないか。特に手続き面では時間的な制約等の問題もあり、手続き全てがガイドラインに従わなければならないということではなく、それぞれのケースで最も適切で合理的な方法を選んでいくことが必要ではないかと考えている。
(問)
「合理的」というのはどういう面でのことを言っているのか。また、ダイエーのようにあまりにも大きな案件であると、スピーディな解決ができないというような指摘があるが、その点については、どのようにお考えか。
(答)
今ご質問のあった、時間的な制約がある中で、一時停止を含むガイドラインの手続を踏むかどうかというのも1つの論点であろう。時間的な制約がある中で、債務者の事業価値の毀損を回避するためはどういった手段が一番良いのかという観点も当然判断材料になるのではないかと考えている。
(問)
事業価値の毀損を回避するためには、所定の手続きを経ないでむしろスピーディにやることが良いケースもあり得るということか。
(答)
そういうことである。