2006年2月21日

前田会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)

斉藤専務理事報告

 初めに事務局から3点報告する。
 1つは、本日の理事会で、お手元の資料のとおり、災害時における短期金融市場の業務継続計画、いわゆるBCPを制定した。
 この事業の目的は、災害やテロ等により、コール市場の運営が困難となる場合に備え、情報連絡手段として専用のウェブサイトを設置することにより、市場の安定的な継続運営を確保しようとするものである。本年4月にコール市場参加者165金融機関の参加を得て、実施する予定である。
 業務継続計画の具体的内容は、平時には緊急時連絡先リストの作成、災害時には直ちに実務担当者からなるBCP対策会議が業務状況および稼動状況に関する情報収集、被災状況の認定・公表を行うほか、状況に応じて決済時間の延長等市場慣行の変更の推奨・公表を行うこととしている。本件について更にお知りになりたい点があれば、事務局に直接照会いただきたい。
 次にお手元に、「盗難通帳による払出し件数・金額等に関するアンケート結果等について」をお配りしている。今回の調査対象期間は昨年の10月から12月であるが、従来から四半期毎に公表している盗難通帳および偽造キャッシュカードに加え、今回から新たに盗難キャッシュカードによる不正払戻しの被害件数・金額の集計結果をお配りしている。
 今回から公表をはじめる盗難キャッシュカードの被害は、別紙3のとおり、件数は1,332件、金額は8億7,700万円である。今後とも引続き実態把握に努めてまいりたい。
 3点目の報告であるが、準会員として、インドのムンバイに本店がある「印度銀行」の3月1日からの全銀協加入を承認した。

会長記者会見の模様

(問)
 個別の話ではあるが、みずほ銀行元行員による顧客情報の流出事件について、情報の流出先が、暴力団系の企業ということで信用を重んじる金融機関として大きな不祥事だったと思うが、この不祥事について、まずグループのトップとしてどのように受け止めているか、それからこれは行員のモラルの問題とも関わってくると思うが、再発防止のために現在どのような取組みをしているのか、それから自身あるいはみずほ銀行経営陣の今回の問題についての監督責任についてどう考えているかお聞かせ願いたい。
(答)
 本件については、個別行の社長としてお答えさせていただく。
 このたび、みずほ銀行の元管理職の行員が、業務上横領の容疑で警視庁に逮捕された。まことに遺憾であり、お客さま並びに関係者の皆様に、心より深くお詫び申しあげる。
 事件は現在警察によって捜査中であり、現段階において私どもとして把握している事件の詳細については、先般みずほ銀行から公表させていただいたとおりである。
 先に公表させていただいた部分のポイントを改めて申しあげるが、平成17年12月15日、警察から「偽造クレジットカード団捜査の過程で、偽造団拠点の家宅捜索を行ったところ、押収物の中にみずほ銀行の顧客資料が含まれていた」との連絡をいただいた。12月19日には、みずほ銀行で資料の流出を確認した。当該資料は、新宿西口支店においてお取引をいただいている個人のお客さま628名分の氏名、住所、電話番号、生年月日、口座番号などが記載された「基本属性照会」および新宿西口支店の法人・事業主のお客さま623社分の社名、住所、電話番号、設立年月日などが記載された「法人別取引状況一覧」の2種類である。また流出先は、警察の発表によると、新宿区内に事務所を設ける有限会社勇心愛という会社である。みずほ銀行では、即日、警察に元課長の告訴意思を表明し、2月1日付にて告訴状を提出した。その後、2月8日に元課長が逮捕され、同日付にて懲戒免職処分を実施した。
 情報が流出したお客さまに対しては、みずほ銀行から連絡のうえ、事情のご説明とお詫び、ならびに不審な点がないかの確認をさせていただいている。また、万一、流出した個人情報を使って、二次的な被害が発生した場合には、みずほ銀行が責任をもって補償させていただくということを決めている。
 今回の事件を踏まえ、「故意による情報漏洩に対する防止策の策定」を目的に、みずほ銀行のコンプライアンス統括グループ担当役員をリーダーとする「情報漏洩対策プロジェクトチーム」を、平成17年12月22日付で立ち上げており、現状把握と再発防止策を検討している。
 再発防止策の詳細については、大きく2つに分かれている。第一に、短期的な対応として、以下の2つを実施した。一つは、先ほど申しあげた「基本属性照会」について、照会はできるが印刷はできないこととした。もう一つは、「取引先の条件検索」については、二段階での対応を行うこととした。これからの 2~3ヶ月の間は、アクセス権限を支店長席に制限し、印刷ログの取得機能を開発して第三者によるチェック体制を構築するなどの対応実施後、アクセス権限の制限を緩和するという対応を行う。第二に、抜本的な対応として、網羅性を持たせるために、以下のような切り口から再発防止策を検討している。一つ目の切り口は、ルールの徹底、明確化である。これは非常に基本的なことだが、情報の不正使用に対する意識改革、手続きの明確化である。二番目は、未然防止である。今回の場合は管理職であったこともあり、人事管理の徹底、牽制機能の強化、情報の使用制限、これはアクセスの制限、不要な情報の表示の停止などである。さらに、印刷の制限、コピー・持出しの禁止である。三つ目の切り口は、モニタリング(早期検知)である。店内の第三者によるチェック、行内の検知体制の強化、コンプライアンスホットライン等を活用した不審な行動・事象の吸い上げ。さらに、お客さまからの情報の吸い上げである。
 また、本件に関する経営責任については、現在、警察で捜査中であり、今月末頃までに何らかの形で起訴されると思うので、もう少し事態がはっきりした段階で、適切な対応を取ることとしたい。


(問)
 金融政策についてであるが、量的緩和が間もなく5年になるが、消費者物価指数も0%以上が3ヶ月連続で続き、福井総裁も3月以降の判断が重要と言っている。市場の方では4月解除が織り込まれているようなところもあるが、現段階で量的緩和解除についてどう見ているか。
(答)
 毎度申しあげているが、あくまで個人的な見解である。
 まず、内外需が総じて堅調な中で、10-12月期の実質GDPは年率5.5%という直近の報道があるとおり、かなりの高成長となっている。消費者物価もプラスに転じてきている。実体経済や物価の両面からみて、量的緩和解除に向けた客観情勢は整いつつあるように見える。
 また、先月も申しあげたが、量的緩和の解除には、30~35兆円という非常に大きな日銀当座預金残高を所要準備額近傍に減らしていくプロセスがある。このプロセスに従って、各金融機関は短期金融市場での資金調達を徐々に増やしていく必要が出てくるが、長らく量的緩和のもとで取引が非常に低迷していたこともあって、ややテクニカルな面も含めて当座預金の削減にあたっては、慎重な運営が実施されるものと考えている。
 量的緩和解除の後の金利については、量的緩和が終わった後の議論ではないかと思っている。物価の基調はプラス方向に転じている。また、グローバル経済化が構造的に物価上昇を抑制する要因もある。一方で、海外経済は、米国で住宅ブームにかげりがみえるなど、不確実な部分もある。また、量的緩和解除を受けて、市場の期待がどう変わるか、また、時間軸政策にどのような影響を及ぼすのかという問題もあると思う。そういう意味で、景気や物価の動向を見極めつつ、十分検討を行ったうえで、対応するということになるのではないかと思う。
 金利については、個人的には、現在はまだ検討する段階だと思うが、当然、責任ある方々は、ゼロ金利政策や量的緩和の効果の検証などを踏まえつつ、必要かつ十分な議論を尽くしておられると思う。
 いずれにしても景気の動向とともに良い方向に向かっているのではないかと考えている。


(問)
 耐震偽装マンション問題についてであるが、今月全銀協は申し合わせとして住宅ローンを利用した被害住民に対して最長3年間の元利金支払い猶予などの支援策をまとめているが、被害物件が姉歯以外に色々と拡大していると見られる中で、改めて全銀協としてのこの問題に対する対応についてお聞かせ願いたい。
(答)
 これは昨年以来、毎月のようにご報告しているが、この構造計算書の偽装により被害を受けた住民の方については、個人的には非常に気の毒な状況だと思っている。
 全銀協としては、今回の問題が発覚した直後の昨年11月30日に、返済の一時繰り延べも含めた真摯な対応を行う旨の申し合わせを行ったが、その後、国土交通省から住宅金融公庫並みの支援をして欲しいとの強い要請があった。また、自民党耐震偽装問題対策検討ワーキングチームからも、国の対策に対する協力要請があった。
 こうした中で、全銀協としても、対応はあくまで個別銀行であるが、出来る限り協力していきたいということで、改めて次のような申し合わせを行った。
 具体的に申しあげると、特定行政庁から除去命令等を受けているマンションに係る既存の住宅ローンについては、(1)元金および利息の返済の最大3年間の猶予、(2)返済期間の最大3年間の延長、(3)返済据置期間中の金利の可能な範囲での引下げ等の住宅ローンの負担を軽減する措置の実施、を検討することとした。
 また、退去命令等を受けたマンションの速やかな取り壊しに協力するために、抵当権の円滑な抹消を促す目的から、債権者間の権利調整に関して、ルール化を行った。
 また、建替え後のマンション取得が円滑にできるよう新規ローンの採り上げを弾力化しようということも申し合わせている。
 なお、この申し合わせについては、先週14日に他の金融機関団体も含めた形で改めて取りまとめを行った。
 今回の事故は、構造計算書を偽装するという、想定外のあってはならない違法行為によって惹起されたものである。今後、原因が究明されるとともに、本件に関する責任の所在も次第に明らかになると思うが、こうした過程には通常、少々時間がかかる。関係者が協力して取り組むことで、問題を早期解決に導くことが重要ではないかと考えている。


(問)
 みずほ銀行の情報漏洩についてであるが、まず前田社長としてはこういうかつてない不祥事があったときに、すぐに会見を開いて公式に説明するという意思は無かったのか。今度、処分を決めた後で、正式に発表する場合は、前田社長が会見していただけると考えれば良いのか。
(答)
 本件については、警察から捜査中であり、個人に対するヒアリングをしないで欲しいという要請があったので、逮捕されるまでは何もできない状況であった。更に、逮捕された後も十分な資料がなく、また本人からヒアリングもできないので、どういう状況かを申しあげることができなかった。今後、必要であれば会見するが、会見するかしないかは事案の中身によると思う。


(問)
 今回の事案はマスコミに対してきちんと会見を開いて、しかるべき人が説明すべき事案だと思うが。
(答)
 適切に対応したい。


(問)

 今回の流出の範囲について数字上は紙で漏れたのは、法人・個人それぞれ600件くらいということだが、例えば、本人が閲覧したものを相手側に口頭ベースで伝えているようなリスクもあると思う。最大でどの程度流失しているリスクがあると考えているか。
(答)
 理屈の上では支店にある情報全部である。ただし、先ほど申しあげたとおり、フリーダイヤルを含め対応窓口を設けており、お客さまからご心配のお電話等はいただいたが、実際に何かが起こったというお問い合わせは現在までのところない。警察が調べており、私ども独自で調査できることは限られるので、警察の調査を待ちたいと思う。


(問)
 支店で、この管理職が顧客情報を閲覧できる立場にあったとすれば、当然その情報が漏れているかもしれない。また、今回は、行員が暴力団に情報を漏洩したという特殊な事案でもある。そうしたリスクを考えれば、1,200件の顧客以外にもきちんと連絡をすべきではないか。
(答)
 私どもとしてはニュースリリースをしており、また、あれだけ大きな報道もあった。今の時点で、新宿西口支店のお客さまお一人お一人にお電話を申しあげて、何かございましたかとお問い合わせをするということまでは考えていない。フリーダイヤルを設けており、お客様からのご照会を承っている。もう少し、捜査の結果を見させていただきたいと思う。
 いずれにしても、極めて遺憾な事態だと思っている。


(問)
 量的緩和の解除の議論に関連してであるが、これによりいよいよ長期化した超低金利政策が終わりに近づいていることと思うが、一般の立場からみると、この超低金利の間に銀行は調達の面でかなり助けられたという印象もあるし、一方で資金の運用という面では利回りがなかなか上がらず苦労しているという両方の印象あるが、全銀協会長という立場から見て、これまでの超低金利政策がどういうものであったか、という感想、所見というものをいただければと思う。
(答)
 超低金利、あるいは実質マイナス金利という事態が長く続く中で、これは金融機関を支援しているのではないか、との意見もある。ファンディングという意味から言うと、調達コストが下がるので、その分はプラスになるが、一方、ゼロ金利の状態が続いている状況で、預金を集めて、それを原資として貸出をすることはかなり厳しい状況だと思う。預金を調達するにはインフラが必要であり、預金保険料をはじめとするコストもかかる。預金に対応する収益が、コストを勘案すると、実質的にマイナスという状況が、長い間続いているということである。また貸出の点から言うと、全体の資金需要がないことから貸出が増えず、結果としてこれまでも薄かった利鞘がますます薄くなるという、日本の金融機関全体にとって非常に厳しい状態が続いているということである。
 かかる状況は、金融機関の金融仲介機能という観点から見ると、必ずしも健全な状況とは言えない。このような状態が徐々に解消され、正常な状態に戻るというのは、日本経済にとって良いことではないかと思う。金利の調節機能が全く使えないという状態は、金融政策の1つの手段が完全に使えなくなったという意味で異常な事態である。
 ただし、考えてみると、これだけデフレが深刻化したのも、戦後60年で初めての経験であり、金融機関にとっては、非常に厳しい時代であったが、厳しかった分だけ、抱えていた様々な構造問題を真正面から解決する方向に向かったという一面もあるのではないかと思う。私の記憶では、10年間で過半が赤字決算という事態が続いたが、やっと少し普通の状態になってきた。ただし、金融機関は、過去の多額の赤字の積み重ねにより、まだ税金を払えるところまでは行っていない。更に資本を補充し、普通の姿になろうとしているいわば病み上がりというところである。公的資金を返してしまわないと、一人前ではないと認識している。


(問)
 本日発表された資料の中で盗難キャッシュカードの件数を初めて公表されたが、これは一応今月10日に預金者保護法も施行され、そういうことを勘案してディスクローズジャーされたということか。
(答)
 2月10日に議員立法が施行されたこともあり、全銀協としてデータを公表したということである。


(問)
 実際には内部では数字を把握されていたと思うが、これを見ると、同じ時期の偽造と比べると件数でいうと10倍くらいあるが、実際、今度の法律によるとこの部分も対応しなければならなくなると思うが、全銀協会長として、こうした件数や金額をどうとらまえているか。
(答)
 昨年の今ごろより、偽造キャッシュカードによる被害が問題化した。盗難の被害はそれ以前よりあったものの、全銀協ではデータは保持していなかった。むしろ警察の資料を参考にして、盗難の被害はこの程度であろうと推測していたような状況であった。
 このたび預金者保護法の施行もあり、偽造だけではなく盗難キャッシュカードによる被害についても、会員銀行にアンケートに協力してもらい、件数を把握したということである。ただし、残念ながら個々の金融機関も盗難による払出被害の過去統計データは保有していない。
 キャッシュカードのみならず、盗難通帳も含めて、盗難には色々な手口があるが、今回、盗難キャッシュカードによる被害についてプレスリリースでお示ししたような定義でアンケートをした結果がお手許の数字であり、ご指摘のように、偽造に比べ盗難キャッシュカードによる被害の方が遥かに多い。
 金融機関としては、お客さまがこのような被害にあわれないようにするために、様々な活動を行っているが、残念ながら犯罪の新しい手口が開発されているなど、率直に言ってなかなか減少して行かない。


(問)
 銀行の不動産融資が大分拡大しているようで、一部には都心等を中心にバブルと言われるような状況も起きている。この点についてリスクの評価もあわせて見解を聞きたい。
(答)
 確かに不動産融資残高は少し増えていると思う。ただし、今の融資については実需にもとづいたもので過去に言われたようなバブル的な要素はそれほどないと思っている。
 過去のバブルの時期に何が行われたかを冷静にもう一度考えてみると、当時は、土地を買って土地の値上がり益でまた土地を買うというような動きが、かなりの規模で大都市および周辺部に広がっていった。現在の物件の収益利回りを見ながら投資するという状況と比べると、当時は土地の値上がり期待にかなり偏った融資が行われ、そのため土地融資に対する総量規制を行い土地の高騰を防いだということだったと思う。今の状況は土地の値段は全体としてはまだ少し下がっている状況であり、都市部の利便性の良い所は上がっているが、これはその土地の立地条件等を勘案して、経済合理性に沿って値段がついているということである。


(問)
 みずほのトップとして2つ、会長として1つお聞きしたい。1点目はジェイコム株のみずほ証券の誤発注の件について、東証との交渉は何か動きが出ているのかどうか。2点目は、JALの内紛について、みずほがメインバンクだと思うが、何か感想があればお願いしたい。3点目は、ライブドア事件以来、投資事業組合の開示強化という話が出ているが、出資者や資金を入れている所の名前も開示しろという議論が出ている。金融機関は色々な投資ファンドにお金を入れていると思うが、この点についてはどのように考えているか。
(答)
 最初のみずほ証券の誤発注問題については、金融庁には既に再発防止策等の報告を提出した。現在、日本証券クリアリング機構から、原因と再発防止策等についての報告を2月末までに出すようにという指示を受けており、準備をしている最中である。私どもが誤発注したわけであり、再発防止策の徹底など、まずは自ら正すべきは先に正す、というのが今の状況だと思う。東証との関係はその先だと思う。あくまでわれわれが原因を作った側なので、自らの体制整備を優先している。
 2番目の日本航空の件は、新聞等で拝見しているものの、個別の会社のことであり、コメントするのはいかがかと思う。航空会社なので、利用者の方がたくさんおられる。利用者のために一番良い経営を、と個人的には思っている。
 3番目の投資事業組合に対する開示の強化については、一言で言うと他の国と同じ程度の開示は必要だと思うが、余り強化しすぎてしまうと、資金の流れが阻害されるということもありえることから、合理的な範囲で、ということではないかと思う。おそらく、新しく制定される金融商品取引法の中でも、一部、こういう規制が入ってくるではないかと思うが、バランスをとりながら決められるのではないかと思う。


(問)
 個別の企業についてであるが、先日、ライブドアが法人として起訴され、また、上場廃止の可能性がある中で、ライブドアが新たな融資を求めてきた場合、融資するか。
(答)
 全銀協会長としてお答えする問題ではないと思う。個別行の経営者としてお答えすると、上場しているからお金を貸すとか、していないから貸さないとか、そういう判断基準はないと思う。ただ、上場廃止になった場合の、廃止の理由が何かということは判断材料にはなると思う。あとは、融資したお金は何に使われるか等通常の審査をするのだと思う。


(問)
 2点伺いたい。先月、アメリカ財務省の資金洗浄の担当が来ていたが、米国から全銀協に対して、何か要請はあったか。もう1点は、収益の問題で、利鞘などをみるとまだ横ばいという印象を受ける。いろいろと改善策を施しているところではあると思うが、以前から、全体として収益性はあまり良くない。
今、収益が良くなっているのは一時的な要因と理解している。中途採用などもしているが部門のトップなどに新しい人を受け入れるということは考えられないのか。例えば、シンガポールや韓国の銀行では、場合によっては海外から役員を引っ張るなどの施策を取って収益をあげている。もう少し活発に外部から役員などの人を入れるという考えはないか。
(答)
 1点目の、アメリカ財務省から全銀協に対し直接マネー・ローンダリングに関する何らかの要請があったのかという点については、特に来ていないと思う。
 2点目の銀行の収益の改善について、過去から日本の銀行の利鞘が薄いというのはそのとおりである。ただし、ある意味では日本企業の活力の源であることから、単純に厚ければ良いということではないと思う。ただ、今の状態は少し少なすぎるのではないかと感じている。
 収益性の改善のために何をするかということであるが、日本の金融機関は、預貸金対応収益が低調であることから、その分をいわゆるフィービジネスで穴埋めしている、という状況に置かれている。投資信託の窓販など、新しいビジネスを開発して収益を穴埋めすることで、トータルで何とかプラスを維持しているという状態である。
 新しい人材投入について言えば、公的資金を受けた銀行は、リストラ、合理化を最優先でやってきたが、返済する目途も立ち、人員を少しずつ増やすような方向に方針を切り替え始めたところである。中途採用についても、専門性の高い方を中心にかなり広範囲に行っている。
 しかしながら、外国人が経営者として日本企業に入れば、その企業は良くなると言われるが、必ずしもそうとは限らないと思う。私どもが海外で仕事をする場合は、その国の方を登用している。外国人が日本に来れば、日本語という言語障壁もあり、マネジメントがなかなか難しいというのが実態ではないかと思う。あくまで、適材適所の人材登用を行うことが重要ではないかと思う。例えばみずほコーポレート銀行では、役員に外国の方を登用しており、外国人、日本人というこだわりは無い。


(問)
 直接的には銀行というよりは消費者金融業に関わる話だと思うが、金融庁で現在、利息制限法と出資法の間のいわゆるグレーゾーンの金利を無くす方向で動いていると思うが、この点に対するお考えをお聞きしたい。
(答)
 あくまで、個人的な見解として申しあげる。最近、最高裁の判決が出ているが、高い金利で借りる方は立場が弱いわけであるから、あまり貸す方の力が強すぎるというのはバランスを欠くのではないかと思う。こういう意味では、グレーゾーン金利というものは、少々問題があると思っている。


(問)
 不良債権処理が終わり、公的資金の返済に目途が立ち、史上最高益を記録し、儲け過ぎ批判というのが出てくる可能性があると思う。株主へ増配という話はちらほらでているが、それだけではなく、一般利用者、預金者にどのように利益還元をすべきなのか、会長のお考えをお聞かせ願いたい。
(答)
 これまで、あまりに多額の損失を計上してきた。また、現段階では残念ながら、税金を払えるような状況にもない。不良債権の引当の戻りなどにより、収益を計上しているが、これも一過性のものだと思っている。
 ただ、ご指摘のように、われわれ金融機関がこの10年間苦しみながら様々な形で再編統合、合理化を進めた目的は、お客さまに統合効果を還元することである。お客さまに何を還元するのかという切り口で申しあげると、みずほグループでは、重複店舗の統廃合、システム統合等によるインフラの共通化によりコストを下げ、これをもとに、競争力のある新商品をご提供するということが、お客さまに対する統合効果の還元ではないかと考えている。例えば、みずほマイレージクラブという商品を作ったが、従来はキャッシュカードとクレジットカードは別々であったものを、一体化カードとし、従来いただいていた年会費などの手数料をゼロとするなど、この1年余で約120万枚売れている。地道ではあるが、使い勝手のよい商品をそれぞれの銀行が競い合って開発しているわけであり、こうしたことを通じてお客さまに対し再編・統合の効果を還元していくのだと思う。
 また、重複店舗は大幅に減らしたが、店舗がないところには、単に預金を出し入れするだけという無人店舗ではなく、有人店舗を新設するということもある。みずほグループの例で申しあげると、フルブランチではなく、個人のお客さまを主な対象とした店舗を、これから100ヵ店作ることで、お客さまの利便性を上げることを考えている。フルブランチの大型店はコストがかかり赤字要因になるが、小さくて性能の良い店舗を作れば、お客様の利便性の向上に繋がり、コストはこれに見合うものとなる。多くの金融機関が、様々な店舗ネットワークを拡充させる方向にスタートしている。 株主の皆様への還元ということでは、株式価値を高めるというのが第一だと思うが、その次は配当を含めていろいろな利益還元策を考えうると思う。
 それぞれの金融機関が、そういう方向に向かって大きく動き始めたということに、長かったデフレの時代から脱却できる徴候が少し見えてきたのかなと感ずる次第である。

別添資料:前田会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)