平成16年6月22日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

 本日の理事会における決定について2点報告させていただく。
 一つは、住宅金融公庫の平成17年度予算要求に関する要望を取りまとめた。
 要望内容は、①融資業務の縮小を一段と明確にすること、および②業務委託手数料の見直し、の2点である。
 要望書そのものについては、明日にでも、全銀協ホームページの「意見書・要望書」欄に掲載することとしているのでご参照いただきたい。
 もう一点は、いわゆる偽造キャッシュカードによる預金等の引出しにおける被害届けの提出について、銀行側における対応を明確にする観点から、お手元の資料のとおり申し合わせを行った。
 申し合わせの要点は、(1)ATM管理銀行において、「いわゆる偽造キャッシュカードによる預金等引出し」を確認した場合には、速やかに所轄の警察署へ連絡のうえ、ATM管理銀行から「窃盗罪」による被害届を提出する、(2)ただし、お客さまの取引銀行においても被害届を提出する必要がある場合には、お客さまの取引銀行から、「支払用カード電磁的記録不正作出罪」等、関連する別の犯罪による被害届を提出することができる、というものである。
 なお、この申し合わせは、あくまでも刑事上の被害届の提出に関するもので、民事上の問題とは別のものである。念のため、申し添えさせていただく。
 また、この3月末を基準に行った盗難通帳による払出し件数・金額等に関するアンケート結果がまとまったので、お手元にお配りしている。


会長記者会見の模様


(問)
 長期金利であるが、足元は少し落ち着いているようであるが、今月に入り上昇が続いており、景気への影響なども懸念されるが、景気および銀行の経営に対する影響についての認識を伺いたい。
(答)
 ご指摘のとおり、長期金利がここ1ヶ月ほど急上昇してきたわけであるが、私ども銀行の窓口から見て、企業の設備資金など資金需要に特に動意があるわけではない。また、国債が、緊縮財政のもと、当面、大幅に増発される計画もないわけである。こういうところから見て、鉱工業生産、機械受注など強めの経済指標が出ているが、こういったことを背景とした昨今の長期金利の急上昇は、先行きの金利上昇の予想に基づく、いわば思惑的な先物主導のものではないかと見ている。したがって、資金需要から判断をすると金利上昇がやや急ピッチに過ぎるのではないかというのが率直なところである。
 こういう長期金利の上昇は、景気回復の状況になおバラツキが残るなか、企業収益へのマイナス影響、あるいは国債利払いの増加を通じた財政赤字の増加等をもたらす懸念はあると思う。しかしながら、消費者物価がまだ水面下にあるということ、更に日銀の量的緩和政策が当面継続されるということ、といった点を踏まえると、この金利の上昇の余地は自ずから限られたものであると見ている。実体経済に大きな混乱を与えることは無いのではないかと考えている。
 次に、銀行経営に与える影響であるが、国内銀行合計では、約100兆円の国債を保有しており、一般的には今回のような金利上昇局面では、保有債券の含み損益の悪化といった影響を少なからず受けることになると思う。
 しかしながら、株価は依然として堅調であることや、各金融機関において適切なリスク管理の下でのALM運営が浸透していること、こういった点から見て、金利変動の影響により、金融機関の経営基盤が揺らぐというようなことはないと考える。


(問)
 公的資金の新法が先週成立したが、この法案成立についての評価、および今後の活用の見通しなどについてお考えをお聞かせ願いたい。
(答)
 心配していた公的資金新法が、どうにか国会の閉幕までに成立を見るということができたという点は、大変良かったのではないかと思う。
 こういう公的資金新法がなければ金融システムに重大な影響が出るということではないが、いわゆるセーフティネットを整備するという意味で、新法の成立には大いに意義があると考えている。 わが国の景気の回復傾向は、総じて見ると明らかになってきているとはいえ、地域の経済は依然として斑模様といった状況であり、個々の金融機関を取り巻く環境については、まだ楽観できる段階とはいえない。
 したがって、一般論としていえば、各金融機関が経営の選択肢を検討する中で、例えば、地域金融機関において、今後こうした制度を利用するということも可能性としてはあるのではないかと考えている。


(問)
 今日、金融審議会で報告が出ていると聞いているが、繰延税金資産の自己資本比率への算入制限、これは規制強化といえるかと思うが、この動きについての感想を伺いたい。
(答)
 ご指摘のとおり本日、金融審議会の金融分科会第二部会より、金融再生プログラムに基づいてワーキンググループで検討された報告書が公表された。
 このなかに繰延税金資産に関する報告が入っているわけであるが、また、まだ詳細については承知していないが、自己資本比率規制における繰延税金資産の算入の適正化、即ち、算入上限規制を導入することが適当との方向性が示されたと聞いている。
 そもそも繰延税金資産については、自己資本に占める割合が大きいという点や、資本の質・クォリティという点で様々な指摘があることは承知しているが、ご承知のようにわが国の税制では無税償却・引当の範囲が極めて限定的であり、繰延税金資産が積み上がりやすいということ、その下で不良債権処理を積極的に推進してきた結果として積み上がったものであること、また、繰延税金資産の計上にあたっては、保守的に見積もった将来発生課税所得をベースに繰延税金資産の回収可能性を厳格に判定し、回収確実なものだけを計上することとしているとともに、監査法人の厳しい監査も受けていること、これらの点については、十分にご理解いただきたいところである。
 したがって、改めて繰延税金資産の算入規制導入の是非について申しあげるとすれば、この繰延税金資産の問題は、税制、会計や、マクロ経済政策等とも深く関係する複雑なものであり、単に規制上、算入規制を導入するだけで解決が図られるものではないと考えている。
 具体的な規制の内容については、今後、監督当局が十分に検討のうえ判断されるとのことであるが、仮に新たな規制を導入されるのであれば、その検討にあたっては、急激な規制の変更はマクロ経済にも大きな影響を与える可能性があるということ、不良債権の集中処理期間という他の政策との整合性を考え、来年3 月末の不良債権比率の半減目標達成の成果をよく見極める必要があること、そして何よりも、わが国の税制との関係についても十分考慮いただき、慎重な検討がなされることを、お願いしたいと思っている。


(問)
 先日発表になった足利銀行の2004年3月期決算で、債務超過額が6,700億円という結果になった。譲渡交渉なども含めて債務超過額は確定しないが、預金保険法上はこの債務超過額は金融機関の負担で穴埋めすることになっている。この点についてどのようにお考えか、あるいは行政による負担というものを今後求める考えはあるのか、という点について伺いたい。
(答)
 確かに債務超過額が6,700億円ということが発表されたわけであるが、今後の足利銀行の経営、それから今後予想されるいずれかへの譲渡、こういったことを経て最後どうなるか、そのなかには当然足利銀行の「のれん」というものもどうなるのかということも絡んでくるわけであり、まだ今の段階では何とも申せないのではないかと思う。既に、いろいろな制度的なことについては明確になっているが、足利銀行の場合に、その制度に照らしてどうかという判断は、もう少し先にならないと何ともいえないのではないかと思う。


(問)
 竹中金融担当大臣が参議院選に出馬されるそうだが、そのことについての会長のお考えと、全銀協としてどういうスタンスで臨まれるのか、また、竹中氏が出馬されることによって自民党がどれ位票を伸ばすことができるのか、もし見通しをお持ちであれば聞かせていただきたい。
(答)
 本日、竹中大臣は出馬会見をされる予定と伺っている。金融行政や経済財政に携わってこられた実績から、自民党から強い出馬要請があって、お受けになったものと受け止めている。まだ、当然のことながら、選挙の結果が出ているわけではないので何とも申しあげられないが、民間出身の現職大臣として金融行政を担われるというご経歴をお持ちの方が、国会議員として国政全体に携わられるということを決断された、これは大変なご決断であったのではないかと思う。心からご健闘をお祈りしたいと思う。これは個人的な気持ちである。全銀協として何をするのかということであるが、これは特段のことは考えていない。それから、自民党の得票、あるいは竹中大臣の得票がどうなるのかということであるが、これはまったくわからない。いろいろな予測があるようだが、私は、ご健闘をお祈りするという以外に申しあげることはない。


(問)
 近鉄とオリックスの合併が了承されたようにプロ野球球団の再編の動きがあるが、経営が非常に厳しい親会社もあり、今後再編が続くのではないかという見方もある。こういう親会社は大口の融資先である場合も多く、銀行側からみれば、不良債権集中処理が加速するなかで不採算部門を切り離し、それによって財務健全化を図るという動きとも受け取れると思う。こういう球団の再編の流れについてはどう受け止めているか。
(答)
 球団経営ということについては、私も詳しくはないが、合併するということだけでプロ野球界全体の問題あるいは球団経営の問題が解決するわけではないのであろう。もっとプロ野球全体についての問題、それから各球団の経営の問題ということについて、本当に経営という観点から考えていかなければならない、あるいは考え直さなければならないという点が多いのではないかと感じている。これは私のまったく個人的な受け止め方であるが、そのように考えている。銀行と球団の関係については、親会社と銀行取引があるというケースが多いが、それぞれ事情が異なるので、それぞれの親会社の事情に応じて、考えなければならないものは、考えていかなければならない、ということであろう。具体名をあげてコメントすることはできないが、一般論としては、そういうことであろうと思う。


(問)
 球団の数あるいは2リーグ制が望ましいのか1リーグ制が望ましいのか、もし私見があれば、お聞かせ願いたい。
(答)
 まったく勝手な考えはあるが、控えさせていただきたい。


(問)
 政府税調が先日打ち出した金融所得課税の一体化について考え方を改めてお聞かせ願いたい。
(答)
 6月15日に政府税調の金融小委員会から、金融所得課税の一体化についての基本的な考え方が公表されたわけであるが、このなかでは、中心的な理念は「貯蓄から投資へ」という政策要請に応えて、金融商品に対する課税方式を均衡化して、損益通算の範囲をできるだけ広げていくという方向性が打ち出されたのだと思う。銀行界としても、各種金融資産に対する課税が納税者にとって分かりやすくかつ税制が経済活動における選択を歪めるということがないかたちで整理されるということであれば、そうした見直しは望ましいのではないかと考えている。もっともこのような見直しにあたって納税者にとって使い勝手のよい制度にするとともにわれわれ金融機関や徴税当局に実務的に過大な負担が生じないようにしていくということが必要不可欠なことであると考えている。今後さらに納税の仕組みの在り方を含めて、実務的な観点から、十分な検討がなされることを期待している。


(問)
 UFJ銀行を巡る問題について2、3お尋ねしたい。先週金曜日に金融庁が異例ともいえる4つの業務改善命令をUFJホールディングスならびに銀行に出した。中には検査忌避等もあるが、中小企業貸出等銀行界全体として考えるべき課題もあると思う。先般の4つの業務改善命令が出たことについての受け止め方をまずお聞かせ願いたい。
(答)
 発表されているものを概略読んだが、詳細については私自身よく把握していない状況であるが、一言で申して、このような事態に立ち至ったことは大変残念なことだと思う。UFJ銀行さんは、今後新たな経営陣のもとガバナンス体制の抜本的強化に全力で取り組むと発表されているので、そのような方向で対応していかれるものと私は信じているし、期待もしている。


(問)
 検査忌避に関する指摘に対してUFJ銀行さんの説明は、意図的、組織的なものではなかった、しかし詳細については申しあげられないというもの。一方、金融庁の業務改善命令自体はかなり詳細な点をあげて、組織的かつ意図的であったということを指摘していて、銀行が若干説明責任を果たしていないのではないかという指摘も一部あると思う。その辺についてのお考えというのはいかがか。
(答)
 この点については、確かに金融庁の発表とUFJ銀行さんの発表・コメントには隔たりがあるというふうに思う。しかし当事者であるUFJ銀行さんが、今度の事態は意図したものではないと、そして法令違反の認識がないというふうにご説明をされているので、われわれとしては、そのご説明をひとまずお聞きしておくということ以外にないと思っている。


(問)
 4つの命令の中のひとつに、業績修正の判断が疎かだったというか、事前に発表した修正の数字と実際の決算が食い違ったということで業務改善命令が出ている。これは極めて異例なケースだと思う。その辺で、今後、銀行あるいは監査法人との関係等において何か影響というのは出てくるのか。あるいは金融庁の指摘に対して何かご意見等はあるのか。
(答)
 業績予想の修正ということについては、その修正内容について監査法人が監査するというわけではない。したがって各企業が判断をして、修正すべきは修正するということで発表することになるが、実際上はこういう予想修正をこういう理由でやりたいということについて、監査法人と、これは正式の協議ではないが、話し合いをして発表するということになる。時間的にその後に発生した大きな事情変更ということがあれば、再々修正ということもありうるかと思うが、今回のようなケースはたいへん異例なことであったのであろうと思う。通常そういったことがそれほど起きるということではないのではないかなと私は個人的には受け止めている。


(問)
 少し大所高所からのご意見を伺う。今、UFJ銀行のお話もあったし、りそな銀行の実質国有化からちょうど1年たって、今のところ、りそな銀行については、まだ将来の画が描き切れていないという状況かと思う。90年から見ると、金融危機ということがずっと言われていて、その後、金融再生ということがテーマになっている。会長ご自身のご見解として、金融再生の最終的な姿、もしくは、それに向けて金融業界が、例えばどの位の位置に来ているのかといったご見解を伺いたい。
(答)
 金融再生ということはどういうことかということを申しあげるのはなかなか難しいと思う。切り口として不良債権問題と保有株式に関わるリスクの問題があり、いずれのリスクについても、この間の懸命の努力によって大幅に削減されてきた。保有株式に関わるリスクについては、保有量の圧縮に加えて株価の回復という2つの要因でリスクが大きく削減された。これにより金融に関わる不安要素というものは大きく縮減されてきたと思う。今が、どの段階かということについて、きちんと申しあげるというのはなかなか難しいけれども、問題の峠を越したということは間違いないと思う。 昨年の、りそな銀行さんへの公的資金の投入以降、いろいろなことが起きてきているが、その中でいつも3月危機であるとか、9月危機であるとか、ということが言われたが、この3月にはそういったことがいわれるということもなく、金融についての信頼回復が相当に進んできたということであろうと思う。


(問)
 今の質問に関連して、業界全体で、地域金融機関もしくはメガバンクの中でも、足並みの問題という点ではどうお考えか。
(答)
 これについては、昨日今日始まったということではなく、金融機関全体としてとらえてみると、その中の各金融機関の経営については、色々な側面でどうしても格差というものが存在するということであって、これは恐らくいつの時代でも避けられないことであろうと思う。程度の問題は当然あると思う。


(問)
 竹中さんが「自民党の竹中さん」になるわけだが、そのことが金融庁の金融行政あるいは自民党与党の金融政策にどのような変化をもたらすと思われるか。
(答)
 これまでも竹中大臣は、小泉内閣の中の重要閣僚でいらっしゃり、現在もそうであるわけであるから、党員であろうとなかろうとそれほど大きな違いはないのではなかろうかと思う。


(問)
 竹中大臣が自民党員になることによって、これまでの竹中金融改革の路線が多少鈍るという可能性はないか。
(答)
 私はそれはないと思う。竹中大臣の考え方や方針というものは、非常にはっきりしているわけで、これを変えていかれるということはまず考えられない。

別添資料:西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)