会長記者会見
2002年12月24日
寺西会長記者会見(UFJ銀行頭取)
鵜飼専務理事報告
本日の理事会では、次期副会長および次期正副会長の担当委員会を、お配りした資料のとおり内定した。
次期副会長の正式な選任は、次期会長と同様、来年4月の理事会において行なわれ、また、担当委員会の正式な指名は、次期正副会長が正式に選任された後の正副会長会議において行なわれる。
なお、資料の注1に記載しているように、委員会の種類を、現在の7種類から5種類に整理することとしている。
次に、本日の理事会では、準会員として、中国建設銀行の来年1月1日からの加入を、また、現在準会員として加入している三井アセット信託銀行の来年1月6日付けでの正会員への変更を、それぞれ承認した。
この結果、来年1月6日現在の全銀協の会員数は、正会員が141、銀行持株会社会員が1、準会員が45となり、72の特別会員とあわせて、合計259会員となる。
会長記者会見の模様
(問)
来春に設立される予定の産業再生機構について、民間金融機関として出資等どのような協力を行なう予定か。産業再生を達成するためにどのような組織とすべきかについて、銀行界として注文・要望は何かあるか、また、機構のトップ人事についてどのように見ているか伺いたい。
(答)
金融界としては、企業再生の実務の流れをインプットするなど、既に設立準備室と密接なコンタクトを持っており、数名の人材派遣も実施済みである。
また、先般発表された、「企業・産業再生に関する基本指針」においても、「可能な限り民間部門の人的・資金的な支援を得て行なう」ものとされており、引き続き、民間として必要な協力を行なって参りたい。
機構の組織・運営面に関しては、中立性・公正性が確保されるとともに、産業・企業再生に際し、是非とも画一的でない柔軟な対応がなされることを期待したい。
機構社長人事については、公明正大であり、行動力のある人材が望ましいのではないかと考える。
(問)
柔軟な運営をして欲しいとのことであるが、特に意を払って欲しいと考える点は何か伺いたい。
(答)
これから様々な機構に関する具体的な議論が行なわれるであろうが、そのような中で我々も議論を行なっていきたい。新しい組織の立ち上げに際しては、事前のルール設定等が求められる面が強いが、結果として画一的な対応になることのないよう、弾力的な運用をして欲しいという思いである。
(問)
先般発表された金融再生プログラムの作業工程表についての意見・感想を伺いたい。また、作業工程表の内容が具体化してくると、銀行の財務内容にどのような影響を与えるのかについて伺いたい。
(答)
作業工程表により、金融再生プログラムに盛り込まれた各項目の具体化に向けたスケジュールが示されたわけであるが、今後、この工程表に沿って議論を進めていく上では、実務家をはじめ、各方面から幅広く意見を吸収しながら、慎重かつ十分な議論がなされることが重要と考える。
私どもとしても、検討のプロセスにおいて建設的な意見を申しあげていくとともに、不良債権問題の解決、財務体質強化に向けた取り組みを強化して参る所存である。
現時点で銀行財務への影響を具体的に申しあげることは難しいが、UFJグループとしては、プログラムの影響をかなり厳しく見込み、仮に不良債権処理額が当初予想の2倍になった場合でも、自己資本比率9%前後を維持することは可能であり、財務的に十分耐えられるものと考えている。
いずれにせよ、あくまでも仮定の話であり、今後、DCFなど様々な具体策が出る中で各行が財務的なインパクトを検証することとなろう。
(問)
株安が依然続いているが、株価対策として政策的に何を望むかを伺いたい。
(答)
株式市場活性化のためには、デフレ克服、産業・金融の同時再生に正面から取り組み、わが国経済の活性化に向けた道筋をつけていくことが求められているものと思う。産業再生の枠組みを含め、「改革加速のための総合対応策」の各項目が早期に実行され、効果を上げることを期待したい。金融機関としても、不良債権問題の早期解決に向け、あらためて全力を尽くす所存である。
(問)
来年度の政府予算案について、銀行界としてどう見ているのか伺いたい。
(答)
2003年度政府予算案については、わが国の厳しい財政事情を背景に、一般歳出の伸びは、僅かに止まった。その一方で、先般の「改革加速プログラム」に基づいて、今年度補正予算の編成が進められるなど、厳しい経済情勢に配慮し、政府が切れ目の無い対応に取り組んでいると認識している。
歳入不足が足かせとなっている面は理解できるが、景気自体が、依然厳しい状況にあること、着実な経済成長が財政の健全化に不可欠であること等に鑑み、政府には、無駄な歳出の見直しを進めつつも、引き続き、景気に十分配慮した柔軟な財政運営を期待したい。
(問)
来年度税制改正で、全銀協が要望していた欠損金や無税償却制度等の不良債権処理を後押しするための税制改正が見送られたが、銀行界としての意見を伺いたい。
(答)
与党税制改正大綱に書かれているとおり、欠損金や無税償却制度の取り扱いについては、金融行政の中で、繰延税金資産の問題と合わせ一体で検討される課題と認識している。
今後、金融審議会において繰延税金資産の取り扱いに関する検討が進められる予定であり、私どもとしては、そうした動きを踏まえつつ、税制の問題についてもフォローし、適時適切に対応して参る所存である。
(問)
次期日銀総裁には、どのような人物・政策を望むかを伺いたい。
(答)
来年3月に任期が満了する日銀総裁の人事について、様々な発言等があることは承知しているが、人事についてはお答えする立場ではない。
現在、わが国経済にとって、デフレの克服は喫緊の課題であり、課題解決に向け、日銀総裁がリーダーシップを発揮する金融政策の役割は非常に大きいと認識している。日銀の金融政策については、政策金利の引き下げという従来からの金融調節手段が限界に達する中、長期国債の買い切り増額などを通じた量的緩和に踏み切るなどの措置が講じられてきた点は評価している。とはいえ、現下の厳しい経済情勢等に鑑み、デフレ克服や金融市場の安定性強化に向け、更に何かできることはないか、聖域を設けることなく政策を検討され、果敢に実行されるよう、期待したい。
(問)
量的緩和について、金融庁や経済財政諮問会議などの場で量的緩和を更に緩和すべきだと、中には月額の買い切りを2兆円位にしてもいいというような意見も出ているが、それらの効果や有効性を含めてどう思われるかについて伺いたい。また、円安是正について、経済閣僚のほうから円安誘導すべきというような意見も出されているが、経済に与える影響等についてどう思われるか。
(答)
個人的な見解を申しあげると、先ほども申しあげたように、今、わが国経済は非常に大きな踊り場、曲がり角にあるのではないかと認識している。そのような意味で、先ほど申しあげたように、何が今必要かということについて積極的に、聖域を設けずに議論されることが非常に大事なことだと思う。その対象として、更なる量的緩和その他円安誘導策、インフレターゲットというような政策があり、現在は様々な議論が行なわれている。こうした議論を排除するのではなく、真正面から受け止めて検討していくということが、今の日本経済にとって大事なことではないかと思っている。
(問)
竹中金融担当大臣が就任されて3か月になるが、この間、7トップの会見等いろいろあったが、竹中大臣の金融行政の運営に関してどのように評価しているか。
(答)
竹中大臣がおっしゃっていることは、不良債権処理の加速、金融システムをより強固なものにするための施策の実施と認識している。その大きな方向感について民間金融機関と大きな違いがあるということでは全くない。私どもとしても、そういう大きな方針のもとで不良債権問題の解決への取り組みを一層加速させていかなければならない状況にあると思っている。2004年度の不良債権問題の終結に向けて経営資源を傾注して努力を重ねて参りたい。
(問)
生命保険会社と銀行間の持ち合いについて、現状の水準をどのように見ているのか。また、UFJを含めて自力増資を打ち出しているが、そのような状況の中で生保が要請を受け入れる余地があるのか。
(答)
質問の背景には、生保と銀行の持ち合い、いわゆるダブルギアリングの問題があろうかと思われるが、現状、BIS自己資本比率の計算を含め会計処理は適切に行なわれている。現状何か問題があるかと問われれば、問題はないと考えている。今後については、個別行の資本政策や生保との関係といったものにも大きな影響を受けるものと考えられることから、一概にはコメント出来ない。
(問)
企業との株式の持ち合いについては、以前から、解消していくという方向にあるかと思う。企業の株式の場合は時価があるのでバランスシート上もきちんと数字が出てくるかと思うが、生保の場合は基金や劣後ローンを含めて適切に処理しているとは言え、見えにくい部分があり、リスクが内包されているのではないかという見方もあるかと思うが、この点は如何か。
(答)
決してそのようなことはない。双方とも経済合理性に基づき出資、ないしは基金等の拠出を行なっているものと理解している。かつ会計上の処理も適切になされており、ご指摘のような問題はないと考えている。
(問)
個別行の話であるが、決算発表の際に年内にアクションプランのようなものを出されるとのお話があったかと思うが、現在、どのような状況か。
(答)
年内には皆さんにお示ししたいと考えている。
(問)
今年1年を振り返って、全銀協会長として、どういったことが印象に残っているか。来年に向けた抱負も含めて伺いたい。
(答)
2002年を振り返ってみると、4月に全銀協会長に就任したが、全銀協会長として今年度取り組むべき課題の第1として挙げたのは、金融システムに対する信頼の回復であった。しかし、夏以降、金融システムに対する不安が払拭できない中で、ペイオフの問題、決済機能の保護、金融再生プログラム等の議論が行なわれ、当事者としては正直言って忸怩たる思いである。
ただ、申しあげたいのは、各行とも金融再生プログラムを先取りする形で、不良債権問題や経営の合理化といった問題に対する取り組みを一段と強化する方針を打ち出している。また、一方で、産業再生機構の創設等、国全体を挙げて産業再生に向けた枠組みが整備されつつある。
新しい2003年には、産業・金融の同時再生を通じて、金融システムに対する信頼が早期に回復できるように銀行界としてもあらためて全力を尽くして参りたい。
(問)
先日発表されたニチメンと日商岩井の経営統合の話について伺いたい。メイン行のUFJ銀行にも増資の要請をするということである。今までの再編と違って金融支援の要請がなかったということと、外資系の出資を仰ぐということで、新しい統合の企業再生のモデルとなるかと思うが、どう評価するか。
(答)
今、おっしゃられたとおりだと思っている。ニチメンと日商岩井の経営統合の発表は、経営基盤の一層の強化につながるものとして大いに期待しているところである。両社ともここまで、順調に債務残高を減少させてきており、この経営統合によって、財務体質、経営基盤、収益力といったものが一層強化されるということを大いに期待したい。我々もご相談をさせていただいているが、債権放棄等の金融支援が必要ということはないと考えている。リーマンブラザーズの出資についても、両社が真剣に話をしており、前向きな感触を得ているということである。従来の枠を超えた、透明性のより高い、再建、再生、新しい時代に合った企業再編といったものがこういう形で描かれるのではないかと期待している。
(問)
今後もこのようなモデルで再生は進んでいく可能性が高いと考えるか。
(答)
今後は、二つの流れになるかと考えている。一つは、先ほど話のあった産業再生機構を用いる形であり、これは、企業の再編にとって大きな枠組みができることになるので、どういう形で、どういうタイミングで立ち上がっていくのか、このスピードも大きな要素であろう。また、グループ内での産業の再編といったものも、もう一つの流れとしてあろうかと思っている。
(問)
各行が増資に向けた動きを加速する中、UFJがトヨタ自動車に出資を仰ぐという観測の報道が色々流れているが、年内に発表するというUFJのアクションプランがこれにどういった影響を受けているのか教えていただきたい。
(答)
私どもの資本の増強策について立ち入ったコメントは差し控えたい。ただ、タイミングを捉えて資本の増強を行っていくということは重要なオプションであると思っている。あらゆる機会を捉えてそういう努力を傾注していくということについては、YESかNOかと言われればYESということになる。
(問)
それに関連して、時機を捉えて出資要請をしていくということであるが、その点について年内に発表されるという予定のアクションプランに現状どういう影響が出ているのか伺いたい。
(答)
アクションプランについては、皆さんに発表させていただくときに明らかになるので、この場でのコメントは差し控えたい。
(問)
今年1年を振り返り、UFJHDの株価も含めて、金融機関の株価というものは極めて厳しい状況にさらされている。色々な形で各行が努力をして、先般、UFJHDも資本増強策、不良債権処理策を発表したわけであるが、残念ながらマーケットはなかなか反応が鈍い。この原因を海外の投資家などに聞くと、一つはここで資本を入れること自体、買うこと自体に関するリスク、来年・再来年デフレが続けば、もう一段の不良債権が出てくる、株価についての減損もさらにあるという、根本的な経営に対する厳しい見方が背景にあると思うが、こういう厳しい見方を、頭取ご自身、来年に向けてどのように払拭しようと、抜本的に変えていこうとお考えか。
(答)
個別行としてお答えさせていただく。 株価に対する色々な見方、私どもの経営のあり方、向かっていく方向性について議論があるということは承知している。一方、先月もこの場で申しあげたが、私自身、頭取に就任しておよそ1年が経過したわけであるが、不良債権問題への対応を含めて経営改革の進展については手応えも感じ始めているところである。
ただ、金融再生プログラムを含め、本当に、不良債権問題も含めて、問題解決に向けた筋道が立っているのかというところが、なかなかご理解いただけていない部分ではないかと、これは真摯に反省しないといけないと思っている。
したがって、私どもの経営改革に向けた思い、方向感、それから何をやっていくのかという道筋、そういったものを是非きっちりとお示しをしながら、一つ一つご理解を積み重ねていくということが私に課せられた大きなミッションではないかと思っている。来年のスタートは、これを積み重ねる一年間になるものと思っており、私も全力投球していきたいと考えている。