2005年4月19日

前田会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)

斉藤常務理事報告

 本日開催した理事会において、平成17年度の会長・副会長を選任した。
 会長には、みずほフィナンシャルグループの前田社長が選任され、平成17年度は前田会長の指揮のもとで、諸課題に対応していくこととなった。
 また、前田会長を補佐する副会長には、三菱信託銀行の上原社長、東京三菱銀行の畔柳頭取、三井住友銀行の西川頭取、東邦銀行の瀬谷頭取、静岡銀行の松浦頭取、および北洋銀行の高向頭取の6名が選任された。
 お手元に、前田社長の略歴役員名簿および今年度の記者会見の日程をお配りしている。


会長記者会見の模様


(問)
 全銀協会長就任にあたり、抱負を伺いたい。
(答)
 みずほフィナンシャルグループの前田です。西川さんの後を受けて、全銀協の会長を務めさせていただくこととなった。これから1年間、よろしくお願いしたい。
 振り返ると、昨年度は、長年の懸案であった不良債権問題に対する取組みが大きく進展する一方で、偽造キャッシュカード等の金融犯罪が増加し、金融取引の「安心」に対する関心が高まった年であった。こうした中、西川前会長は、多岐にわたる重要課題に対し真摯に取り組まれ、見事なリーダーシップを発揮された。この1年間の西川さんのご苦労とご努力に対し、心から敬意を表したい。
 さて、わが国の政治・経済環境をみてみると、政府は、「小さな政府」の実現を目指し、「官から民へ」「国から地方へ」の方針に基づき、各分野で構造改革を推進している。また、金融分野では「貯蓄から投資へ」の流れを加速されるための市場環境の整備も進行している。
 一方で、わが国経済を見ると、大局的には長期の停滞から民需中心の成長に移行しつつあると認識しているが、足元ではやや長い踊り場が続いている。
 昨年については、第2四半期以降の実質GDPがほぼ横ばいとなり、日銀短観の業況判断D.I.も悪化が続くなど、年後半は景気停滞局面にあった。年明け後は、半年におよぶ在庫調整の結果、製造業の生産活動に持ち直しの動きが見られ、個人消費や設備投資も堅調に推移しており、徐々に底入れ感が出始めているものの、まだ本格回復には至っていない。
 また、デフレという観点からいうと、数年前に比べると多少緩和してはいるが、依然として、消費者物価、地価ともに全体では下落が続いていることに見られるように、長期間継続している異例な状況と考えている。
 こうした中、銀行の貸出を見るとマイナス幅は縮小方向にあるが、減少傾向が依然として続いている。この間、銀行は不良債権処理を進める一方で、組織体制の整備や新商品の開発等を通じて、積極的にリスクをとっていく貸出姿勢に転換しており、一部に前向きな資金需要も見られ始めているが、全体としてみると依然として盛り上がりを欠いている。
 このような状況の下、わが国経済が自律的な回復軌道に乗るためにはデフレの克服が何としても必要であり、政府をはじめ各方面でデフレからの脱却を確実なものにする取組が求められている。
 さて、この4月からペイオフが本格実施されたが、銀行界においては、この数年の最大のテーマであった不良債権問題について、ここにきて、相当程度まで処理が進展し、財務の健全性も大きく改善されつつあると認識している。
 金融行政については、本年4月より金融改革プログラムが開始されたが、「安定」重視から「活力」重視に転換するとともに、「官」の主導ではなく、「民」の力によって金融サービス立国の実現を目指していくとされている。
 このような状況の下、私としては、今年度を個々の銀行が活力を発揮していくために基盤の構築を固め、銀行界として「力強い一歩を踏み出す1年」にしたいと考え、その実現に向けて力を尽くしてまいる所存である。
 以下、今年度に取り組むべき課題を2点申しあげる。 第1点目は「金融市場の活性化」である。
 個々の銀行が創意工夫により、利用者のニーズに最大限応えていくためには、残された規制の緩和や公的金融セクターの縮小・見直し等、市場環境の整備を行い、金融市場の活性化を図ることが重要であると考えている。
 昨年来、信託業法の改正、銀行の証券仲介業の解禁が行われているが、さらに規制の緩和が進められることが必要と考えている。具体的には、証券分野における弊害防止措置の見直し、保険分野における銀行の保険窓販の拡充、金融のコングロマリット化に対応した金融法制の整備を求めていきたい。これは、ワンストップショッピングの実現による利用者利便の向上に資するものと考えている。
 また、販売チャネル拡充の観点からは、銀行代理店制度の見直しについても、銀行法の早期整備を求めていきたい。
 また、公的金融セクターの問題についても一言触れておきたい。郵政民営化については、巨額の郵貯資金が市場原理の埒外に置かれたまま、財投預託や国債等で運用されているという資金の流れを改革し、金融市場の中で市場原理に基づいて資金配分がなされることに大きな意義があると考えている。現在の郵便貯金事業には、規模の問題、見えない国民負担の問題があり、制度設計が進められていく中、それらの問題解決に向けた提言活動を展開していきたい。
 また、政府においては、政策金融8機関の改革に向けた検討が再開されている。すでに政策金融機関の機能の廃止・見直し、組織の整理・統合を進めるとの方向感が提示されているが、「民間にできることは民間に委ねる」という構造改革の大原則に則り、早急に改革が実現されるよう主張していきたい。 第2点目は、「金融市場への信頼感の向上」についてである。
 利用者が安心できる体制の整備やリスク管理・ガバナンスの高度化に努めていくことによって、金融市場への信頼感の向上を図ってまいりたい。
 まず、偽造キャッシュカード問題についてであるが、お客さまの資産の安全性を脅かし、銀行業の要であるお客さまからの信頼を根幹から揺るがしかねない重大な問題であると認識しており、各行とも暗証番号のセキュリティ強化、ICカードの導入等の新たなシステムの導入等、本年1月の「全銀協申し合わせ」に示された対策を中心に積極的に検討・実施している。被害者への補償については、今般、全銀協でカード規定試案の見直しを行っているところであり、公平性と透明性を担保することが可能になると思う。一方、盗難キャッシュカード問題については、金融庁スタディグループの最終報告書等を参考にしつつ、業界の意見集約をするなど、幅広く議論を進めてまいりたい。
 また、現在、金融審議会で検討中の投資サービス法については、投資家保護の枠組み拡充によって、わが国金融市場がより信頼感の高いものとなり、「貯蓄から投資へ」の流れが促進されることを期待している。
 次にリスク管理の点については、バーゼルⅡが07年3月基準から適用開始となる。バーゼルⅡは金融改革やIT技術の進歩により複雑化・高度化する銀行のリスクをより精緻に反映させる枠組みであるが、銀行としては、新たな問題債権の発生を防止しつつ、安定的かつ戦略的な経営を可能とするとの観点から、リスク管理の一層の高度化を実現することが必要である。
 また、ガバナンスの点では、金融改革プログラムの中に金融業界自身の行動規範の確立について言及があるが、全銀協としても昨今のCSRに関する社会的関心の高まりなどを踏まえ、1997年に制定した倫理憲章をかかる観点より今年度改訂する予定である。
 以上、この1年間、取り組むべき課題は多いが、関係各位のご協力を仰ぎつつ、微力ながら全力で取り組んでいく。皆様方のご支援、ご指導をよろしくお願い申しあげる。


(問)
 郵政民営化法案の提出に向けて、今現在、政府で検討が進められている一方、与党との調整が行われているが、郵政民営化法案に対する見解があればお聞きしたい。
(答)
 郵政民営化法案については、現在、政府と与党との間で最終的な調整が行われていると認識している。
 このような時期でもあるので、まずは、郵便貯金事業に対する問題認識と民営化の必要性について、改めて、銀行界の考え方を申し述べさせていただきたい。
 郵貯事業の本質的な問題点は、その規模が極めて大きいことに加えて、その資金が市場原理の埒外に置かれていることで、わが国金融市場の公正な価格形成を歪め、経済活力を高める効率的な資金配分を阻害している点にあると考えている。こうした問題点を解決することが、民営化の本来の目的であると私は認識している。
 その点、政府は、昨年9月に閣議決定された「郵政民営化の基本方針」において、公的部門に流れていた資金を民間部門に流す資金の流れの改革、いわゆる「見えない国民負担」の最小化、を民営化の目的として掲げている。この点については、全く同感である。
 民営化により、巨額の郵貯資金が金融市場に開放されれば、市場原理に基づいてリスクマネーが経済主体に供給されるとともに、新規参入や適正な競争を通じた金融サービスの革新が図られ、結果として国民の利便性が向上するといった効果が見込まれる。
 また、納税義務の免除や預金保険料負担の免除等の「官業ゆえの特典」がなくなれば、国民にとって実質的なコスト負担が解消されることになる。
 以上申しあげたような民営化の目的を実現する観点から、次に制度設計にあたって、私どもが特に重要と考える点、具体的には、最終的な民営化に至る移行期間のあり方について、2点申しあげたい。
 第一は、「規模の問題」である。政府は、「小さな政府」の実現を目指し、「官から民へ」「国から地方へ」の方針に基づき、各分野で構造改革を推進している。現在郵貯が行っている業務については、かなりの部分を民間金融機関で代替することが可能であることから、少なくとも政府の関与が残る期間中は、「民間にできることは民間に委ねる」との構造改革の大原則に則り、郵貯の規模を縮小していくべきと考える。
 なお、完全な民営化が実現した後の郵貯銀行の経営を考えた場合にも、200兆円を超える巨額の資金について運用・調達のリスクをきちんと管理しつつ、運用利回りを確保していくことは容易でないと考える。銀行経営に携わってきた経験から申しあげれば、郵貯銀行が、新しいビジネスモデルを構築していくプロセスにおいて、ビジネスモデルとして適正に成り立ちうる規模まで、その大きさを縮小するという経営判断は経済合理的ではないかと思う。
 第二は、郵貯の「業務範囲の問題」である。政府は、移行期において段階的に業務範囲を拡大する方針であると認識しているが、政府出資に伴う「暗黙の政府保証」が残る期間中に、経営の自由度が先行して拡大されることになれば、実質的な官業の一段の肥大化を招き、民営化の目的を実現するどころか、問題を一層深刻化させかねないと考えている。
 したがって、全銀協としては、従来より、政府の関与が残る期間中は、業務範囲の拡大に一定の制限を設けるとともに、それを監視していく仕組みを確保することが必要であると、提言等で申しあげてきたところである。
 このような私どもの意見が反映され、是非とも民営化の本来の目的が実現されるよう、政府等の検討状況を見守っていきたいと考えている。


(問)
 現在、全銀協の方でカード規定試案の改定作業が進んでいるかと思うが、その進捗状況と、併せて盗難カード被害の補償のあり方について、会長の所見を伺いたい。
(答)
 まず、偽造キャッシュカードについて申しあげる。 偽造キャッシュカード犯罪によって被害に遭われた預金者の方の気持ちを考えると、私個人として「大変気の毒だ」と感じている。キャッシュカードが偽造されるという事態になったことにおいては、銀行のキャッシュカードシステムに問題なしとは言えないと考える。
 こうしたこともあって、全銀協としては、原則補償とすることとした。 ただ、基本的には、ATMによるネットワーク自体のセキュリティを向上させながら、偽造キャッシュカード犯罪から、預金者を守ることが、われわれ金融機関の責務であると認識している。そういう観点では、ICキャッシュカードの普及を急ぐ必要があると思う。
 ICキャッシュカードについては、以前から全銀協における標準仕様の制定などの取組みが行われており、多くの金融機関で互換性が担保されるための準備は完了している。ただし、全ての金融機関、全ての預金者のインフラになるには、若干の時間がかかることはご理解いただきたい。
 次に、盗難キャッシュカードについて申しあげる。
 盗難キャッシュカードの問題は、正直、相当悩ましい問題と思っている。金融庁の偽造キャッシュカードに関するスタディグループも、偽造のみならず、盗難キャッシュカードについても議論をしていくということなので、全銀協としても議論を深めていきたい。
 西川前会長もおっしゃっていたが、保険をかけるということも選択肢のひとつであると思う。また、全銀協傘下の銀行に限らず、カード取引は広範囲に行われており、何らかの影響がある話なので、同じようなカードを使っている業界とのバランスをとることも必要であろう。


(問)
 先程、冒頭のご発言の中で、デフレ克服のための、政府をはじめ、各方面の取組みについておっしゃったが、具体的にマクロの政策、財政なり金融なりについて、どのようなことが必要だと考えているかお聞かせいただきたい。
(答)
 これまで何年間かにわたって、いろいろとデフレ対策が議論されてきたが、今の指標を見ると、名目と実質の成長率が依然として逆転した状態が続いており、この状態が、長期間続くのは、極めて異例だと思う。ゼロ金利がずっと続いていることも極めて異例な事態であり、異例な事態に慣れきってしまうのは、経済にとって好ましくない。
 一方で、基本的には、2年前ぐらいに非常にホットな議論となったデフレ問題の本質的な部分を解消しないと、日本経済は自律的な回復軌道には乗らないということである。これだけ長期間、デフレが続いている先進国はなく、不良債権問題が解決し、残るところは経済そのもののデフレからの脱却が重要だと思う。財政を投入して、景気を浮揚するということを申し上げているわけではない。デフレを解消するような施策を継続してやらないと、このような状態は解消しないということである。


(問)
 中国での反日活動が、伝えられているが、日本企業あるいは金融界の対中ビジネスあるいは外需で牽引されてきた日本経済にどのような影響があるのかという点についてお聞かせいただきたい。
(答)
 皆さんご承知のとおり、中国と日本の関係については、中国とアメリカの関係と同様、非常に大量の貿易取引があり、ある意味では中国は無くてはならない存在になっている。中国と日本は経済的には非常に深い関係にあるので、この関係がおかしくなると、成長等多くに影響が出てくる。そういう意味で、現在、非常に心配な事態になっているが、この点については、何と言っても十分なコミュニケーションをとることが第一ではないかと思う。
 経済的な関係がこれだけあるので、この関係をお互いに壊したいという意識、意図は全くないと思う。この関係が壊れないように、それぞれの政府同士で話合いをしていただくのが、まず先決だと思う。
 われわれ金融機関もたくさん出先を持っている。現在のところ、特別に何かが起こっているということはないが、今の状況は一刻も早く解消して、良い関係に戻していただきたいと思っている。


(問)
 金融の問題と少し離れるが、2月以降日本経済を騒がせていた、ライブドアとフジテレビ、ニッポン放送の問題が、昨日、和解という形で決着した。日本にとって今までタブーとされていた敵対的M&Aについて、考える機会になったと思うが、今回のことについて、どのように受け止め、考えているか。また、敵対的買収に対する防衛策ということがいろいろな企業で議論されるようになってきたが、銀行を含めてどのように取り組んでいけばよいのか、考えをお聞かせいただきたい。
(答)
 まず、最初の点については、私は、敵対的買収を時間外であのような形で行なうのは、合法的だがやや本来の趣旨に反した取引だったのではないかと思う。どんな法律でもぎりぎりの抜け穴はあるが、それを整備することになったという意味で、この案件はひとつの前例になった。整備をされるということであるから、ぜひ整備をしていただきたいと思う。
 次の点についてだが、これは個々の企業の問題であって、現象面で敵対的とか友好的等いろいろな形があるが、それぞれ株式会社であるので、本来の視点はお取引先もしくはお客さまにどういうサービスを提供するために、M&Aをやるのかという点の方が重要であるのではないかと思う。資本の組替えとか、資本関係のことがどうしても報道されるが、その後どうするのかという点が企業の存立の価値として問われる部分である。最終的には企業価値をどうやって上げるかということである。私の知る限りでは海外でもそれほど敵対的な企業買収がたくさんあるわけではないと思う。最終的にその企業がなんらかの形で一緒になって、どういうサービスを提供していくのかということについて、価値がなければその合併や買収がうまくいかないというのが今までの例でもある。防衛策としては、そういう点を考えながら、かつ、それぞれ自分の会社の規模に応じて、必要な手当てを事前にしておくのが良いのではないかと思う。後からやるというのはなかなか難しい面もある。それぞれの経営者がそのリスクは十分分かっていると思う。


(問)
 先ほど、この1年のテーマとして、金融市場の活性化と信頼の回復と2つ柱をあげられたが、その中で、金融機関に投入されている公的資金はどういう位置付けになっているのか。不良債権の処理が峠を越えて、次は公的資金の返済だという認識で間違いないのか。それから、公的資金の返済のスピードをあげていくということが金融機関に求められるのかどうか、考えを伺いたい。
(答)
 全銀協会長の立場では申しあげづらいので、個別行のトップとして申しあげる。公的資金を入れた本来の趣旨は、我々の場合、貸し渋り等の問題があり、公的資金の注入により、資金供給を円滑にすることであった。また、その後もいろいろなケースでの注入があった。いずれにしても、金融システムの信頼性向上のために公的資金を入れたわけだが、できるだけ早期に収益で買入消却することが本来の趣旨だと思う。私どもも、昨年度までに約5割の返済もしくは買入消却を実施した。今後ともできる限り早期に買入消却をしていきたいと思っている。但し、自己資本部分であるので、必要以上に買入消却を実施すると自己資本比率が低下し、逆の意味で信頼をなくすことになることから、自己資本比率が十分に維持できることを確認しつつ、引き続き買入消却をすすめてまいりたい。


(問)
 今の公的資金返済の関連であるが、先般のみずほの部店長会議等で幹部の方が来年度中の公的資金の返済、および行員の処遇の改善等を表明されたと聞いているが、どうお考えか。
(答)
 私はそこまで聞いていないが、いずれにしても公的資金については、剰余金を積上げ、その範囲内でお返しすることである。一方、預金保険機構には、現在3原則があり、その3原則が満たされない限りは返済させていただけない状況である。みずほの例で申しあげると、社債型も含めて複数本あり、条件が全て違うことから、その条件をクリアした上でないとお返しできない。従って、何年でお返しできるということはコメントできない。目途はどれくらいというのは、ある程度金額が減少すると分かるが、まだ1兆5千億円弱ある。いつまでに必ずお返しするというお答えをするのは経営者として不可能である。基本的に早くお返ししたいと考えている。 なお、処遇については、必要な処遇は見直すが、コメントをした記憶はない。


(問)
 業績が回復したということで、賃金カット等の見直しなどは考えていくのか。
(答)
 賃金をカットした記憶はない。賃金水準の是正をしたということである。我々として優先順位があり、基本的には公的資金をできるだけ早く買入消却するという方から入りたいと思っている。もちろん、従業員は一生懸命働いてくれているので、それはそれでいろいろな形で考えたいと思うが、単純にベースアップをすることにはならないと思う。


(問)
 労働基準局からみずほ銀行が行員のサービス残業について指摘を受けて、数十億の支払いを内部調査の結果検討されているということだけれども、最終的な内部調査の結果、何人分のサービス残業があって、それに対してどれくらいの賃金不払い分を支払うのか。その辺りの結果をお聞かせください。
(答)
 手元にデータがない。私どもは指摘されたことについては、適切に対応したいと思っている。


(問)
 財務の健全化が進んだ邦銀、もしくは御社がこれから収益性をあげる施策をとるうえで、銀行全体としてもしくは御社としてどのような施策が考えられるか。たとえば御社では開放的なコングロマリットという策も考えられるかと思うが、収益性を国際的にも恥ずかしくない水準にまで戻すにはどのようなことが考えられるか。
(答)
 現在、私どものグループでは、業務純益で約8,000億くらいである。これは、過去の水準から見れば低い水準にあるが、この大きな原因がゼロ金利の影響で、預金対応収益が実質ゼロとなり、むしろ預金保険料だけがかかるという事態が続いており、預金を預かって運用している金融機関については片側の収益がほとんど出ないという構造になっている。これはデフレが解消しないと、われわれが独力で解消することはできない。1~2年待たざるを得ないと思う。片方で収益性の改善という意味では、各銀行とも非金利収入の増強を目指している。この非金利収入は、新しいビジネスを作って、そこから収益をあげていくということであって、みずほグループで申しあげると、トータルで40%ぐらいにもっていきたいと思っている。これは、例えばシンジケートローンのマーケットを作るとか、フィービジネスを拡大するということだと思う。この部分が成長すると日本の金融機関の収益構造もかなり変わると思う。ただ、残念ながら、いま単純比較すると、デフレ状況の下で、預金対応収益がゼロの状況なので、日本の金融機関は収益性が必要以上に低く見えるが、これはやや異常な状態だということだと思う。


(問)
 金融持株会社のトップとして全銀協のトップになるのは初めてのケースだと思うが、金融のボーダレス時代が到来する中で、全銀協の役割も今後変わっていくと感じているが、その辺りはどのようにお考えか。
(答)
 今年度は持株会社の社長である私が全銀協会長になったということであるが、これで全銀協の役割が変わるということはないと思う。持株会社の社長が就任するか、銀行の頭取が就任するかは、要するに、各グループのビジネスモデルの組み方の違いであり、本質的な部分は変わらないと思う。


(問)
 先ほどの収益向上策に関し、業務純益の水準がそれほど高くないとの話の中で、ゼロ金利が要因の一つ、との発言があった。この要因が取り除かれるには、あと1、2年待つしかないとおっしゃったと思うが、これはゼロ金利解除まで、あと1、 2年かかると考えておられるからか。また、非金利収入を将来40%ぐらいまで持っていきたいという趣旨の話をされていたが、これは何時頃を目処としているのか。
(答)
 ゼロ金利を解除するかどうか、私どもが決めることではないと、初めに申しあげておく。その上でだが、デフレが解消するということがまず基本にあると思う。デフレの解消まであと1、2年、そうなれば自ずと金利が上がってくる、との趣旨で申し上げた。非金利収入については、我々固有の銀行の目標であるので、会長会見の席上であることから、別途お答えさせていただく。


(問)
 さきほどの全銀協のあり方に関する質問の関連であるが、今年からいよいよメガバンクが3グループになって、今後、会長行が3年に1度、これまでのやり方であると回ってきてしまうということになる。負担は少なくないと思うが、会長行ローテーションのあり方について見直す考えはあるか。
(答)
 毎年理事会で互選することとなっており、協会の規約では立候補していただくこともできることになっていたと思う。3メガになって3年に1度のローテーションになるということはない。


(問)
 中国の話に戻るが、さきほどは特別何も起こっていないという発言があったが、これはみずほの関係でということだと思う。現状はそういうことであろうかと思うが、現在の状態が長く続くようなことがあった場合に、中国におけるビジネスが大きな影響を受ける可能性があると思うが、その辺りはどのようにお考えか。
(答)
 おっしゃるとおりでこうした状態が長く続くと、現地の生産施設等にもちろん影響が出る。万一のためのいろいろな手当ては金融機関としてももちろん行っているし、メーカーもそれぞれ行っておられるが、こうした異常な事態が長く続くのは好ましいことではない。私はそんなにどんどん関係が悪化するという方向にいくとは見ていないが、そう簡単に解決するかどうかは何とも申しあげようがない。ただ、そうならないようにということだと思う。日本と中国だけの関係ではなく、中国は世界中と貿易しているわけであり、そういう意味では非常に大きな国でもある。そうならないような大人の解決になればいいなと思っている。

別添資料:前田会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)