平成16年5月25日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

 本日は、理事会および総会を開催し、平成15年度の業務成績報告および決算を諮るとともに、理事・副会長の補充選任および平成16年度の監事の選任を行った。
 具体的に申しあげると、理事・副会長については、まず、UFJ銀行の頭取交替に伴い、寺西前頭取の後任として、沖原新頭取を選任し、また、第二地方銀行協会の会長交替に伴い、京葉銀行の綿貫頭取の後任として、北洋銀行の高向頭取を選任した。
 次に、平成16年度の監事については、北越銀行の野崎頭取、泉州銀行の吉田頭取および学習院大学の前田名誉教授の3名を選任した。
 また、理事会では、準会員として、イタリアのミラノに本店があるバンカ・インテーザ・エッセ・ピー・アの6月1日からの加入を承認した。


会長記者会見の模様


(問)
 昨日、大手行の決算の集中発表日であったが、7グループのうち5つが黒字という結果になった。昨日発表のあった期の成果ならびに今走っている期の見通しについて、概括的にどのように見ているか。
(答)
 他行の決算内容の詳細については知り得る立場にないので、個人的な見解として申しあげる。国内景気の緩やかな回復基調の持続、株価の回復等、銀行を取り巻く環境が好転するなかで、いわゆる主要行の業績は総じて回復傾向にあると思う。同時に、不良債権残高、処理コスト、ともに総じて着実に減少していると思う。
 これは、個々の銀行が、金融再生プログラム導入で打ち出された各施策を踏まえたうえで、金融システムに対する信頼の回復に向けて、最大限の努力を行ってきた結果であると受け止めている。
 今年度の見通しについても、現時点で確たることは申し上げられないが、引き続き各行がアセット・クオリティの改善、そして同時に収益力の強化に努め、具体的成果として示していくことができるよう全力をあげて取り組んでいくものと考えている。


(問)
 不良債権問題について伺いたい。集中処理期間の終了まであと1年足らずとなったが、この最後の局面において大口融資先の処理がまだ残っているのではないか、との指摘が本日の新聞等でもなされていた。各行によって事情の違いはあると思うが、全体として見た場合、どのような課題があるのか、ご意見を伺いたい。
(答)
 これまで金融機関は、不良債権の最終処理の促進のほか、企業再生への取組み、そしてDCF法の導入等による引当の強化等、不良債権問題の解決に向けて最大限の努力を行ってきたと思う。
 その結果、主要行(11行)の不良債権は、2002年3月末に26.8兆円、不良債権比率8.4%であったものが、2004年3月末には13.6兆円、不良債権比率5.2%と順調に削減が進んできている。
 不良債権残高はこの2年間で、残高ベースでは13.2兆円減と既に49%の削減が行われており、金融再生プログラムの半減目標は視野に入ったと考えている。
 大口先の不良債権処理についても、特別検査において対象となった大口先の不良債権処理額が、第1回目の2002年3月期には1.9兆円であったが、今回2004年3月期は0.4兆円と大きく減少してきていることから、目処がつきつつあると認識している。
 このように、不良債権問題は概ね峠を越えたと考えるが、この2004年度は、不良債権問題の解決に向けた総仕上げの年として、極力、後年に不安要因を残さないようにしっかりと対応していく必要がある。この点が重要なポイントであると認識している。


(問)
 今回の決算発表に至る過程で、UFJグループの動きは非常に大きなものがあったと思う。その原因が信用リスクに起因するものなのか、あるいはオーディットリスク(いわゆる「監査リスク」)乃至はもう少し幅広く行政リスクというものが何らかの作用を与えたのか、その辺りは判然としないが、結果として相当大きな経営判断が惹起されたことは事実かと思う。このUFJグループの動きがこれからの金融界にどのようなインパクトを与えていくと考えているのか。
(答)
 銀行界は、金融再生プログラム導入で打ち出された各施策を踏まえたうえで、各行ともに金融システムに対する信頼の回復に向けて、最大限の努力を行ってきた。その結果、各行における不良債権処理が進展し、業績も回復傾向にある。
 UFJさんという個別行の事情について公表された以上の事実は存じあげないが、今回のUFJさんの一連の対応は、今申しあげたような大きな流れの中で、同行の経営基盤の強化に不可欠とのご判断に基づいて決定されたものと受け止めている。
 そして、景気の回復基調が続き、株式相場も一定の回復を見せるなど、銀行を取り巻く環境が好転するなかで、いわゆる主要行の業績は今後も回復傾向を続けていくと思われる。そういった状況であることから、今回の事態によって金融システムへの信頼が揺らぐような懸念は全くないと考えている。

(問)
 UFJの話に絡んでもう一点お伺いしたい。昨日、今期中に不良債権の削減を2兆円を超える規模でやっていくという方針を掲げられたけれども、これが他行、大手行やさらには地銀など地域金融機関に波及する影響ということについてどのようにご覧になるか。
(答)
 2兆円の削減を打ち出されており、恐らくこれは不退転の決意で実行されていくということになるかと思う。その中身がどういうことであるか、どういう企業をその対象にされるかによって、他行への影響が違ってくるということは、申すまでもないことだと思う。
 それは大なり小なり影響のあることであろうかと思うが、その他の各行においても、そうした問題先については、それぞれ厳しい自己査定、そしてそれに基づく償却引当を行ってきている。ケースバイケースで若干の違いはおそらくあるだろうと思うが、総じて申しあげれば、きちんと対応してきている。金融庁の検査においても横串を入れるというか、個別企業について各行の対応が極力歩調が合うように検査されるということでもあるので、それぞれすでに問題先については、引当等で対応しておられるということであるから、UFJさんの主力先への対応によって、それほど大きな影響が生じてくるということは、まずないのではないかと私は考えている。

(問)
 今の件に若干関係するが、大口先を短期間でオフバランスしようとした場合、やはり雇用や、景気、中小企業等への影響が出てくるケースも考えられるかと思う。そういった中で不良債権の半減目標をどうしても達成しなければならないというところで、どちらを重視すべきか、会長の見解を聞かせていただきたい。
(答)
 なかなかどちらかに割り切るのは難しいと思うが、オフバランス化を急ぐということになると、破綻処理をするか、あるいは再生機構に支援要請をするか、といった手法になるが、その中でやはり、今、おっしゃったような雇用、あるいは地域経済への影響であるとか、こういったことに配慮しながらやっていく以外にないのではなかろうかと思う。いずれにしても、どちらかになんらかの痛みが伴う、銀行にも、当然、痛みを伴うものであるが、大きな目標を達成していくために、ある程度は忍んでやっていかざるを得ないということではなかろうかと思う。
 ただし、ケースバイケースであって、他行のことであり、UFJさんにそういった対象先があるのかどうか、全くわからないので、あくまでも一般論である。

(問)
 本日16時から、日本郵政公社が初の決算を発表するが、郵便貯金事業で相当の黒字が出る見通しと聞いている。予てから全銀協では郵政民営化に関してはしっかりと検討して欲しいということだったが、改めて大きな黒字が出るということに関して、民業圧迫等そういった可能性について、所見を伺いたい。
(答)
 郵貯については、先に郵貯も含めた郵政民営化について経済財政諮問会議で論点整理が行われている。そのなかで、私どもが予てから主張してきた事業間の適切なリスク遮断や、いわゆる見えない国民負担の最小化ということがはっきりと示されている。また、郵便貯金事業の目指すべき方向性についても、民営化後の新規の預金に対する保証の民間と同等の取扱い、これは政府保証を無くし、預金保険に加入するということだと思うが、こうしたことが明確化されている。この点については、私どもも積極的に支持をしている。
 しかしながら、民営化ということを考えた場合に、巨大なネットワークの維持、このネットワークに価値があるということであるが、現在の24,000に上る特定郵便局を中心としたネットワークを維持していく、そしてまた28万人の雇用を維持していくということを前提に考えられているように受け止められる。そういうことから現状の巨大な規模を維持したまま郵政事業を民営化しようという考えがあるようにも受け止められるわけであるが、そういう形で民営化したとしても郵便貯金の国民経済的な問題が解決されるわけではない。また、地域金融の健全性の維持への懸念もある。こういった点を踏まえて、郵便貯金の機能毎に、その今日的な意義を見直していくことが必要であろうと思う。これが改革のポイントではないかと考える。
 全銀協では、これまでも郵便貯金事業の機能毎に、一つは定額郵貯などの貯蓄性商品を提供する機能の廃止、つまり新規受入の停止と既存契約の整理勘定への分離をやるべきであること、第二番目には決済サービスの提供、金融商品の販売機能はしっかり存続させていくべきであるということ、第三には民営化された郵便貯金における民間とのイコールフッティングの確保、そして政府出資が残る間の一定の業務範囲規制などの設定、といったことを主張してきた。今後、経済財政諮問会議においては、本年秋の最終報告に向けて「民間にできることは民間に」という小泉総理がおっしゃっている大きな基本方針に則り、また私どもをはじめとする民間諸団体の提言等も踏まえて、大きな困難を乗り越え、国民経済的な観点から抜本的改革を目指した検討がなされることを、私どもは強く期待している。


(問)
 今回の決算を受けて、アナリストのなかに、いくつかの特殊要因があってそれが利益をかさ上げしているという指摘があるが、これについてどう考えるか。また、経費の比率をみると、三井住友銀行を除いて、ほかのところはまだかなり高いところもあるが、更なるリストラが必要と考えるか。
(答)
 利益のかさ上げといわれるところは、これは意図的にかさ上げをしているわけでは決してない。例えば、東京都の銀行税について、過年度分が還付されたことによるもの。私どもの場合は約400億円、(訴訟に参加した)銀行全体で1,900億円位ある。こういった銀行税の還付、それから厚生年金の代行返上に伴う利益、こういったものが結果的に利益として計上されていることは事実であろうと思う。これは意図的にかさ上げしたというものではなくて、前期に偶々発生したものである。例えば、私どもの場合、両方あわせて約1,000億円が特殊要因として計上されているということである。
 経費率については、私どもはかねて今年度、2004年度に年間経費6,000億円体制にもっていこうということでいろいろな方策を講じてきた。その効果が現れて、1年早く、2003年度で実現できた。その結果、経費率も36~37%程度にまで低下させることができたということであるが、これで終りというわけでは決してない。今年度も圧縮すべきものは引き続き圧縮を進める。その対象は、年間で70~80億円程度のものしか残っていないが、今年度の場合は営業拠点の拡充等前向きの投資も行っていくので、差し引きするとマイナス、プラスあわせてほぼトントン位ということになるだろうと思う。他の銀行については、リストラの余地があるのかどうかということについては詳しく知る立場にないのでよくわからないが、例えばシステム統合がこれから行われるという銀行もあるので、システム統合に伴って店舗統合が一挙に進んで、経費削減が進められるということになるので、そういった銀行においては、おそらく大幅な経費削減が実現していくのであろうと思う。


(問)
 今年、経団連が、政治献金を加盟の企業や団体に要請している。(会員銀行に)公的資金が入っているという状況下、全銀協としての対応はどうするのか。
(答)
 政治献金については、銀行協会としての対応はしない。これはあくまでも個別銀行の判断である。私どもは、現在、優先株式で約1兆3,000億円の公的資金の投入を受けているので、政治献金を行うという考えは個別行としてはない。


(問)
 不良債権問題の最終的な解決に向けた課題について、例えば要注意先の劣化防止とか、具体的にどういったことに各行が取り組んでいくべきとお考えか。
(答)
 不良債権問題の最終的な解決を図っていくうえで、要注意先等の劣化防止ということは非常に重要なことである。同時に、これとオーバーラップする面もあるが、要管理先、要注意先のなかで企業再生に取り組まなければならないという企業、これは主としてかなり大口先ということになってくるが、こういった対象先について、きちんとした再建計画を策定し、すでに策定して実行に入っているところについても、これを更に見直して、確実に再建が果たせるように修正すべきは修正し、その修正にもとづいた実行を確保していく。そのことにより、出来るだけはやく再生を果たし、再生計画の完了に持っていくということが、総仕上げに際して非常に重要なポイントになってくるであろうと思われる。もちろん、債権売却等によりオフバランス化を進めるということも、従来と同様にやっていかなければならないことであるが、どちらかといえば、要注意先の劣化防止、それから企業再生ということが中心ということになってくるだろうと思う。


(問)
 今国会に上程されている公的資金新法の件であるが、審議日程の関係で廃案になる可能性が出てきたようだ。廃案になった場合、金融システムになんらかの影響があるのかどうか、考えを伺いたい。
(答)
 参議院で審議中ということであるが、国会の日程の関係で成立が厳しくなってきたということから、一部に廃案という見方も出てきているようである。しかしながら、今日も竹中大臣が会見で、是非とも今国会中に成立をさせたい、それをお願いしたい、とおっしゃっておられた。我々もそれを強く望んでいる。
 私どもが利用しようという訳ではないが、特に地域金融機関において来年4月のペイオフ全面解禁を控えて、財務基盤を強化するために公的資金を活用する、あるいはそれと同時に再編ということも考えられる。せっかくの新しい公的資金制度であるから是非とも成立をさせていただきたいと、考えている。 万が一、今国会で廃案ということになったとしても、また秋の臨時国会ということも考えられるので、極力早く成立することを望んでいる。
 公的資金新法がないから大変なことになるというようなことにはならないと思うが、いわゆるセーフティネットを整えていくという点で大いに意味があると考える。


(問)
 収益力の向上に関連して伺いたい。決算を見ると、各行とも利ざやの改善に取り組んではいるものの、なかなか思うようには成果が上がっていないようにも見て取れる。この原因について、どのようにお考えなのか、特にオーバーバンキングの問題が原因として指摘されているので、それも含めて会長の考えを伺いたい。
(答)
 利ざやの改善ということについては、基本的にはリスクに応じたリターンをというリスク・リターンの関係を考えて利ざや改善を図り、お客様にお願いをしている。そのリスク・リターンの関係での利上げは、私が受け止めている限りは、かなり進展していると思う。
 ただし、優良先、相対的に格付けの高いところにおける貸出競争というものが非常に激しく、その貸出競争に勝つために金利を下げていく動きが多くある。
 こうしたことが全体として利ざやの改善を阻害している、引き下げているということになっているのではないかと思う。 これはオーバーバンキングが理由だという見方があるが、私は必ずしもそうではないと思う。銀行の数が少なくなっても金利を下げることによってシェアを確保していこうという経営方針を取る限りにおいては、利ざやの低下が起きてくるのであるから、これはオーバーバンキングのせい、銀行の数が多すぎるということによるものではないと考える。
 あくまでも各銀行の経営スタンスのあり方によるものであろうと思う。