2007年4月19日

畔柳会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 全国銀行公正取引協議会に関する事項であるが、このたび、デリバティブを組み込んだ預金、いわゆる「仕組預金」の広告表示例をとりまとめ、本日付で会員宛に通知した。
 内容はお手元にお配りした資料に記載のとおりである。この資料には、今回とりまとめた2種類の仕組預金の表示例のポイントを記載しているが、具体的な表示例については協議会のホームページで公表しているので、ご覧いただきたい。
 なお、さらに詳細についてお知りになりたい点があれば、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。

会長記者会見の模様

 はじめに、私から発言させていただく。
 全銀協の18年度の重要課題とした「利用者の皆さんに安心して金融取引を行っていただくための、金融機関の自主的・持続的な取り組み」については、昨年 7月、10月、また今年1月と、これまで3度お話してきたが、本日、今年度の最後の報告として、この3ヶ月間の主な取組みを3点ご紹介させていただく。
 第一に、業界の自主ルールの整備として、先月、この場でご報告したとおり、「消費者との契約のあり方に関する留意事項」を改訂した。今般の改訂は、今年 9月ごろに施行される金融商品取引法の趣旨を踏まえたものであり、会員各行に、法の理解を深めるとともに、この留意事項をそれぞれの業務運営に活用していただくようお願いしている。
 また、ただいま事務局からご報告したとおり、仕組預金の広告表示に関する改善点を取りまとめ、会員銀行に周知した。 第二に、多重債務者問題への取組みとして、今月はじめから、「銀行とりひき相談所」のカウンセリング機能を強化した。従来、お客様からのご相談は、東京銀行協会の銀行とりひき相談所の窓口でお受けしていたが、これに加え、電話により全国からご相談をお受けできるようにした。また対象範囲を、銀行の個人ローンをご利用になっているお客様だけでなく、銀行と何らかのお取引があるお客様に拡大した。
 第三に、CSR活動の推進策として、昨年6月から、企業のCSR活動に詳しい学者の先生方に、全銀協の金融調査研究会で議論をしていただいていたが、その成果を「金融機関におけるCSR活動や環境配慮行動の充実に向けて」と題するレポートにまとめていただいた。3月6日に、このレポートを踏まえたシンポジウムを開催したところ、一般の方を含めて、200名を超える方が参加された。
 また、会員各行への情報提供を強化する観点から、これまで環境問題に焦点を当てていた「全銀協エコレポート」を、この4月に「全銀協CSRレポート」と改め、CSR全般に関するトピックスを取りあげることとした。引続き、全銀協として、会員各行のCSRへの取組みを後押ししていきたい。


(問)

 最初に、全銀協への加盟要件についてお尋ねしたい。農林中央金庫とか、また、今後、秋には、郵政民営化で郵貯銀行が発足する運びとなっているが、こういった農林中金とか郵貯銀行の全銀協加盟について協会長がどう考えているのか、お聞かせ願いたい。
(答)
 全銀協の会員資格に関しては、今、時代の変化の中で見直しの検討を行っているところであるが、現段階で決定していることはない。報道も行われているようであるが、検討している段階である。
 お話のあった郵貯銀行の加盟については、これは特に議論していない。ただ、全銀協は民間銀行の団体であり、郵貯銀行が今年10月に民営化されても、完全民営化に至る移行期においては、国の出資が相当程度残る段階では、民間銀行と同一には議論できないと思っている。農林中金からは、正式申請はまだないが、打診はある。したがって、今、全般的な時代環境の変化の中で見直しの検討を行っているということで、決まったところでまた発表させていただきたい。


(問)
 畔柳会長も定例の記者会見は今日で最後だと思う。この1年間を振り返り、いろいろなことが起きたかと思うが、それについての対応について、ご自身でできたこと、もしくは不足したこと、およびそれらについて協会長ご自身が自己評価をどのようにしているか。中でも、この1年間は銀行のコンプライアンスにスポットが当たった1年間ではなかったかと思うが、その辺を踏まえてご発言をいただきたい。
(答)
 少し全体を振り返るということでお話をさせていただくが、18年度を振り返ってみると、わが国経済は緩やかながら拡大を続けて、ゼロ金利政策にもピリオドが打たれた。そうした中で、金融界では、公的資金の返済が相次ぎ、活力ある金融システムの創造を目指した金融改革プログラムが、この3月末に終了したというような年度であった訳であり、わが国経済・金融の節目となる1年であったように全体としては思っている。 昨年4月の就任の記者会見において、私は、18年度の全銀協の課題を、「民」の力を発揮して、「利便性」と「信頼性」を両輪とした活力ある金融システムの構築に向けて、民間金融機関の業界団体としての役割を果たしていきたいということを申しあげ、その時に、具体的に取り組むべきテーマとして、3点を掲げさせていただいた。
 第一の課題は、「金融市場の構造改革をさらに進めて、活性化する」ことであり、これは、かなり細かい制度設計の段階に入ったと思われる郵政民営化や政策金融改革に関して、郵政民営化委員会における意見陳述をはじめとして、様々な機会を捉えて、民間金融機関とのイコールフッティングの確保とか、あるいは郵貯自体の規模の縮小化、こういうことを中心に全銀協の考えを申しあげてきた。
 第二の課題は、「金融機関の自主的・持続的な取り組みを促進する」ということであり、お客様満足度の向上を図るための第一歩として、6年振りに「よりよい銀行づくりのためのアンケート」を行うなど、銀行や金融サービスに対するお客様の率直なご意見をうかがった。そうしたご意見を参考にして、マジシャンのマギー司郎氏を起用した「金融犯罪ゼロキャンペーン」、住宅ローン・外貨預金・仕組み預金に関する広告表示例の改訂、現金振込み等に際しての本人確認義務強化に関する広報活動、それから先ほど申しあげた銀行とりひき相談所の機能強化など、お客様に安心して銀行取引を行っていただくための環境整備に努めてきた。また、独占禁止法の遵守に関しては、「銀行の公正取引に関する手引」を改訂して公表したほか、セミナーを開催して会員各行の意識を高めたうえで、各行の対応状況のフォローアップのアンケートを実施した。
 第三の課題は、「CSR活動の推進」ということであり、先ほどご報告したとおり、研究会での提言の取りまとめやシンポジウムの開催、「全銀協CSRレポート」の創刊などを通じ、環境問題への取り組みなどCSR活動に関する情報提供を強化してきた。こうした取組みが、今後の業界団体としてのCSR活動の指針になるとともに、会員各行の取組みの一助になればと考えている。
 この1年間、以上申しあげた三つの課題を通じて、活力あるかつお客様本位の金融システムの構築に少しでも貢献し、金融市場改革の果実をお客様に着実にご享受いただけるように努めてきたつもりである。ただ、内外を巡る環境変化のスピードも速く、これを実現するための取組みは、不断に続けていかなければならないということで、そういう意味では、ゴールはないという認識を持っている。したがって、今後も、一会員行として、自由化が進んでいる中における「自由と規律」、これを実践することで、お客様の「利便性」と「信頼性」を同時に実現できるように、しっかりと取り組んでまいりたいと思っている。


(問)
 郵貯銀行から、全銀ネットへの接続要望について非公式に打診があると聞いているが、その点については、今現在、会長のお考えはいかがか。
(答)
 まだ正式な申請はないと思うが、検討課題としては認識している。この問題については、もちろん、利用者の利便性という観点も十分に検討しなければいけないが、利便性の中に含まれる安全性という点についてもよく検討しなければならない課題だと認識している。口座番号の桁数が、7桁と8桁で異なるが、一桁の違いではあるがシステムの方からいえば非常に大きな問題であり、それだけ巨大なシステムが本当に安全に対応可能になるのかどうかということを含めて、十分な検討が必要な課題ではないかと考えている。


(問)
 銀行と証券の分離規制の見直しについて、金融審議会等で話し合いが進められているようであるが、会長としての見解をうかがいたい。
(答)
 基本的な考え方として、わが国経済が中長期的に活力を維持するためには、家計が保有している1,500兆円の金融資産の有効活用、あるいは経済に対するリスクマネーの円滑な供給等が必要であると思う。その前提として、わが国の金融資本市場が内外の市場参加者にとって魅力のある、国際的に競争力を有するマーケットになることを求められていると思う。したがって、金融審議会の国際化スタディグループでは、そのための具体的な検討項目が広く洗い出されたと認識している。
 銀証の分離であるとか、コングロマリット法制の見直しであるとか、金融グループにおける業務範囲、ファイヤーウォール規制の問題、そうしたいろいろな金融ニーズへの柔軟な対応によって、市場参加者にとっての利便性の向上や、グローバリゼーションが進展する中で、わが国市場の国際的な魅力という観点から、検討すべき課題は多いと思っている。したがって、今回の提案は重要な提案と認識して、今後議論が深められることを期待している。


(問)
 夕張の財政破綻についてうかがいたい。貸手の金融機関はその財政破綻に関して責任はあるとお考えか。
(答)
 夕張の問題も1つの個別案件であるので、個別案件に関するコメントはこの1年間通して差し控えさせていただいているので、ご理解いただきたいと思うが、一般論として申しあげると、地方公共団体向け融資を行う際には、勿論、通常の融資としてのチェックを行ううえに、例えば、議会の予算議決とか、資金使途の公共性などをチェックして判断するというのが基本ではないかと思う。地方公共団体については、夕張市に限らず、私どもの銀行は少なくともそのように行っていると答えさせていただく。


(問)
 夕張市の場合、赤字の穴埋めに一時借入金が非常に膨らんでいたという実態があったと思うが、それは貸手は認識していたと思うか。
(答)
 個別案件なので、その時点で何を認識していたかをこの場で回答することは差し控えさせていただきたいと思う。


(問)
 一般論として、その一時借入金が膨張していることを貸している金融機関は認識できると思うか。
(答)
 一般論として、地方公共団体に限らず融資する際、いろいろなデータを認識して、基本的に預金を融資するわけで、預金の保全という面での責任があるので、そのためにはあらゆる努力をするというのは常識的なことだと思う。先ほど申しあげたとおり地方公共団体に関して言えば、それに加え、議会というのは民意を代表している存在だと思うが、そこでの議決等をチェックしたうえで、どういうことのために必要なことかというようなことを理解しながらやっているということが、一般論である。


(問)
 今月、その一時借入金を夕張市は全額、道の融資を使って返済したが、銀行は一方で全額一時借り入れの返済を受けている。反面、市民には非常に負担がかかっている。これはフェアだと思うか。
(答)
 個別にコメントすることは差し控えさせていただいているが、一般論としては、どこへ返すかは、借手の方が判断してなさることである。貸手としては先ほど申したとおり、お預りしている預金を融資して、そのデューが来ていれば返していただくということになると思う。個別にはチェックする必要がある。一般論であるが。


(問)
 冒頭の話と少し重なるかもしれないが、3月末で終了した2年間の金融改革プログラムの評価であるが、銀行業界から見て評価できる点、まだまだ取組みが不十分であった点、それぞれどのように見ているか。
(答)
 金融改革プログラムは、その前の「金融システムの安定化」というものから「金融システムの活力」へというフェーズ転換を踏まえて、金融サービス立国に向けた改革の道筋を示したものと理解している。そういう意味で17、18年度の2年間に本プログラムに基づいて、金融商品取引法の制定あるいは銀行代理店制度にかかわる規制緩和など、利用者利便の向上や利用者保護の強化に向けた手当てなどが幅広くなされたと評価している。
 ただし、冒頭申しあげたように、利用者満足度の向上に向けた取組みは、どんどん環境も変化し、ゴールというものがあるわけではないと思う。したがって、私どもとしても引続き冒頭申しあげたが、自由と規律の実践に不断に努力してまいらなければならない。また次なる課題も出てきているので、われわれも努力しなければならないと思っているし、政府においても今後そうした検討を踏まえて市場の更なる改革を進めていかれることを期待したい。


(問)
 マネー・ローンダリングの関係で、金融庁が監督指針を変えたと思うが、これをどうご覧になっているか。銀行界としてどういう対応が必要なのかということを教えてほしい。
(答)
 3月13日に改訂された監督指針の内容は、コルレス先やお客様の属性把握の重要性をベースに、今後の管理体制、あるいは研修やマニュアルなどの整備、そういうものを新たに加えられた。そのベースになっているものは、昨年10月のバーゼル銀行監督委員会で提案された諸原則が盛り込まれていると思っている。
 私どもの銀行もいろいろなことを対応してきているが、改めてこういう原則をベースに内部管理体制の強化に努め、かつ現場の対応レベルのアップ、こういうことに今、全力で対応しているところである。


(問)
 先般、生命保険業界が保険金の不払い問題で、初めてどれぐらい不払いがあったとか、将来どれくらい可能性があるという数字を発表して、今日また、金融庁が自民党の部会に出した数字によると、業界全体で350億円を超える規模で不払いがあった、それはまた増える可能性があるということである。一方で、今、販売チャネルの多様化で、銀行の窓販で相当保険を売っているが、スケジュール的に言うと今年の末には窓販の全面解禁ということがもともと決められていて、今年の末ということだから変更がありうるかもしれないが、こういう問題がたくさん起きている中でもスケジュールどおり、今年の末には銀行の窓販を全面解禁すべきだとお考えか。
(答)
 今起こっている問題の関連で言うと、銀行の窓販に関して、保険金不払いの問題に起因して苦情が寄せられているということは、今のところはない。
 ただ、これだけ大きな問題になっていることから、正に金融商品取引法の精神というか、お客様に安心して購入いただけるように、適合性の原則を含めて、商品内容を充分に理解していただいて販売していくということに関しては、金融商品取引法に則った体制を最大限努力してやっている。それは各銀行ともやっていると思うので、直接的に今のところ苦情はないが、今回のようなことも充分に踏まえて対応していくということではないかと思う。


(問)
 窓販の全面解禁ということ自体は、今年の末で問題ないということか。
(答)
 このタイミングで私どもからどうこうということはないと理解している。


(問)
 先ほど1年を振り返って、金融がダイナミックになって、節目の1年だとおっしゃったが、その一方で、国内外で御社などもそうだったが、処分が相次いだと思う。1年を総括して、それについての意見をお願いしたいのと、昨年の末に政党への献金のすったもんだがあったが、お代わりになるということで、全銀協としての方針に変わりがないのかどうか、この点について確認させていただきたい。
(答)
 1年間を振り返って、私どもの銀行も含めて、会員行が行政処分を受けたことは大変遺憾に思っているし、また、私どもを含め、それぞれ真摯に受け止めて、再発防止と内部管理体制の強化に全力で取り組んでいるところである。
 全銀協としては、冒頭の中で触れたが、会員の法令順守に向けた各種ルールやガイドラインの作成、セミナーの開催などの取組みをこの1年間、行ってきたつもりである。会長としては私は代わるが、引続き、全銀協としてはそういう努力を続けていかなくてはいけないし、個別行としては、業務改善計画を着実に履行することは当然として、一層そういう努力を続けていかなければいけないのだと思っている。
 2番目の質問であるが、その時にも申しあげたが、政治献金の話は全銀協としてどうだというよりは、経団連からお話があって、それを会員各行に連絡したということで、全銀協として何か方針を出したという話ではないので、その点は、そのようにご理解いただきたい。


(問)
 最初の方のフォローであるが、この1年に相次いだ背景には何があるというふうにお考えか。
(答)
 個人的意見も加わるが、貯蓄から投資へ、この大きな変化、あるいはグローバリゼーションの進展、そういうものの中に自由化の本番などが、起きているわけであるが、その変化に対応して、やはり、いろいろな内部管理体制その他が充分に対応できていたかという反省はある。したがって、先程申しあげたような、努力をしていかなければいけないということになるわけである。


(問)
 個別企業の話になるが、経営再建中の日本航空について、年度末から年度を越えて、各行で、主要取引行で融資が行われたと、日本航空側も発表しているが、2月に経営再建計画を出して、銀行団としてJALの経営についてどのように評価され、今後の経営についてどのように、何を望み、何が足りないというふうにお考えなのか、そのへんをお話いただきたい。
(答)
 これもやはり個別の対応の質問なので、こういう場で、かつ銀行団というのが何か組まれているわけでもなく、それぞれが判断して対応するべきで、これはこの会社に限らず、全部のあらゆる融資に関してそうであるので、どこの会社についてどうだということをこういう場では差し控えさせていただきたいと思う。


<会長>

 最後になるが、この1年間、全銀協会長職を務めるにあたっては、金融記者クラブの皆さんをはじめ、多くの方々にたいへんお世話になって、この場をお借りして感謝申しあげる。
 来週には、三井住友銀行の奥頭取が新会長に就任される。皆さんご承知のとおり、奥頭取は卓越したご見識をお持ちであって、強いリーダーシップで銀行界を引っ張っていただけるものと確信している。奥新会長への一層のご支援をお願い申しあげて、私の最後のご挨拶とさせていただく。
 1年間ありがとうございました。

別添資料:畔柳会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)