平成16年2月24日

三木会長記者会見(東京三菱銀行頭取)

斉藤理事報告

(なし) 


会長記者会見の模様


  ご質問をお受けする前に、東京都の「新銀行構想」に係る全銀協意見を取りまとめ、公表したのでご報告申しあげたい。
 ご承知の通り、東京都は来年4月以降の新銀行の開業を目指して準備を行っている。私どもは昨年5月と11月に全銀協会長コメントを公表するなど、「新銀行構想」の問題点等を指摘し、重ねて慎重な対応を求めて参ったが、今般、東京都が「新銀行マスタープラン」を発表したこと、及び1,000億円もの出資を盛り込んだ予算案を審議する東京都議会が明日開会することから、改めて全銀協としての考え方を整理したペーパーを取りまとめ、昨日公表した。
 お手許にそのペーパーとエッセンスを取りまとめた1枚紙をお配りしたので、ご覧いただき、是非とも私どもの主張にご理解をいただきたい。
 内容の詳細な説明は割愛するが、お手許の1枚紙にあるように、主張のポイントは、中小企業向け貸出をはじめ既に民間金融機関が積極的に対応している分野に、1,000億円もの税金を投入して新銀行を設立し、参入する意義はなく、「新銀行構想」は抜本的に見直すべきである、という点である。
 また、「新銀行構想」の根本的な問題点としては、①政策目的の追求と健全性確保の二律背反、②「官から民へ」の流れへの逆行、③欠損時や破綻時の損失負担、の3点があると考えている。
 すなわち、東京都のいう政策目的、これは既存の金融機関が対応できないところへの融資を行うということのようであるが、これを追求すれば、民間がとれないリスクをとることになり、健全性の面で問題が生じる。さらに、万一破綻した場合には、そのコストは預金保険機構に負担がかかってくることになるのではと危惧する。一方、健全性の確保を目指しつつ収益を追求すれば、民間金融機関の業務とバッティングすることになり、経済活性化を阻害し、「官から民へ」という構造改革の大きな流れに逆行することになる。どちらにしても国民経済的にみて多大な問題を孕んでいると思う。
 都議会におかれては、是非「新銀行構想」の徹底的な検討と検証をお願いしたいと考えている。


(問)
 景気と為替の動向について、認識をうかがいたい。先週発表された10-12月期の実質GDPは、事前の予想を上回る数値であった。一方で、デフレーターの方は下落が続いている。更に為替の方であるが、昨日109円台の円安に一時突入したということがある。こうした指標・レートの動きを見ながら現在の景気の動向・マーケットの動向についてうかがいたい。
(答)
 景気の方は先般公表された10-12月期の実績が年率7%で、非常に高い数字が出た。名目も+2.6%であった。わが国の景気が着実に回復していることを示していると思う。海外経済の回復を受け、輸出が好調であり、生産の方も好調、設備投資も増加している。一方、家計部門は回復が少し遅れてはいるが、こちらの方も底固い推移になってきている。ただ、回復のバラツキ、すなわち、「企業と家計」、「大企業と中小企業」、「中央と地方」での温度差は残っている。また、デフレの状態もなかなか簡単に解消するということではないように思う。
 いずれにしても、輸出を起点とした景気の回復傾向は続くと思うが、これが民需中心の自律回復に結びつくには少し時間がかかるとみている。
 為替はここのところ若干円安方向に揺り戻しているが、やはり円高圧力が強い状況は続いていると思う。日本の景気が回復していることと米国の双子の赤字の両方を考えると、円高圧力は引続きあるのではないかと思うが、一方で政府・日銀が腰の入った介入スタンスをとっているので為替相場は105~110円のレンジでの動きとなるのではないか。少し円安の方に揺り戻しているが、まだ全体としては円高の水準だし、円高懸念は引き続きある。
 一方、株価は今日、200円ほど下がったようだが、こちらの方は企業収益から見ても、また景気の環境から見ても大きく下げる要素はないのではないか。現状程度の、10,000円から11,000円の間で当面推移するのではないかと思っている。


(問)
 新生銀行の19日の上場についてであるが、売出価格を上回る初値が付いた、マーケットの関心を集めた、ということだが、一方で巨額の公的資金の損失が発生し、あるいは株を保有している外資系の投資組合が巨額のキャピタルゲインを得たということで、なお国民感情は複雑なものだと思うが、5年前の破綻から遡り、今日の旧長銀の再生について、これは日本の銀行界あるいは金融行政にどのような教訓を与えたのかについてお聞かせ願いたい。
(答)
 初めてだったということもあり、今、振り返るとかなり有利な条件を出しすぎたのかなという思いも率直にいえばある。しかし、当時は法的な枠組みも万全とはいえず、例えばロスシェアリングの手当てがなかったということが大きく、瑕疵担保条項を入れざるを得なかった。
 また、私ども邦銀も当時は自分のところの不良債権処理で精一杯で余裕もなかったし、再生を手がけるようなノウハウも当時は十分とは言えなかったように思う。そのようなことであの時は止むを得なかったのかなと思う。また、その後の仕振りについても外資ならではの合理的・ドライな手も打たれた。そういったことも今回の再上場に結びついたかなと思っている。ただ、ここで再上場されたことは、大変立派に再生されたということであり、素直にそれは評価されるべきではないかと思う。
 上場にあたり人気を博したが、それはやはりバランスシートが綺麗になったこと、もう一つはビジネスモデルが預貸ではなく、フィービジネスで収益をあげるということが評価されたように思う。ただ、安定的な収益をフィービジネス中心にあげていくということはそう簡単ではないように思う。公的資金がまだ入っているので引き続き企業価値を高められ、早く公的資金から脱却していただきたいと思う。


(問)
 大手行に対する大口融資先の貸出状況を調べる金融庁の特別検査が今月入った。例年になくメディアの関心を集めているわけであるが、この検査の推移についてどのように見守っているか。
(答)
 特別検査はこれでもう3年目となり、一般的にはかなり目線が擦り合ってきたといえると思う。そういう意味では全体として自己査定と検査結果との間に大きな乖離がなくなっているように思う。ただ、まだ再建途上でフォローを要する先があることは事実であり、そうした先の再生に向け、今、一所懸命取り組んでいるところである。個別の問題先の状況については具体的に知る立場にはないが、一般的には、そういうことで目線は合ってきており、そうしたなかで、フォローする先があるということだと思う。
 特別検査は第三者の目でそうした取り組みをチェックするものであり、更に再建計画検証チームよる検証もある。こういう第三者の目を活用しながら再建に努めていきたいと思っている。


(問)
 偽造キャッシュカードの問題についていくつか伺いたい。
 昨日アンケート結果が出ているが、前回の会見で会長から「顧客に過失がない場合には被害を補填していく方向である」ということが示されたが、今回被害急増という結果を受けて、改めて被害への対応方針をお聞かせいただきたい。
 また、補填するに際して、顧客の過失の度合いについてどこで線を引くかという作業が必要になるかと思うが、そうした作業で既に具体化しているようなものがあればお聞かせいただきたい。
 被害届を出す・出さないということについて、銀行によって方針にバラツキがあると聞いている。警察はこの被害届について顧客ではなく銀行サイドが出すべきだという見解を示している。会長あるいは全銀協としての見解をお聞かせいただければと思う。
 以上、被害への対応方針と具体策について、それから被害届について、三点お聞かせいただきたい。
(答)
 キャッシュカードの偽造については、私どもは会員にアンケートを実施し、その結果を発表したところであるが、これはご質問の全体にかかるわけだが、何と言っても偽造キャッシュカードによる被害を防ぐには、カードの保管と暗証番号の管理が非常に重要であり、是非、そうした点についてご理解・ご協力いただきたいということをまずお願いしたい。
 対応についてであるが、なかなかこれだという対応は難しい。全銀協では以前から、キャッシュカードの磁気ストライプの中に暗証番号の情報を入れないように会員銀行に対応をお願いしている。
 加えて、この年末年始には防犯のチラシを配り、キャッシュカードの盗難について注意喚起をし、それから生年月日であるとか電話番号であるとか、推測されやすいような暗証番号は変更して欲しいということを呼びかけている。全銀協のホームページにもこうしたことを載せ、注意喚起をしている。
 さらに暗証番号を変えようというときに、これが簡単に変えられるような手続にしなければならないということで、銀行によってはATMで機動的に暗証番号が変更できるようにしている。大手銀行では大体そうした体制ができあがっており、私どもでもそれが3月からできるようになる。もう少し中期的に見ればやはりICカード等を導入して、そうした偽造を防ぐようにしなければならないと思っている。以上が対応および具体策である。
 それから被害届をどうするかについては、当行のケースであるが、現在、偽造カードで問題が起きている案件は全て警察の捜査に協力し、警察と相談している。銀行によってその対応に違いがあるかもしれず、また、ケースバイケースということもあろうが、キャッシュカードの偽造問題がクローズアップされているので、届けるべきものは届けるということを徹底していきたいと思っている。


(問)
 今、防犯の観点から伺ったが、現実に起こっている被害について、対応について前回は預金者のほうに過失がないことが分かれば補填していきたいと、そういう方向にあるとおっしゃったが、この方針には変更はないか。
(答)
 前回も申しあげたがこれはケースバイケースであり、そしてまた個別銀行でどう判断するかという問題である。ただ、個人的には被害者に過失がないものについては、銀行のほうで責任を負うということにならざるを得ないのではないかと思うが、あくまでケースによって色々判断しなければならない。
 繰り返しになるが、カードホルダーの方には暗証番号等に注意を払っていただき、簡単に推測されない暗証番号に変更していただくことをお願いしたい。私共としても暗証番号の変更が簡単にできるよう機械化等も進めていきたいと考えている。


(問)
 先日カネボウが産業再生機構の支援を受けて再生をするということを発表されたが、主力行の債務免除なしに、言わば丸抱えで産業再生機構が一私企業の再生をするというスキームついての評価は如何か。また、今後、こういった形で多額の債務を抱えた大企業の再建が進んでいくのか、問題点はないかなどについて伺いたい。
(答)
 産業再生機構は支援方針をまだ決めたわけではなく、したがって、産業再生機構における具体的な検討は正にこれからだということであり、ここでコメントすることは適当ではない。
 報じられているところでは、という前提で考えると、やはり競争力のある分割会社への支援だということと、多額の出資を行う可能性があるということで、注目されているところだと思う。
 産業再生機構については、私どもも以前から、弾力的な対応をお願いしてきている。また、金子大臣も産業再生機構の活用にご熱心であり、私どもも利用していきたいと考えている。やはり、産業再生機構がリスクを取るということは、民間では難しい再生についてリスクを取るということではないかと思う。報じられているような図式だけからすると、むしろリスクがあるのは残る会社の方で、化粧品会社の方はやっていけるような感じがする。また、出資は認められているので問題ないが、出資額が大きいので、産業再生機構での再生が終わって、民間に売却するときの出口がどうなのかということがある。額面買取という話も出ていたが、これもこれからの問題であるとのことである。買取については、デューデリジェンスを行い、きちんと買い取っていただくということになるのではないか。


(問)
 大阪府が銀行に対する外形標準課税の税率を3%から0.92%に引き下げて、課税を実際に始めるという条例改正案の準備をしているが、その動きに対する銀行業界としての受けとめ方と、訴訟について、和解を検討されているのか、あるいは訴訟継続という前提で考えているのかについて伺いたい。
(答)
 直接大阪府から正式に何も要望なり話を聞いていない。また、東京都の時にも申しあげたが、これは全銀協としての問題ではないことはご理解いただきたい。
 大阪府から直接お聞きしていないが、今話が出たような0.92%での和解ということが提起されるとすれば、個人的な見解であるが、最高裁の場における東京都との和解が0.9%であった、ということは重い実績であり、0.9%以下でないと困るなと思う。


(問)
 カネボウの件だが、産業再生機構の本来の役割からすると、民間では難しい再生についてリスクをとるということだと、先ほど会長は言われた。今回のスキームではリスクの残る会社をどうするのかということが一つの焦点となっていると思うが、先ほどの話だと本来的にはそこまで踏み込んで機構が支援しないと機構の存在意義に悖るとのお考えなのか。
(答)
 そこまでは申しあげていない。重ねて申しあげるが、まだ産業再生機構では方針は出されていない。報道によると、分離した子会社である化粧品会社の方に出資するとのことであるが、そちらの方は察するに優良会社のようであり、きちんとやっていけるのではないかと思われる。カネボウに問題があるとすれば、カネボウ全体または化粧品を分離した後の会社の方ではないかということであり、機構として全部をみるべきだとかそういうことではなく、これから発展するであろう化粧品会社にだけ出資することはどうも納得しにくいのではないかということを申しあげた。


(問)
 本来的には、そのリスクの残る会社というか化粧品以外のところの支援がありうるべきということなのか。
(答)
 産業再生機構であるのだから、やはり金融と産業の一体再生ということで、民間では利害錯綜その他いろいろあって難しい案件について再生するというのが本来の目的であろうということである。


(問)
 3月に銀行窓口での保険の販売についての結論が出るのではないかということだが、銀行の販売の仕方が、たとえば中小企業に対して融資をしている銀行がそれを背景にして保険を売るというのはいかがなものかというような話が保険業界からも聞かれるが、そのあたりについて改めてどういう考えをされているか教えていただきたい。
(答)
 保険窓販の範囲の拡大については、現在、金融審議会で議論されているところであり、我々金融界としては、これを全面的に解禁することを、まず、望んでいる。
 一方、ご承知のとおり保険業界、特に生保業界は今おっしゃった圧力販売であるとか、保険自体は先行きのニーズもそれほどないとか、利用者はワンストップショッピングは望んでいないなどの理由から、非常に強い反対をされているわけである。
 私どもはこれを考えるときに、弊害があるからやめようということではなくて、消費者のライフスタイルに応じたニーズがある以上、やはりそれを規制緩和の一環として解禁していただいて、そのなかで弊害をどうやって防止するかという考え方に立つべきだと思う。問題があるからやめるというのではなくて、やはりニーズがあるものはしっかりと対応し、弊害についてはどうやって防止するか、ということだと思う。その一つが優越的地位を利用しての圧力販売ということが言われているが、これについてはすでに法律でも禁止されているし、さらに仮にそれで不十分であるというのであれば、その手当てをすれば良いということである。少なくとも銀行が窓口販売をするのはきちんと保険の資格をとった者が保険会社の方針・規則に沿った売り方をし、加えて保険会社の審査も受ける、そういう形で我々は窓口での保険販売を行うので、ご懸念はないかと思う。
 ご質問の中小企業等に対する優越的な地位という点に関しては、それを防ぐ手立てをすでにとっていると思うが、必要であればさらに講じていけばいいことである。ニーズがあれば、規制緩和すべきものはして、必要な弊害防止策をとるということでいくべきではないかと思う。


(問)
 さきほど、カネボウの産業再生機構を活用した再建スキームのところで、銀行界としては弾力的な運用ということを前々から求めていたというお話があった。それから、それに対して今回報じられているところでは、産業再生機構が銀行から債権を簿価で買い取るということについて、会長はこれからの問題だということを言われたが、銀行としては買取り価格を高くして欲しいが故に弾力的なということを求めてきたと思うが、改めて簿価買取りというスキームが出たことについての考え方を聞かせていただきたい。
(答)
 弾力的な対応というのは、簿価買取りとか高い価格で買って欲しいということを言っているわけでは全くない。そうではなくて、これまでの産業再生機構は国民のお金ということで二次損を出さないようにリスクをなかなかとらない、そしてそれがまた買取価格にも反映した面があったように思う。加えて審査が慎重に慎重を重ねて時間が長くかかってしまうとか、そのようなことがあって、弾力的な使い易い対応ということをお願いしてきたわけである。
 価格については、民間であっても売る方は高い方がいいに決まっているし、買う方は安い方がいいに決まっているが、妥当な値段、これはきちんとデューデリジェンスを行い、その上で算出したしかるべき値段というものがあるわけであるから、それでお願いしたいということを言っている。簿価買取りというのは、普通のケースではなかなかないのではないかと思うが、いずれにしても産業再生機構はきちっとデューデリジェンスをして、きちっとした値段で買って欲しいということであり、それは弾力的な対応と言っていることと全く矛盾するものではないと思う。

別添資料:三木会長記者会見(東京三菱銀行頭取)