平成16年7月20日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

 本日の理事会では、お手元に配布している資料のとおり、平成17年度税制改正要望の骨子を取りまとめた。
 要望の内容は、「金融システムに対する信頼の一段の向上」、「金融・資本市場の活性化と国際的な金融取引の推進」、「経済活性化と課税の適正化」および「適切な経営環境の確保」という、4つの柱で構成している。
 このうち、1の(1)、「欠損金の繰戻還付制度等の拡充および不良債権の無税償却基準の見直し」、2の(1)、「金融所得課税の一体化の推進」、および特例措置の適用期限の延長を要望している2項目、2の(3)と(4)であるが、この4項目を重点要望項目として考えている。
 なお、正式な平成17年度税制改正要望については、今後、この骨子をもとに、さらに検討を行ない、9月に取りまとめる予定としている。


会長記者会見の模様


(問)
 先週の話になるが、UFJグループが三菱東京グループと経営統合する、そういう方針が明らかになり、日本の金融界も三大銀行時代に突入するということになった。この統合に関する評価としては、金融再生のいよいよ総仕上げに入るといった評価とか、その一方で、まだまだ日本の金融システムに脆弱な部分が残っていたその反映である、といった様々な評価があるが、会長の評価を伺いたい。また三井住友銀行の頭取の立場として総資産190兆円の巨大な銀行、巨大なライバルが出現するわけであるが、これについてどう考えているか。
(答)
 三菱東京グループとUFJグループの統合、これはいずれもわが国有数の金融グループ同士の経営統合であり、大変大きなご決断であると受け止めている。
 これまで銀行界は、金融システムに対する信頼の回復に向けて最大限の努力を行ってきており、その成果も明らかになってきていると思う。ここで、こういう統合が起きたということは、わが国銀行界が一つの大きなターニングポイントを迎えたのではないかと思っている。
 両グループの統合発表のなかで、商品、サービスの更なる充実などお客様に大きな統合効果の還元が可能となるとされているが、今回の統合がわが国金融機関の国際競争力の強化、特に収益力の強化、そして金融商品、サービスのレベルアップに繋がっていくことを期待している。
 これは私自身そうとも思っていなかったわけであるが、一連のUFJを巡る話が、一部ではわが国金融システムの不安要因とする向きもあったかと思うが、この統合により、そうした不安要因が取り除かれたということになるのではないか、これがわが国の金融システム全体の信頼回復を確固たるものにしていくことに繋がっていくのではないか、と考えている。
 個別銀行としては、私自身の個人的な考え方であるが、資産規模ということについては、それほど私どもにとって大きな問題であるとは考えていない。我々も 100兆円という大変な規模の銀行である。規模としては充分なものを有しているということであり、問題は、商品、サービスのクオリティをどうするかである。競争優位の幾つかのビジネスモデルを確立してきたつもりであるが、これを更にどう強めていくか、その結果として収益力をどう高めるかということが大きなポイントである。資産規模との関係で言えば、ROAをいかに高めるか、これが我々に問われているところであり、この点に我々は一層力を入れていかねばならないと考えている。


(問)
 7月11日に参議院選挙があったが、自民党が49議席ということで、この評価もいろいろ分かれているわけであるが、会長の参院選に対する評価、および今後の金融行政に対する注文等あれば、お聞かせ願いたい。
(答)
 私のあくまで個人的な見解であるが、参議院選挙は政権選択の選挙ではないわけであるが、小泉内閣の構造改革への取組み自体については、一定の評価が得られたということではないかと受け止めている。
 経済や金融に関して申しあげれば、小泉内閣誕生以来、官から民への大きな流れのなかで、民間においても官に頼るようなことを考えていくべきではないといった考え方が広がってきて、自助努力により企業再生、そして活性化に向けた幅広い取組みなど、様々な各企業の施策が実現されている。そうしたなかで、企業部門主導による景気回復が実現し、わが国経済は長期低迷から脱しつつあると思う。これも小泉構造改革の一つの大きな成果であろうと思う。
 金融界においても、行政当局と民間金融機関が一体となって金融システムに対する信頼の回復を目指した取組みを進めてきたわけである。その結果、不良債権処理も着実に進展し、不良債権比率の半減目標の前倒し達成ということも視野に入ってくるなど、金融界を取り巻く環境は、はっきりと変化してきていると思う。
 そういった成果が参議院選挙の結果にも現れてきているのではないかと思う。今後とも規制改革をはじめ、構造改革が一層強力に推進されるということを期待しており、我々銀行界としても残された課題の解決に向けて引続き全力を尽くしていく考えである。


(問)
 銀行の自己資本に関する新しいルールが、BISから過日発表されたが、この新しいルールが銀行のリスク管理や経営のあり方にかなり影響を及ぼしてくると考えられる。今後の銀行経営のあり方との関係で今回のBISの新しいルールについてどう考えているか伺いたい。
(答)
 去る6月26日に、98年以来約6年間をかけて検討されてきた新BIS規制の国際的な枠組みが決定した。 この新しい規制案の検討過程においては、我々邦銀としてもより実務と整合性の取れた内容とするべく申し入れを行ってきており、例えば中小企業向け貸出に関するリスクウエイトの見直し等、実態に即したファインチューニングが実施されてきた。また、新規制への移行段階では自己資本比率が大きく変わるということがないよう配慮されていると聞いている。
 このように、今般、決定された新規制は、実態面にも一定の配慮をしたうえで、銀行の抱えるリスクの感応度を高め、銀行自身にリスク管理能力向上に向けたインセンティブを与える枠組みとなっており、金融システム全体の安定に資する内容となっていると考える。
 新しい規制は原則として2006年12月から、一部先進的な手法を選択する場合はその1年後の2007年12月から、それぞれ適用されることになるが、新規制に向けた試行の開始は従来通り2005年12月からとされており、時間的余裕がそれ程ある訳ではない。今回の国際的な枠組みの決定を受けて、これからより詳細な国内適用基準の枠組みが年内にも固められていくものと思うが、それらへの対応も含め、新規制への移行が円滑になされるよう、邦銀としても万全の準備を進めていきたいと考えている。


(問)
 三菱東京とUFJの経営統合の件だが、これに関して住友信託が差し止め申請を行った。銀行の経営統合に関して、大手銀行間でこういった形になるというのは極めて異例なことだと思うが、これに関して、金融システムの安定ということを先程おっしゃっておられたが、金融システムに対する不安定要因にもなりかねないという面もあろうかと思う。この点について、会長のご見解をお伺いしたい。
(答)
 私自身、両行間の交渉経緯等について詳細を存じ上げないので、住友信託による差し止め請求云々について的確なコメントをすることはできない。個人的な感想として申しあげると、住友信託からは5月21日にUFJ信託の業務の大部分を住友信託がお作りになる新しい信託銀行に譲渡されるという発表がされたわけであるが、この5月21日以降、7月13日の夕刻までの交渉過程では、両行間で意見の相違はなかったとお聞きしている。こういう経緯から、住友信託のお立場には、私自身同情はできると考えている。たしかに金融システム云々という問題もあろうかと思うが、個別銀行間のこういった問題についてはそれとは別個に考えなければならないことであろうと思う。住友信託の立場に立つと差し止め請求も止むを得ないのかなという感じがする。


(問)
 今回UFJ信託が大きな争点となっていて、SMFGとして、現時点で信託に関する戦略、重要性をどのように考えているかお話いただきたい。
(答)
 私どものグループとしては、信託業務については、かねてからいろいろな場で申しあげているように、規制緩和の中で我々に許される業務は自前でやって参りたいということで、これまでも進めてきている。今後さらに規制緩和が進む可能性が大きいわけであるので、その規制緩和にあわせて、我々も人材や業務を充実させていきたいと考えている。特に経営統合などは考えていない。


(問)
 1990年代以降、金融再編というのがかなりのスピードで進んできて、今回UFJと東京三菱が統合をされると3メガバンクと2つの信託銀行グループとりそなグループという形になると思うが、これがほぼ最終形とお考えなのか。それともまだ一段の金融地図の再編というものが予想されるのかどうか、その辺のご見解を聞かせていただきたい。
(答)
 なかなか難しいご質問。経営統合であるとか再編であるとか、こういった動きというのは、やはり各銀行あるいは銀行グループが考えるもっとも重要な経営戦略であって、今後ともいろいろな形での再編統合ということは、もちろん可能性としてはありうると思う。何も銀行同士ということに限ったものではないので、これは可能性としてはあると考えておくべきであろうと私は思っている。


(問)
 先ほどの三菱東京とUFJとの統合で190兆円の規模に達するという話のなかで、御行は規模を追求するような経営はしないということであったが、今の世界的な金融再編の流れから見て、三菱東京とUFJとの統合は規模の追求という点で評価できるのか、あるいは世界的に見て時代の流れと逆行しているという捉え方もあるようだが、そうした点の評価はいかがか。
(答)
 私は世界的な潮流と逆行しているというものではないと思う。たしかに、規模を追求することによって得られる効果というのもあるので、そこは幾ら程度の規模が適切なのかという判断の問題になるわけであるが、これはなかなか一概には言えないことであると思う。各金融グループが独自に判断されることであり、これは一概に何が適切かということは言えないと思う。今度の三菱東京とUFJの両グループの統合は、はっきりと規模の利益のある部分が幾つかあると思う。信託部門然りである。この辺は間違いなく規模の利益があるのだろうと思う。ただ、銀行部門を見ると、これは相互補完する部分があると思う。地域性であるとか、あるいは得意分野の違いといった点で補完効果が大きい部分があると思う。むしろ、私は、そちらの方が、大きな意味のある統合ということになるのではないかと思う。190兆円云々というのはひとつのメルクマールというか、いろいろな形でいろいろな意味で規模を簡単にあらわす一つの数字であり、もっと意味のあるところはその中身ということであろうと思う。


(問)
 両グループの統合というのが大口先の再生にどのような影響を与えるのか。御行の中にも実際重なる部分があるかと思うが、その辺りについての見解をお聞きしたい。
(答)
 私は、その点については、この統合によってそれほど大きな影響を受けるとは考えていない。大口与信先の中の問題を抱えている先については、いずれにしても早期に解決策を見出していかなければならない。これをきちんと解決していくということでなければ、不良債権問題について最終的な決着をつけたということにはならない。そして予てから申しているとおり、今年度は集中調整期間の最終年度ということであり、重要なことは来年度以降に不安要因を持ち越さない、今年度中にすべて決着をつけるということだと思っている。こうしたことから、この統合自体がそれに大きな影響を及ぼすということはないというふうに思っている。


(問)
 今の話の続きになるが、世界一の規模の銀行になるわけであるが、そのような銀行が、果たして、政府の手を借りて自分の融資先を再生すべきかどうか、要するに再生機構を活用すべきかどうか、この点についてはどうお考えか。
(答)
 再生機構を活用するかどうかということは、対象となる大口与信先の実情によるわけであり、銀行が統合するからそれによって活用する、しないが判断されるというものではないと思う。再生機構については、非常に複雑な案件、たとえば取引銀行の数が非常に多くて権利調整が非常に難しいというような案件を、再生機構の力によって解決していただくといった活用方法があるわけであるから、それを活用するということが効果があるという場合に活用させていただくということである。したがって、これは統合されたからどうのこうのという問題ではないと思う。


(問)
 バーゼルⅡに関連して伺いたい。2006年からの新BIS規制が導入されるということであるが、三井住友銀行として、どの手法を採用するのか、理由も含めて伺いたい。
(答)
 いわゆる先進的な手法を選択する考えであり、その準備を進めている。どの手法を選択するかについては、例えば、リスク管理について国際金融市場でより高い信任を得ていくためにも、こういった先進的な手法を選択すべきであるとの考えである。


(問)
 3点伺いたい。
 1点目は、UFJ銀行の経営統合に関し、きっかけは金融庁の特別検査によるものと思われる。金融庁とのトラブルからボタンのかけ違いのようなものがあったという見方についてどう思うか。
 2点目は、マーケットの評価が、東京三菱によるUFJの救済合併だとの見方が多いが、どう思うか。
 3点目は、UFJは2005年度上期の統合を前に不良債権処理の決着をつけると話をしているが、上期に1兆8千億の巨額の不良債権処理をどのような格好でやるのか。東京三菱が資本増強に協力するという話もあるが、大口融資先等へのしわ寄せが色々と出てくるのではないかと思う。全銀協としては個別行の問題で取引先とどういう問題が出ようともやむを得ないという判断なのか。
(答)
 金融庁の関与に関しては、私自身詳細なところは分からないので答えようがないが、金融庁の検査というのは基本的に金融検査マニュアルにもとづいて検査をされているわけである。色々な見方をされる向きがあるが、あくまでも金融検査マニュアルにもとづいて行われており、さらに金融再生プログラムによって作られた新しい枠組みというものがあるので、それに関する限り透明性は確保されていると思う。何か感情的な行き違いがあって、こういうことが起きてきたとは考えられないと思う。
 救済合併かどうかについては、私の見方は、三菱東京としても単なる救済ということは、マーケットの評価が厳しい中で、できないことであろうと思う。三菱東京にとっても、UFJにとっても、それぞれ統合による効果について、積極的な意味合いがあるというご判断のもとに決断されたと考えるべきだろうと思う。
 大口問題先の処理については、上期中に大量に処理するといっておられるが、それに向けてUFJとしては最大限の努力をされると思われる。しかし、9月末までに処理を終えるというかというと、時間的な問題もあり、下期にずれこむということもあるかもしれない。いずれにしても今年度中には処理を終えるというのはまず間違いないのではないかと思う。今、下期にずれこむとおっしゃっているわけではないが、我々の関係している重複している会社等を考えると、果たして上期中に物理的に処理が可能かどうか少し疑問に思われる点もある。しかし、上期中にやらなければ大変になるということでは決してないので、「のりしろ」をみていく必要があるのではないかと思う。