2007年1月23日

畔柳会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 (なし)

会長記者会見の模様

 質問をお受けする前に、今年度の重要課題である「利用者の皆様に安心して金融取引を行っていただくための、金融機関の自主的・持続的な取り組み」についてお話しをさせていただく。昨年7月、10月に続き、3度目のご報告となるが、本日は10月以降、3ヶ月間の主な取り組みをご紹介させていただく。
 第一に、明けて本年は夏頃に金融商品取引法が施行される予定であり、金融機関にとっては、その対応が極めて重要となる。同法は、貯蓄から投資への流れが進みはじめた中、投資性のある金融商品を幅広く対象とし、業態横断的に利用者保護のルールを定めるものである。利用者の皆様の「安心・安全」と、金融商品販売業者の「健全な発展」という形での、両者が「共存共栄」を確実なものにしていくための重要な制度の整備である。
 全銀協としても、会員銀行が法令に従って、適切に対応できるよう、積極的に取り組んでまいりたいと考えている。全銀協では、平成11年に、会員銀行が主に個人のお客様と契約を締結する際の基本的な指針として、「消費者との契約のあり方に関する留意事項」というものを作成しているが、現在、その改訂作業を行っている。金融商品取引法の制定等を踏まえ、販売・勧誘に際しての適合性原則の確認や説明義務等に関する論点を中心に内容を見直し、今年度中に取りまとめて、公表したいと考えている。その他、今後、政省令の内容が固まるのを待って、会員銀行の対応に資する活動を行っていく予定である。
 第二に、現金振込等に関する本人確認義務の強化に関する対応である。ご承知のとおり、1月4日より、10万円を超える現金振込み等に際して、金融機関に依頼人の本人確認が義務付けられた。
 取扱いの変更に伴う混乱を回避するため、全銀協、会員銀行では、これまでにも周知活動等に取り組んできたが、昨年末から年初にかけて、全銀協として、改めてテレビ・新聞を通じた広報活動を行った。本件については、マスコミ各社に広く取りあげていただいたこともあり、これまでのところ、各行の店頭でも大きな混乱は生じていないようである。引き続き、正確な周知活動を続けてまいりたいと考えている。
 三点目であるが、金融経済教育への取り組みの一環として、昨年12月2日に金融広報中央委員会が主催した「金融経済フェスティバル2006」に参加した。本フェスティバルは、子供たちがお金のことを学ぶきっかけを作るとともに、学校教育関係者その他の大人の方にも金融教育に興味を持ってもらうことを目的として、各団体の取り組みを紹介するイベントである。全銀協はこのフェスティバルで、マギー司郎氏による金融犯罪防止に向けたPRを行ったほか、特設ブースを出展し、銀行の役割、ローン・クレジット、金融犯罪防止に関するパンフレットやパソコンゲームを配布するとともに、子供向けに預金通帳やキャッシュカードを作る体験コーナーも開設し、多くの皆様にお立ち寄りいただいた。引き続き、金融に関する正確な知識の普及に努めてまいりたいと考えている。


(問)
 現在の日本経済に関する景気の現状認識と、あわせて先ごろ日銀が事前には観測がいろいろあったが、追加利上げを見送った。それに対する評価と、先行きの金融政策に関する考えがあれば伺いたい。
(答)
 景気の見方については、毎月この席で触れさせていただいているが、全体感として私どもの見方に大きな変化はなく、企業業績をベースとして緩やかな景気拡大が続いているとみている。ただ、景気の中身をやや子細に見ると、まずベースとして生産が増加基調を続けている、あるいは企業収益や雇用、所得環境も改善を続けているというような面と、一方で輸出の若干の減速や、あるいは機械受注など設備投資関連指標の一進一退など、留意すべき点があるほか、個人消費の持ち直しもごく緩やかに留まっている。したがって、全体としてみれば景気の拡大傾向は続いているが、現在は、強弱様々な経済指標が出ている微妙な局面というような表現ができるかと思う。
 それからこれも毎度申しあげているが、銀行窓口から見ると、これはいろいろな要素の中の一つであるが、企業の資金需要や銀行貸出が力強く拡大して、盛り上がっている地合いではないということも事実であり、こうした状況も総合的に勘案されて、日銀は先般の決定をされたものだと理解している。


(問)
 郵政の民営化についてであるが、先ごろ民営化委員会の所見が示されたが、その所見に対する評価と、あと株式上場を一年前倒ししたいというようなことも西川社長が示されているようだが、これについて意見があれば伺いたい。
(答)
 昨年の7月末に、日本郵政がご存知のとおり「実施計画の骨格」を発表した後、郵政民営化委員会は精力的にヒアリングや審議を重ねられて、12月20日に「新規業務の調査審議に関する所見」を取りまとめられた。まずはそのご努力に敬意を表したいと思う。
 その「所見」において、これまで郵貯・簡保という官業によって政府保証等に依存して行われてきた資金仲介は、規模の肥大化とあいまって、金融市場の機能に歪みを与えてきたとの認識を示され、規模の縮小が必要としている。また、経営の効率化、あるいは経営管理態勢の整備等が必要というような指摘も所見の中にある。これらについては、全銀協も主張してきたものであり、今後、日本郵政グループが、こうした点をしっかり盛り込んだビジネスモデルや経営計画を早急に作成するということが、基本点であり重要であると考えている。
 一方で、新規業務を考える際の最も重要な視点は、「利用者利便の向上」とされているが、郵政民営化法の基本理念には、他の民間金融機関との公正な競争条件を確保すること、あるいは地域社会の健全な発展や市場に与える影響に配慮することも謳われている。したがって、新規業務の調査審議にあたっては、このような点も配慮することも不可欠であると思う。その点、「所見」の内容では、われわれの主張の最も重要な点である規模の縮小というポイントに対して、郵貯の更なる肥大化につながらないかという、懸念が残る。 いずれにしてもこの「所見」は、1月末を期限にパブリックコメントに付されており、以上申しあげたような論点を含め、全銀協としての意見書を提出する予定である。
 株式上場時期の前倒しの質問があったが、上場を急ぐあまり、内部管理態勢が整わないまま、性急に業務範囲を拡充するようなことがもしあれば、むしろそれは第一に掲げられている利用者利便を損ねることにもなるし、ひいては投資家の評価も得られないというような本末転倒になる惧れもあるかと思う。したがって、繰り返しになるが、われわれの出発点である規模縮小、経営効率化、管理態勢の整備、この重要な3つのポイントなどに対し、足元を固めることが重要ではないかと考える。


(問)
 昨年の話で恐縮であるが、先月の会見で政治献金について再開を検討されるという話をされていたと思うが、その直後に安倍総理の方から法人税を払っていない大手行から献金を受取るわけにはいかないというような辞退を表明されるという事態になり、まず、このことについて畔柳会長はどのように受け止めていらっしゃるのかについてお聞きしたい。
(答)
 経緯から申しあげると、昨年10月中旬だったと思うが、日本経団連の方から政治寄付の呼びかけがあり、そして11月、12月の記者会見でご質問があって、私どもとしては検討中で、結論は出していないと申しあげてきた。検討に際しては、日本経団連における申し合わせ等を踏まえ、対象政党の政策を評価できること、対象政党が政治寄付を受けることがそもそもの前提になるというように考えていたので、そのような中で今回は見送った、そういう決定をしたということである。


(問)
 自主的に見送った、御行の判断で見送ったということか。
(答)
 もともと検討中であったから、いろいろなことを決定する時には常に総合的な判断をしており、今回、私どもは見送ったということである。


(問)
 先月の会見では個人としての献金も考えているとの話をされていたと思うが、それについてはどのようにされたのか。
(答)
 そういう考えを深めていると申しあげたが、個人に関することなので、これ以上ここでお答えすることはないかと思う。


(問)
 されたとも、しなかったともおっしゃれないということか。
(答)
 そうである。それは私自身が決め、私自身行動することなので。ここは全銀協会長としての記者会見であるので。


(問)
 おっしゃることはわかるが、先月の会見では個人として献金する考えを表明されたわけで、それについてどのようにされたかをお聞きすることは、必ずしもこの会見の趣旨に反してはいないと思うが。
(答)
 先月も、質問があったので、そういう考えを深めているとお答えをした。


(問)

 今年の一つのテーマ、年末になるが、保険商品の銀行窓販が全面解禁になるという段取りになっているが、御行としてはどういった対応で臨まれるのか。具体的にどういった商品を扱おうと考えているのか。その辺のお考えをお聞かせ願えるか。
(答)
 確かに今年の12月の全面解禁は、非常に大きな解禁であると認識しているし、貯蓄から投資へという全体の政策の方針が出ている中で、それぞれ個別行にとって、非常に重要なポイントの一つであると認識している。われわれ自身も、担当部門において、どういう対応をするか、まさに検討しているところである。したがって、ここでどういう商品をどういうふうにというようなことは申しあげないが、先ほども少し申しあげたとおり、すべて投資商品については、前提としてのコンプライアンス、あるいは専門性をよく具備して進めていかなければならないというところが、重要なポイントだと思う。もちろんビジネスチャンスという捉え方もあるが、そういうところを整えて臨むということが、重要な点ではないかと思っている。逆にいえば、リスクもあるわけだから、コンプライアンス面の整備を含めた総合的な判断で対応していくことが必要である。最終的には、お客さまの利便性が向上し、われわれと共存・共栄するような形で進んでいくことが望ましいと思う。


(問)
 先ほどの献金の話をちょっと蒸し返すようで恐縮であるが、自民党としては、銀行からの政治献金は辞退するというふうには言っているけれども、個人からの献金については、何も断るとは言っていない中で、会長は、去年はいろいろな考えがあって、個人としても検討しているとおっしゃっていて、するならするで良いと思うのだが、このような経緯のもとで、しなかったとすれば、それは説明する責任があるというふうに思うが、その点について、いかがか。
(答)
 もちろんそういうことも考えて、よく理解したうえで、自分として行動を決めている。したがって、そこまでこの場では申しあげないが、そういう私の行動に関しては、そういう考え方で進めていると申しあげたいと思う。


(問)
 この場でおっしゃれないということは、どこか別の場でおっしゃるということになるのか。それとも、あくまで個人の話なのか。そもそもの話が、メガバンクのトップとしての含みもあったわけで、この段階になって個人だというふうに主張されるとちょっとそれは筋が通らないのではないかと思うのだが。
(答)
 いろいろなお考えがあると思うけれども、私としては、そういう考えを深め、そういう行動もとっている。


(問)
 そういう行動をとっているとは、どういう行動をとっているのか。
(答) 自分なりに、必要なことは対応しているという意味である。


(問)
 先ほどの日銀の金融政策に対する意見に関連した質問だが、銀行の窓口からみると、企業の資金需要だとか銀行貸出が力強く盛り上がるという地合いではない、という認識でいえば、次の利上げのタイミングについてはどのように考えているのか。
 また、利上げのタイミングが遅いのか早いのかというのは何ともいえないが、例えばタイミングが遅れた場合の銀行経営への影響、反対に早い場合の銀行経営への影響について、どのように認識しているか。
(答)
 最初のご質問だが、先ほども申しあげたとおり、日本銀行は色々なデータを総合的に判断されて決められたと思う。私どもの銀行の窓口はひとつの要素になると思うが、そこで見る限りは、資金需要や銀行貸出があまり力強く盛り上がってはいないということを申しあげた訳である。それと日本銀行の意思決定とはダイレクトには結びつかないと思う。日本銀行はいろいろなデータを総合的に判断されているのだと思う。
 やや個人的な意見になるが、今の景気はグローバルな経済にかなり組み込まれて、各企業の業績も好調であるという点があると思う。内需に関していうと、少子化とかいろいろな影響もあって、個人消費が今ひとつ盛り上がっていないなどいろいろな問題もあるのかと思う。過去のいろいろなケースをみても、そうした要素だけで判断するものでもないと思うし、先日も総裁がいろいろなデータを確認して臨むとおっしゃっているので、そう私は理解している。
 次の、銀行経営の観点ということで申しあげると、われわれの場合は、基本的には資金をつなぐ仕事であって、われわれのバランスシートの預金の方のお客さまにすれば、金利が上がった方が良いというご期待がある。ところが、預金を運用している貸出という方のお客さま、企業とか、住宅ローンとか、中小企業のお客さまとかは、金利はまだ上がらない方が良いというご期待があるのではないかと思う。われわれの銀行の経営は、そのどちらかだけということではなく、両者相まってというところがあるので、どちらがどうだということではなく、中立的な立場だと思うし、基本的には景気が良くなっていくことが必要なことだと思う。


(問)
 昨年7月にゼロ金利を解除してから約半年が経つが、この間に貸出先に対する金利の引き上げの浸透状況については、どのように見ているか。
(答)
 過去の記者会見でもお話したかと思うが、全部の銀行ということではないが、例えば私どもの銀行では、お客さまへの貸出金利は、かつては公定歩合に連動するプライムレートの割合が大きかったが、現在では市場連動型が全体の4分の3ほどを占めており、そういう意味では、市場金利が変われば自動的に貸出金利も変わるようなことになっている。昨年7月にゼロ金利が解除されたあと、確かにプライムレートは引き上げられたので、それを適用しているお客さまに対してはお話をし、ほぼ昨年度の上期中には、ご了解いただいたような形になっている。したがって、残りの4分の1部分にも反映されてきたというような感じである。このように貸出金利のベースは市場金利連動型になってきているが、預金金利についても、いろいろご批判はあるが、市場金利連動で動くようになっている、預金貸出の両側で市場金利連動型になっているというのが、今の銀行の実態である。ただ、これは銀行によって、多少の差はあると思う。


(問)
 足元の利鞘の状況については、どのように見ているか。
(答)
 前期の決算発表の時に申しあげたのだが、非常に厳しい競争環境が続いていることから、前期の期末のところまでは少し利鞘が縮小してきた。今期に入って金利引き上げも影響したのか、利鞘は下げ止まって、横ばいになってきた。これはまだ、 10-12月の3ヵ月の状況ではあるが、そのように見ている。


(問)
 さきほどの政治献金の話で、少し分かりづらいところがあったので、2点ほどお聞きしたい。まず、銀行としての政治献金の件であるが、総合的な判断で自主的に見送られたとのことであるが、総合的な判断というのは、預金者からの風当たりなどを考慮されたのか、それとも自民党の政策について足りないものがあるとか、評価できなかったという理由なのか、そのあたりをもう少しお聞きしたい。個人献金の件で、そういう行動をとっているという話で終わってしまったが、これは個人献金をされたと解釈していいのか。
(答)
 さきほど最初にお答えしたとおりである。経団連からの呼びかけを受け、その中で対象政党の政策を評価できることと対象政党が政治寄付を受け入れることが前提として検討していたが、その前提が変わったので見送ったということである。それ以上のお答えは無い。
 2番目の質問については、いろいろご意見はあると思うが、全銀協会長の記者会見であるので、私個人の政治信条みたいなことを申しあげる場ではないと認識している。関連の中で、ある程度、ギリギリのところまではお答えさせていただいたつもりであり、ご理解をいただきたい。