2007年12月18日

奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)

 

斉藤専務理事報告

 本日の理事会において、お手許にリリースしたとおり、来年度の次期副会長を内定した。
 なお、次期の副会長の正式な選任は、9月の本席上で内定をご報告した次期会長と同じく、来年4月の理事会において行われる。また、担当委員会についても、正式な決定は次期正副会長が正式に選任された後の正副会長会議において行われる予定である。

 

会長記者会見の模様

(問)
 今年最後の記者会見ということで、2007年を振り返ってこの1年をどのように感じているのか会長の考えをお聞かせ願いたい。
(答)
 この2007年は、十干十二支で言うと「丁亥」という年で、物事が非常に荒れる年であり、そのとおりになってしまったのかなと思う。日本海側で二つの大きな地震が起きたり、政治では7月の参議院選挙で与党敗退とその後のねじれ現象、夏場には今度は市場でサブプライム問題が起き、それが続くといったことがあり、この年は変化のスピードというものが従来に増して速くなり、また変化の幅というものが従来にも増して非常に大きくなったというように感じている。こうしたなか、やはり「不確実」、「不安定」、「不透明」といった3つの「不」というものが、目下足元にあるが、これがどういうような形で安定に向かっていくのか。また、個々の金融機関で考えていくと、このようななかで揺らぎのない経営をどのように作りあげていくのか、そしてお客さまに安心して信頼される金融機関というものをどうやって作っていくのか、こうしたことを改めて感じている次第である。
 今年の全国銀行協会の活動を見ると、不良債権問題には金融機関は大体2年前に目処をつけており、正に回復から拡大へというステージのなかで、今までのベクトルの方向を外へと向けて動き出してきた年である。この4月に申しあげたとおり、2つのテーマ、すなわち「金融サービスにおける安心と信頼の確立」、そして「わが国の金融・資本市場の活性化と競争力の強化」を掲げてやってきた。この「安心と信頼」の強化という意味においては、7月に反社会的勢力介入排除に向けた取組みの強化という決議をし、協会内の検討部会を使って年度内に方向性を作り、来年度にはその具体化に向けて動いていくという一つの流れを作ることができた。また、年金の問題においては、過去のお客さまのデータの調査という、お客さまに向いた対応について申し合わせをすることができた。また、9月末には金融商品取引法が施行され、それに対するいろいろな事前準備を全銀協としてやってきた。また、今後も、安心と信頼のためにいろいろな提言、または対応をしていきたいと思っている。
 もう一つとして、皆様は民営化とおっしゃいますが、10月1日に郵政が民営化に向けたスタートを切ることができた。比較的スムーズにスタートが切れたということで、われわれも金融マーケットの乱れがなかったスタートということに安心している。ここに至るまでの関係者の皆さんのご努力に敬意を払うとともに、やはり郵政の民営化に向けた動きというものはしっかりと、今まで全銀協が主張していることに従って、やっていただきたいと思っている。また、規制緩和では、12月22日に保険商品の最終的、全面的な窓販の解禁がなされるという大きな前進があった。ワンストップショッピングに向けた最終的な形が整ったのではないかと思っている。
 一方で、「わが国金融・資本市場の活性化と競争力強化」というテーマについては、特に銀証の間のファイアーウォール問題について、金融審の第一部会においていろいろご議論いただき、情報共有の問題については、法人についてオプトアウトを前提とした提言がなされている。また、銀証の間での役職員の兼職禁止についても、これを緩和するという方向性が出されたということで前進が見られ、まだやらなければいけないこともあるが、私どもとしては世界的なスタンダードにかなり近づいてきたという評価をしている。こうしたことで、この一年間、まだ年度ベースでは一年間と言えないが、非常に大きな変化があったが、そのなかで全銀協の仕事としては着実に一歩一歩、前へ進んできたという評価をしている。


(問)
 サブプライムや米国経済の先行き等懸念材料はあるが、来年2008年の景気についてどのように見通しているかを教えてほしい。
(答)
 景気の現状は、企業部門を中心に底堅い回復をしているということではあるが、一方で景気の下振れ要因が幾つか出てきており、足元、スピードが減速しつつあると思う。その下振れの原因は何といっても、一つにはサブプライムの問題が、市場に非常に影響を及ぼし、それが長引いていることである。二つ目は原油高であり、これが企業業績に悪影響を及ぼしてくる。増収減益といったような傾向がこのところ見られているが、そうしたことが景気の足をどのようにマイナス要因として引っ張ってしまうのか。サブプライム問題も、当然、円高について関係してくるわけであり、原油高、円高といったものが、今後の企業業績、景気に悪影響を及ぼしてくる。それからもう一つ、これは時間的な問題であるが、建築基準法の厳格適用ということがある。これ自体は、まさに購入者、居住者の安全・安心を強化するという意味で大変大事なことであるが、その厳格適用というものが、あまりにも予想以上に大きな影響を及ぼしており、住宅投資は、単に住宅を作るということではなくて、耐久消費財やそれにつける設備ということで、裾野の広い影響があるわけであり、当面成長の足を引っ張るであろうと思われる。この1年、前半は比較的、輸出そして設備投資で引っ張られ、企業部門を中心に推移してきたわけであるが、後半はそういった要因で年度内の成長は鈍ってくる。当初の成長率見通しは年度で見て2%強というところが多かったが、今の下振れ要因を考えると、1%から1.5%くらいの差があるが、1%台とするエコノミストの見方が強くなってきている。2008年は、スタートはそういうことから始まる。したがって、景気の見通しについてもかなり回復は遅れる。住宅問題も含め、景気の回復、成長が元のペースに戻っていくということになると、年の後半になっていくのではないかと見ている。


(問)
 米国のサブプライムローン問題に関連して、米国の大手行が計画を進めている救済基金への協力が求められているが、個別行として、現時点での資金協力への対応、考え方、方針についてお聞かせいただきたい。
(答)
 個別行の問題として回答する。とはいえ個別案件の話であるので申しあげるには、まだ限界がある。各種報道を踏まえ、冒頭に申しあげておきたいのは、本件はサブプライムそのものの問題ではなく、サブプライムを除外した金融商品について、一種の凍結をする、それに際してのファイナンスのバックアップラインを供与してほしいというもの。ただし実質的には、かなり長期間、10年間の与信につながるという問題である。したがって、私どもとしては本件について、いくつかの理由できわめて慎重かつ十分に検討しなくてはならず、現在はその過程にある。慎重かつ十分にということの一つは、われわれのホームカレンシーではないということである。今、マーケットにおいて、流動性がかなりタイトになってきている。したがって、向こうから要請された金額をコミットするのは、アベイラビリティ・リスクにつながる面も考えていかなければならない。対象資産についての内容は、サブプライムローンやそのCDOははずされるということであるが、頼りになるのは格付けであり、格付けの透明性とか信頼性について、ここしばらくの経験値からいって、われわれとしてどれだけ確信できるのかという問題もある。一方でSIVの連結化をそれぞれの銀行がやっているケースもあるので、まだまだいろいろな意味で流動的なところがある。市場の反応も考えなくてはならない。われわれとしてはコマーシャルベースで、慎重かつ十分に検討を続けているところである。


(問)
 サブプライム関連の基金についての確認であるが、19日が回答期限となっていると思うが、それまでに回答するお考えか。それとも、もう少し先延ばしするお考えか。また、50億ドル丸々の回答は難しいけれども、ゼロ回答はないというお考えなのか。そのあたりを確認させていただきたい。
(答)
 一応期限はあるが、それまでに十分な検討、私ども内部の、アメリカと日本での検討が進まなければ、延ばしてもらうこともありえるし、答えはそれまでに出す場合もあれば出さない場合もある。「NO」という答えを必ずしも排しているわけではない。まだスキームも環境も流動的であるため、発言としては、そういう言い方に止めさせていただいている。


(問)
 マネー・ローンダリング対策についてお伺いしたい。来年、マネー・ローンダリング対策関係の国際機関が、日本の金融庁や金融機関に対して審査・ヒアリングをするとのことであるが、日本の金融機関について言えば、昨年、アメリカの銀行監督当局から、今年に入っては金融庁からもマネー・ローンダリング対策に関して処分が出ている。今回のヒアリングへの対応策や見通しをどのように考えているか教えていただきたい。
(答)
 国内で言うと、リスクベース・アプローチということで監督指針が改正され、また当協会においてもそれに基づいたガイダンス・ノートを発牒している。マネー・ローンダリング対策というのは、FATFという国際機関が、いろいろな意味でのリスクを排除しなければならないということで、審査やヒアリングを実施するということを聞いている。
 したがって、ヒアリングを受けてみないと、われわれとしても、今までいろいろなことをやってきているが、FATFの基準、目線から見て、どういう評価を受けるのかは、正直に申しあげてわからない。われわれは個別行として努力を続けていくし、個別行として、ニューヨークで様々な指摘を受けたということもあり、対策もとっている。それが必要かつ十分なものであるかどうかは、今度のFATFの日本でのヒアリング・審査のなかで明らかになってくるわけであり、それに対し、さらに対応すべきところがあれば、われわれとして対応していくということではないかと思う。


(問)
 今回のサブプライム基金の話を見ていると、日本のメガバンクがアメリカになめられているのではないか、という感じがする。少なくとも、そもそも論として50億ドルという信用供与は、米銀との比較からしてもおかしな数字だし、そういった要請を出すだけで株価が下がるのは目に見えている。実際、メガバンクの株価が、特に昨日、ある銀行はほとんど暴落のような感じになっている。こういった要請に対して、会長ご自身、不快感とかやり場のない怒りとかはないのか。
(答)
 なかなか刺激的なご質問であるが、私としては、やはり慎重かつ冷静に検討していく。いろいろな見方があるかと思う。今、言われたように50億ドルというからには凄い金額であり、それだけにこの問題は大きな問題ではないかと思う。サブプライムの関連は、自分たちでそれぞれの個別行がしっかりと処理していくが、今、問題になっているのはその他の本来流動性があるべき金融商品をどういう形で、一旦凍結して、流動性の回復を待つかということであり、発想自体は日本でも株式保有機構とか、税目的のため少し性格が違うが、共同債権買取機構など、よくあるケースである。そういったものを民間でやりましょうということなので、そのスキーム自体が何か感情的になる話ではない。ただ、先ほど申しあげたように、われわれのホームカレンシーは円であって、やはりドルにそれだけのアベイラビリティがあるのかどうかということを考えると、50億ドルという金額をわれわれのオペレーションからみるなら大変大きな金額だと思っている。大変期待されるのは嬉しいことであるが、期待と実力のディスクレパンシーが結構あるなという感じはしている。だからお答えとしては、慎重かつ十分かつ冷静に検討していく。


(問)
 サブプライム基金でたびたび申し訳ないが、冷静かつ慎重にご検討されているということだけれども、やはり期待に応えるというだけではイエスということは言えないと思う。何らかのメリットと兼ね合わせてご検討されるということなのか。
(答)
 これも一種の与信だから、与信というのは、常に資金使途、そしてその回収性と、同時に経済性、いわゆる収益になるかどうか、こういったことを考えて検討する。個別行としてのメリット、そして金融業界としてのメリット、そういうもの全てを考えたうえで判断していく必要がある。今回の判断そのものはメリットだけで考えるし、いわゆるコマーシャルベースで考えて良いというようにわれわれは考えているのだが、その他の要因で重要なことを見落としていないかどうかということも、考えないといけないので、先程来言っている言葉を使わせていただいているということである。当然、メリットという意味では、経済的なメリット、そして金融市場安定化へのメリットというのが本当にあるのかどうかということも含めて考えている。


(問)
 保険の窓販の解禁のことで教えてほしい。今回の解禁にあたって、各銀行がどのような姿勢で臨むべきかということと、保険の銀行窓販について、今後の成長性をどのように考えているのか、改めて教えてほしい。
(答)
 各銀行の対応というのは、新たに保険販売という意味では最終的な緩和がなされたわけであり、基本的には、お客様の信頼、信用、そういったものを失わないように、そして、お客様からのいろいろな質問というものが製販のところできちんと橋渡しができて、卑しくもたらい回しというようなことのないようにしっかりとやっていかなければいけないと改めて心しているところである。ワンストップショッピングとか、銀行の側から見ればいろいろなメリットというものを強調できるかもしれないが、購入されて、特に終身保険ということになると長いものが出てくる。それから、第三分野についても、ついこの間までいろいろな不払い問題というものが起きたわけである。そういったことに対しては細心の注意を払って、銀行窓販が何かそういう問題を改めて惹起することのないよう、しっかりと管理をしていきたいと思っている。
 成長性というものについては、正直言ってなかなか分からない。日本が少子高齢化社会のなかにおいて、全体としての生保、損保いわゆる保険商品の将来性というものをどう見るかということがあるかと思う。ただ、新しい銀行のチャネルというのが代理店業務として新たにチャネルを開拓しているのは事実だと思う。また、そのチャネルに合わせた新しい商品が開発されているということも事実である。そういったお客様のニーズに合わせた銀行チャネルとしての商品、そして、単に保険商品だけではなくて、投信とかそういったものを含めた総合的な金融商品の販売を、ワンストップショッピングを作りあげていくという完成型に向けていくので、それぞれの分野において私どもは成長性はあるというふうに見ている。ただ、保険商品については、急がず、慌てず、しっかりと、という感じで根付かせていくようにしたいと思っている。


(問)
 先ほどのサブプライム基金の件だが、3メガ以外の邦銀に対する依頼があったかどうか、何か聞いている話があれば教えてほしい。あと、米国の財務省からこの話がきていると聞いているが、日本の金融庁から何らかの指導やアクションはあるのか。
(答)
 3メガ以外に何か依頼があったかについては、存じあげない。金融庁に対しては、私どもはそういう依頼があったということは報告している。金融庁とは会話はしているが、特に何か依頼があるものではない。ただ、情報の交換だけである。