2002年11月19日

寺西会長記者会見(UFJ銀行頭取)

鵜飼専務理事報告

 本日の理事会では、年末に向けた金融の円滑化について、お手元の資料のとおり、申し合わせを行った。 


会長記者会見の模様


(問)
 先週から今週にかけて株式市場が非常に不安定で、金融界に対する厳しい見方が銀行株急落につながっていると思うが、会長の見解を伺いたい。
(答)
 個別行として回答させていただく。
 経営者としては、収益を上げ、株主価値を向上させていくことが求められている。当行としてもこれまで様々な経営改革に取り組み、手応えを感じているところではあるが、株価下落に歯止めがかからないことは大変残念であるし、また株主の皆様に対して誠に申し訳なく思う。
 しかしながら、最近の急激な株価の下落は、経営している側からみれば、実態を反映しているとは言いがたい面がある。
 今後とも、不良債権問題の解決、経営改革のスピードを一段と上げるべく、全行挙げて取り組み、収益力や財務内容の健全性の向上という形で結果を示していくほかないと考えるが、市場に対しても、目に見える形で経営努力をお示しし、市場の不安払拭に努めて参りたい。


(問)
 先日、政府より発表された金融再生プログラムを金融界としてどう受け止めているか。
(答)
 「金融再生プログラム」及び「改革加速のための総合対応策」により、デフレ克服に向けた政府の強い姿勢があらためて示されたものと受け止めている。
 銀行界としても、平成16年度に不良債権問題の正常化を図るという政府方針を重く受け止め、確実な実現に向け、全力をあげて取り組んで参る所存である。
 また、産業再生機構の創設をはじめ、政府をあげて産業再生への取り組みを一段と強化されていることは大変心強く思う。新たな枠組み作りについては、民間としても積極的に関与して参りたいと考えている。
 金融再生プログラムの具体化にあたっては、金融行政の継続性、現行会計・税制との整合性等を踏まえるとともに、実務家をはじめ、各方面から幅広く意見を吸収しながら、慎重かつ十分な議論がなされることが必要と考えている。


(問)
 産業再生機構の設立が盛り込まれたが、金融界としてどういう活用の仕方があるのか。また、運営にあたっての金融界の要望や、どんな企業が対象になるとお考えか。
(答)
 産業再生機構については、具体的な業務内容を設立準備室で検討するということであり、今後の議論について注目していきたいと思っている。企業再生のみならず産業の再編も視野に入れた企業の再生策を樹立・実行するとのことであり、資源の再配分を進め、経済の活性化に資する施策として高く評価したい。
 要管理先等の非メイン行債権を集約するというスキームが織り込まれており、メインバンクの情報力や再建計画の立案能力を引き続き生かせる点、また、銀行間の利害調整に要する時間を短縮できる可能性がある点など、銀行としても活用可能なものではないかと考えている。
 私どもとしても、今後の実務面も踏まえた検討の段階で、当初の政策目的が果たせるよう、建設的な提案を行って参りたい。
 機構の対象企業については、要管理先等と示されているのみであり、現時点では、明確なイメージを持ち得ないが、今後明らかになる情報をもとに、検討を進めて参りたい。
 要望としては、使われることを前提とした組織、形態、機能をそろえていく必要があると考えており、建設的な提案を行っていきたい。


(問)
 前回の会見で「金融システムの強化策を巡って、急激なルールの見直しは困る」と主張されたが、再生プログラムでも税効果会計について検討課題であることが明記された。
 銀行自らが自己資本強化に向けてどのような対策を講じようとしているのか。


(答)
 個別行として回答させていただく。
 自己資本の強化策については、各行それぞれに取り組まれていることと思う。
 当行においては、融資利ざやの改善やリストラなどによる収益力の強化のほか、優先出資証券という形で、前年度に2,200億円弱、今年度上期にも1,100億円強を調達するなど自己資本の強化に努めているところである。
 金融業界を取り巻く環境は不透明感が増しているが、自力調達の道を探ることは財務戦略の重要なオプションであり、今後もあらゆる機会をとらえてその可能性を追求していきたいと考えている。


(問)
 先日発表された金融庁検査結果と自己査定の格差が明らかになったことで、銀行の査定が甘かったのではないかという指摘がマーケットで広がっているが、こうした指摘をどう受け止めているのか。
(答)
 ご指摘のとおり、一巡目の検査では、かなりの乖離があったわけであるが、金融検査マニュアルが制定されたばかりということもあり、各銀行と検査官の間で、査定における目線について、相違があった面は否定できないと思う。
 ただ検査による指摘も踏まえ、各行とも査定をより厳格化していることで、二巡目の結果にもあらわれているように、乖離は縮小に向かっているものと考えている。


(問)
 銀行株の下落に関連して、各行が不良債権処理のスピードアップと財務内容の改善について、目に見える形で結果を出し、市場に見せていきたいということであったが、いつまでに何をどのくらい行うつもりなのか具体的に説明していただきたい。
(答)
 銀行界全体の取組みについて申しあげる立場にはなく、個別行として回答させていただく。
 先ほど申しあげたように、私自身、経営改革に手応えを感じている。例えば、貸出スプレッドの引き上げについては、前年度と比べて、この上半期の法人向け貸付で約10ベーシスポイント上がっている。また、私どもが、かねてより力をいれている消費者金融の合弁会社も、先日、貸出残高が1,000億円を超え、今年度には黒字化する見込みである。さらに、非金利収入についても、99年度には、法人収益に占める非金利収入が約18%であったのが、2002年度上期には、27%台に上がっている。当行としては経営改革が着実に進展してきていると思っている。一方で、中間決算は25日に発表予定のため具体的な数字は申しあげられないが、不良債権の問題も、昨年度に多額の処理を行ったわけだが、この上期に金融支援等を実施した結果、開示残高が目に見える形で減少するものと見込んでいる。
 いつも申しあげているように、銀行として取り組むべき課題は2点ある。一つは、収益力をどのように強化するかということ、もう一つは、不良債権問題をどのように解決していくかということである。これらが車の両輪であり、その両面から見て、きっちりとした流れの中にあるものと考えている。経営している側から見れば、そうした意味で、今の株価というのは、経営実態を反映しているとは言い難いと思っている。


(問)
 先ほど自己資本の強化について、自力調達の道を探りたいということをおっしゃっていたが、それについてもう少し具体的に伺いたい。
(答)
 具体的な内容については、ご容赦いただきたい。ただ、先ほど申しあげたとおり、前年度も2,200億円弱の調達を行い、今年度上期も約1,100億円の調達を行っている。タイミングをみて、調達をしていくという方針に変わりはない。チャンスをとらえ、是非自力調達をやっていきたいと考えている。


(問)
 株価について伺いたい。大手銀行株が全般的に下がっていると思うが、そのなかでとりわけ二極分化という形も見えるようである。それに関して、トヨタの奥田会長もある意味で是認するような発言をなさったと思うが、それについてどう思うか。
(答)
 奥田会長ご自身が発言そのものを否定されているということなので、直接のコメントは差し控えたい。その話を別にしても、私どもの銀行グループに対する外部の評価については厳しく受け止めている。しかしながら、経営者としては、目指す改革の線上にあり、ステップを踏んで良い方向に向かっていると認識している。不良債権処理も2002年度上期は業務純益内に収まる見込みであり、不良債権問題にも一定の目処をつけ、また、収益力の強化という大きな課題についても前進しているところである。現在の評価については残念であるが、それが現実であると厳しく受け止めており、是非とも、目に見える形で経営努力を示し、不安払拭に努めていきたい。


(問)
 市場では、金融再生プログラムがこれから実行され、資産査定が厳格化された結果、銀行の財務内容が悪化するという将来のことを懸念している面がある。一方で、ムーディーズやS&Pが、UFJ銀行が過去に発行した優先出資証券の格付けを下げるなど、今後の財務の強化についても厳しい目をむけている。そうしたことを含めて、将来に対する取り組みとしてはどのようにお考えか。
(答)
 金融再生プログラムが具体的に将来どうなるかという点は不透明な部分もある。ただ、私どもは昨年度も約2兆円の不良債権を処理しており、大口の問題先については目処をつけてきており、この上半期の不良債権の新規発生も予想していた範囲に収まっている。どういう形で金融再生プログラムが具体化されるかは分からないが、かなり厳しいものが出てきたとしても、財務上耐えうるものと確信している。将来を展望して厳しい評価があることはご指摘していただいたとおりであるが、UFJ銀行を経営している私自身はそうした確信を持っているので、是非ともご理解いただきたい。


(問)
 自己資本不足に陥ることはないということか。
(答)
 そういうことである。


(問)
 先ほどから、各記者から株価についての質問があり、頭取からは経営実態を反映していないものであり残念である等とのコメントをいただいたが、逆に、なぜ経営実態が市場に評価されないとお考えか。あくまで投機的なものとお考えか。
(答)
 推察にしか過ぎないが、理由は2点あろうかと思う。
 一つは、金融再生プログラムが発表され、査定の強化等いろいろなことが謳われているが、どこに着地するのか分からないという点である。そのため、各金融機関が具体的にどこまで対応すれば良いのか、もう一つ見えにくいというのが、世の中全体に漠然とした不安としてあるのではないかと思う。もう一つは、そうした漠然とした不安があるなかで、投機的な売りがあったものと私は考えている。これが銀行全体の株価を押し下げている原因になっていると推察している。


(問)
 先日の財務金融委員会の席で、三井住友銀行の西川頭取が同じような発言をされており、「金融再生プログラムが発表されたけれども、まだ、内容がはっきりしないので、銀行界としてもなかなか対応策が打てない」と、要は国がなかなかはっきりした方針を示さないので、銀行界も方針を出せない、その結果としてこういった状況に追い込まれているというような話だったと思うが、同様の考えということでよいか。
(答)
 少しニュアンスは違うと思う。 実際には当然、金融再生プログラムはこれだけ大きな変革であるから、それがすぐに詳細まで決まるとは誰も思っていないものと考える。そうした中、銀行内部においては、金融再生プログラムの具体化につき、ある程度予想しながら、こういったものが実現したらどれぐらいの影響を受けるかといったことを検証してきているところである。ただ、そうした内部の検証内容を、仮定の話とはいえ外に向かってしていくことは非常に難しいということである。 そこで、先ほど申しあげたように、厳しいものが出ても我々としては財務上耐え得ると思っているが、着地が見えない話なのでなかなか申しあげづらいというのが現状である。


(問)
 藤和不動産からの金融支援要請が先日あったわけだが、そのあたりから、こうした大口債権先に対する支援をしたUFJ銀行に対する市場の売りもかなり激しくなってきたというイメージがある。また、UFJ銀行はダイエーを大口先として持っているわけだが、実際のところ、株価だけ見ればダイエーの株価のほうが上になってきている。そうした大口先に対する処理を終えたことによって、UFJ銀行の株の売りが進んでいるという認識はあるか。
(答)
 当行にとって、不良債権処理が大きな課題であると申しあげてきており、その一環として、藤和不動産についても金融支援要請があり、現在、前向きに検討しているところである。ダイエーについては、すでに金融支援策が実行に移されている。そうしたことも含めて、大口先については、既にほぼ目処をつけたと申しあげており、藤和不動産の件が引き金になったという認識は持っていない。
 ただ、藤和不動産からの支援要請は、2度目の金融支援ということでマーケットの理解を得るのが非常に難しかったという気がする。当行としても金融支援策・再建策について、マーケットの理解を得るようにしっかりと説明をする必要があろうかと思っている。


(問)
 一部報道では、トヨタグループに対して、UFJ銀行が増資の要請をしたというニュースがあったが、事実か。
(答)
 そのような具体的な資本調達の可能性について、この場で言及することはご容赦いただきたい。


(問)
 ファイナンシャルタイムスによると、竹中大臣が最近銀行業界に対して歩み寄りの姿勢を見せているというような報道をしていたが、実際のところ会長の実感としてそういったことがあるのか。
(答)
 銀行界としては、竹中大臣がおっしゃっている不良債権処理を加速するという大きな方向感について異を唱えていることは決してないわけであり、当局と銀行界が全然別の道を歩んでいるというようなことは全くない。銀行界としても大きな方向感についてきっちりと理解しているつもりであるので、その点はご認識いただきたい。


(問)
 資本調達について、調達の方針には変わりはなく、タイミングをみてやっていくということであるが、実際問題として、今日も株価は8万9千円で引けているが、そういった企業が資本調達をしていくということがそもそも可能なのか。常識的に考えて無理だと思うがいかがか。
(答)
 私としては、現在の当行の財務内容、収益力等からみて、いまの株価は実態を反映していないと考えており、資本の調達については、いろいろな工夫をして是非行なって参りたい。


(問)
 今後も1,000億円規模の調達は可能だと考えているのか。
(答)
 可能だと思っている。


(問)
 各銀行に預金流出の心配というのはないのか。また、UFJ銀行については実際どうなのか教えて欲しい。
(答)
 そのような心配はしていない。

別添資料:寺西会長記者会見(UFJ銀行頭取)