2005年7月19日

前田会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)

斉藤常務理事報告

 本日の理事会において、お手元に配付している資料のとおり、平成18年度税制改正要望の骨子を取りまとめた。
 要望の内容は、「金融・資本市場の活性化と国際的な取引の推進」、「金融機関の適切な経営環境の確保」ならびに「経済活性化と課税の適正化」という、3つの柱で構成している。
 なお、正式な平成18年度税制改正要望については、今後、この骨子をもとに、さらに検討を行い、9月に取りまとめる予定としている。

会長記者会見の模様


(問)
 政府、日銀とも最近、踊り場から脱却しつつあるという表現を取るようになっており、デフレの脱却も予想よりも前倒しになるという見方も出ているようであるが、現段階で会長ご自身はどういう景気認識をお持ちか。
(答)
 今回の短観の特徴は、幅広い業種で業況の改善がみられたことだと思う。また、売上や収益の予想、設備投資計画もおしなべて上方修正されている。背景には、経済、企業の足腰の確かさが改めて確認されたことがあったのではないかと思う。
 昨年の秋以降、企業の景況観が後退した主因のひとつは、原油価格の急騰とそれに伴う不透明感の高まりだったと思うが、その後、実際には原油価格はさらに上昇しているにもかかわらず、業況は回復し収益も改善している。それだけ個人消費や設備投資など需要の勢いが強いということで、また毎度申しあげているが企業体質もかなり強化されてきたということだろうと思う。私どももそう感じている。
 しかし、企業の自信はあくまで「慎重な楽観論」に基づくものであると思う。実際短観でも、今後の業況判断見込みは小幅悪化である。輸出の停滞、原油価格のさらなる上昇懸念、米国の金利上昇とその影響など、経営環境はなお不透明であるので、景気も足踏み状態から抜け出すまでには、もう少し時間がかかるのではないかと思う。
 そういう意味では今回の短観はある意味実態に近い短観だと思う。


(問)
 一部の金融機関の預金者の間に被害が出ているが、「スパイウエア」と呼ばれるソフトが入って、パスワードを盗まれて、不正な送金が行われるという被害が出ているが、これについて全銀協として見解と対応等あればお聞かせ願いたい。
(答)
 既に報道されているとおり、「スパイウエア」と呼ばれるソフトを使ったと思われる不正振込が発生して、これまでのところでは、私どもみずほ銀行を含めて3行で合計9件、約940万円の不正振込があったと承知している。
 全銀協としては、緊急対応が必要と考え、先週水曜日、13日に「Eコマース検討部会」を臨時に招集した。その席上で、イーバンク銀行、ジャパンネット銀行およびみずほ銀行の3行から被害状況や犯罪の手口等について説明を行い、情報交換を行うとともに、今後の対策等について意見交換を行った。なお、これらを全会員銀行に対して書面で周知徹底するとともに、あわせて、全銀協のホームページを通じて、利用者の方に対して注意を呼びかけている。
 全会員銀行に対して徹底した内容について一部申しあげると、偽造キャッシュカード問題の際に、被害届を誰が出すのかについて調整に手間取り、お客さまにご迷惑をおかけしたことを踏まえ、警察庁との間で調整のうえで、被害届の提出にあたっては、被害に遭った銀行から各都道府県の県警本部の「サイバー犯罪相談窓口」に相談することを周知徹底した。この他、インターネットバンキングの不正利用に関する会員銀行間の情報提供、不正入金口座の利用停止等に関する会員銀行間の連携体制等を整備する等、早期に各種対策を実施してまいりたい。
 現段階では、「スパイウエア」というウィルスソフトの詳細やウィルス感染のルートなどが完全に判明している訳ではないので、防御する方法も含め、今後解明していくべき点は多いと思うが、完璧な防御を行うことはなかなか難しいと感じている。したがって、お客さまへの注意喚起、アンチウィルスソフトの導入、ネットバンキング自体のセキュリティ対策、万一事故に遭われたお客さまへの補償の問題など、できることから早急に対応をしていくことが重要だと考えている。
 偽造キャッシュカード、偽造紙幣、偽造貨幣など、最近の金融犯罪をみてみると、IT技術の進歩とともに、金融犯罪も日々複雑化しているという気がする。システムのセキュリティをいくら高度化させても、「万全」ということはないわけで、システムを提供する側としては「偽造されたり、盗まれたりする」ことをある程度想定した仕組みをあらかじめ作ることが必要だと思っている。
 個別の銀行の話で申しあげると、みずほの場合には、全てのインターネットバンキングのお客様に対し50万円まで、更にMMCのお客様には100万円まで、保険をかけさせていただいている。今回の被害に遭われたお客様の場合には、おひとりの方はこの保険金額の範囲内であるために、ある意味では備えが出来ていたとも言えるが、もうひと方の場合は、この金額を超えた被害が出ている。
 セキュリティの高度化は不断に続けていく必要があることは言うまでもないが、対策をした後であっても、同様の事故、犯罪が起こらないという保証は全くない。そういう意味では、現在の保険の金額の掛け方や振込金額の制限等、ある意味では利便性を少し犠牲にした形で防御することも必要ではないかと思う。
 いずれにしても、いろいろな犯罪が起こってお客さまに迷惑を掛けないようにすることがわれわれサービスを提供する側の責任であり、迅速な対応が必要だと考えている。


(問)
 個人情報保護法の施行に伴い各金融機関がいろいろ調べたところ、かつての個人情報相当数をなくしているというケースが全国的に出ているが、これについて業界としての見解と、今後どういう対応を取るつもりかをうかがいたい。
(答)
 金融機関の情報紛失事案が相次いだことについては、誠に遺憾であり、お客さまをはじめ、関係各方面の方々に対しご迷惑をおかけしたことをお詫び申しあげたい。銀行界としても、これまで以上に、個人情報保護管理は経営上の重要な課題であることを再認識し、再発防止に努めてまいりたい。
 具体的には、それぞれの金融機関において、社内の体制や規定の整備、情報システムのセキュリティ対策の見直し、従業員そのものや仕事の委託先の監督の強化など、情報管理体制の一層の高度化に努め、お客さまの信頼に応えていく必要があると認識している。
 また、全銀協としても会員の自主的な取組みを更に強化し、個人情報の適正な取扱いを確保するために、今年の3月に全国銀行個人情報保護協議会を設立しており、この協議会を通じて、会員に対する情報の提供等を引続き行うとともに、「個人情報保護指針」の遵守を徹底してまいりたい。
 今回、金融庁に対して行った報告は、個人情報保護法施行以前に紛失したものが全て対象となっている。極めて多くの紛失事例があったことは、大変重く受け止めなければならないと思うが、一方で個人情報保護法の施行を踏まえて各行とも情報管理体制を強化してきており、今後このような大量の個人情報の紛失事故はあってはならないと思う。
 いずれにしても、情報を紛失するということは信頼を欠く元となるので、従来以上に個人情報の適切な保護に努めてまいりたい。


(問)
 先程のスパイウエアの関連について、まず、被害防止であるが、各行個別にそれぞれの方式で、今、ネット上のそうした(被害防止)ソフトを使っているところは使っているが、これについて、協会として何か統一の規格を作る考えはあるか。次に、補償の問題であるが、これについて先程少し触れられたが、補償などできることから対応していきたいとのお話であったが、これは偽造カードなどと同様に補償することを検討しているということか。この2点について聞きたい。
(答)
 スパイウエアの関連については、確かに規約等はなく、これを今後どうするかは、検討する必要がある。歴史的な経緯からすれば、各行独自にサービスをスタートしており、そういう意味ではカードとは生い立ちが違っているが、今後、こういう犯罪が頻繁に起こると、それを防止するために色々な側面から考えなければいけないと思う。
 補償については、これは偽造カードや盗難カードとは少し違う面があるが、そうは言っても、被害に遭われたという事実から見れば、似たようなところがある。これをどういう形で行うか。最後は結局、盗難カードの場合でもそうだが、個別に解決することになる。今はたまたま件数も少ないので、個別にお話し合いをさせていただくことになるが、全国的に似たような事例が起こるようなことになれば、別の方法を考えなければいけないと思っている。現時点では、先程申しあげたように被害がどのように起こったかが完全に解明されていないので、もう少し時間が要るかと思う。また、件数的にも全国至る所で起こっているということではないが、こういうソフトが使われているのは一般的であり、全国で起こるということも考えられる。対応は両方をみながらということではないか。


(問)
 スパイウエアの関係で、みずほ銀行の被害の場合、1回目の被害から2回目の被害は数日間経って起きているが、その間の警戒の呼びかけの対応等が他の銀行と比べてどうだったのか。そのような反省点はないか。
(答)
 個別にどういう形で起こったか、他行とどう手続きが違っているか、また、時間差がどうかについては、手許に詳細なデータを持ち合わせていない。いずれにしても個別の問題は個別にお話し合いをさせていただきたいと思う。解決しないわけにはいかない。そうした対応が必要である。


(問)
 質問の趣旨は、みずほ銀行の場合、1回目の被害が起きてから2回目の被害が起きるまで、3日か4日ぐらい空いている。イーバンクの場合、会員に即日メールで警戒を呼びかけていた。みずほ銀行の場合、2回目の被害が起きてから呼びかけるということで、対応が遅れているような感じがする。
(答)
 遅れていたかどうかは、何とも言えないが、改善の余地があれば、改善するということになる。


(問)
 西武の再建問題について聞きたい。みずほ証券が西武グループの再建のフィナンシャル・アドバイザーに選ばれた。メインの債権者であるみずほが、債務者西武のアドバイザーに就くということで、利益相反するのではないかといった議論がある。一方でコクドの株主はまだ、はっきりしないので、みずほにリーダーシップをとって欲しいという声もある。これについて前田会長はどのようにお考えか。
(答)
 ここは全銀協会長会見の場であるため、個別行の個別案件についてコメントするのは適切ではないと考えている。個別に取材のご要望があれば、個別に応じることとしたい。


(問)
 投資サービス法の中間整理が先ごろ取りまとめられたが、これをどのように評価しているか。また、関連で、銀行業界に与える影響、預金の取扱いも投資サービス法に含めるという考え方が出されているが、これについてどのようにお考えか。
(答)
 投資サービス法は、現在、金融審議会で議論され、中間整理がなされており、私も拝見した。基本的に立法について我々が反対しているというようなことはない。ただ、片方で過度に規制をやりすぎると、取引が円滑にいかなくなる。また、すでに提供しているサービスについて必要以上に規制をかけるというのは行き過ぎではないか。一般論として、投資家を保護するという観点は、非常に重要なことであるが、片方であまりに行き過ぎると、例えば、ご質問の預金取引は、これまでずっと行ってきているわけであるから、ある日突然非常に規制を厳しくするということはいかがなものかと思う。一般的な預金取引で、預金者にそれほどご迷惑をかけたようなことは多分ないと思う。新しい金融サービス等が行われるときに、法律の趣旨に沿って、利用者を保護するということは重要であるが、既存の部分というのは、周知がされているとすれば、全部一律に規制するというのはやりすぎだと思う。投資サービス法はある意味では、広く商品全般を規制するものであるが、現状商品にはそれぞれに業法の規制がかかっている。利用者保護という投資サービス法の趣旨と、各商品の利用実態とのバランスが取れればいいと思う。


(問)
 個人情報の紛失の件で2点伺いたい。各行それぞれ事情があるとは思うが、原因は何なのか。また、先ほどの話でも、これから体制整備をするのだという話だったが、そうするとこれから先は起こり得ない話と認識していて良いのか。
(答)
 全ての原因はわからないが、みずほ銀行の場合で申しあげると、27万件の原因はいろいろとある。再編統合をやり、店舗を統廃合するといろいろな資料を整理したり廃棄したりする。当然、法律適用以前の問題として、経営統合をするためにいるものといらないものを仕分けして、不要な情報は、シュレッダーにかける。それが誤って必要なものまで処理してしまったというのがかなりあった。また、お届けいただいた印影はお取引をいただいている間ずっと保存しているわけであるが、あるところでデータ化したが、印鑑票でも残す手続きとなっているケースがあり、これを一部間違って廃棄してしまったというのがかなりある。また、データをコムフィルムの状態にしてたくさん保存しているが、間違って廃棄してしまったというケースもある。そういう意味で原因はいろいろあるが、率直に申しあげてお粗末であったと申しあげるしかない。4月1日以降、同じことが起こることはないと思うが、ゼロになるかと言われるとそれは人がやることであり、私も時々間違ってシュレッダーにかけてしまったりすることもある。基本的には法の精神に基づいてそういうことのないように目一杯ガードをかけるということだと思うが、そうは言ってもパソコンを盗まれたとかいろいろなケースがあり、犯罪が起こらないという保証はないので、どうやってガードをかけるかというのは各行とも悩んでいるところだと思う。いずれにしてもお客さまに迷惑を掛けないのが大原則だと思う。4月1日以降、紛失の発表がたくさんあるが、率直に言って個人情報を守るのは非常に難しいが、守らないと信頼も守れないという性格のものであると思う。情報は金融機関の仕事そのものであり、ここは避けては通れないので色々なガードをかけていくということだと思う。


(問)
 今次、税制改正要望で、新規の項目ないし会長が特段、意を用いている項目があったら教えていただきたいというのが1点。あと配布資料2頁の不良債権処理促進税制なのだが、繰戻期間と繰越期間、それぞれ延長の具体的なイメージがあったら教えていただければと思う。
(答)
 今回の要望は3つの柱に組み替えて、昨年までは不良債権処理税制を冒頭に掲げていたが、今回は、順番を変え、「金融・資本市場の活性化と国際的な取引の推進」を最初の柱とし、2番目の柱を「金融機関の適切な経営環境の確保」、3番目の柱を「経済活性化と課税の適正化」とさせていただいた。 次に、不良債権処理税制については、現在1年である欠損金の繰戻還付期間の延長、現在7年間である繰越期間のさらなる延長を図りたいというお願いをしている。また、無税償却基準の部分は、日本の場合、基本的に有税から入って無税になっている。これはアメリカと違う。それから連結納税、これも海外と若干同じでないところがあるが、ぜひ同じにして欲しいという要望である。
 そういう意味で、基本的な要望自体で新しい要望はないが、優先順位を変えさせていただいた。


(問)
 日銀の金融政策についてちょっとご意見を伺いたいのだが、当座預金目標の残高の下限割れが日銀の方でも容認というなお書きをつけているのだが、金融機関の資金需要という立場から見て、この措置というのは今後も十分ありうるというように認識しているのか、その考えをお伺いしたいのが1点。あと、今後の量的緩和政策の転換期について、当然不良債権処理に目途がついたということで、金融システムの担い手である金融機関としてもかなり転換期を意識されているのかなということなのだが、そのあたりについて何かお考えがあればお教え願いたい。
(答)
 下限割れについては、現状一部容認ということであるけれども、特別に基本スタンスを日本銀行が変えたとは聞いていないので、我々はそういうものではないかと思っている。
 量的緩和の転換期については、量的緩和だけが単独で決まるということはないと思っている。基本的にはデフレが解消して、資金需要がきちんと出るようになる、もしくはゼロ金利が解除されるという状態が、そろった時に量的緩和策が解除されると、私どもは思っている。そういう意味では、現状、量的緩和策解除のための全ての条件が整ったという感じではないと思う。明らかに資金需要はそれほどないし、デフレが解消するのも、もう少し時間がかかると思う。


(問)
 郵政の法案を巡って、衆議院で5票差の可決ということで、参議院も含めていろいろ波乱が予想されていると思うのだが、法案そのものへのスタンスというのはこれまでも何度かお聞きしていると思うのだけれども、こういうやや波乱も含めた局面の中で、どういう郵政の審議のあり方をお望みになられるか。あるいは修正意見運営みたいなところでご注文があれば、お聞かせいただきたい。要するに、こういう政局がやや波乱があるなかで、今の政権の運営というか、政局を安定させる必要があるのかないのか、その辺についてもお考えがあればお聞かせください。
(答)
 7月1日に衆議院の特別委員会に参加したが、その時は極端なご質問が多くて、率直に言って、もう少し根本的な議論をしていただきたいと思った。郵便制度の何が悪いのかという議論が非常に多いが、我々は郵便制度が良くないと言っているわけではなく、問題の本質は、300兆以上のお金が市場の外にあるという、その大きさが問題だということを申しあげているわけである。世界的に見ても、340 兆という非常に大きなお金が市場の外にあって、それが市場の方に流れないという異常な事態を解消するために、公的金融の入口の部分の大半が郵貯・簡保であるから、この流れを変えるというところについて我々は賛成であると申しあげているわけである。今のままが良いとなると、流れを変えない方が良いということになる。金融界にいる者としては、これだけ大きい規模のお金が市場の外にあるというのは異常な事態であると、我々は意見を申しあげた。
 現実に郵政事業で働いている方がおられるので、事業をどうソフトランディングさせるかということは国会の責任であると思う。ぜひソフトランディングさせてほしいが、一番のキーは規模の大きさであって、各論として移行期間中に何の制約も無く貸出事業に新たに出ていくということは、率直に申しあげて、やや違うのではないかと思う。新たに官営の大きな銀行を作ることになるとしたら、何をやっているかわからなくなってしまう。規模の問題について是非議論を深めていただきたいと私は衆議院で申しあげてきたし、参議院では、ぜひそういう議論をやっていただきたいと思う。


(問)
 各行が進めている生体認証の技術について伺いたい。今、手のひらと指先の静脈2つの認証が出てきているが、他にも出てくるかもしれないが、規格を統一するかどうか、全銀協として考えているか、規格が乱立すると預金者の利便性を損なうのではないかと思うが、その点について伺いたい。
(答)
 前にも申しあげたが、生体認証は技術的にはかなり進歩してきたと思うが、技術的には完成された技術ということではないと思う。これから技術進歩の可能性はあると思うし、今、直ちに規格を統一するというのは行き過ぎかもしれない。利用者の方が不便になってはいけないということが大前提であるので、そうならないように金融機関として色々な工夫をするということではないか。
 生体認証については技術的にこれからも進歩し、小型化も進むと思うので、状況を見ながら検討していく。みずほ銀行の場合もこれから導入するが、やってみなければわからない部分もある。もう少し時間がかかるかもしれない。全て一挙に生体認証のみにとはならないので、ICカード、磁気カードを併用する状態がしばらく続くことになるのではないか。


(問)
 先ほど、資金需要について触れられたが、貸出の状況で、いまだ都銀に関しては減少が続いている、地銀の方は回復しているということで、アナリストなどは大企業の借入の返済が続いているから都銀は貸出の需要が減っているというような、色々な分析があるが、会長が見て減少が続いている一番最大の原因が、今どういうところにあるか、この状況が現時点であとどれくらい続きそうだと見られているか教えていただきたい。
(答)
 手元にデータがないが、全銀ベースではまだ返済基調にある。これだけデフレが続くと、企業とすれば、借入を返すというのが一番即効性のある収益対策であるから、このトレンドはまだ終わっていないと思う。個人の方も同じで、借入を減らすという方に向かっていると思う。
 ただ、この後どうなるかは、みずほのケースで申しあげると、みずほ銀行は、去年の第4四半期ぐらいから資金需要が少し底を打った感じである。一方、みずほコーポレート銀行、こちらは大企業を相手にしている銀行だが、まだまだ返済優先といった感じである。従って、必ずしも一律に一方向の方に回復しているとは言えない。冒頭に申しあげたとおり、企業収益は非常に好調であり、設備投資は増加している。本格的に設備投資等が始まると、手元資金を取り崩した後は借入需要に向かうので、現在はちょうどそういう段階にあるのではないか。デフレの脱出等いろいろ絡んで、日本全体の成長率が実質も名目もプラスになる状況にあと1~2年で行くのではないか。企業の足腰は間違いなく強くなっている。但し、倒産件数がずっと前月比マイナスだったが、6月にはまた増加するなど、不透明な状況にあるので7月をみないとわからないが、7月もまた悪くなると、行ったり来たりという可能性もある。大底を打ったきざしが少し見えている状態である。