2004年4月20日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

 本日は、諸般の事情で、会見開始時刻をこの時間に変更させていただいた。皆様にご迷惑をお掛けしたことをまずお詫びする。
 さて、本日開催した理事会において、平成16年度の会長・副会長を選任した。
 会長には、三井住友銀行の西川頭取が選任され、平成16年度は西川会長の指揮のもとで、諸課題に対応していくこととなった。
 また、西川会長を補佐する副会長には、三井トラスト・ホールディングスの古沢社長、UFJ銀行の寺西頭取、みずほ銀行の杉山頭取、東京三菱銀行の三木頭取、千葉銀行の早川頭取、横浜銀行の平澤頭取、および京葉銀行の綿貫頭取の7名が選任された。
 お手元に、西川会長の略歴役員名簿および今年度の記者会見の日程をお配りしている。
 次に、本日の理事会では、システム障害発生時の利用者への情報提供について、お手元の資料のとおり申し合わせをし、改めて万全を期すことを確認した。これは、重要な社会インフラである決済システムの安定稼動に万全を期し、安定的かつ確実なサービスを提供していくことが、私ども金融機関としての重要な責務であることを踏まえたものである。
 また、準会員として、日本振興銀行の4月21日からの加入を承認した。


会長記者会見の模様


 三井住友銀行の西川です。
 本日の理事会において、三木前会長の後を受けて、全銀協会長を務めさせていただくことになった。これから一年間、皆様方のご支援を賜りながら、この大役を務めさせていただきたい。どうぞ、よろしくお願い申しあげる。
 就任に当たっての抱負を申しあげる前に、この場を借りて、三木前会長に一言お礼を申しあげたい。 三木前会長は、厳しい経済・金融情勢の下、銀行界の代表として、多岐にわたる重要課題に積極的に取り組んでこられた。また、銀行等に対する証券仲介業解禁、保険商品窓販に係る規制緩和に尽力される等、見事なリーダーシップを発揮された。この一年間のご尽力に対し、心から敬意を表したい。 さて、改めて銀行界を取巻く環境について考えると、わが国の経済は、ようやくデフレ脱却の方向性が見えつつあるように感じられる。政府、日銀、民間企業等が一体となった懸命の努力の結果が次第に実を結んできていると思う。
 しかしながら、日本の景気が本当の意味の回復に向かうかどうかは、まさにこの一年にかかっていると思う。
 そして私ども銀行にとっては、これまでの取り組みの成果が問われる重要な一年となる。私としては、銀行が、その使命・役割をまっとうし、お客様の信頼を確固たるものにできるよう全力を尽す所存である。 その実現に向けた課題を私なりに整理すると、大きく分けて2つある。
 第一は、金融システムに対する信頼の回復。
 第二は、サービス業としての銀行ビジネスの環境整備ということ。
 まず、第一には、金融システムに対する信頼回復を確固なものにするということである。
 今年度は、主要行の「不良債権集中処理期間」の最終年度にあたる。来年4月にはペイオフの完全実施も控えており、その意味でも大変重要な年度である。
 これまで、私ども銀行界は、金融システムの信頼回復に向けて、最大限の努力を行ってきた結果、主要行の不良債権比率については、2004年度末で半減という金融再生プログラムで提示された目標の前倒し達成も視野に入ってくる、というところまできている。
 また、企業再生についても、制度面の整備や産業再生機構の創設に加え、民間のファンド・企業再生会社が数多く設立されるなど、各方面での取り組みが本格化している。
 引き続き、こうした不良債権処理の促進、企業再生活動の支援に注力していくことで、金融システムに対する信頼を一段と高めていきたいと考えている。
 第二に、「サービス業としての銀行ビジネスが発展するための環境整備」という点についてである。
 銀行界は、これまでの数年間において「金融システムに対する信頼の回復」に全力を傾けてきたが、今年度は「信頼の回復」の仕上げを行うとともに、そうした状況から「テイク・オフ」する年でもあると考えている。その「前向きに大きく一歩」を踏み出す際のキーワードは「サービス業としての原点に戻る」ということである。個々の銀行の経営努力が前提となることはいうまでもないが、サービス業としての銀行の発展を可能にする、残された規制緩和等の環境整備に取り組む必要がある。
 具体的には、まず、「利用者の利益に資する各種金融機関間の競争促進」である。
 私どもが提供する金融サービスを利用者の利益のために「強化」「向上」させるためには、各種金融機関の間の競争促進が不可欠である。
 実際、これまでも「営業時間の延長や柔軟化」「他業態との共同店舗の設置」「証券や保険商品の販売」や「各種のロイヤリティプログラム」など、各銀行によって様々な工夫がなされたサービスが出現している。
 全銀協としては、このような動きを後押しするような規制緩和の一層の推進に注力したいと考えている。
 具体的な課題としては、今国会に上程された(1)信託業法等の改正法案、(2)金融機関への証券仲介業解禁等を内容とする証券取引法改正法案や、(3)先月に方向性が明確化された銀行による保険商品窓販全面解禁について、利用者の利益に資する実効性のある規制緩和が実現されるよう積極的に関与してまいりたいと考えている。
 特に、保険商品の銀行窓販について言えば、銀行による圧力販売の懸念が議論されているが、優越的地位の濫用は法令で禁止されている行為であり、法令遵守体制の整備や役職員の教育等、すでに厳格な対応を行っている。また、融資先企業との関係も大きく変わっている。そうしたなかで、融資先など一定のお取引先に対する販売を一律に禁止するということは過剰な規制であり、お取引先の理解も得られないと考える。規制緩和の目的が実現され、利用者の利益につながるよう、適切な対応を希望する。 第二は、「活発な競争の前提となる環境整備」である。
 「金融サービス」のフィールドで活発な競争を行うためには、利用者保護や公正な取引のための枠組み・ルールの整備が前提である。
 特に、「個人情報の保護」についての取り組みは喫緊の課題である。個々の金融機関において情報管理の一層の強化を行っていくことは当然として、協会としても、来年の個人情報保護法の全面施行に向けて、金融業界の自主ルールの作成などの具体的な検討や作業を進めていく。
 最後に、「効率的な金融システムの実現」ということである。
 この点において申し上げたいことは、わが国における大規模な公的金融の存在が、金融市場の効率化、活性化を阻害する重大な要因となっており、その改革が課題ということである。
 まず、第一に、公的金融の「入口」である郵貯問題である。本年度は、郵政民営化の具体像が決定される予定であり、極めて重要な年である。
 全銀協としては、本年2月に提言を取纏めたが、郵政事業の見直しが、単に民営化するといった形式的な組織論に陥らず、本当の意味で、金融システムの安定化、国民経済へのプラス効果が発揮されるような形で実現するよう、引き続き、関係各所に向けて積極的な提言活動を実施していく考えである。
 一方、「出口」である政策金融については、すでに、政策金融機関の機能の廃止・見直し、組織の整理・統合を進めるとの方向性が提示されている。
 不良債権の集中処理期間を終えた後には、政策金融があるべき姿に移行する時期に入ってくる。全銀協としても、改革措置ができるだけ速やかに実現されるよう主張してまいりたいと考えている。
 繰り返しになるが、銀行がサービス業として発展し、お客様の評価・信頼を勝ち得ていくには、まず、個々の銀行の経営努力が重要である。私どもは業界を代表する立場として、自由な競争を促進し、また、利用者にとって安心して取引いただける環境整備に取り組みたいと考えている。
 そのような大変重要な年に会長の大役をお引受けするということになった。私にとっては2度目の会長ということでもあり、重責を感じている。
 関係各位のご協力も仰ぎつつ、全銀協一丸となって課題に取り組んでまいりたいと考えている。


(問)
 ただいまお話しいただいたご挨拶の中でも、会長は、今後の課題として、金融システムに対する信頼の回復ということをあげていらっしゃったが、会長ご自身の現在の金融システムに対する現状認識と今後の見通しを聞かせてほしい。
(答)
 かねてより、我々金融機関は、不良債権問題の解決に向けて最大限の努力を行ってきた。その結果として、主要行の不良債権比率については、2004年度末での半減という金融再生プログラムで提示された目標の前倒し達成も視野に入ってくるというところまできていると思う。
 また、企業再生についても、制度面の整備に加えて、民間のファンド、企業再生会社が数多く設立されるなど、各方面での取り組みが本格化している。
 また、保有株式にかかわるリスクの削減についても、持ち合いの解消等を通じて大きく進捗しており、株式相場の回復もあり、含み損状態からかなりの含み益へと大きく改善している。この点に関する不安もほぼ解消されてきているという状況である。足元も株価動向などにも現れているように、このような取り組みを通じ、金融システム全体について相応の信頼回復がなされつつあると考えている。
 こうした状況から、引き続き不良債権処理の促進、企業再生活動の支援に注力していく一方、真の意味での信頼を得るためには、各銀行がお客様の視点に立ってサービスのクォリティー、内容を高めていくことが不可欠であると考えている。


(問)
 来年4月に予定されているペイオフの所謂全面解禁に対するお考えと、これが銀行経営に与える影響、あるいは現在の準備状況等を、どのように見ているかをお聞かせいただきたい。
(答)
 来年4月のペイオフ完全解禁に対する考え方としては、完全解禁へ向けて、各金融機関が預金者の方々に安心して利用していただけるよう努力することは、長期的に強固で安定的な金融システムを構築するために不可欠な要素であり、この意味で、ペイオフ完全解禁は乗り越えなければならない最後のハードルと認識している。
 金融機関にとっては、ペイオフ完全解禁に耐えられる健全な財務基盤と高い収益力を構築することに全力を傾注し、預金者や市場からの信頼の維持・向上を図っていくことが何よりも肝心なことだと思う。
 全銀協においては、ペイオフ完全解禁に向けた準備として、預金者の方々にペイオフに関する理解を深めていただけるよう、ポスターやチラシを作成し、広報活動に努めている。
 当行に関していえば、預金保険法で求められている預金等に関するデータ整備、名寄せ等であるが、それに適切に対応すべく万全を期すよう対応している。
 また、ペイオフが完全解禁された以降も、決済用預金については、その全額が別枠で保護されることになっているが、お客さまの中には、決済用預金を利用したいというニーズのある方もいると思われるので、預金者に対するサービスの一環として当行では導入する方向で検討している。


(問)
 最近では経済財政諮問会議の中間報告の素案等も示される等具体的な動きも始まっているが、郵貯民営化に対する考えをうかがいたい。
(答)
 これは、かねて全銀協が取纏めた改革案でも示していることであるが、郵便貯金事業については、既に「簡易で確実な少額貯蓄手段の提供」ということを国営の郵便貯金が行う意義はもはやなくなっているにもかかわらず、230兆円という巨額の資金が市場の埒外に置かれ、民間金融機関と競争条件が異なったままとなっている現状は、構造改革を推進し自由で活力あふれる経済社会を構築していくうえで、大きな問題であると認識している。
 また、今後自主運用が拡大するにつれ、国民はますます大きなリスクに晒されることになる。政府の支払保証が継続する以上、運用の失敗は国民負担に直結するが、現在の郵便貯金は市場原理と相容れない定額貯金を主たる調達手段としており、極めて大きな金利リスク、流動性リスクを抱えている。
 このような郵便貯金事業は、本来、廃止することが望ましいと思うが、その一方で、(1)利用者利便、(2)郵便局ネットワークの有効活用、という観点も十分考慮する必要があるかと思う。
 以上の点を踏まえれば、先般全銀協が提示した改革案の通り、郵便貯金の機能毎に、定額郵貯等の貯蓄性商品を提供し、それによる調達資金を運用する機能はすでに役割を終えており、これは廃止、つまり、新規受入の停止・既存契約の整理勘定への分離を行い、一方、決済サービスの提供・金融商品の販売機能は、利用者利便の確保等の観点から、民営化された郵便貯金が担う形で存続する、という見直しを行うことが望ましいのではないかと考えている。
 なお、民営化された郵便貯金については、(1)官業ゆえの特典の廃止、(2)民間金融機関と同一の規制・監督の実施等、民間との間の競争条件の公平性確保に努めるべきであることはいうまでもない。
 また政府出資が残る間は、決済機能の提供等に限定した所謂ナローバンクとし、一定の預入限度額を設定すべきであると考えている。
 今般、経済財政諮問会議で竹中大臣から「郵政民営化に関する論点整理(素案)」が提示されているが、これにおいては、郵政民営化の意義として、私どもがかねてから主張してきた所謂「見えない国民負担」の最小化が明示されている。また、郵便貯金事業の目指すべき方向性について、民営化後に受け入れる預金に係る政府保証を廃止する旨が明確化されている。この点は大変重要なポイントであり、私どももこれについては積極的に支持したいと考えている。


(問)
 現状の景気の認識と今後の見通しについてご見解をうかがいたい。
(答)
 わが国の景気は、基本的には2002年に入って以降、緩やかな回復局面が持続してきた。特に2003年秋以降は回復傾向が明確化した。ここにきて回復のすそ野も広がってきたということであり、個人消費についても力強さというものには欠けるものの、底固いものがあると思う。
 これは企業部門が主導してきた景気回復ということであるが、企業部門で見ても、業種別、あるいは規模別のばらつきは残っている。また地域別に見ても、地方の景気回復が遅れているというところがある。
 今後については、アジア向けを中心とした輸出の増加、そして製造業中心の設備投資の拡大などを背景とした緩やかな回復傾向が持続するというように考えている。

(問)
 昨日、産業再生機構との意見交換があったが、なかなか産業再生機構の活用が思うように進んでないという声もある。どういったところが活用しにくいのかという点をお聞きしたい。もう一点、個別案件のことで恐縮であるが、カネボウに関して調査委員会を設置する等の動きがあるが、メインバンクとしてそれらをどう認識しているのかお聞かせ願いたい。
(答)
 産業再生機構の活用という点については、昨年の12月に運営方法についての弾力化、そして金融機関との間のコミュニケーション改善ということについて、かなり大きな方向転換がなされた。これによる効果は、私は現れてきていると認識している。産業再生機構の支援決定は12グループあるわけであるが、私ども三井住友銀行の取引先はそのうち4社あり、大企業もそのなかに入っている。私はやはり、債権者の権利関係の調整などが民間ではなかなか難しいといったケースについて、産業再生機構に介在していただくということによって調整が進展していき、その結果、企業再生プランが順調にスタートできるという効果は大いにあると考えている。もちろん、民間でできるものについては、民間で企業再生に取り組んでいくということは当然のことであり、企業再生については、民間において、先ほども触れたように再生会社であるとか再生ファンドであるとかいったものが数多く設立されており、これらを活用した企業再生も進展を見ていると思う。
 また、各地商工会議所が中心となり、中小企業再生支援協議会という組織により数多くの中小企業の再生に取り組まれ、効果をあげておられるということである。産業再生機構の買取り期限は来年3月末ということであるが、それ迄のいろいろな調整等があるので、実際の持込みは今年の10、11月ぐらいが期限になってくるのではないかと思う。そう考えると余すところ6ヶ月強というところであり、我々としても、民間のファンドとタイアップして産業再生機構が買い取るという新しいタイプの買取りも検討をしていただいているようであり、活用をすべしと考えるところについては、積極的に持ち込んでいきたいと考えている。
 カネボウについてであるが、調査委員会を設置したということを、昨日発表された。これは、旧経営陣による経営、すなわち過去の経営について、いくつかの問題意識が新経営陣にあり、これらについて外部の目も入れてきちんと事実関係を明らかにし、判断が本当に適切であったかどうかを確かめていこう、そしてそれを今後のガバナンス強化に役立てていこうという考えでおやりになったのではないかと理解している。そういう趣旨のようであるから、私はカネボウという会社にとって良いことである、特に産業再生機構という民間会社であるが実態的には公的機関であるところから支援を受けるということであるから、過去の問題についてもきちんとここでケジメをつけておく必要があると思うので、適切な判断ではなかったかと受け止めている。


(問)
 銀行窓口での保険商品の販売の件、金融審の報告では全面解禁は3年後ということであるが、3年という時期について会長の所見を伺いたい。
(答)
 3年後とは言われていない。正確に言えば遅くとも3年後に全面解禁と私どもは受け止めている。
 この解禁時期ということについては、こういう内容ではあるが、やはり私は問題があると考えている。我々銀行は、2001年4月以降、保険窓販の経験を積んできている。今回の商品規制撤廃に際して、販売体制の整備に1年以上もかかるというようなことはないと思う。時代の流れ、そして規制緩和のスピードがこれだけ速くなっている中で、3年後というのはあまりにも遅いと思う。このように長期に亘る経過期間を設ける必要性は乏しいと考えている。ぜひとも、多くの保険商品が、早期に解禁をされるよう強く要望したいと思っている。我々としてもその実現に向けて、積極的に関与をしてまいりたいと考えている。


(問)
 公的資金の返済についてうかがいたい。既に一部の銀行では公的資金を完済するところも出てきており、それとは別に、劣後債や劣後ローンの返済も行われている。残るは優先株による公的資金であるが、無理に返済すると本当に体力的に大丈夫なのかという声も一部にあるようである。優先株で入っている公的資金の返済についてどうあるべきなのか、今の考えを聞かせてほしい。
 また、三井住友銀行においては、優先株の返済スケジュールについてどのような見通しを持っているのか、今後の決意を教えてほしい。
(答)
 申すまでもなく、公的資金は返済すべきものであり、各行が各々の方針に基づき、いずれも早期に返済するという方向で努力をしているものと認識している。返済方法やタイミング等については、各行がそれぞれの事情を踏まえて判断することであり、一律に評価をするということは難しい。要は、各行が今後も収益力の強化等、様々な経営努力を続けていくということが重要であろう。私どもも、既に永久劣後債については、2,000億円を昨年3月末で全額返済済みである。残るのは、約1兆3,000億円の優先株であるが、この優先株については、剰余金による返済、すなわち買入消却によって返済するというのが私どもの基本的な考え方、方針である。銀行本体の収益力強化、そして効率化推進、および持株会社傘下のグループ会社の事業強化に全力で取り組むことで、返済原資となる剰余金を着実に積み上げ、経済状況も踏まえて早期返済を検討してまいりたいと考えている。具体的には、これは経営健全化計画で示しているが、この約1兆 3,000億円を早期に返済できるように、SMFGおよびその100%出資会社の合算の剰余金を18年度末である19年3月末には、2兆6,000億円以上とする計画であり、着実にそれを実現してまいりたい。もっとも、その後に返済を考えるということではなく、来年の3月末には、今年度の状況を見た上で、 17年度以降の返済スケジュールを固めていきたいと考えている。


(問)
 場合によっては、2004年度中にも、一部優先株を返済するということもあり得るということか。
(答)
 今申しあげたのは、今年度の出来上がりを見て、実際の返済は来年度以降のスケジュールとして考えたいということである。


(問)
 ペイオフの全面解禁に向けて、なかには名寄せの体制がまだ不十分なところや決済用預金の導入についてもまだ方針がはっきりしないようなところがあると思うが、1年後のペイオフ完全解禁に向けて課題あるいは問題点があるとすると、それについて会長はどのように考えるか。
(答)
 当然のことながらお客さまが安心してお取引きがいただけるという状況にしていかなければならない。まずは、安心してお取引していただけるだけの財務体質にしていかなければならないということが大変重要なことであるが、預金保険法で定められた、名寄せを中心としたデータの整備は、その財務体質云々にかかわらずやっておかなければならない。すべての金融機関がデータ整備をしなければならないという義務を負っており、仮に体制の不十分なところがあるのであれば、遅くとも来年の3月末までにはそういう状態にしていかなければならない。ギリギリになるとこれは手遅れということにもなりかねないので、我々はもうほとんど完璧に終えているが、各金融機関とも早くその準備を整えるということが必要だと思う。


(問)
 不良債権問題の半減目標について、前倒し実施を達成したあとに銀行としてどういう展望を描かれているのか、例えばそれによって貸出が一気に増えるなどという状況になるのかどうか、不良債権問題を解決した後にどういう銀行像を描かれているのかについてうかがいたい。
(答)
 金融再生プログラムで示された半減目標を達成したからといって、そのことによって不良債権問題が完全に解決したということにはならない。不良債権問題についてのマーケットでの不安心理は相当程度に減少していくということになろうかとは思うが、仮に、4%程度残っている、開示債権にはカウントされていないその他要注意先などもいくらかあるということになると、やはりそれぞれの銀行において引き続き残った不良債権の処理、そして劣化防止ということに努めていかなければならないという状態であろうと思う。しかしながら、半減という目標を達成すると、不良債権問題に手をとられる状態からは解放されるということになるので、冒頭の課題の一つとして申しあげた通り、顧客ニーズが多様化し高度化するなかで、本当にサービス業としての銀行ビジネスを強化していく、これに積極的に取り組んでいく、そして本当にお客さまの利益に資し、社会に貢献できる銀行になっていく、これが次に求められる姿ということであろうかと思う。

別添資料:西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)