会長記者会見
2003年2月18日
寺西会長記者会見(UFJ銀行頭取)
鵜飼専務理事報告
本日の理事会では、まず、お手元にお配りしているとおり、「住宅金融市場の改革について」と題する提言をとりまとめた。
これは、4年後に迫った住宅金融公庫の廃止と一部業務を継承する独立行政法人の設立を踏まえて、今後のわが国の住宅金融市場改革の望ましい姿をできるだけ具体的に提言する観点から取りまとめたものである。
次に、準会員として、本日付けで、シンガポール・デベロップメント銀行(本店所在地:シンガポール)およびデプファ・ドイッチェ・ファンドブリーフバンク・アーゲー(本店所在地:ドイツ/フランクフルト)の2行の加入を承認した。 この結果、本日現在の全銀協の会員数は、正会員が141、銀行持株会社会員が1、準会員が47となり、72の特別会員と併せて、合計261会員となる。
会長記者会見の模様
(問)
先週14日に発表された10-12月のGDPは実質で0.5%の成長率であったが、名目では3期振りマイナス成長となり、またイラク情勢も不透明感が増してきている。足元の景気動向と、イラク開戦後の国内経済に与える影響について会長の見解を伺いたい。
(答)
10‐12月期の実質GDP成長率が小幅な伸びにとどまったほか、足下の生産統計等、最近の指標には景気の足踏み状態を示唆するものが出てきている。
こうしたことから、景気の先行きに対する懸念が高まっているのは事実。ただ、先月もこの会見の場でも申しあげた通り、景気が既に回復トレンドを逸脱したとは考えていない。
明るい面をあげるなら、輸出は前年比二桁の伸びを続けており、生産についても、在庫調整が既に完了し、循環的には在庫積み増し局面に入る段階にある。また、10-12月期の機械受注が小幅ながら2四半期ぶりに増加(前期比0.2%増)するなど、企業収益の改善とともに、設備投資に持ち直しの動きもみられる。
重要なのは、こうしたプラスの動きを摘み取らぬよう、先行きに対する懸念を取り除いていくことである。政府においては、様々な制約があることは認識しているが、引き続き、民間活力を引き出し、あるいはサポートするような政策対応を期待したい。
なお、イラク情勢の緊迫化については、既に原油価格の上昇、ドル安、米国株価の下落という形で影響が出てきている。開戦によってこうした動きがさらに進むと、世界や日本の経済にとっては、大きなマイナスである。戦争が短期で収束すれば、そうした影響も限定的だろうが、長期化してくると米国を中心に個人消費や設備投資を控える動きに広がる恐れもある。引き続きその動向について、注視が必要であろう。
(問)
今月から金融庁による大手行への特別検査が実施されているが、貸倒引当金の引当率アップ、債務者区分の変更等により、大手行の3月決算に与える影響をどうみているか。
(答)
各行とも、昨年度実施された特別検査の目線を踏まえ、自己査定において、より厳格な運用を行っているものと認識している。こうした自己査定の結果が、今年度から導入された通年・専担の検査制度の中で既に厳しく検証されているところであるが、さらに今般の特別検査において重ねて確認されることになるものと考えている。
現時点で決算への影響等につき、具体的に申しあげられることはないが、いずれにせよ、私どもとしては、今回の特別検査の結果も踏まえ、引き続き、適切な引当・償却を徹底してまいる所存である。
(問)
UFJ銀行はじめメガバンクが今年度から土曜日のATM手数料を105円、徴収しており、公正取引委員会が価格カルテルではないかと関心を持っているが、銀行界としてどう受け止めているのか見解を伺いたい。
(答)
まず、UFJ銀行の対応についてご説明させていただく。
当行では、昨年の12月7日(土)から、利用手数料をお客さまにご負担いただいている。これは、土曜日も、お客さまにATM・CDをご利用いただくためには、運営・管理に対する諸費用がかかっており、この費用の一部として、日曜日と同額を、お客様にご負担いただくものである。
当行としては、今後ともお客様へのサービス向上へ努めてまいる所存であり、ご理解を賜りたいと考えている。
その後、他の都市銀行でも同様の動きが出てきているようだが、それぞれ、各行の経営判断によるものであり、独占禁止法上の問題はないと認識している。
(問)
生保の予定利率引下げについて、本日、午前中の与党の幹事長会談で今年度は慎重に対応していくことで一致したが、一方、金融庁は引き下げを実施したい意向である。資本の持合い関係で生保業界と密接な関係にある銀行界として、どのようにお考えか見解を伺いたい。
(答)
生保の予定利率引下げを巡っては、報道を通じて、当局、政治サイドで幅広く検討が進められているように聞いている。
制度を設ける必要性があるのか判断する立場にはないが、仮に法案作成に向け、具体的な検討がなされるのであれば、契約者の長期的利益につながるのか、国民・契約者等の理解が得られるのかといった視点から議論される必要があるものと考える。
(問)
今日発表した「住宅金融市場の改革について」であるが、これは今度出される法案に対して反対するものなのか、それとも法案の修正を求めていくのか、ここに書いてあるのは、原則融資業務を行わないという点だと思うが、その辺りはどちらなのか。
(答)
「特殊法人等整理合理化計画」が発表されて1年経ったというタイミングを捉えて今後の住宅金融市場についてどうあるべきかということを提言をさせていただいたということであって、私どもの考える住宅金融市場のあるべき姿の実現に向けて幅広いご理解を得るように、色々なところに働きかけてまいりたいということである。
(問)
UFJ銀行も含めて大手行が次々に増資を発表しており、先日、三井住友銀行がかなりの額の増資上積みを発表したと思うが、UFJ銀行は1,200億円の調達と聞いている。今後、これ以上、上積みする計画はあるのか。
(答)
今後の具体的な資本計画について、この場で申しあげることはご容赦いただきたい。私どものグループとしては、今、お話にあった不良債権を分離する子会社による調達を1,200億円予定しているわけであるが、現状、これを含めて3月末には十分な自己資本を維持できると判断している。
振り返ってみると、UFJグループとしてはこの2年間で合計で4,500億円近い調達を行っており、これまでもタイミングを見ながら十分な調達を行ってきたと思っている。一方で、これまで何度も申しあげているが、自力調達の道を探ることは我々の財務戦略の中でも重要なオプションだと考えており、あらゆる機会を捉えてその可能性を追求していきたいという姿勢に変わりはない。
(問)
産業再生機構についてであるが、大手行に対して出資を求めているというようなことが伝わっているが、実際にそういった要請があったのか。
また、産業再生機構との係わり方について、発足すると言われていながらなかなかできなかったり、トップ人事も色々報道があるようだが、再生機構をどう使っていくつもりなのか考えを伺いたい。
(答)
最初の質問については、これまでも申しあげているとおり、銀行界として応分の協力が必要と考えている。拠出額についてはUFJも含め、各銀行とも検討中であり、私から具体的にお答えする段階にはないので、ご容赦いただきたい。
次に産業再生機構がなかなか立ち上がらないということであるが、準備室を中心に様々な検討が進んできていると思っている。産業再生機構の融資機能や保証機能を活用しながら、メイン銀行と協働して、産業の再編を含めた事業の再生に向け、充分にこの機構を通じて取り組んでいけると考えており、そのような方向で活用の方法を模索していきたい。
(問)
UFJ銀行がメインバンクのダイエーであるが、昨日発表された先月の売上高も前年割れで、通年計画の達成が非常に難しいと言われており、3か年計画の一部を修正するのではないかと言われている。メインバンクとして、ダイエーの経営、今後の計画の見直しについてどう見ているか。
(答)
基本的には、ダイエーの再生に向けたトレンドに大きな変化はないと認識している。ご指摘のとおり、経済環境を初めとする諸情勢の変化に対応できるようにダイエーサイドでも営業施策を中心に計画の見直しを進めていると聞いているが、私どもは、主力行として、引き続き必要な協力をしてまいりたいと思っている。現状、金融支援の態勢を見直す必要があるとも思っていない。
(問)
個人向け国債についてであるが、銀行の手数料が高いという声が一部にあると思うが、見解を伺いたい。
(答)
銀行の手数料について様々なご意見があることは承知している。銀行としては様々な手数料をお客さまから頂戴しているわけであるが、手数料算定の基本的な考え方は、業務に関わる運営コスト、システムコストを勘案し、同時に業務戦略を反映させながら適正な水準となるように配慮しているということである。当然、各行が個別の経営判断で決定しているということである。
債券の口座管理手数料に関しては、銀行によって取っているところも取っていないところもあると聞いているが、UFJ銀行としては、債券の購入をいただいた場合には個人向け国債であるか否かを問わず、消費税込みで月105円の手数料をいただいている。これは、先ほど申しあげた、事務・システムの構築・維持に関するコストを一部お客様にご負担いただいているということであり、是非、ご理解をいただきたい。
(問)
住宅金融市場の改革について、全銀協の要望で、どれぐらい真剣にこの問題を考えていらっしゃるのか、何をどのようにしたいのか、どこが問題なのか、もう 1回指摘していただきたい。
(答)
まず、「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定されて1年が経ったというところである。言い換えれば、現在は住公の廃止まであと4年になったというタイムフレームにあるということである。この1年間で新たに開始する証券化支援業務については、具体的な検討および法制度の面でも整備が始まっているが、段階的に縮小するとされた融資業務については、その行く末について、まだ、具体的な措置がなされていないと私どもは認識しているということであり、こうした中で、住宅金融市場のあるべき姿といったものを検討して今回発表させていただいたということである。
その中で、4年後の姿が明らかにされてない融資業務については、民間による代替といったようなもののメルクマールも明示のうえ、段階的な縮小のアクション・プランを作り、公表し、それを確実に実行していただければと考えているわけで、最終的には、住公として原則融資業務は行わないといったことを提言しているということである。
(問)
住宅金融市場改革の中の証券化支援業務について伺いたい。参入基準の設定に関する考え方で、社会的規制が必要であることは言うまでもないところではあるが、金融機関並にするのが適切と考えているのか。あるいは、規制の中身をゼロベースで見直して、異業種からもどんどん入ってきて活力のある市場を作るべきであると考えているのか、どちらなのか。
(答)
新たな制度は、多様な担い手による自由かつ公正な競争が望ましく、お客さまの利便性の向上に資する形で発展するのがよいと考えている。ただし、債務者の保護、投資家の信頼を得るといった観点は必要であろうと考える。そういった観点から見てみると、住宅ローンの受付、説明、審査、事務処理、リスク管理体制、あるいは財務基盤等に対して一定の要件や基準は必要ではないかと考える。
(問)
融資業務については、具体的な措置がなされていないということであったが、法案を見ると、必要な業務は続けるという条文があり、それを根拠に融資業務を行うのではないか。この条項を落とすべきであると考えているのか。
(答)
「特殊法人等整理合理化計画」で段階的な縮小という方向感が出されている住宅金融公庫の融資業務について、我々としてはその方向で適切なものを出していくのが望ましいのではないか、という提案をさせていただいている。加えて、確認の意味で申しあげると、融資業務については、縮小して欲しいと主張しているわけであるが、一方で今回新たに開始する証券化支援業務については、住宅金融公庫と共にスキーム構築に向けた前向きな話し合いを進めているところである。
(問)
住宅金融市場の改革について伺いたい。全銀協の提言どおり公庫が融資を行わず、民間が代替すると利用者にとってどのようなメリットがあるか。あるいは、銀行にとってどんなメリットがあるのか。
(答)
住宅金融公庫融資は、長期・固定・低利といった形で、過去、財投資金あるいは補助金といったものを背景に展開されてきた。1年前に住宅金融公庫融資の段階的縮小が提案されたが、民間の金融機関としては、これを住宅ローンのビジネス拡大の大きなチャンスであると認識している。民間金融機関としては、お客さまにとって利便性の高い様々な商品・サービスをこれまで考えてきたわけであり、引き続き、新たな商品開発等、更なるサービスの向上に取り組んでまいりたい。
(問)
個別行の話であるが、一部の銀行が佐々波委員会の時に受け入れた公的資金の一部返済を考えていると言われている。UFJ銀行もその一つだと思うが、どのように考えているのか。
(答)
現状UFJグループとしては、佐々波委員会の時に受け入れた2,500億円について、期日前にご返済したいと考えて検討しているが、今ここで具体的に申しあげられることはない。そのような方向で行内的に検討したいと考えているところである。
(問)
検討している理由は何か。
(答)
マーケットで劣後調達を行った場合、現状、コールのタイミングが来たら、基本的にはコールをする方向で検討しており、公的資金による調達についてもできるだけ同様の扱いにしたいと考えているところである。
(問)
一時より、銀行株も大分安定してきており、いわゆる3月危機ということを声高に言う人も少なくなってきたかに思えるが、会長は期末の金融市場の先行きをどう見ているか。
(答)
UFJ銀行を含め各行とも、金融再生プログラムへの対応も含め、従来以上に経営改革への取り組みを強化しているところである。私ども個別行としても、昨年12月に「改革加速プラン」を発表している。今後は、具体的なアクション・プランに則って、着実に実行に移し、市場の信頼を回復、評価を高めて参りたいと思っている。UFJとしては、現状、再生プログラムの影響を保守的に見積もっても財務的には十分耐えられると考えており、他の大手行も十分な自己資本を維持しているものと認識している。3月を迎えるにあたり、金融危機を懸念する状況にはないと考えている。
(問)
昨日発表された企業倒産の統計を見ていると、負債総額は大きいが件数は前年を下回っている。これまで、不良債権の処理が進むと倒産が増えるだろうと言われていたが、その辺のからみで、まだ進んでいないのではないかという見方もあるかと思うが、どのように考えるか。
(答)
私どもは2004年度の不良債権問題の終結を目標にして、今必死に課題に取り組んでいるところである。不良債権の処理を進めるには、2つの道があり、1つには、企業の退出ということもあり得るが、一方で再生という道もある。私どもとしても、お取引先の再生を大きな目標として様々な取り組みを行っているところであり、不良債権処理を進めるからといって、必ずしも倒産が増えるということには結びつかないのではないかと考える。