2006年10月24日

畔柳会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 次期会長を内定したのでご報告する。
 先週10月19日開催の正副会長会議において、三井住友銀行の奥頭取を次期会長に推薦することを決定し、本日の理事会においてこれを了承した。正式な選任は、来年4月の理事会において行う予定である。

会長記者会見の模様

 質問をお受けする前に、私から今年度の重要課題である「利用者の皆さんに安心して金融取引を行っていただくための金融機関の自主的・持続的な取組み」についてお話しをさせていただく。7月の記者会見では、独占禁止法関係の取組みや、銀行とりひき相談所の体制強化に向けた検討着手などについてご報告したが、本日はその後3ヶ月間の主な取組みを簡単にご紹介させていただく。
 第1に、昨日23日にプレスリリースを行ったとおり、「金融犯罪ゼロキャンペーン」を開始した。偽造・盗難キャッシュカード等による預金の不正払出し、いわゆるフィッシング詐欺やスパイウェア等を利用したインターネット関連犯罪のほか、振り込め詐欺等の金融犯罪関連について、具体的手口や対応策を広く認知・理解いただき、被害を未然に防止することを目的としている。タレントのマギー司郎氏を起用して、各行店頭でのパンフレットの備置・ビデオの放映、キャンペーン専用サイトの立ち上げ、雑誌・ラジオ広告、金融広報中央委員会が12月2日に開催する「金融教育フェスティバル2006」などのイベントを通じてキャンペーンを行っていく。
 第2に、去る10月5日に利用者の皆様向けの全銀協のホームページ「MOREBANK」をリニューアルした。先程のキャンペーンとも関連するが、このサイトにおいても金融犯罪に関する事例・防止策等をわかりやすく解説している。加えて、多重債務防止のためのポイントをまとめたコーナー、小学生高学年から中学生に金融に対する理解を深めてもらうためのキッズコーナーを新設した。金融に関する正確な知識の普及は、全銀協としても重要な課題と認識しており、ホームページについても、利用者の皆様にとって、より使い勝手のよいものとするべく、今後も充実に向けた検討を継続してまいりたいと考えている。
 3つ目であるが、先月の会見でもご報告したが、銀行界の広告表示への取組みに関して、全国銀行公正取引協議会として、9月15日に住宅ローンの表示に関する改善点を取りまとめ、会員銀行宛に周知した。その他、外貨預金やデリバティブを組み込んだ預金商品の広告表示についても、現在、必要な対応を検討中である。引き続き、よりわかりやすい広告表示に向けて、協会レベルでも努力してまいりたいと思っている。
 以上3点について、ご照会事項等があれば、後程、事務局までお願いしたい。


(問)
 今月の月例経済報告で2002年2月に始まった現在の景気拡大局面が「いざなぎ景気」と並んで戦後最長となり、日銀の9月短観でも景気の底堅さが確認された。一方で、米国経済の減速懸念や、家計への景気波及の遅れなどの不安要因も目立つ。こうした状況を踏まえて、現状と先行きについての会長の景気認識をうかがいたい。
 それに関連して、日銀の追加利上げ時期について、マーケットでは「年内」とか「来年後半」とかいろいろ見方が分かれているが、会長としてはその追加利上げはいつごろが望ましいとお考えか、見解をうかがいたい。
(答)
 今回の息の長い景気拡大は、なんといっても企業業績の好調がベースになっており、最近発表されたデータをみてもそうした状況が続いていると思う。企業収益の好調が、設備投資の増加、雇用環境の改善となって民間需要回復の牽引役になっているという状況には、特段の変化は見られないと思う。したがって、日本経済がバランスの良い景気拡大を続けているという見方に変わりはない。
 確かに従来から不安要因として、米国経済の動向などが指摘されていたわけであるが、特に米国経済については、住宅市場の動向が景気の減速にどのくらい影響があるのかということが懸念されていたわけであるが、ここにきての原油価格の下落や良好な雇用環境等から、現在のところ減速はしているがソフトランディングは十分可能という見方が一般的ではないかと思う。したがって、わが国の景気拡大の勢いは輸出という観点で少し鈍化するかもしれないが、最初に申しあげたとおり、今回の景気回復のベースとなっている企業業績の堅調さが続く限り、息の長い回復傾向が続くのではないかという見方をしている。
 追加利上げの時期については、昨今のいろいろな指標の発表や株価の動向もあって、最近の市場の見方は一定ではなく、年内から来年後半まで大きく分かれているような状況ではないかと思う。前から申しあげているが、銀行の貸出窓口では、もちろん既に減少局面は一応終わり、これから増加していく局面にかかっているとは思うが、力強く借入需要が回復しているという感じはない。そういうことも考えると、今は内外経済の先行きを慎重に見極めることが大切な時期かと思う。そうした点も含めて、いろいろなデータを踏まえて日本銀行が総合的に適切に判断されるのではないかと考えている。


(問)
 三井住友フィナンシャル・グループも公的資金を完済し、以前の予想を大幅に前倒しする形で3メガバンクが全て公的資金からの脱却を果たすこととなった。これについての感想と経営的な自由度を大きく高めた銀行が今後果たすべき役割や課題についてどう考えるか。
 本日、「三菱UFJフィナンシャル・グループが、日本経団連の要請を受けて、政治献金の年内再開を検討する」との報道があったが、欠損金がまだ残っている段階で政治献金を再開することについてどう考えているか。
(答)
 まず3メガバンクが公的資金から脱却を果たすことになった感想というご質問だが、私どもを含め、そのような状態に戻れたというのは何と言っても私どもの銀行のお客さまというか、経済全体の回復のおかげであり、過去一番厳しい時に税金を投入していただいたことを忘れないで、まず第一にそういう状況に感謝を申しあげなければならないというのが最初の感想であり、また同時に二度とそのようなことを起こさないという経営責任を改めて確認する必要があると思っている。
 さらに今後の銀行の役割や課題というご質問だが、これまでにも何回か申しあげているが、銀行は誰のものかということをあらためて考えると、お客さま、株主、従業員、そしてその地域社会、様々なステークホルダーの方々の満足あるいは信頼を得ながら経営をしていくということが重要な課題であるし、それこそが企業価値を高めていく源泉であろうと感じている。
 特に、お客さまや地域社会との「共存共栄」なくしては、銀行の発展はないものと思う。これからもやはり、お客さま本位の銀行作りを一層進めていく必要があると思うし、コンプライアンスの遵守ほか、適切、的確な業務の遂行という責任を果たさなければならないと思う。したがって、これまで公的資金の返済を最優先課題としてきたわけだが、そうしたサービスの向上あるいはコンプライアンスの遵守というようなところに経営資源を投入していくことが、課題になるのではないかと思っている。
 わたしどもの銀行のことを申しあげれば、振込手数料の一部無料化による統合効果の還元なども行ったが、これからはサービス面でいわゆるCSの向上のために、ご利用いただきやすいかたちに店舗の改装を行っていくとか、バリアフリーへの対応を行っていく、窓口やATMを改善してお待たせしている時間の短縮を図っていく、そういうことにも力を入れていかなければならないと思う。あるいはKDDIとモバイルネット銀行の設立等もしているが、そういう新たなサービスの提供、より利便性の高い取組み、こういうものも実施していくことが重要だと思う。
 また、これも私どもの銀行のことで恐縮だが、コンプライアンス遵守、あるいは投資家保護、そういう観点から、リテールの現場の方へ専担者244名を配置させていただいたりしており、そういうことも同時に行ってバランスの良いお客さま本位の経営をやっていきたいと考えている。
 また、最後のご質問であるが、これは今朝報道されたことであるが、つい最近、日本経団連から全銀協会員銀行に政治寄付を呼びかけて欲しいとの要請があったので、会長行の立場で正副会長会議や企画委員会の場でこれを伝えたところである。要請があった直後であり、私どもとしては、今後これを検討していくという、白紙の状態である。


(問)
 個別行の関連であるが、東京スター銀行の無料ATMの問題である。当初ATMの契約解除を三菱東京UFJ銀行が10月1日と通告したと思うが、その時期を経過したが、その後決着ははかられているのか。現状についてお聞かせいただきたい。
(答)
 以前にもこの席で申しあげたが、ATM提携は、個別金融機関間の契約の問題である。対象業務および提携時間等の提携に関する共通の運営ルールも、いわゆる都市銀行、地方銀行、あるいは信用金庫や労働金庫などの9業態で組織するMICS、全国キャッシュサービスで定めており、全銀協の事案ではない。したがって、個別行としてお答えをさせていただく。
 まず、ATM提携の一般的な考え方を改めて申しあげると、個別の金融機関間で、必要なコストを相互に負担し、相互信頼・相互尊重の精神にもとづいて共存の理念で賄っていく契約となっている。銀行間利用料の料金の設定およびその見直しは、この考え方に立って、ネットワークの運営に関するコストやネットワークの配置状況などを踏まえて、個別銀行間で行うことになっている。
 一方で、お客さまから利用料をいくらいただくかということについては、他行のお客さまがATMを利用する際の利用料を含めて、ATM設置銀行が独自に決定することになっている。つまり、コストをどう負担するかという問題と、お客さまに対する利用料金をどうするのかは別の問題ということである。
 個別の契約内容に立ち入るのは差し控えるが、東京スター銀行との間では残念ながら銀行間利用料の不均衡が生じており、コストの相互負担という提携の趣旨に反していることから、この不均衡を是正すべく、話し合いをさせていただいている。
 ただし、東京スター銀行が自らのATM設置についてやお客さまの手数料についてどうするかということについては、こちらは何も申しあげていないし、今後も同行のビジネスモデルについて私どもが何か申しあげるつもりは全くない。


(問)
 今の政治献金の話であるが、今白紙とおっしゃったが、いつぐらいまでに、個別行の話になると思うが、結論を出される見通しなのか。また、預金者から見れば預金金利もまだ低いし、株主から見れば株主配当も決して高い水準とは言えない、法人税を払っていないということも指摘されていて、批判が出ることも予想されるが、それについて会長としてはどのようにお応えになるのか。
(答)
 まさに日本経団連からお話があった直後で、これからいろいろな観点から検討していくところであり、いつ頃までにということを申しあげる段階ではない。日本経団連からは、企業の社会的責任の一端としての重要な社会貢献として、企業や団体の寄付を呼びかけられているので、われわれもそういうことをよく勘案して検討していくことになると思う。


(問)
 個別行の話で恐縮であるが、米国の金融当局の方から、三菱東京UFJ銀行のニューヨークの現地法人とかが資金洗浄に対するシステム不備について指摘されているということだが、どのような指摘をされているのか。また、銀行としてどのように対応されるのかを教えていただきたい。
(答)
 内外に限らず検査当局の内容については、お答えできないということをご理解いただきたい。いずれにしてもこういう激動する、変化の多い世の中でルール厳守というか、そういうものは大変重要なテーマであるので、内外どういう状況でも、われわれはそれに応じて真摯に対応していくということは申しあげておきたい。


(問)
 これも一部報道に出ているのだが、住友信託銀行との訴訟の和解案提示というのがあるが、これについてどういう対応、個別行の話になるが、どういうふうにお考えになっているか。
(答)
 これもまた個別行であるし、また、訴訟係争中の案件でもあるので、ちょっとお答えするわけにはいかないが、いずれにしても私どもの姿勢として、やはり真摯に問題を解決したいと考えていることは変わらぬ態度であって、そういう姿勢で何事にも取り組んでいるし、取り組んでいくつもりである。


(問)
 先ほどもちょっと出たのが、法人税を払っていないという問題についてうかがいたいのだが、今後の経営課題のなかで地域社会との共存だとか、ステークホルダーへの貢献という話もされたが、やはり社会のなかで企業も行政サービスなどを受けている以上、税金を払うというのが、まさに社会貢献という部分があると思う。損失繰越という制度のなかの話でもあるので、なかなか難しい部分もあるかと思うが、反面、やはり利益もあがっていることであり、応分の税負担をという世論もあると思う。このあたりについてのご見解をお願いしたい。
(答)
 そのようなご批判があることは、十分わきまえているつもりであるが、私どもの立場でこれはいつもご説明はしているのだが、やはり税務ルールというものがあって、これに則って税金支払いを行っている。国民の一人として、税金に関しては税務ルールを厳守してやっていくという姿勢に、何ら微塵の揺らぎもないのであるが、やはりこの問題については、過去に有税で不良債権処理したときに、赤字の中でも税金を払っていたという面がある。どうしても、会計上の損益と税務上の損益の間にタイムラグが生じるルールになっている。このラグが生じないように税制改正も要望しているが、海外でもそういうラグはある。我が国ではそういうタイムラグは、ルール上、現実に存在して、われわれとしてはその税務ルールを越えて対応することができないということについては、ご理解をいただきたい。ただ、そういうことはそういうこととして、私どもをとりまくステークホルダー、特に銀行に要請されるCSR経営というものを十分に咀嚼していろいろな還元を行っていく、やはり一つのルールの中での企業なので、そのようにお答えするしかないということはご理解いただきたい。


(問)
 本日、消費者金融をめぐる貸金業規制法に関して、自民党から一部特例を認めるという話を撤回するという話が出ているが、改めて、消費者金融業界と銀行との提携のあり方とか、もしくはいつも言われている健全な消費者金融市場の育成にどう取組んでいかれるのかということについてうかがいたい。
(答)
 本日、自民党でそうした動きがあったという報道は耳にしたが、まだ正式なものではないかもしれないので、改めて正式に示されたときに発言させていただく。もともと私どもは、健全な消費者金融市場の発展がわが国にとって大きな課題ではないかと思っている。個別行の話で恐縮であるが、私どもが提携を最初にスタートした時の考え方としては、利息制限法の範囲内で事業を開始し、そのノウハウを蓄積するということであった。今年に入り最高裁の判決が出て、多重債務が非常に問題になって見直しの動きが加速され、今の状態になっている。皆で協力して必要なプロセスをクリアして、健全な消費者金融市場をわが国に作っていくという志で、引き続き私どもは取り組んでいきたいと思うし、提携の中身についても、さらにコンプライアンスを重視した運営をできる限り行っていって、皆様から安心、信頼される消費者金融市場の育成に金融界をあげて取り組んでいかなければならないのではないかと、個人的意見も入るが、そう考えている。


(問)
 今の消費者金融の絡みでうかがいたい。先日、三菱UFJの提携先のアコムで、消費者契約法を上まわる遅延損害金を取っていたという問題が表面化して、アコムも是正されたが、先月の会見で、アコムについては三菱UFJとしてコンプラデューデリをやっているので、コンプライアンス違反ということはないだろうという話をされていたと思うが、コンプラデューデリの中でも発見できなかったことなのか。アコムが、今回こういったコンプライアンス違反をしていたことについて、どのように受け止めているかお聞きしたい。
(答)
 先月、そういうような姿勢で取り組んでいると申しあげたことに全く変わりない。コンプライアンスのデューデリのなかで、どういうところが最も問題であるのかという観点で、全力をあげてそこを中心にチェックをしているが、仮に、何か欠けているところがあったとしたならば、それはそれでまた改善していって、次回、絶対にそれは起こさないような運用をしていくということだと思う。常に私どもが申しあげていることが一番完璧に行われているのが良いと思うが、われわれがいろいろな意味でできる限りチェックするという、そういう姿勢で今後もやっていきたいと思っている。