2005年3月22日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

 本日は、理事会に続いて総会を開催し、平成17年度の事業計画案および予算案を諮ったほか、平成17年度の理事を、お手元の資料のとおり選任した。任期は4月19日からである。なお、会長、副会長は、4月19日に開催する理事会において選任することとしている。
 また、本日、「全国銀行個人情報保護協議会」の設立総会を開催した。協議会の概要はお手元にお配りしている。4月1日の個人情報保護法の全面施行にあわせて業務を開始することにしており、おって、「認定個人情報保護団体」の認定を申請する予定にしている。 資料の記書きの「3.会員」の項に記載しているが、会員は、銀行、銀行持ち株会社、全銀協ならびに各地の銀行協会である。協議会設立の目的は「4.目的」にあるとおり、個人情報の適正な取扱いの確保であり、「5.業務」にあるとおり、指針の作成、会員への勧告・指導、お客様からの苦情の受付け、会員への情報提供を行うこととしている。
 銀行界として、個人情報を厳正に取扱い、お客様の権利利益の保護に取り組む所存である。


会長記者会見の模様


(問)
 いよいよ来月からペイオフが全面解禁される。銀行、預金者ともに混乱なくペイオフ全面解禁を迎えることができるのか。また、金融システムの現状についてどのように考えているか改めて見解を伺いたい。
(答)
 ペイオフ解禁の拡大については、本年1月の小泉総理の施策方針演説にもあったように4月から予定どおり実施するということである。このペイオフ解禁拡大は、集中調整期間の終了における、いわば象徴的な最後のハードルとも位置付けられるものであり、強固で安定的な金融システムを構築するための必要不可欠な要素と認識している。こういった認識に基づいて、各金融機関において、これまで準備万端整えてきた。
 現状の金融システムに対する認識について簡単に申しあげると、主要行においては、これまで金融システムの信頼回復に向けて、不良債権処理の促進、企業再生への取組みなど様々な努力を行ってきた。その結果、平成17年3月期で「金融再生プログラム」に掲げられた不良債権比率の半減目標の達成がほぼ確実な状況となってきている。
 来年度からは、これまで足かせとなっていた不良債権問題から脱却し、お客さまの視点に立ったサービスの提供に重きを置いた、前向きな競争が展開される新たなステージに移っていくものと考えている。
 また、地域金融機関においても「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づき、「健全性確保・収益力向上」に向けて、鋭意取り組まれているところであり、着実にその成果が上がってきていると認識している。
 こうした中で、銀行セクターにおいて格付け引き上げの動きが続くなど、金融システムに対する評価も着実に改善してきていると思う。
 これらを総合的に勘案すると、ペイオフ解禁拡大に向けた環境は整っており、円滑に実施されるということになるのではないかと考えている。


(問)
 偽造カード対策について伺いたい。先月、金融庁から具体的な対策に関する要請があり、また当局のスタディグループでも鋭意検討が進んでいる模様であるが、この問題に関する検討状況を改めて伺いたい。
(答)
 まず、この問題について、現状認識を申しあげると、ご承知のとおり、全銀協としては、銀行界として一定の目線を示すことで、各行の取組みを一層推進すべく1月25日に「偽造キャッシュカード対策に関する申し合わせ」を行ったわけであるが、今般、その後の被害発生状況を把握すべく、これまでの被害の8割以上を占めている10数行に限定してアンケートを実施した。
 その結果は、今年1月からこの3月15日までの間に発生した事案は約30件、金額にして約4,000万円ということになっている。勿論、正式には全銀協の正会員・準会員180行へのアンケートの結果を待たなければ全体を断定するわけにはいかないが、直近四半期(昨年10~12月)の186件、3億 4,800万円に比較すると、大幅に減少する傾向にあるものと思われる。
 これは、1月19日の捜査当局による犯人逮捕や各銀行における被害発生防止への取組みがある程度効果を発揮しているものとみている。しかし、決して安心できる状態というわけではなく、私どもとしては引き続き、強い危機感を持ってセキュリティの強化に取り組んでいく所存である。 次に、被害にあわれた預金者に対する補償のあり方についてである。この点については、若干長くなるが、詳しく申しあげたいと思う。
 金融庁の「偽造キャッシュカードに関するスタディグループ」において、約款や立法のあり方なども含めて、精力的な検討が進められており、まさに補償のあり方を中心とした中間とりまとめに向けた議論が行われているところである。
 ご承知のとおり、現行カード規定は、ATMの操作にあたり「電磁的記録によってカードを当行が交付したものとして処理し、入力された暗証と届出の暗証との一致を確認」すれば、銀行は免責されるということとなっており、偽造キャッシュカードの場合は、「銀行がカード及び暗証の管理について預金者の責に帰すべき事由がなかったことを確認できた」場合、銀行は補償するという規定になっているわけである。
 これまで、「現行カード規定でも補償は可能」と申しあげてきたとおり、各行において、この規定を前提に可能な限り補償に取り組んでいるところである。ただし、「預金者の責に帰すべき事由がないこと」の確認には、預金者の協力も得てある程度の時間もかかるため、実際に補償が行われるまでには若干時間を要しているというのが実情である。
 また、補償の公平性や透明性を確保するという観点から、どのような場合が「預金者の責に帰すべき事由」となるのかを明示することを検討する必要もあると考えている。
 これらの諸般の状況も踏まえ、今般、全銀協としてもカード規定試案の改定を含め、見直すこととした。
 見直しにあたってのポイントは主として3点である。第1点は、偽造キャッシュカード被害については、預金者に責任がない限り、原則金融機関が補償することとするということ。第2点は、預金者に責任があるという事例については、あらかじめ明示することによってルールの透明性・公平性を確保するということ。第3点は、預金者に責任があるということの立証責任は、金融機関が負うということ。このあたりがポイントになると思う。
 その際には、銀行自身が被害拡大防止策を積極的に実施するインセンティブをどのように含ませるのかということ、そして、預金者のいわゆるモラルハザードをいかにして回避していくか、という観点も重要な論点であると考えている。
 このあたりは、スタディグループでもまさに議論されているところでもあるので、この状況を踏まえて全銀協でしっかり検討し、可及的速やかに対応していきたいと考えている。実効ある施策を、早急に講じていくということが重要な課題と考えている。


(問)
 偽造カードの問題における被害の補償について、全銀協として大きく方針転換をしたということだと思うが、今後、盗難の問題やフィッシングの詐欺など、クレジットカードから銀行預金者が狙われる時代に入ってきているのではないかと考えた場合に、預金者を不正とか犯罪からどう守るかということについて全銀協として考え方をまとめていった方が良いのではないかと思うが、これについての会長の考えを伺いたい。
(答)
 盗難カードの問題であるが、確かにクレジットカードにおいては保険が付されていて、それから補償していくという制度になっているが、盗難キャッシュカードの場合はキャッシュカードそのものがお客さまから離脱しているうえに、そのことに気が付かないうちに出金がされるという点において、お客さまの過失の度合いは偽造キャッシュカードとは違うだろうということがまず第一である。そして、すでに盗難キャッシュカードによる払出しに関する銀行の責任については、平成5年の最高裁判決もあり、実務上も定着をしているわけである。勿論、例えば暗証番号が容易に覗き見されるようなATMを設置しているなど銀行による暗証番号の管理が不十分であったなど特段の事情がある場合には賠償の問題があると思うが、偽造キャッシュカードのような新たな枠組みは必要ないのではないかと考えている。ただ、この点についても、スタディグループで議論されているものであり、その状況も見ながら対応をしてまいりたいと考えている。
 それから、フィッシングの問題については、これもインターネット・バンキングの安全な利用の実現への妨げとなり、そして脅威となる重大な問題であると認識をしている。フィッシングと思われる事態がわが国においてもすでに発生しているようであるが、可能な範囲でフィッシング行為による被害を未然に防止するために、例えばホームページの真正性、これが本物であるということであるが、これを利用者にわかりやすいものとする仕組みの推進などを会員各行に対して要請するとともに、全銀協が制定しているインターネット・バンキング業務に関する実務指針を2月に改定し、フィッシング行為に対して所要の措置を講じるよう促しているところである。フィッシング対策としては現状その段階にある。


(問)
 新銀行東京が4月に開業するということで、都内の地銀・信金・信組が中小企業への貸出などで民業圧迫的なことを非常に恐れているのではないかと思われる。また、メガバンクも都内の中小企業マーケットに入ってくるというなかで、新銀行東京のあり方が民業圧迫にならないのかどうか、もしくは、この銀行の参入について会長はどのように見ておられるか、について意見を伺いたい。
(答)
 新銀行東京におかれては4月1日からいよいよ営業開始ということになる。新銀行が本当に軌道に乗るまでにはいろいろとご苦労も多いことかと思うが、敢えて東京都が出資して銀行を設立されるということであるので、設立の趣旨をきっちりと実現していかれるよう、まずは頑張っていただきたいと申しあげたいと思う。一般的に地方公共団体が大株主ということになると、いわゆる暗黙の公的保証により、預金の獲得あるいは資金調達、そして各種の契約において民間金融機関との間に公正な競争条件が確保できないといった問題が生ずる懸念がある。新銀行東京におかれては、そうした弊害を最小化するよう是非ご配慮をいただきたいと思う。また、新銀行東京は、いずれ株式を公開していかれるというように聞いているので、私どもの立場としては、極力早く東京都の出資がマイナーなものになっていくよう望みたいと思う。


(問)
 そうすると1年前に出した意見書などで民業圧迫になりかねないという主張をしておられたと思うが、この考え方自体は今も変わらないということか。
(答)
 それは変わっていない。民間金融機関との間に公正な競争条件が確保できないということは、裏返せば民業圧迫になりかねないということであるから、その点の問題意識は変わっていない。


(問)
 さきほどペイオフのことについて17年3月で不良債権半減目標をほぼ確実に達成できる状況だということを伺ったが、それをもっていわゆる大手行の不良債権問題は終結したと受け止めていいとは思うが、そのあたりの認識を改めて伺いたい。それと、個別の問題になるが、過去1か月を振り返ると、三井住友フィナンシャルグループの業績修正ならびに増資という動きがあった。これも不良債権問題の終結に向けたプロセスの一つと受け止めてはいるが、是非この場でコメントをいただきたい。
(答)
 不良債権問題については、不良債権比率が金融再生プログラムでうたわれた半減目標、この3月末までに半減させるという目標、これは各行がそろって達成することはほぼ間違いないと思うが、どの程度比率が低下するのかということについては主要行各行で若干のバラツキはあろうと思う。ただ、半減すれば問題はすべて終結したのかというと、まだそれぞれ残高が残っているわけである。これが、このままでいいのかというと、そうではない。これについては、必要にして十分な引当を計上しているものであるから、最終処理あるいは企業再生に向けた努力のなかで、さらにこれから圧縮をしていかなければならないというものである。しかし、それが今後の金融システムに悪影響を及ぼすというほどのものではないと思う。
 個別銀行について申しあげると、私どもが業績修正を行ったのも、そのなかに一部の大口先もあるわけであるが、それらを含めて来期以降のリスクを極力小さなものにしていこう、リスクの芽を摘み取っていこうという方針に基づいて、今期中の処理ということにした。そのことによって、来期以降についてはクレジットコスト、償却引当費用については間違いなくいわゆる巡航速度化していくことができる。こうしたことから思い切った業績修正を行ったということである。増資については、自己資本比率を増資によって改善することによって、来期以降の積極的な業務展開を支えていこうという狙いのもとに、計画をしているということである。


(問)
 不良債権問題の関連で伺いたい。バブル崩壊後、10数年という歳月が経ってようやく目途が見えてきたということで、不良債権処理にどうしてこれだけ長い期間を要さなくてはならなかったのかという点と、この2~3年で一気に処理が進んだ要因・背景とはどういうものだったのかという2点について、会長の見解を伺いたい。
(答)
 バブル崩壊から通算すると、おっしゃるように大変に長い時間を要したということであるが、バブル期に貸し出したものが不良債権化したものと、その後の長期にわたる景気の低迷、特にデフレ傾向、なかんずく資産価格の下落、こういったことに影響されてその後不良債権化してきたものがあると思う。そういったことから、バブル崩壊時から通算すると大変長い時間を要したということであろうと思う。特に、97年以降の景気情勢の急悪化、そして金融システム不安、こういったことが、97年以降の不良債権問題に大きな悪影響をもたらしたということであろうと思う。
 この2~3年で急速に処理が進んだというのは、やはり97年以降の景気情勢の急悪化と同時に、大きな金融システム不安の問題が生じてきたということで、これはやはり業界全体として、あるいは我が国の金融システムの安定性を回復するために、この処理をどうしても急がなければならないという考えが一致して、急速に進展をみたということであろうと思う。それには、金融再生プログラムの策定、これに基づく不良債権処理に関する銀行への強い要請というものも当然影響しているわけで、これが政策的な効果をもたらした面もあるということだと思う。


(問)
 ペイオフの関連であるが、一部には、決済用預金はペイオフの精神そのものを骨抜きにしているという指摘がある。多くの金融機関がこれを導入するわけだが、決済用預金がなぜ必要なのか、先ほど、金融システムの現状、ステージが変わってきたとおっしゃっていたが、なぜ必要なのかというのが1点目、この商品はいずれなくなるべきものなのかどうかと2点伺いたい。
(答)
 決済用預金については、やはり、顧客のニーズがあるということを考慮して、政府においてもこういう制度を新たに設けようということになったのではないかと理解している。例えば、マンションの管理組合のように組合員のお金を預かっている、万々が一のことがあっては組合員に大変迷惑をかける、ということから、組合の責任者が金利はゼロでいいから100パーセント保証される預金に資金をプールしておきたい、というニーズがある、ということである。個人的には、こういった決済用預金というものが永く続くことは好ましくないと思っている。これも、超低金利が続いている中であるので、決済用預金に対するニーズをお持ちの方の中には、利息のある預金もないのも大して変わらないではないかということから決済用預金のご利用をお考えになる方が多いと思うが、金利情勢が変わってくれば、そのあたりの考え方もだんだん変わってくる可能性もあるのではないかと思う。


(問)
 偽造カードの件に戻りたい。先ほど、インセンティブ、どのように預金を守るために対策を講じるかインセンティブのことを考えるとおっしゃっていたが、どうしても地域金融機関と大きなメガバンクの間で対策についてバラツキが出てくると思われる。現時点で補償に限った話でも、先日の訴訟でも、メガバンクの方に対する訴訟は保留して、地銀とか信金に対するところに関しては提訴するようなかたちのところもある。今後の補償のあり方、もしくは偽造カードの対策についてのバラツキに関して、どこまでまとまっていけるかということと、それならばいっそ法制化ということを考えられなくもないと思うが、法制化についてはどのように考えているか、2点について伺いたい。
(答)
 まず、前段の質問についてであるが、偽造キャッシュカード対策は、金融機関が、セキュリティ対策、さらには補償のあり方というものについて足並みを揃えて対策を講じていく必要があると思う。そのために全銀協において業界としての一定の目線を示すために、先だっての申し合わせを行った。その中で、例えば生体認証の問題であるとか、あるいはICカード化といった点については、各行の業務戦略と深く関わる問題であるので、こういった点についてはある程度バラツキが出てくることはやむを得ないと思う。
 法制化については、確かにそういう議論が与野党の中にある。しかし、冒頭申しあげたとおり、すでに全銀協においてカード規定の見直しに着手した。法制化をして強制しないと預金者保護が進まないという考え方もあろうかとは思うが、原則的には、カード規定は一般法である民法に優先するということもあり、まずは民間における規定の改定の状況、これに対する取組みの状況というものを見守っていただきたいというのが私どもの考え方である。


(問)
 ペイオフに関連して伺いたい。ペイオフの全面解禁に伴って、お金の流れがどういうふうに変わるのかということについて、会長がどのようにお考えなのかお聞かせ願いたい。ひとつは業態間の資金のシフトについて、現在どのように進んでいて、今後どのようになるのか、ふたつめは政府がいうところの貯蓄から投資へという資金のシフト、これもペイオフが完全実施されると加速すると思われるが、これがどのぐらいの規模でどのぐらいのスピードで進むとお考えなのか、お聞かせ願いたい。
(答)
 まず預金者がペイオフ解禁の拡大によってどう動くのかということであるが、そもそも今回のペイオフ解禁の拡大は3年前の4月のペイオフ解禁により、定期預金等が定額保護に移行されて以来、3年の準備期間を経てペイオフ範囲が段階的に拡大されるというものであり、私どもは資金動向にそれほど影響はないのではないかと考えている。これまでの状況を聞いてみても、業態間等の資金移動に顕著なものは見えないという状況である。 預貯金から投資商品への動きがペイオフ解禁の拡大を契機として大きく起きてくるのかということであるが、確かに直近のところで見ると、日銀が発表した 2004年末の資金循環統計によると預金から国債や投資信託を選好する流れが見えるように思う。これとペイオフ解禁拡大がどういう関係にあるかということであるが、これはやはり超低金利の長期化や個人向け国債の積極的な発行、株式相場の回復傾向の持続等を背景に、リスクを限定しながら相対的に高い利回りを得ようという動きが若干強くなってきているということではないかと思う。4月のペイオフ解禁拡大に備えた緊急避難的な流れということではなく、もう少し長い目で見て金融資産のポートフォリオ構成が変化し始めているということではないかと考えている。


(問)
 日銀の福井総裁が就任して2年経ったところであるが、これまでの福井日銀の評価を伺いたい。量的緩和政策の副作用を懸念されるような事象もいくつか出始めているという指摘もあるが、これについてどう考えているか。また偽造キャッシュカードの被害補償の問題であるが、前回の会見で現行のカード規定、約款の運用で対処できるという話があったと思うが、それと原則銀行が補償するという今回のカード規定の見直しとの整合性とについてはどういった変化があったのか。
(答)
 まず後段のご質問については、先ほど申しあげたように現行約款によっても必ずしも過失の有無について預金者に立証責任があるとは書かれていない。銀行が預金者に責任がないということを確認すると書かれているわけであり、そういう意味において現行約款においても補償をすることがあり得る、できると申しあげてきたわけである。これについて公平性あるいは透明性ということを確保する必要があり、その点を考慮すれば、この際、約款の見直しを行って、明確にしていくことが必要ではないかという判断に傾いたということである。
 前段の、日銀の福井総裁がご就任されて2年が経つわけであるが、その取組についての評価ということであるが、私どもは中央銀行の総裁を評価する立場にはないので全く個人的な感想を申しあげる。総裁が就任された2003年の春は、国内はデフレ圧力が強く、世界的にもITバブル崩壊の余波による経済の脆弱性やイラク情勢の緊迫化に伴う先行き不透明感があるなど、極めて厳しい経済金融状況にあったと思う。そうした中、福井総裁は就任早々の量的緩和拡大を皮切りにして、大変柔軟な発想と積極果敢な姿勢で金融緩和、金融システム安定化策を矢継ぎ早に打ち出されるなど、経済・金融再生の基礎固めに大きな役割を果たされてきたと思う。今後わが国における景気回復基調の本格化とともに、金融政策の軌道修正というものがいずれは視野に入ってくると思うが、引き続き適切な舵取りをお願いしたい。金融超緩和の弊害というものは、私は現状においては大きなものはないと思う。おそらく一番重要なのは、どの時点で舵を切り変えるか、そしてそれをどうマーケットにアナウンスし、自然な姿で受け入れられるようにするのかということになってくるのではないかと思う。


(問)
 ライブドア、フジテレビの問題と資本市場に関する質問である。これまでどちらが良い、悪いという手法をめぐる議論がいろいろあり、司法等の判断も仰ぎながら結論が出て来ると思うが、このような資本市場をめぐる最近の動きを見て、上場予備軍の企業の皆さんとかこれから株式を上場しようと考えていた起業家の皆さんの中には「どうも物騒だ」という思いをされる方も増えているようである。法制度の改善等も議論されているわけであるが、今後の健全な資本市場の発達がないとペイオフの成果も半減してしまうということであると思うので、多様な取引先をお持ちの大手行のトップから見て、今後の資本市場のあるべき姿等について意見を伺いたい。
(答)
 今後の資本市場のあり方というものについて、今回のライブドアの問題から考えていくという見方を、私はしたくない。それは、ライブドアの個別問題について評価を行うことになるので、避けたいと思うからである。したがって、まったく一般論としてしか申しあげることができないが、証券市場においては投資家のニーズというものが非常に多様化しており、それをマーケットとして充足させると同時に、なんといっても公正で透明性の高い枠組みの中で取引が活発に行われること、そして証券市場に対する信頼性を確保していくということが最も重要なことであろうと思う。そのために、各方面で今いろいろな努力が行われているということであろうと思う。

別添資料:西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)