2005年1月25日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

 本日の理事会では、偽造キャッシュカード対策に関して、お手元の資料のとおり、申し合わせを行った。
 偽造キャッシュカードについては、先週、窃盗団が逮捕されたとの報道があった。このような犯罪に対しては憤りを感じているところであるが、一方、銀行の対応に対しても、預金者保護の観点から様々なご指摘、ご批判を頂戴している。
 偽造キャッシュカード問題は、銀行業の要であるお客様からの「信頼」を根幹から崩しかねない問題であるので、本日の理事会において、会員各行が積極的に検討し、一層の取り組み強化を図るよう申し合わせた。
 具体的には、大きく4つの項目があり、「1.偽造キャッシュカードが使われないために」として、「暗証番号のセキュリティ強化」をあげ、「2.偽造キャッシュカードを作られないために」として、「磁気ストライプと暗証番号に代わる新たなシステムの導入」「お客さまのカード管理の厳正化の呼びかけ」をあげている。「3.偽造キャッシュカードによる被害が拡大しないために」として、「キャッシュカードの利用限度額の引き下げ」「モニタリング」、「4.万一、お客さまが被害に遭われた場合のために」として、「捜査への積極的な協力」「補償の検討」等であり、それぞれについて具体策をあげている。
 以上の対策の中には、銀行によっては既に取り組んでいるものも含まれるが、銀行界としてこうした施策について積極的に検討し、お客様に対して真摯に対応していくことが、まずもって重要であることから、全銀協として申し合わせを行ったものである。
 また、本日は、理事会に先立って「自粛勧告等委員会」を開催して、先般、金融庁から行政処分を受けたブラジル銀行に対する措置について審議をした結果、同行からの「全銀協活動を当面自粛したい」との申し出を受理することとした。


会長記者会見の模様


(問)
 郵政民営化についてであるが、政府もいろいろ協議を始められ、具体化が始まっていると思うが、改めて、あるべき姿等についての会長のお考えを聞かせてほしい。
(答)
 私ども民間金融機関は、昨年9月に閣議決定された「郵政民営化の基本方針」を重く受け止めている。 郵政民営化の目的とされるいわゆる「見えない国民負担」の最小化や、わが国における資金の流れを変え、国民の貯蓄を経済の活性化につなげることについても私どもの考えと違いはない。こうした考え方に沿った民営化をしっかりと進めていただきたいというのが私どもの願うところである。
 そのうえで、郵政民営化の具体的な制度設計については、これまでも将来にわたる金融システムの安定性確保ということや活力ある金融市場・金融取引の実現に向け、意見を申し上げてきた。なかでも「基本方針」では必ずしも明確に示されなかった2点、一つは郵便貯金の「規模の問題」、もう一つは「民業圧迫の懸念の問題」、これについては、十分な配慮が必要と考えている。
 現在の巨大な規模を維持したまま、経営の自由度の高い郵便貯金会社が民間市場に参入するということになれば、民業が圧迫され、オーバーバンキングの深刻化や地域金融の健全性が損なわれるおそれがある。また、郵便貯金の運用の失敗が、最終的には莫大な国民負担の発生につながる可能性も否定はできない。さらに、全国に幅広いネットワークを持った、そして地域に根付いた窓口ネットワーク会社の登場によって、国民の利便性が高まる反面、民業圧迫に拍車をかけるという懸念もある。
 こうした点への配慮を十分に行いつつ、民間の金融システムへの円滑な統合を進めていただきたいと願っている。
 私ども民間金融機関としても、お客さまの視点に立った金融商品・サービスの質の向上や、広範な地域におけるサービスの提供等によって、これまで以上にお客様のお役に立てるよう努力を続けることはいうまでもない。


(問)
 ペイオフの全面解禁が4月からいよいよ実施されると思うが、改めて考え方、準備状況等についてお聞かせ願いたい。
(答)
 まず、金融システムに係わる問題なので、金融システムに対する現状認識とペイオフ解禁拡大に対する考え方について申し上げたい。
 主要行においては、「金融再生プログラム」による不良債権比率の半減目標に対して、銀行によっては既に前倒し達成を実現するなど、不良債権問題からの脱却に向けた最終段階に入りつつあると考えている。地域金融機関においても、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づき、「健全性確保・収益力向上」に向け、鋭意取り組まれているものと認識している。 こうした取り組みを受けて、銀行セクターにおいて格付けの引き上げの動きが見られるなど、金融システムに対する評価は着実に改善してきていると受け止めている。
 「来年4月から予定どおりペイオフ解禁を実施する」との政府方針にもあるように、ペイオフ解禁拡大は、集中調整期間の終了における、いわば象徴的な最後のハードルとも位置付けられるものであり、長期的に強固で安定的な金融システムを構築していくために必要不可欠な要素である。これは、そういう意味で予定どおり実施されるべきものと認識している。
 次に、預金者への影響についてであるが、今回のペイオフ解禁拡大は、平成14年4月のペイオフ解禁により、定期預金等が定額保護に移行して以来、一定の準備期間を経てペイオフ範囲が段階的に拡大されるものであり、資金動向にそれほどの影響はないのではないかと考える。
 最後に準備状況についてであるが、事務面では、名寄せデータの更なる精度の向上などに努めているところであるが、本質的には、金融機関がペイオフ解禁拡大に耐えられる健全な財務基盤と強靭な収益力を構築することに全力を傾注し、預金者や市場からの信頼の維持・向上を図っていくということが重要であると考えている。
 なお、全銀協では、預金者の方々にペイオフに関する正確な認識を持っていただけるように、ポスター・チラシなどを一層わかりやすいものに改定するなどして幅広く広報活動に努めているところである。


(問)
 容疑者が逮捕されたこともあるが、偽造キャッシュカード問題について、改めて現状認識を伺いたい。また、銀行の責任を問う声も一部に出ているが、被害者に対する補償のあり方についてなども含めてお話いただきたい。
(答)
 それでは、概括的に申し上げたい。
 まず、現状認識であるが、全銀協においては会員宛のアンケートを行っており、このアンケートによると、昨年4月から9月の半年間で、被害は122件4億 6,100万円となっており、既に一昨年度1年間の被害を上回っている。このように被害は急増しており、今も話があったように預金の安全性を脅かす重大な問題であると認識している。先日、偽造団逮捕の報道があったが、捜査当局のご努力により、犯人逮捕という結果に結びついたことは、この問題に私どもが適切に対応していくうえで大きな前進であったと受け止めている。
 本日の申し合わせを含めた業界としての対応策、被害にあった預金者に対する補償のあり方については、少々長くなるが、詳細に申し上げたい。
 全銀協としては、この問題に関して、平成16年1月以降、定期的に会員銀行宛被害状況等のアンケートを実施している。また4月には、業界として取るべき対策を検討すべく「口座セキュリティ検討部会」を設置して情報収集、対応策の検討を行ってきた。6月には、警察の捜査を後押しすべく、被害届の提出に関する申し合わせを実施し、更に11月には、問題の重要性や論点についての理解の共有を図るため、「口座セキュリティ検討部会」において検討した内容や収集した情報を全会員宛に還元をした。12月には、警察庁・金融庁との連絡会を行った。
 こうした動きからおわかりいただけるように、手口の解明や各行における予防策の実施に役に立つ対応策を全銀協としても実施してきた。また、預金者に対する注意喚起として、「キャッシュカードを厳重に管理していただきたい」、そして「生年月日や電話番号など他人に推測されやすい暗証番号は変更していただきたい」といったポスターやリーフレットを作成、配付するなどということも行っている。
 今般、偽造キャッシュカード対策に関する申し合わせを行ったのは、これまで「口座セキュリティ検討部会」において検討してきた内容を踏まえて、銀行界として一定の目線を示すことで、各行の取り組みを一層推進することを目的としたものである。
 被害にあった預金者に対する補償のあり方については、まず、大掛かりな偽造団の摘発は全国でも初めてとのことであり、まだ現時点においては、手口の詳細や全貌が判明していないということ、また、既に幾つか提起されている民事訴訟についても判決に至っておらず、司法の判断がまだ示されていないこと、こういったことから協会においても様々な観点から議論を進めているが、現時点においては、最終的な結論を出す段階にはないものと考えている。
 ただし、全銀協においては、昭和51年に規約のひな形である「カード規定試案」を制定しているが、平成6年にこれを改定し、偽造カードによる預金払戻しについて、「お客さまの責に帰すべき事由がないことを確認できたときは、銀行は免責を主張しない」としており、この現行約款を今回、手口が一部判明したケースに当てはめると、銀行が被害者に対して補償するケースがあろうかと思う。ただ今、冒頭に発表した申し合わせに「規定や法に照らした真摯な対応」としているのは、この辺りを前提としたものである。
 今後は、捜査当局との連絡も取りつつ、先日逮捕された窃盗団の手口を業界としても分析するとともに、2月にも予定されている金融庁からの具体的な要請の内容も踏まえて、さらに実効性ある対策を速やかに講じ、実行していく所存である。


(問)
 偽造キャッシュカードの件であるが、今の話を伺うと、手口がはっきりしたような事件で、顧客の責に帰さないという事例では補償がありうるということだと思うが、その規約の運用が非常に厳しすぎるのではないかという批判もあって、事実上門前払いに近い対応が多いという批判もある。申し合わせにいう「規約と法に照らして真摯な対応をとる」というのは、今まで被害に遭われた方への対応も銀行としては改めたうえでやるということを意味しているのか。また、申し合わせの対策事項を見ると、いわゆるメガバンクは対応可能なような気もするが、地方の金融機関においては、なかなか対応できないものも出てこようかと思う。これはやはり護送船団でない今、業界として取組むという話ではないのか、あるいは業界として例えば保険をみんなでやるというような対応ができる部分が今後出てくるのか、地銀などの対応力の問題について伺いたい。
(答)
 これまで被害者に対して厳しい対応をしてきたと受け止められているということであるが、今も申し上げたように現行約款においても、今回のようにある程度手口が判明し、預金者に帰責事由が無いと判定されることになれば、補償するケースもあるということである。我々は、被害に遭われた預金者の被害の模様、ご事情をよくお聞きして、親切に真摯に対応していく必要がある。そして、今後のことであるが、まずは各銀行が本日の申し合わせの趣旨を踏まえ、偽造キャッシュカードが使われないための施策を打っていくことが第一かと思う。
 それから、銀行による取り組みの違いということであるが、偽造キャッシュカード問題は、磁気テープと暗証番号という現行のキャッシュカードのシステムを使う全ての預金取扱金融機関に共通する問題であり、現行システムのセキュリティ向上については業界全体で足並みを揃えた取り組みが必要であるとの認識である。そういう意味からも、本日の申し合わせにより、業界としての一定の目線を示したものである。言い換えれば、これで万全ということではないが、このレベルまではとにかく早く足並みを揃えましょうということである。実際このレベルを超えておられる銀行も現にある。ICカード化とか生体認証ということになると、業務戦略や対応力によりある程度の格差がついてくることも考えられるが、方向性として全く異なるということはない。我々は、やはりこの問題は結束して対応していかなければならない問題であると考えている。


(問)
 3点伺いたい。第1点は、被害の実績であるが、さきほど昨年の4月~9月の数字はお聞きしたが、累計の被害額を協会としてどの程度把握しているのか。2点目は、仮にこれから補償ということになったときに、過去何年ぐらいまで遡って対応する考えなのか。最後に、新しいシステムについては、全国を含めて何年ぐらいかけて完成させようというふうに考えているものなのか。
(答)
 現在手許に累計額の資料がないので、わかる範囲において後ほどお知らせする。過去何年遡るかということであるが、これは(書類の保管期限等)時効の問題もあるので、その範囲内において対応するということになると思う。今後の対策については、先ほども申したようにこれで100パーセント大丈夫である、万全であるというものはなかなか考えられない、なかなかそこに到達することは難しい、という問題である。我々は、今考えられることは、極力スピードを上げて実施をしていくということであるが、今考えられていることだけで終わるというものではないので、将来にわたってより一層セキュリティが高く、預金者に安心していただけるシステムに向けて、引き続き努力をするということである。


(問)
 先程約款のことでお話があったのだが、補償する場合について、預金者に帰責事由がない場合で、かつ、今回の違法な引き出しのように、手口が判明した場合については、個別に、補償について検討するという話だったが、この預金者に帰責事由がないというのは、預金者自身が立証する必要があるのか。また、新たにATMと銀行のネットを結ぶ回線に何か機械を取り付けて、回線から直接ダイレクトにデータを盗まれるといった被害があるという話も出ているのだが、全銀協として、こうした「ラインタッピング」と呼ばれていることによる被害について確認されているかどうか、確認されている場合はどういった対応を検討されているのか、そして、今回のゴルフ場の件に関してはこういった手口が、逮捕者も出て判明したのだが、そもそも偽造カードで引き出されてしまったということに関して銀行としての責任をどのように会長がお考えになっているのかという点について、お考えを伺いたい。
(答)
 預金者(被害者)に帰責事由がないことと同時にその犯罪の手口が判明したことの2つということではなく、手口が一部判明をした結果、預金者に責任を求める理由はないのではないかと考えられるということである。まだ、断定的なことは申せないが、そのように考えられるという意味である。 この種の事案については、弁護士さんのご意見等を伺うと、実際の訴訟においては、裁判所が銀行と被害に遭われた預金者双方の主張を聞いて、過失については最終的には裁判所が評価するということが多いようである。実態はそういうことであり、一方的に預金者に立証責任を求めているというわけではないことをご理解いただきたいと思う。
 このいわゆる「ラインタッピング」という方法によって預金データと暗証番号が通信回線から盗まれる懸念があるということについては、私も実際にテレビの報道を見たことがあり承知をしているが、これについては各行において現時点で必要な対応、まあ特殊な対応をするわけであるが、そうした対応をとっているものと認識している。現状では、ラインタッピングによる具体的な手口が判明していないということもあって、冒頭に発表した申し合わせには入れていないが、これに対しては引き続きしっかりと対応をして参りたいと思う。
 それからこの問題については、先程も申し上げたように、預金の安全性やあるいは、ATMネットワークによる決済システムの安全性・信頼性というものを脅かす重大な問題であるし、預金者が大きな被害をお受けになるというケースもあり得るので、サービスを提供している銀行、あるいは銀行界としては、これは言うまでもないことであるが、極めて重大な問題であると受け止めて、セキュリティ対策、そして被害に遭われた方の補償という問題について、これまで以上に真剣に取り組んで参りたいという決意である。


(問)
 いまの補償の話に関して、米国では50ドルルールといわれているが、一定の額を預金者に支払っていただいてその後は金融機関が補償するというような制度が欧米では一般的らしいが、このような制度の導入に関しては、会長はどのようにお考えか。
(答)
 米国の例であるが、EFT法(Electronic Funds Transfer)が施行され、この中でいまおっしゃられた50ドルルールが設けられている。しかしながら、アメリカや英国においては、小切手であるとかクレジットカードによる決済が主で、大きな現金をお持ちにならないという慣習がある。反対に日本の場合は、現金社会、現金で決済をすることが多い。そのために、大きな現金を持ち歩かれることになる。このような慣習の違いがあるので、こういう欧米のルールを直ちに日本のルールとして持ってくるということには大変無理があろうかと思う。
 先程来申し上げているように、平成6年に全銀協において規約のひな型に当たるカード規定試案を改定して、偽造カードによる払い戻しについては、繰り返しになるが、お客様の責に帰すべき事由がないことが確認できたときは、銀行は免責を主張しないとしており、現行の約款でもお客様に補償するというケースもあろうかと思う。
 こういった補償のあり方に加えて、先程来申し上げているように、キャッシュカードのセキュリティ対策、偽造キャッシュカードが使われないように、あるいは偽造キャッシュカードが作られないように、そして偽造キャッシュカードによる被害が拡大しないように、という点で我々は最大限努力をして、セキュリティの高度化に努めていくということ、そしてまた、お客様が被害に遭われるというケースも想定して、保険付の預金商品の開発への取り組みや、あるいは、これはもう被害に遭われた後であるが、規定や法に照らした真摯な対応といったことに懸命に取り組んでいくということである。


(問)
 今の話に関連してだが、規定にもとづいての払戻しについて話をされたが、多くの預金者が感じているのは、規定にもとづいて実際に払われた、立証責任ということも絡むが、銀行の方で積極的にそういったことを調べて、実際に規定にもとづいて払われたケースがあるのかどうか。ないのではないかという声があるということが今の批判につながっているのではないかと思う。実際にそういったケースがあるのか、それとも裁判、あるいは摘発がないと払われないということであるのか、規定の見直しの可能性を含めて伺いたい。
(答)
 実際に、補償に応じられたケースはある。守秘義務があるので具体的なことは申し上げられないが、そういうケースはある。また、規定のあり方というものについては、先ほどから申し上げているように、現段階においては、規定の見直し等について結論を得るというところまではいかないが、判例であるとか、あるいは偽造団、今回の逮捕例に限らないが、これから実際に逮捕・検挙される事例が出てくると思う。こういった事例等を見ながら、我々のあり方というものを再検討していく余地はあると考えている。


(問)
 「補償の検討」の中に「保険付預金商品」があるが、この場合の保険料の負担は利用者に帰すべきものと考えるか、銀行側に帰すべきものなのか。また、「規定や預金者に対する真摯な対応」というのは、各事例による個別行の判断に委ねるというふうに解釈していいのか、それとも一定の業界の横串というか、真摯な対応かどうかというのを客観的に判断するような取組みまで踏み込むのか。
(答)
 これまで、偽造、あるいは盗難、その双方を担保するための保険の付いた預金という事例は相当数ある。これらの場合、保険料の負担は、銀行、預金者の2通りがある。いろいろな組み合わせになっているので、ケース毎に分類することはできない。
 規定にもとづく対応ということについても、そのまま対外的に公表できないものもあるが、先ほど申し上げた「口座セキュリティ検討部会」において、各行からいろいろな情報を集めて、その中でこうあるべきというものを見出して、その考え方を今後また各行に還元していくことはあろうかと思う。現在は、まだそこまでは至っていないのが実状である。


(問)
 証券仲介業への銀行の参入から2か月になろうとしているが、この出足について会長はどう評価されているのか、また、銀行の参加の数が期待されたほど多くなかったのではないかとの声があるが、一方で4月から参入される銀行も結構あるということだが、どのような感触を得ておられるか、この2点について伺いたい。
(答)
 銀行界全体の状況について、まだ統計がないので、把握しているわけではないが、私ども、あるいは他行についても入ってくる情報を総合的に考えると、参入されたところについては、むしろ予想以上の取り扱いになっているのではないかと感じている。参入した数がそれほど多くないというのは事実かもしれないが、私はどれほどの数になっているのかということを統計的に把握しているわけではないが、まだ始まったばかりであるので、様子見という金融機関も多分あるのであろうと思う。4月頃から、数はかなり増えてくるというように予想している。


(問)
 昨年の後半位から景気の踊り場的な様子が強まっているといわれているが、景気の現状と先行きの見通しについて伺いたい。また、為替相場について円高基調が強まっているが、これの景気に対する影響および先行きの見通しについても伺いたい。
(答)
 景気の現状については、一言で言えば、足踏み状態が続いているということかと認識している。昨年後半以降こういう状況が続いているが、これは欧米経済の減速や電子部品、ディバイス分野での在庫調整の動き等が背景にあり、生産活動はやや弱含む場面が続いているということかと思う。もっとも設備の過剰感が薄れてきているので、企業の設備投資のスタンスは引き続き堅調と見ている。また、雇用面でも過剰感が解消に向かうなかで企業の求人意欲に底堅さが見られるということである。このような状況から、景気が一方的に悪化しているという状況では少なくともないと受け止めている。景気の基調自体は、なおしっかりしているというように認識している。当面は、軟調局面が続くかと思うが、2005年度後半からは持ち直していくであろうと見ている。為替相場については、なかなか難しいところであるが、私は欧米の状況および日本の状況等から見て、あくまでも個人的な見方であるが、100円割れといったようなことはまずないのではないかと見ている。つまり、円高進行余地は限られてくるのではないかということである。しかしながら、円高は輸出関連企業には採算悪化の要因の一つになるわけであり、円高が続くということは景気にとって必ずしも良い材料ではない。円高によって、原油であるとかその他輸入原材料の価格の高騰がいくらか緩和されるという効果もあるが、総合的に見て、景気に対して良い影響を及ぼすものではないと考えている。


(問)
 保険の銀行窓販の解禁について、2007年度からの全面解禁で当局の方でもその骨格作りにおいて少し動きがあったように聞いているが、会長は現状をどのように捉えておられるか。また、保険業界の方では依然としてこの点についての弊害防止措置の確立は難しいとのスタンスをとっているが、会長としては弊害防止措置の確立は可能なのか、難しいとお考えか、その辺についてお考えをお聞かせていただきたい。
(答)
 保険の窓販の解禁については、何度もお答えをしているわけであるが、我々としては極力早く全面解禁をお願いしたいという立場である。また、弊害防止措置のハードルが高くなったり、あるいは当初の解禁商品が限定的なものになるということになると、お客さまにとっても銀行にとっても規制緩和のメリットが見出せなくなるわけである。十分なご検討をいただき、お客さまにとってメリットがあるような規制緩和の実現を願っている。弊害の防止については、行為規制等の措置でも実効性を確保するということは可能であり、是非とも十分なご検討をいただき、本当の意味で、規制緩和がメリットのある形で実現されるよう強く願っている。