会長記者会見
2003年1月21日
寺西会長記者会見(UFJ銀行頭取)
鵜飼専務理事報告
(なし)
会長記者会見の模様
(問)
景気の現状について弱気の見方や先行きに対する不確実性が増してきており、政府の景気判断も3ヵ月連続で下方修正しているが、改めて景気の現状について伺いたい。
(答)
海外景気の減速懸念や株価の低迷を背景に、景気の先行きに対する懸念が高まっているが、基本的には、足元はなお回復トレンドを逸脱してはいないと認識している。輸出や生産は足踏み状態となっているが、アジア向け輸出は、依然好調を続けている。企業収益の回復に伴い、設備投資もある程度は持ち直してこよう。
雇用・所得環境は依然厳しい状況にあるが、時間外給与や求人数については、持ち直しの動きもみられる。とはいえ、景気全般の回復力が弱く、また、先行きに対する慎重な見方が徐々に強まっているのも事実であると見ている。そういった観点から政府には、今年も引き続き、先行きの懸念を取り除くような政策面での適切なサポートを期待したい。そうすれば、実質でプラス0.6%という政府の2003年度の経済成長率見通しも達成可能ではないかと見ている。
(問)
政府は補正予算を国会でこれから審議していく状況であり、金融政策に対する要望が様々な方面から出てきている。日銀新総裁の就任にあたっては、大胆な転換を求める声も高まっているが、金融政策に対して何を求めるか伺いたい。
(答)
デフレの克服には、まずは、民間サイドにおける金融再生、産業再生に向けた不退転の努力が必要不可欠と認識している。一方、政府におかれても、様々な制約があることは認識しているが、民間活力を引き出し、あるいはサポートするような政策対応や、構造改革の推進を期待したい。こうした官民あげての努力があってはじめて、デフレ克服の道が見えてくると考えている。
同様に、日銀に対しても、こうした政府・民間の動きと一体となった政策対応を期待したい。新総裁におかれては、先月のこの場でも申しあげた通り、デフレ克服や金融市場の安定性強化に向け、更に何か出来ることは無いか、聖域なく検討し、果敢に実行されるよう、期待したい。
(問)
3月に向けて株価が下がるのではないかという不安が燻っていると、金融システムに対する見方も盤石ではないという見方が出てくるが、金融システムに対する認識と今年の課題とその克服について伺いたい。
(答)
昨年12月のこの場でも申しあげた通り、今年は「金融システムに対する信頼の回復」に向けた正念場の年であると位置づけている。既に各行が取り組んでいる不良債権問題への対応や経営革新の成果が問われることになる。
私自身は、今年のキーワードは「リスクテイク」と考えており、不良債権処理、お取引先の再生、新しい時代に相応しいビジネスモデルの構築といった様々な経営課題に対し、リスクをしっかりコントロールした上で、積極的に取っていくという姿勢で臨んでまいりたい。個別行として申しあげれば、UFJグループが昨年末に発表した改革加速プランを計画通りに進捗させ、市場の評価を回復させていきたいと考えている。
(問)
今国会の一つのテーマである産業再生機構について、銀行界としてどのように協力し、活用していくのか。
(答)
先般発表された、「企業・産業再生に関する基本指針」において、「可能な限り民間部門の人的・資金的な支援を得て行なう」ものとされており、人材の派遣や預金保険機構を経由しての出資など、引き続き、民間として必要な協力を行なってまいりたい。
機構の活用自体は、民間の自助努力を補完する位置付けと考えているが、その特性が活かされる、例えば、産業構造の変化に対応するような再編・再生等に関しては、活用の機会があるのではないか。
産業再生機構法案が固まりつつあると聞いており、今後は実務上の詰めに入るものと考えているが、出来るだけ柔軟な運用を行なうことと、組織や資金面で肥大化しないようご配慮いただきたい。
(問)
生命保険会社の予定利率引下げについてお伺いしたい。議論の背景には、多額の資本を出している銀行を救済するためだろうという見方があるが、そのような見方をされていることについてどう考えるか。また、もし予定利率を引き下げるということになれば、銀行が出している劣後ローンや基金はある程度切り崩すべきではないかという議論が出てくるかと思うが、これについてどう考えるか。
(答)
いわゆる生保と銀行との株式あるいは基金の持ち合いに関連してのご質問かと思う。基本的に銀行から生保の基金への拠出、生保から銀行への出資は、一定の経済合理性に基づいて行われていると理解している。また、BISの規制上も適切に処理されているということで、大きな問題はないと認識している。それぞれのケースにおいて、経済原則に基づき、経済合理性の中で契約が締結されてきているものと理解している。
(問)
金融政策について、デフレ克服に向けて聖域なき対応をお願いしたいという話があったが、それはインフレターゲットについても検討すべきだということなのか。インフレターゲットについての現状認識を改めて伺いたい。
(答)
インフレターゲットについては、様々な議論が展開されている。ターゲットそのものの効果を疑問視する声がある一方で、税や財政面の施策、規制改革等などを総合的に実施する過程の中で、景気回復へのアナウンスメント効果が期待できるという意見もある。デフレの克服は、わが国経済にとって最優先の課題であり、先ほど申しあげたように、民間の努力に加え、それを適切にサポートする政府の施策が必要である。同時に金融政策においても聖域を設けることなく様々な議論がなされることが今の日本経済にとって大切であろうと考える。
(問)
みずほグループの大規模増資に対する見解・感想をお聞かせ願いたい。
(答)
各行の様々な資本増強策が発表されてきている。個別行の具体的な戦略や取引についてこの場でコメントすることは差し控えたいが、各行とも金融再生プログラムへの対応を含めて不良債権の早期処理あるいは財務体質の健全化に向けて知恵を絞って工夫をされていると思っている。今後は、経営改革を早期に具体化しながら外部の評価を得ていくことが大事であると考えている。
(問)
みずほの発表でも、税効果会計の関係で、今後5年間の収益見通しを保守的に見たということであった。税効果に関しては、いろんな議論がある中で、会計士の見る目もかなり厳しくなってきていると聞いている。今まで基本的には健全化計画等に基づいて収益見通しを見ていたと思うが、今後、収益見通しを辛く、保守的に見る動きが広がってくると考えるか。
(答)
各行がどのように収益計画を立てているか知る立場にないので、個別行として申しあげる。私どもの収益計画については、当面このデフレ経済の状況が続いていくという前提の下で策定しており、デフレの厳しさを織り込んだ保守的な計画としている。計画の中で、厳しい環境を反映する、より現実味のある収益計画を立てるといったことは、経営の一つの責任であると考えるし、私どもも引続きそうした考え方にしたがって対応してまいりたいと考える。
(問)
各行とも増資や昨年末から様々な策を打ち出し、今日もみずほから発表があった。しかし株価がそれほど上がっていない。マーケットではより具体的な財務戦略・経営戦略が見えてこないという評価が一方にあることも事実である。これらの見方についての見解を伺いたい。
(答)
先程も申しあげたが、各行が自助努力による資本調達策を打ち出しているのは厳しい環境の中で検討を進めてきた結果である。
UFJグループとして申しあげれば、昨年末に改革加速プランを発表している。その中の具体的なアクションプランに基づいて一つ一つ結果を出していくことが今、一番求められていることであろうと考えている。それによって市場の信認を一歩一歩高めてまいりたい。