平成16年12月20日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

 本日の理事会では、まず、1番目の資料のとおり、「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明」について、申し合わせを行った。
 これは、銀行の住宅ローン商品の多様化が進む中、住宅ローン利用者の適切な保護と住宅ローン市場の健全な発展を図るために、消費者への適切な情報提供とリスク等に関する説明がますます重要になっているとの問題意識にもとづくものである。具体的には、各銀行は、変動金利型および一定期間固定金利型の住宅ローンの金利変動リスク等に関して、住宅ローン契約時までに、原則として書面により説明を行うこととしている。
 2つ目は、「個人情報の保護と利用に関する自主ルール」を取りまとめた。
 この自主ルールは、来年4月から「個人情報の保護に関する法律」が全面施行されることを踏まえ、全銀協の会員が個人情報の適切な保護と利用を図ることを目的としたものである。これは、先般、金融庁が「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」を策定したことから、それを踏まえた銀行界の自主ルールとして取りまとめたものである。自主ルール本体は、本日、全銀協のホームページに掲載するので、そちらをご覧いただきたい。
 最後に、次期副会長および次期正副会長の担当委員会を内定した。
 次期副会長の正式な選任は、次期会長と同様、来年4月の理事会において行われ、また、担当委員会の正式な決定は、次期正副会長が正式に選任された後の正副会長会議において行われる。


会長記者会見の模様


(問)
 最近、12月の日銀短観あるいはGDPの下方修正など景気の減速傾向を裏付けるような経済指標の発表が相次いでいるが、現在の景気に対する認識と今後の景気の先行き見通しについて、見解を伺いたい。
(答)
 ご承知のように、わが国経済は、昨年の後半以降ハイペースの回復が続いてきたが、ここにきて減速から調整的な局面に入りつつあると認識している。
 来年にかけても、潜在成長率は約2%と見られているが、これを下回るペースでの軟調局面が続くのではないかとみている。
 しかしながら、中国・アジア経済の高い成長の持続、何よりも過去数年来のリストラの成果として企業収益体質が大きく強化されていること、更に所得・雇用環境の底打ちといったことからすれば、景気の基調はなお底固いとみている。こういうことから中期的な回復トレンドは続くということであり、その間における一時的な調整局面という位置付けではないかとみている。
 為替レートや原油価格が現状程度の水準であれば、当面の調整局面はそれほど深刻化することはなく、来年度後半には、再び景気拡大のモメンタムが徐々に強まっていくのではないかとみている。


(問)
 郵政民営化についてであるが、民営化に向けた法案作り等が進み、現在かなり詰めの議論が行われているところだと思う。改めて、現在の論点も踏まえて、銀行界としての民営化に対する考えを聞きたい。
(答)
 郵政民営化については、現在、政府内において「基本方針」を踏まえた法案化の作業が進められている。一方、自民党においても、郵政改革のあり方に関する議論が行われている。
 このような時期でもあるので、我々銀行界にとって関わりが大きい郵便貯金事業について、改めて、そもそも何故、民営化が必要なのか、という点について申しあげたい。
 まず、規模の問題がある。
 230兆円という他に類を見ない巨額の資金が市場の埒外に置かれている現状は、経済の活力を高める資源配分を阻害しているということ。
 また、国家保証が付けられた巨額の資金の存在は、国民経済的にみても巨大な集中リスクがあることを意味しているので、預入限度額の引下げ等の措置を講じることによって、規模を縮小していくことが必要と考える。
 第2は、公正な競争条件確保の問題である。
 郵貯肥大化の背景には、無償の政府保証、そして納税義務の免除など、いわゆる「見えない国民負担」にもとづく「官業ゆえの特典」の存在がある。また、現在の日本郵政公社でも三事業一体で経営が行われており、この点も厳格な業務規制を受けている民間金融機関と大きく違うところである。
 民間金融機関との公正な競争条件を確保し、国民負担の最小化、民業圧迫の回避を図るためには、こういった「官業ゆえの特典」を廃止することが最低限必要なことである。
 同時に、金融事業には、民間と同様、他の事業の損失が及ばないような厳格なリスク遮断が不可欠であると思う。
 第3には、民間金融機関のネットワークの拡充ということを踏まえると、郵便貯金の目的である「簡易で確実な少額貯蓄手段の提供」という機能を国営の機関が担う必要性について、改めて見直す時期がきているのではないかということである。
 こうしたことから、私ども銀行界では、長年にわたって郵便貯金事業のあり方について提言を行ってきたところである。
 本年9月に閣議決定された「基本方針」に対しても、具体的な制度設計に際しては、将来にわたる金融システムの安定性確保や活力ある金融市場・金融取引の実現に向けて、公正な競争条件の確保、そして巨大な規模を縮小したうえでの民間市場への円滑な融合、等に向けた施策が講じられるよう意見を申しあげてきた。
 こういった意見が反映され、郵政民営化の本来の目的が実現されるよう、議論の動向を今後とも見守っていきたいと考えている。


(問)
 今年は銀行界にとって様々な動きがあった年だと思うが、今回が、おそらく今年最後の会見となると思われるので、今年を振り返っての感想と来年以降、どのような年になるのか、あるいはどのような年にしたいのか、について聞かせてほしい。
(答)
 私なりに総括していえば、銀行界にとって、この一年は、まず不良債権問題の最終的な解決に向けた取り組みが進展した年であったと思う。
 そして、それぞれの銀行の取り組みが成果となって現れてきた一年だったと思う。
 他方、銀行不祥事が相次ぐ一年でもあった。
 こうした事態については、極めて遺憾に思う。
 お客様の信頼を回復するため、引き続き、協会そして個々の銀行の双方で、法令遵守体制の強化に取り組んでまいりたいと考えている。
 一方、制度面においては、まず、今も申しあげた郵政民営化に向けた検討が進められたことは大きな意義があることだと思う。郵政民営化が、本来の目的の実現に向けた真の改革となるよう強く望んでいる。
 制度面の2番目は、信託業法の改正、そして金融機関への証券仲介業の解禁が実現するなど、規制緩和についても一定の成果があった一年だったと思う。
 もう一点、制度面では、銀行の保険窓販解禁のあり方が議論されているが、この点については、3月の金融審議会報告書で示された方向どおり、極力早く全面解禁を行い、また、対象顧客その他の制限をできるだけなくして、本当の意味での規制緩和を実現していただきたいと強く思っている。
 来年については、一口でいうと、「新たなステージに向けて力強く歩みだす年」と考えている。これまでの「縮小均衡」から本格的な「拡大」姿勢に転じ、自主的な経営努力や創意工夫によって、収益力の向上、財務基盤の強化に努めていくとともに、お客様の多様なニーズに対応した商品・サービスの提供力を高めること、そして、お客様に安心してお取引いただけるよう、法令遵守をはじめ、体制整備を行うということ、また、リスク管理の更なる高度化、バランスシートの改善を通じた金融システムへの信頼のさらなる向上、といった課題に取り組んでいく、そのことにより銀行界が新たなステージに向けて力強く歩みだす年としていきたい。


(問)
 昨日、財務省から来年度の国債発行計画が出たが、それに関して3点ほど伺いたい。まず、最初に2点伺いたいが、一つは個人向け国債のことである。個人向け国債は政府だから出せるという大変有利な商品であるが、来年1月以降、銀行が軒並み個人向け国債の口座管理手数料をほぼ無料にするというかたちで、かなり積極的に売っていくという戦略のようである。先ほど郵政民営化のところで会長は、郵便貯金は市場の埒外におかれる巨額な資金で、資金の自然配分を阻害しているとおっしゃったのだが、個人向け国債もそれに類似していなくもないにもかかわらず銀行が積極的に売っていくというのは、大義名分よりもむしろ本音の部分では、預金を個人向け国債に振り向けてもらいたいというお考えなのかどうか、これが1点目。
 もう一つ、国債管理政策に関連して日銀の再乗換えというのを昨日日銀が決めたわけであるが、要するに国債をもう1年延長して償還資金で買うという決着なのだが、これは安易に日銀の資金に頼るという側面は否定できないところであり、財政規律がこれで緩むのではないかという懸念があるが、その懸念についてどのようにお考えか。まずこの2点についてお願いしたい。
(答)

 個人向け国債は定額郵貯と似通った部分の多い商品性を持っていると思う。そういうことから、定額とまったく同じということではないが、国民の皆様からのニーズも比較的高いということから、我々としては定額郵貯の受け皿、定額郵貯が解約された際の受け皿となっていくということも期待をしている。我々の窓口での販売の対象としても考えられるというか、これまでも比較的熱心に取り組んできた商品である。国債の大量発行が続く中で、一定額以上を個人向けに発行されるということは、国債管理政策上有効な方策の一つであると受け止めている。我々は決して、預金にかえて個人向け国債の販売を増やしたいというように考えているのではない。預金は預金として大変重要なものである。
 それから、日銀の乗換え延長、これは再乗換えということになるが、これが決定された。当局の政策判断そして決定であるので、全銀協会長としてはコメントを差し控えたいと思う。まったく個人的な見解として申しあげると、これも今後国債の大量償還が続く中での措置ということであるが、こうした施策は、市場という目でみればその安定に重要な役割を果たす一方、運営に際しては、健全な財政運営を損なわないよう、財政規律をきちんと守っていくよう留意していく必要もあるというように考えている。


(問)
 個人向け国債は自然な資金配分を阻害するというような商品ではないということか。
(答)
 そういうものではないと思う。


(問)
 もう1点であるが、そういった国債管理政策に加えて来年度は税収が増えるということで新規発行国債が4年ぶりに減るわけであるが、そういうことを反映して足元の債券市場は非常に落ち着いていて、金利が、多分今年度最低水準で、推移している。これは景気減速ということを市場が織り込み始めているだけなのか、もしくは財務省の政策なり日銀の安定的な資金供給姿勢等があって、ひところあった金利上昇懸念が完全に遠のいて、ある意味で市場が再びやや麻痺してきているような懸念があるように見えるが、どのようにお考えか。
(答)
 冒頭申しあげたように景気が減速から調整局面という状態になってきている、私は来年度後半には再び拡大モメンタムが働いてくるというように思っているが、当面そういう状況が続きそうだということ、これがやはり大きいのではないだろうか。それと同時に新規国債の発行額が、若干ではあるが、今年度比削減されるということもマーケットには好感を持って受け止められているということではないだろうかと思う。


(問)
 金利上昇懸念が完全に遠のいたとマーケットの方が安心しているというわけでもないということか。
(答)
 これは、相場のことだから、断定的なことはいえない。


(問)
 UFJ銀行の検査忌避を巡る事件が、今日にも起訴という局面を迎えているが、改めてこの一連の検査忌避事件を銀行界としてどのように受け止められ、また、今後教訓とすべきとお考えになっている部分があるのかどうかお聞かせいただきたい。
(答)
 UFJ銀行の検査忌避問題については、かねて申しあげているように、大変遺憾なことであるが、すでにUFJ銀行においては、経営体制の刷新、コンプライアンスの遵守体制の強化など、そして信頼回復に向けてすでにスタートをしているわけであって、その点ではわれわれとしても大いに評価をしているところである。
 全銀協としては、UFJ銀行からの申し出、そして全銀協内部での議論を経て、1年間の全銀協活動停止ということを決めて、すでにスタートをしているということである。


(問)
 いわゆる検査忌避を巡っては、銀行と検査当局というか、金融庁との間の相互不信というようなことが背景にあったかと思うのだが、この点に関して何か所感等がおありか。
(答)
 私どもとしては、どういった事態であったのかについて、個別銀行のことであるから、十分に把握しているわけでもないし、ただいま捜査当局による捜査が進められているという状況でもあるので、この点についての詳細なコメントは遠慮したいと思う。


(問)
 政府の方で、今、金融機能強化プログラム、今後の2年間の金融行政の指針となる方針がまとめられている最中であるが、金融界を代表するお立場として何かご所見があれば伺いたい。
(答)
 金融重点強化プログラムについては、すでに中間論点整理が公表されているということであるが、われわれの立場から申しあげると、具体的な内容の検討に当たっては、かねてから申しあげていることであるが、民間金融機関の経営努力や創意工夫が十分に活かされるような枠組みの構築や、金融再生プログラム終了後の情勢、そして環境に応じた基礎的な金融インフラの整備などの対応を望んでいる。
 これまで公表された中間論点整理では、金融重点強化プログラムの5つの柱が示されているわけであるが、その中の3点、「強固で活力ある金融システムの構築」、「金融機関の自主的、持続的な取組みによる経営の強化」、そして、「利用者のニーズに対応した多様で高度な金融サービスの提供」といった点については、私ども銀行界が不良債権問題の解決を果たしたのちに取り組むべきと考えているテーマでもある。また、「地域活性化、中小企業再生に貢献する地域金融や中小企業金融の構築」、そして「金融実態に対応した取引ルール等の整備とその下での利用者の安心の確保」といった点についても、銀行界の健全な発展のため、取り組むことが必要な課題であると考えている。
 こういうことから総じて言えば、冒頭申しあげたように、基本的な考え方は私どもと同じである。先程も申しあげたように、来年は「攻めの経営」に転じていく年であるし、また中小・地域金融機関におかれても、リレーションシップ・バンキングの機能強化や中小企業再生、それから地域経済活性化を図るための各種の取り組みを実施しながら、不良債権処理を進めてきておられるわけであって、こういう状況下、こうしたテーマに取り組むためには、民間金融機関の経営努力や創意工夫が必要なことである。そうしたことが十分に活かされる枠組み、基礎的な金融システム、金融インフラの整備、そして規制緩和の推進、公的金融の改革の推進といった点を、ぜひお願いしたいと考えている。


(問)
 先ほど、1年を振り返って、規制緩和のひとつで証券仲介業の銀行への解禁のことをおっしゃっていたが、12月1日に解禁されて20日ばかり経ったが、これまでの仲介件数の伸びなど、実績が挙がっているかどうか伺いたい。
(答)
 銀行界全体としては、まだ3週間ほど経過したところであるので、統計などは出ていない。したがって、詳細は存じないが、私どもの個別のケースで見た滑り出しの状況、あるいは他行の状況等について入ってくる情報を総合すると、まずは順調な滑り出しではないだろうかと受け止めている。


(問)
 先に政府与党において来年度の税制と予算がまとまった。定率減税の段階的な廃止が盛り込まれ、緊縮予算と言う向きもあるが、これが来年以降に与える影響をどのようにご覧になっているのか。
(答)
 予算原案を見ると、一般歳出は若干削減、そして景気の好転に伴う法人税等の税収増、国債の新規発行額は昨年比削減というかたちで、財政再建という方向からすれば、その方向に則った予算編成ということになっていると思う。その中には定率減税の縮小が2005年分だけ盛り込まれているが、今後の景気動向を見たうえで、弾力的に対応できるように考えていただきたいと望んでいる。
 しかしながら、国債発行残高(財投債を除く)が今年度末で約500兆円に達し、年間税収の現在のべースでいけば10数年分という巨額のものになっていることから、財政規律をきっちりと遵守していくというスタンスが不可欠である。これは国債管理政策上も大変重要なことであり、今後とも財政再建を目指した、きちんとした政策の裏付けのある運営を、国民のひとりとして、ぜひお願いしたいと思う。


(問)
 抽象的な質問だが、ここ10年近い間、銀行の再編が進み、銀行の数がどんどん減ってきているが、銀行の数が多い場合と少ない場合とで、国民にとってはどういう違いがあるのか伺いたい。
(答)
 銀行の数が少なくなるということは、銀行界全体として規模がそれに応じて縮小しているということでは決してない。統合・再編によって数が少なくなってきているが、その統合・再編の目的は経営の効率化を進めると同時にお客様に対する金融サービスの提供力、商品サービスの提供力を高めていくということが狙いである。実際に統合・再編によって、そういった目的に適うような経営、そして具体的にお客様にメリットを感じてもらえる経営というのが我々に課された大変重要な課題であると思っている。今後のお客様の評価を待ちたい。


(問)
 産業再生機構のダイエーへの支援決定の目途が年内に迫ってきており、今、銀行団と機構の間でいろいろ調整中だと思う。今日午後の報道で、大体6,000億円を若干下回るような数字で最終的な調整ができ、今日の午後にも最終的に決着するとの報道があったが、今後、産業再生機構で決定された後の主力行のかかわりについて伺いたい。
(答)
 年内にも再生機構による支援決定がなされると聞いているので、再生機構と主力銀行間の協議・調整は大詰めを迎えている段階であろうと思う。報道についてはまだ見ていないので、現段階においては何とも申しあげられない。主力銀行としては、支援決定が行われ、再生機構による支援が本決まりということになれば、我々として必要な協力を行ってまいりたいと考えている。