2003年9月16日

三木会長記者会見(東京三菱銀行頭取)

鵜飼専務理事報告

 本日の理事会では、まず、「盗難通帳による払出」ならびに「口座不正利用」について、お手元に配付している資料のとおり、理事会で申し合わせを行うとともに、全銀協としての対応策を決定した。
 次に、平成16年度の税制改正要望について、本件は去る7月22日に骨子を発表しているが、本日の理事会で、お手元の資料のとおり決定した。
 いずれについても、三木会長からお話がある予定である。
 なお、税制改正要望については、この会見終了後、直ちに、三木会長から竹中金融担当大臣に提出することとしている。


会長記者会見の模様


 ご質問をお受けする前に、私から二点申しあげる。
 第一は、「盗難通帳による払出し」ならびに「口座不正利用」に係る対応策についてである。
 本件については、昨今のピッキング被害の状況やヤミ金融問題の深刻化を踏まえると、銀行界としてももう一段の対応強化が必要な状況にあるといえ、前回の定例会見において、全銀協として、ここ1、2ヶ月で対応を取りまとめる旨、明言した経緯にある。
 対応策の取りまとめに先立ち、実態把握のために全銀協として初めて、会員銀行に対してアンケート調査を実施した。概要はお手元のペーパーのとおりである。盗難通帳による払出件数は、ピッキング被害の拡大と歩調を合わせる形で、14年度に急増し、1千件を越えたが、15年度に入りやや沈静化の兆しが窺える。また、口座不正利用に対しては14年度以降、約2,300件の口座を凍結ないしは解約している。
 こうした問題への対応は、各銀行が夫々の経営判断に基づきしっかりと対応していくことが基本であり、実際、会員銀行ではこれまでも工夫を凝らし、種々対策を講じてきたところである。しかしながら、他方で、預金口座はネットワークにより相互に結びついており、銀行界全体の対応レベルが揃わないと、あるいは全体としてレベルアップを図っていかないと、そこにつけこまれることになりかねない。
 こうした点を踏まえ、本日の理事会において、「盗難通帳による払出し」並びに「口座不正利用」に関する①理事会申し合わせと、②全銀協としての対応策の取りまとめを行った。まず、理事会申し合わせについてであるが、1)盗難通帳対策として、副印鑑制度の廃止を含めた印影偽造への対応に取り組む、2)「ヤミ金融業者」等による口座不正利用対策として、口座利用停止や口座解約などの措置を講じる、この2点を盛込み、今後の対応の方向性を会員銀行で共有した。
 特に、副印鑑制度については、既に約6割の会員銀行が廃止済であり、残りの4割も廃止予定ないしは廃止の方向で検討中である。預金者の信頼性、預金口座の安全性を高めるために、会員銀行の総意としてこうした流れを確固たるものにしたいと考える。
 次に全銀協としての対応であるが、こうした会員銀行の取組みをサポートするため、本日の理事会で4項目からなる対応策を取りまとめた。
 まず、第一は、銀行業界、金融庁、警察等関係者による「連絡会」を開催し、意思疎通を密にするとともに連携・連絡体制の整備を図る。要はスクラムを組んで、こうした社会問題に対処していこうということである。
 第二は、全銀協内に専門チームを設置し、ここに関連情報やノウハウを集中し、会員銀行間の情報交換の促進、先進的な取組み事例の紹介や相談・アドバイス機能等を持たせることで、銀行界全体としての対応力の強化、底上げを図る。
 第三は、広報活動を一段と強化し、お客様への注意喚起や本人確認厳格化への理解促進を図っていく。
 第四は、副印鑑制度の廃止の流れを踏まえ、同制度を前提とした現行の「預金規定雛型」の見直しや口座の不正利用対策としての「内国為替取扱規則」等の改定等を早急に検討していく。
 12日には金融庁から銀行界に対して「口座の適切な管理」に関する要請が出されたが、私どもとしてはそうした要請も踏まえ、本日の理事会申し合わせ事項への取組みを着実に図るとともに、全銀協としての対応策を整斉と実施していきたいと考えている。
 次に、「16年度税制改正要望」について申しあげる。7月に骨子を公表したが、その後の検討も踏まえ、今般、配付資料のとおり、要望書を正式に取りまとめた。
 この場では、重要項目の1つである「不良債権処理関連税制」について申しあげる。不良債権問題の解決を後押しするためにも、「欠損金の繰越期間の延長」、「欠損金の繰戻還付の凍結解除と繰戻期間の延長」、「不良債権の無税償却基準の緩和」をパッケージとして実現して頂きたいと思っている。具体的に申しあげると、繰越期間については少なくとも10年への延長、繰戻還付期間については少なくとも2年への延長を要望している。ただし、金融機関の繰延税金資産に算入上限規制等が課せられる場合には、金融庁の「税制改正要望」も踏まえ、16年の繰戻し還付が不可欠と考えており、その点を要望書に明記している。


(問)
 金利の動向と景気の現状認識について、長期金利の上昇傾向が続いているが、こうした金利の変動が、景気回復と銀行経営にどのような影響を及ぼすと現時点で考えているか。
(答)
 まず、長期金利が非常に低すぎたことの調整があると思う。それからここにきて株価が上がっていることがある。更に各種の経済指標もかなり良い数字が発表されている。こういうことが市場に良好なセンチメントを与えていると思う。これが、景気回復や金融機関にどのような影響を及ぼすかについては、経済の回復に見合った金利の上昇は良いと思うが、急激な上昇であると景気の足を引っ張りかねないし、金融機関の経営にも大きな影響がある。そうした観点から、上昇のピッチは緩やかなものであって欲しい。これ以上の上昇、特に急上昇は困ると思っている。個別行として申しあげると、確かに長期金利が上がると、収益的にはマイナスの影響があるが、一方で株価が上昇しているので、差し引きすると株価の上昇の方が大きい。いずれにしろ、長期金利の上昇ピッチが急激なものでないことを望んでいる。


(問)
 東京都の外形標準課税についてであるが、先週末に銀行団側と都側で和解の方向だという報道があるが、現時点での交渉の実情はどのようなものか。また、三木会長自身、また銀行団としては、銀行税そのものについてどのような見解を持っているか。
(答)
 まず現在の状況について話すと、都からの和解案を受け、銀行団でも真剣に検討を重ねてきた。先週の金曜日(12日)、最高裁での代理人の面接があり、ここでギリギリの交渉が行われ、和解の方向に向けて動き出したということである。当然のことながら、機関決定はまだであるので、正式な合意という形ではない。しかし、12日の和解案は15行の総意に適うものであるとは思っているので、先ほど申しあげたように、和解の方向に動き出したと受け止めて頂いて良いと思う。
 銀行税をどう思うかについてであるが、やはり銀行税は資金量5兆円以上の銀行を狙い撃ちするということで、私自身としては如何かなという気持ちは持っている。ただ、ご承知のように高裁の判決が都の裁量権を認めた上で、税率において問題にしたということがある。そうした中で、私どもは筋のとおった解決、最高裁の実質的関与の下での和解ということであれば受け入れるということで進めてきた。そうしたことで、今、和解の成立に向けて動き出したところである。


(問)
 新BIS規制についてであるが、バーゼルの銀行監督委員会から第三次市中協議案が示され、年末に向けていよいよ大詰めだと思うが、全銀協あるいは三木会長自身として現在の市中協議案についてどのような見解を持ち、募集されていたパブリックコメントには、どのような点を重視して意見を出したのか。また、日本の監督当局も早晩、国内措置の検討に入ると思うが、それに対しどのような要望をしていきたいか。
(答)
 新BIS規制が検討されている訳であるが、これは銀行のリスクを減らすようなものであると同時に、銀行にもそういったインセンティブがあることが望ましいと思っている。基本的に、新規制はそういう方向へ向かっているのではないか、そういう本来の目的に合致しているのではないかと思っている。ただし、新規制は現行比相当精緻な、従って複雑なものになるというところがある。リスク管理上、あまり精緻を極めて複雑になりすぎると実務的に大変であるので、パブリックコメントでは、テクニカルな問題が多いが、実務的にあまり複雑にならないようにということで要望をまとめた。
 また、新規制においては各国当局の裁量や解釈に任せているところがあるので、その辺については、当局の方に出来るだけ早くそれを明確化して欲しいと思っている。


(問)
 産業再生機構についてであるが、8月末から9月の初めにかけて案件が幾つか決まったが、この最初の案件の顔ぶれやそこで使われている手法を見て、今、再生機構についてどのように評価し、今後の利用についてどのように考えているのか。
(答)
 産業再生機構について4社、第一陣が出て動き出したことは良いことだと思っている。少し小粒だとの批判もあるが、私は小粒ではないと思うが、この4社にどのように対応されるのか、その対応次第でまた次が出てくるのではないか。とにかく動き出したということが非常に良いことだと思っている。銀行界としても、金融と産業の一体再生が大事だと認識しており、再生機構を利用するのが適した企業については是非利用したいと思っている。


(問)
 銀行の保有株の政府・日銀による買取の問題について聞きたい。
 今日、日銀が日銀による買取期間を一年間延長するという発表をしている。会長は取得機構でも責任ある立場にあると思うが、日銀の期間延長についての見解と、日銀と機能を拡充した取得機構との使い分けをどのように考えているか教えてほしい。
(答)
 まず株式取得機構であるが、ご承知のとおり法律が成立し、幾つかの点で改正がなされた。特に大きかったのは売却時に8%の拠出金を積み立てなくて良くなった点である。これが使いにくい最大の理由となっていたので、この点が改められたことは非常に良かったと思っている。現にこの9月から買取ピッチが上がってきている。今後も銀行界として積極的に活用してまいりたいと思う。次に日銀による買取であるが、日銀が買取期間を1年延ばされたことを私も先ほど聞いたが、大変結構なことだと思う。やはり、我々にとっては選択肢が多い方が良く、日銀の買取期間の延長は歓迎したい。株式の売却は、取引先の了解を得ながら進めるものなので、取引先とも相談しながらそれぞれ使い分けるということになろうかと思う。ただし、日銀の買取はTier1が限度であり、できればそこを見直していただきたいという気持ちはある。


(問)
 資料として配られた「盗難通帳による払出し」等に係る対応で、「関係者(金融庁、警察庁、銀行業界)による連絡会の開催」とあるが、具体的日程等は決まっているのか。また、個別行の話になるが、東京三菱銀行としては、この問題についてどう取り組んでいるのか。
(答)
 連絡会についての詳細や日程はこれから検討するが、極力早期に開催したいと思っている。東京三菱銀行としての対応であるが、各銀行それぞれ工夫をこらしていると思うが、私どもは副印鑑制度を、比較的早く平成11年10月に廃止した。さらに、以前より定期預金については一定の基準を設けて、カードと暗証番号で確認する等、本人確認を厳重にするということをやってきた。今般、さらに対象を広げて、個人の普通預金の支払いを含めて、一定の基準でカードと暗証番号によって確認することとした。これは、10月から実施する予定である。


(問)
 竹中大臣が金融担当相になってから1年が経ったが、去年の9月からこれまでの金融行政に対する評価について、どういった点が良くて、どういった点が悪いか、特に監督される側としての感想を伺いたい。
(答)
 以前にも竹中大臣への注文等について質問があったが、その際、私は竹中大臣は経済財政担当大臣であられるので、やはりデフレ脱却の問題が一番大きく、むしろデフレ対策の方をお願いしますと申しあげた。今のご質問は、金融担当としてだと思うが、丁度1年前に登場されて、ご承知のようにすぐに繰延税金資産の問題が起こった。このときには、銀行界の実情に大きく反するということで、反対をさせて頂いたが、金融再生プログラムを強力に推し進め、不良債権からの早期脱却を強く進められたことは評価して良いのではないかと思っている。


(問)
 盗難通帳等の件で、3点ほどお伺いする。まず1点目は、副印鑑制度の廃止について残る4割も廃止の方向で検討中とのことであるが、副印鑑制度を廃止するとオンライン照合のためのシステム投資が大変になるので体力のない銀行が果たして対応できるか。2点目は、最近銀行によってはカードの暗証番号を窓口で照合する例がでている。全銀協としてそれを奨励するという考えがあるのかどうか、もしくは、対応策について会長自身がどう思っているのか。3点目は、最近本人確認の手段として指紋を照合するということを韓国の銀行などが行っているようであるが、そういったことを今後検討課題として考えていかれるかどうか。以上 3点について伺いたい。
(答)
 第1点の体力の問題であるが、確かに副印鑑制度の廃止にはシステム手当てが要るので、いつまでにということが言えないのがつらいところである。ただ、先ほど申したように、まだ副印鑑制度を廃止していない4 割の銀行も、廃止の予定、あるいは廃止の方向で検討するということが出ているので、これは銀行全体の大きな流れだと思う。したがって、全銀協としてはその流れを後押ししていきたいと思っている。ただ、個別行の事情もあるので、いつまでにといったことは言えないが、社会的な問題であり、銀行協会で申し合わせをし、今後もフォローしていくので、時期は早まるのではないかと思っている。
 次に暗証番号による確認についてであるが、今回銀行協会で専門チームを作るので、そこで会員の各行から好事例・ノウハウを集め、紹介していくことになると思う。これもシステムの問題、経費の問題があるが、暗証番号で本人確認を行う銀行も既にあり、ひとつの有力な手段であろうと思う。
 3番目に、韓国でやっている指紋による照合についてであるが、これは今後の検討課題ということになろうかと思う。現時点では、何とも申しあげられないが、これも含めて、即効性や費用等の面を踏まえて研究してまいりたいと思う。


(問)
 長期金利の上昇を反映して、銀行の住宅ローンの金利が2ヶ月連続で上がっているが、現段階における来月の住宅ローン金利の見通しを教えて欲しい。
(答)
 住宅ローンは、金融界にとって、力を入れている主力商品であることはいささかも変わりない。どのような時期でもいろいろ工夫を凝らしながら住宅ローンを推進していきたいと思っている。住宅ローン金利がマーケットの影響を受けないというわけにはいかないが、そうしたなかでも各行いろいろな対応があろうかと思う。
 東京三菱銀行としては、1%住宅ローンを提供しており、今後、更に金利が上昇するようであれば変更することがないとは言えないが、現時点では1%ローンの提供を続けたいと考えている。デリバティブ等いろいろな手法を駆使して消費者のニーズに応えたいと思っている。長期金利の上昇があっても、それに対応しつつ住宅ローンを拡大したいという各銀行の基本的な方針は変わっておらず、そのなかでどのように新商品を出して、どのようにアピールしていくかということであり、そこは競争だと思う。


(問)
 東京都の外形標準課税に関して、なぜ、最高裁の判決まで持ち込まなかったのか。あれだけ石原都知事の外形標準課税の考えに対し銀行界は理不尽であると反対し、しかも一審、二審で勝訴した状況のなかで、やはり判決という形で結論を出すことが正しかったのではないか。皆さんのなかでどのような議論があったのか。三木会長自身としてはどのようなお考えか。
 また、中小企業向け融資専業の日本振興銀行は、大手銀行を含めた既存の金融界へのアンチテーゼのようなものがある。最終認可はおりていないが、同行に対する評価は如何か。
(答)
 東京都の外形標準課税の問題については、いうまでもなく、大変注目も浴び、我々にとって影響の大きい問題であるので、私どもとしては中途半端な解決ではなく、筋の通った解決をしたいと思ってきた。最終判決を待つというのも考えられなくはないが、先程も触れたとおり、第二審において、地方自治体の裁量権が認める判決が出ており、そのような中で、都が条例改正を打出してきた。我々としては、当事者同士だけでなく、最高裁がきちんと関与したうえでの和解であれば筋が通るのではないかと判断して、代理人ともそのように相談してきた。12日の代理人間の話し合いで最高裁が関与する訴訟上の和解となる見通しが立ち、我々として絶対条件と思っていた点がクリアされたので、和解の方向で検討することとなった。もう1点、税率についても、当初3%から1%に引下げるという案が出てきて、さらにギリギリの交渉で0.9%ということとなった。私どもは訴訟上の和解ということと東京都の更なる譲歩という2点を15行の総意としてまとめてきたので、筋の通る形での和解案となったと判断したものである。
 なお、日本振興銀行の件については、内容がまだはっきりしないので、コメントは差し控えさせて頂きたい。ただ、ご承知のとおり、日本はオーバーバンキングの状況にあるので、新聞報道による情報を見る限りでは、日本振興銀行もなかなか大変だと思う。私ども銀行は、収益を確保しないと社会的責任を果たせない。そのあたりを日本振興銀行の側も、認可する金融庁の側も、きちんと評価して頂きたいとは思っている。


(問)
 訴訟上の和解というのはどのように理解したら良いのか。
(答)
 都の方は条例改正のために都議会を通す必要があり、一方、15行の方は機関決定というか正式な意思決定が必要であり、これが条件となっている。この両方が成就された場合に、最高裁判所が訴訟上の和解として和解調書を作成するということのようである。いずれにしても最高裁がこの和解について法的に問題がないというお墨付きを頂ける感じで捉えている。


(問)
 2点お伺いしたい。
 1点目は、外形標準課税問題についてである。1%が0.9%というのは、ほとんど変わらないと思うのだが、これが15行の総意にかなうのか。
 2点目は、全銀協の会長問題についてである。2ヶ月前の会見でも質疑があったが、その後状況が変わったかと思うのでお伺いしたい。
(答)
 先ほどからご説明しているとおり、我々が最も重視したのが最高裁の実質的な関与による和解ということである。これが絶対条件であった。その上で、確かに、 15行は、東京都の更なる譲歩を求めてはいた。しかし、最初の3%から1%への引き下げがギリギリだというのが、東京都の非常に強い意向であったと代理人から聞いており、1%から少しでも下がるということがあれば、それが0.1%とは言え、更なる譲歩ということだと思う。したがって、単に1%が0.9%になったので合意したということではなく、最高裁の実質的な関与がはっきりし、加えて1%が0.9%になったということ、とご理解いただきたい。 会長行問題については、ご推察どおり、状況は7月と同じである。


(問)
 和解の方向を決断されたが、今回の課税自体に対する合法性を銀行団として認めたのか。
 また、仮に訴訟を継続して、都が独自の判断で税率を引き下げた場合に、最高裁で逆転敗訴する可能性が高まったという判断があったのか。
(答)
 高裁の判決では、地方公共団体が条例を制定することは有効であるとの判断が示されており、その点は個人的には、正直ちょっと納得できないところもあるが、そのような解釈のようであるし、その点は認めざるを得ないということかと思う。
 このまま訴訟を継続した場合どうなったかについては、もちろんやってみないとわからない。本件は、銀行にとっても非常に大きな問題であるので、筋の通った、裁判上認められる形で決着がつけばよいと考え、今回の和解を進めるということに至ったものである。


(問)
 3点伺いたい。
 1点目は郵政公社の話で、先般、東京三菱銀行が郵政公社とATM提携をするという発表があった。今回の経営判断が銀行界として今後、対郵貯戦略に関する考え方に一種の方向転換をもたらすものなのかということについて伺いたい。
 それから、税制改正に関連して2点伺いたい。
 1つは、先ほどのお話の中に「仮に、金融機関の繰延税金資産に関する監督規制が変更される場合には、16年の繰戻還付が不可欠」と仰ったが、16年とした場合、銀行界全体で繰戻還付の金額は総額いくらぐらいになるのかということを教えていただきたい。
 最後に、無税償却の問題で、国税当局が認めている債権放棄の無税償却の範囲には基準がある。今般スタートした産業再生機構を使った場合、4件の事例を見ると、主力銀行が従来よりかなり高い割合での債権放棄を求められているという現実があり、従来の債権放棄の基準と、再生機構を使った場合の債権放棄の比率とのギャップが出てきて、恐らく産業再生機構を使った場合のほうがよりカット率が高くなる傾向があるかと思うが、その辺りの税務上の調整をどうやっていったらいいのかという点について、全銀協としての見解を伺いたい。
(答)
 まず、最初の郵政公社とのATMの開放を何故やったか、これによって郵政公社に対する戦略が変わったのかという質問について結論から申しあげると、ATMについてはネットワークの問題であり、利用者利便等を勘案して開放すべき時期だと思ったが、郵政公社が官営のまま、特典を持ったままで業務拡大をすることについて強く反対していくという点は全く変わらない。
 ATMの件は、ご承知のようにコンビニATMのネットワークが広がり大変好評を頂いている。そうした中で、コンビニATMを利用される方の中には、やはり郵便局を使いたいというお話が随分あり、コンビニの方からは我々と相談のうえ郵便局に開放したいという考えがある。それを我々が押し止めるという時代ではないと思っている。これは業務範囲の拡大ではないと思うし、利用者利便の観点から開放することにした。郵貯に関する考え方については全く変わらない。
 税制改正についてであるが、繰延税金資産について算入上限が導入される場合には16年の還付が必要ということは、金融庁の税制改正要望を踏まえて要請している。しかし、私共として、まずは「平成16年までは集中処理期間であるのでルールを変えないで欲しい」ということがあり、強くお願いしているところである。仮に、何らかの規制を導入する場合には還付が前提となるので、金融庁の改正要望とも平仄を合わせる形で16年となった。
 その金額がどれぐらいかということについては、昨年は新聞情報等では全体で9兆円余りと聞いているが、今回どの位になるかは、各行によって数字は異なり、全体は存じあげない。
 それから再生機構については、どちらがカット率が大きいかはケースによると思うし、今までメインが責任をとって、カット率を大きくしていたこと等を考えると、再生機構のほうが大きいかどうかは疑問である。債権放棄した分については、再生機構でも無税になってもらわないと困るし、そうなると思う。


(問)
 銀行税については、各行が足並みを揃えることについてプラス面とマイナス面があったかと思うが、最終局面にあるこの時期に、各行がまとまって取り組んできたことに対する評価を伺いたい。
(答)
 15 行についてはずっと一致団結してやって来た。一審、二審の判決を見るとやはりその成果があったのではないかと思う。バラバラであっては、こうはならなかったのではないか。今回も、銀行界としては一団となって、筋の通った解決をしようとやってきたので、その点は良かったと思う。

別添資料:三木会長記者会見(東京三菱銀行頭取)