2008年3月18日

奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤専務理事報告

 事務局から3点ご報告する。
 1点目は、本日、理事会に引続き、総会を開催し、お手許に配付した資料のとおり、20年度の理事を選任した。任期は4月22日からとなる。会長、副会長については、4月22日に開催する理事会で選任する予定である。
 2点目は、本日の理事会において、「電子記録債権の活用・環境整備に向けて」と題する報告書を取りまとめた。全銀協では、昨年6月の「電子記録債権法」公布以降、これを受けて電子記録債権の活用、環境整備に向けて検討を進めており、お手許の資料のとおり取りまとめている。この報告書は2部構成となっており、第1部では、適切な金融インフラの整備の観点から、電子債権記録機関のあり方について検討した結果を、第2部では、銀行実務の観点から、重要と考えられる業務上の諸論点について検討した結果を、それぞれ取りまとめている。なお、今後は、銀行界が中心となって記録機関を設立することとし、電子記録債権の活用、環境整備に向けて精力的に取り組んでいくこととする。
 3点目は、本日の理事会において、新たな金融犯罪防止啓発キャンペーンを実施することを決定した。全銀協では、18年10月から「金融犯罪ゼロキャンペーン」を実施し、銀行利用者への周知に努めてきた。また、本年2月には、盗難通帳やインターネット・バンキングによる不正払戻しへの対応に関して申し合わせを行っており、このような形で預金者保護の観点からの対応を行ってきているが、振り込め詐欺事件について新たな手口も発生するということもあり、銀行を利用した犯罪が依然として絶えないという状況である。こうした環境を踏まえ、金融犯罪を未然に防止し、安心して金融サービスをご利用いただくことを目的として、お手許の資料のとおり、本年4月から1年間を目処に、新たな「金融犯罪防止啓発キャンペーン」を実施することとした。
 事務局からの報告は以上である。なお、本日、ご報告した内容について、さらにお知りになりたい点があれば、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。

 

会長記者会見の模様

(問)
 午前中であるが、日銀総裁の政府案として、元大蔵省事務次官の田波氏が提示され、午後、これから所信聴取という段取りとなっているが、まず田波さんという方が出てきたことについてどう見ているか。今後、同意されるかどうかわからないが、こういった状況に日銀人事がなっていることについてどう見ているか。
(答)
 日本銀行総裁候補者について、1月、2月と連続してこの記者会見の場で質問があり、私自身はこういう要件を備えた方が良いのではないかと申しあげたことは皆さんの記憶にあると思うが、そうしたなかで武藤日本銀行副総裁が総裁候補となられた。それが、野党の不同意ということで、私はその結果については非常に残念であるし、不同意の理由も読ませていただいたり、聞いたりしているが、納得がいくものかどうかについては非常に疑問を感じている。実業界、金融界に籍を置く者としても、その理由については、なかなか説得力がないのではないかと感じており、個人的には失望した。
 金融資本市場が大変厳しく、また世界的に困難な状況で、日本銀行総裁という大変重要な役目を果たすべき席が空白になってしまうことを回避するために、政府は大変考え抜かれたうえで田波さんを候補にもってこられていると思うし、私も個人的には非常に考え抜かれた人選だと思っている。是非、まとめていただきたい。一日たりとも総裁職に空白を置かないでいただきたい。田波さんはそういう意味では、経験からいっても、実績からいってもその職に十分値する方だと思っている。
 空白を避けるべく、迅速にご決定をいただきたいと思う。


(問)
 明日で、福井総裁の任期が丸5年経ち、切れるということで、福井総裁の5年間の業績なり、金融政策運営についてどのように評価されているのか。
(答)
 福井総裁が明日5年間の任期を終えられるということで、5年間に亘るご活躍、ご努力、ご尽力に対して心から敬意を表したいと思う。
 福井総裁がご就任された2003年4月は、数字の上では、2002年2月から景気の回復が始まっているということだが、実体的に見るとデフレの懸念が強まっていたし、2003年4月末には東証株価が最安値になるという、まだまだ大変混乱した時期であり、金融の面から見ても不良債権の最終処理の場面であったと記憶している。金融市場も不透明感が強い時代であり、金融面での指導力が大変必要とされていた時期であったと思う。
 そうしたなか、福井総裁は大変強力なリーダーシップを取り、果敢に量的緩和を継続され、わが国の実体面での景気回復にも、その決断は大きく貢献してきたのではないかと思っている。
 そして2006年には、量的緩和を解除し、且つ、金利ターゲットへの復帰を果たされ、慎重かつ大胆に金利の正常化に取組んでこられたわけである。そうした意味で、わが国の金融市場のかつてないような困難な時期に、福井総裁は日銀法の精神に則り、適時適切に政策運営を進めてこられ、その功績は深く記憶にとどめられるものであろうと思っている。
 ご退任後も、今までのご経験、高いご見識をもって、引き続きわが国経済、金融市場の発展のためにご指導をいただきたいと思っている。


(問)
 外国為替市場で急激な円高が進んでいる。2年7ヶ月ぶりに95円台をつけるという状況が進んでいるが、こういった金融市場の今の状況について、アメリカ経済がかなり減速傾向というか後退局面に入っているという見方もあるが、そういったことも踏まえながら意見をうかがいたい。
(答)
 米国のサブプライム問題というか、金融市場というか、全ての経済状況を含めての話になってくるが、一言で言えば、サブプライムの問題がいろいろなところに飛び火をして実体経済に悪影響を与えてきており、それが明確化してきている状況であると思う。
 米国においては、雇用状況の悪化、消費関連支出の低迷、企業の業況感の後退といったようなことで、景気の減速が明確化してきていると思う。また、金融面では、モノラインの格下げ問題が大きく影響してきている。増資等で格付けを維持しているところもあれば、まだ増資がなされずに格下げに遭っているところもあるわけであるが、やはりなんと言ってもこのサブプライム問題を含めた証券化商品の損失というものを早く確定して、資本が足らないのであれば確りと資本調達して安定化させていくという道筋がマーケットには必要ではないかと思われる。景気対策としては1,500億ドルの財政出動があるが、これは実際にチェックが発送される、税還付が起きるのは5月以降と聞いているので、景気に実際に効いてくるのはかなり遅れてからと思われる。それから、おそらく短期金利の引下げというのが、幅はわからないが、18日に決定されるだろうと見られているが、それも効果が出てくるまでは時間がかかるので、やはり景気の後退をなんとか食い止め、市場の安定化を図るためにあらゆる手立てを尽くしていただきたいと思っている。日本の不良債権問題は、日本の国内において日本の金融機関に集中した形のリスクの処理だったため、世界に飛び火はしていなかったが、今回の場合は米国から欧州地域にも飛んでおり、まず、最初にアメリカで確りとした対応をしていただくことが肝心ではないかと思う。
 一方で、日本の景気であるが、景気の基本的な根幹というものは崩れていないと思う。しかしながら、建築基準法の改正の問題も峠を越したものの、そういった過程において、今度はマンション関連の低迷というか、後退が少し目立ってきている。それから資源高により企業収益が次第に圧迫されつつある。また、円高については、マクロで見ると輸入業者もいるのでGDPに対する影響はさほど大きくはないという試算もあるが、日本の場合は外需依存型の企業が多いので、そこに対する影響は大きいと思う。したがって、日本の景気自体も今言った要因を考えると成長を続けているが、今までのスピードから考えれば減速感が広まりつつあるということではないかと思うし、おそらく今後についても減速感が続いていくであろうと見ている。


(問)
 先ほど会長から、米景気が減速しているとの話があったが、一部では、景気後退、リセッションに入っているのではないかという見方もある。それを食い止めるためには米政府による公的資金なども必要だという声もあるが、それに対する考えをうかがいたい。
(答)
 なかなか難しい判断だと思う。日本の場合は、公的資金というものが銀行に投入されたが、それは、システミック・リスクを防ぐという観点からなされたものである。アメリカはかつて公的資金を使ったことがS&Lであったと思うが、今回については、米国高官の話では考えていないということなので、ブッシュ政権のもとでどうなるかは分からない。今回、たとえば銀行だけではなくて証券会社とかファンドとか、いろいろなところに飛び火しているため、どうすべきかはよく考えてみなければならないが、先ほどあらゆる手段を早めに講じるべきだと申しあげたが、それは、そうした是非も含めて議論をし、そして早めに対応していくことが必要なのではないか、というつもりで申しあげている。


(問)
 先ほどの答えと関連していると思うが、ベア・スターンズなどに見られるように、米国の金融システムの信用創造機能が崩壊しているのではないか、という印象が出てきていると思うが、金融システムが正常化するまでにどれぐらいのタイム・フレームを見ているか。
(答)
 今回の場合、何回も申しあげているとおり、流動性の問題が根底にあると思う。かなり皆、すくんでしまっている。したがって、現実にはクレジット・クランチ的な要素も起きてしまっている。そういうなかで、私は、流動性が再度拡大するまでには、相当時間がかかるのではないかとみている。もちろん、証券会社等の第1四半期決算がこれから続くであろうし、実態をよく見ていかなければならないと思うが、資本増強がどれぐらいの大きさでどのぐらいのスピードでなされるのかということを含めて考えた場合に、それがたとえなされたとしても、実効性をあげていくには、かなり時間がかかるのではないかと思う。ただ、かつての日本の場合と大きく違うところは、今回の場合は、資本を提供する主体が多くあるということである。日本の場合は資本を供給する資本家は、海外からも国内からもほとんどなかった。したがって公的資金に頼らざるを得なかったということがある。今回の場合は、ソブリン・ウェルス・ファンドも含めて、そういったプロバイダーがいるというのは、大きな違いだと個人的には思っている。


(問)
 先ごろ、IMF(国際通貨基金)がサブプライム・ローンに関連する世界の金融機関の損失が78兆円まで膨らむ惧れがあるというような見方を発表した。この場でも、サブプライム・ローンの損失については何回か質疑があったと思うが、今回改めて、IMFの78兆円まで広がる惧れがあるという見方について、どのようにお考えか。
(答)
 なかなか見方というのは難しい。算定の根拠というのがあっての話だと思うので、それを十分承知していない私としてはコメントを控えたいが、日本の経験からしても、損失額というのは、当初からだんだん広がっていくという経験値があるため、70数兆円という数字も、規模からすれば最終損の見込みとしては、まったくありえない数字ではないのかなと思う。ただ、サブプライムだけの話だけなのか、そこに出ている数値というのは、証券化商品、それからたとえば市場の乱れからくるLBOの評価損とか、そういうものをどこまで含んでの話なのか、今回の一連の話から出てきた損失がそうだということなのか、私も十分承知していないのでわからない。


(問)
 直接金融市場にかかわることに関しての質問であるが、先ごろ三井住友銀行が引き受けた新株予約権付ローンについて、住友不動産と住友金属鉱山が発行体だと記憶しているが、これについて直接金融市場の関係者から、一般の株主の利益を侵害する恐れがあるのではないかと指摘されている。東証の斉藤社長も注視したいと記者会見でコメントしており、これは新しい形での持ち合いではないのかと、安定株主対策として発行体がそれを考えて、銀行が引き受けたのではないかという指摘がされている。この件は、どうやって銀行が直接金融市場に関わっていくのか、といった姿勢を象徴するような案件だと思うが、考えを聞かせてもらいたい。
(答)
 全銀協の話とは異なるので、個別行として答えさせてもらう。
 もともとデットとエクイティを含めた財務のニーズが両社からあり、いろいろ細部まで詰めて検討した商品であり、決して持ち合いを考えたものではないということは、はっきりと申しあげたい。ある証券会社さんのレポートを読んだが、ちょっと違うのではないか、勘違いしているのではないかと思う。逆にある証券に精通した方からは、大変よく考え抜かれたローン商品を含めた案件である、全く証券から見ても問題がない、よくスキームとして出来上がった商品である、といわれている。いろいろと誤解もあるかもしれないが、よく検討、勉強していただければ、誤解は晴れるものと思っている。


(問)
 東京オフショア勘定の非課税措置が3月いっぱいで打ち切りとなるが、どういうネガティブな影響があるのか。
(答)
 オフショアの非課税措置にかかる租税特別措置法がこの3月末で切れる。全銀協関連で要望している租税特別措置の延長関係の5つの項目のなかで、われわれが一番心配しているのがオフショア関係である。オフショアの非課税措置が切れてしまうということは、東京オフショア・マーケットの国際的な信認の問題であると思う。本件については、自民党も民主党も、それぞれの20年度税制大綱において、延長ないし恒久化すべきと書いている事項である。私は3月末までに、この問題は解決してくれると思うし、その意味で日本の政治の良識を信じている。


(問)
 もし仮に延長されない場合に、オフショア勘定を持っている外資の金融機関が逃げてしまうとか、あるいはオフショア勘定を利用して資金調達している日本の企業が資金調達できなくなるといった実態的な影響について、どう考えるか。
(答)
 いずれにしても、与党も野党も、延長ないし恒久化で一致している事項である。予算あるいは税制が全然通らないということであればともかく、ごく短期間であればその影響は小さいと考えたいが、実際の影響は予測できない面もあり、そうした空白は生じないと信頼している。短期間といえども悪影響が予想され、マーケットの信認、政治への信認の問題は、少なからずあると思う。経済的な面で言えば、短期間といえども、そうしたことが起きれば資金の逃避が生じる可能性はあるし、絶対に避けてもらいたい事態だと思う。


(問)
 日銀総裁候補の件だが、会長は1月、2月の記者会見では、「勉強する暇はない。金融政策に精通している方が望ましい」という趣旨の発言をされている。田波さんは、国際協力銀行にいるが、日銀の経験はなく、大蔵省時代においても金融政策、金融畑の経験はそれほどないと聞いている。もし、日銀総裁に選ばれた場合、すぐにつとまるのか、市場では疑問はあると思うが、改めて見解をうかがいたい。
(答)
 少なくとも財政面の経験はおありで、金融という面ではJBICという、海外中心になるが、金融の何たるかに大変詳しく、実務面もご存知な方であり、全く心配ないと思う。もちろん武藤さんが副総裁として昇格するケースと比べると、それなりの勉強の時間は必要であると思うが、それらを受け入れるベースがあり、高い見識と実績を持っている方であり、何ら心配はしていない。


(問)
 新銀行東京について、2003年の全銀協会長の当時三木さんだったが、正式コメントを紐解くと、たとえば「新銀行に損失が発生した場合には、国民の負担に跳ね返ってくる懸念もなしとしない」であるとか、「健全性の確保と民間では取れないリスクを取ることが両立するのか」といったかなり厳しい懸念が2003年当時表明されていたが、今まさにそれが現実になろうとするのか、なったのかわからないが、そういう状況にあるが、奥会長の現状の認識、コメントをいただきたい。
(答)
 当時の三木会長のコメントというのは、まさに先を見た、たいへん適切なコメントであったと思うし、その不安が現実化しているという状況をわれわれがどう判断していくかということになると思う。現在、都議会で議論中のことだから、それ以上のことを申しあげる立場にないが、当時三木会長がそういうコメントをされた背景というのは、やはり官から民への動きというのは当然の流れであるのに対して、官自体が民の仕事を取っていくということにあり、当時のオーバーバンキング等々のなかで、どういうビジネスモデルを展開するかということについて、私個人としても非常に疑問に感じていた。
 東京都には信用保証の機構がきちんとあって、中小企業への保証制度があるなかで、あえて銀行業に入って来られることに、個人的には非常に疑問を感じていた。全銀協の会長としても、おそらくそのような意味で、先行きについていろいろとご懸念があったのではないかと思う。そうしたなか、2003年から5年後、このような事態が現実に目の前で起きているが、都議会の議論を私どもとしても見守っていきたいと思っている。


(問)
 コシ・トラストという不動産会社の関係で、多額の焦げ付きが発生しているという報道が先週からあり、三井住友だけでなくて、三菱UFJでもあったというような内容であるが、貸出競争が非常に厳しいなかで、審査が甘くなっているのではないかという懸念もあると思う。この問題についてどのようにお考えになっているのか。
(答)
 非常に遺憾な事態であり、私どものお取引先、預金者の皆様に対し、いろいろご心配をお掛けし、申し訳なく、深くお詫びを申しあげたいと思う。
 原因については、やはり今、おっしゃったように、与信能力が少し落ちているのではないかという感じを持っている。また、それを早めに見つけ出して対応するという部分についても問題があったのかということで、審査面、それから管理面の双方において、二度とこのようなことのないよう、今後しっかりと対応を進めていきたいと思っている。
 本件は、個別の問題なので、あまり深いコメントは差し控えたいと思うが、銀行では各営業部に権限を与えており、本件は各営業店の部長に与えた極度のなかでの出来事であったことが、一つの理由になっている。そこでの与信審査能力、それから管理能力に対して、本部としてどのように横串を入れるかということについても反省をしなくてはならないところがあると思っている。この辺を、今後、しっかり対応していきたいと思っている。


(問)
 先ほど奥会長が、今起きている問題はサブプライム問題というよりは、証券化商品の問題になってきているといわれた。メガバンクだけでも数兆円規模の外貨建ての証券化商品を持っているようであるが、今後邦銀でもさらなる損失が出るかどうかについてご意見を聞かせていただきたい。
 もう一つは、米国の方でも、ベア・スターンズでも見たように、潰れそうになった金融機関も出てきているので、もしベア・スターンズのような金融機関が実際に潰れたとしたら、日本の金融システム、邦銀も海外で結構貸出もしているので、どういう影響が考えられるかについてご意見をお聞かせ願いたい。
(答)
 証券化商品で、今回の場合、影響はサブプライムの一次商品から、二次商品に広がっていったわけである。そのようなものを持っているかどうかについていえば、昨年12月末での本邦の金融機関についての調査は金融庁から説明があったとおりであって、関連の損失が、たしか評価損と減損を含めて6,000億円という数字が記憶にある。それについては若干動く可能性はあるにしても、しっかりと把握されているわけで、大きく増大することはないと思う。それから、業績、資本、そういった財務への影響というのは限定的だという金融庁のコメントどおりと思っている。
 二番目のご質問の話は、仮定の話なので、なんとも申しあげられないが、証券会社であろうと金融機関がもし破綻するということになれば、日本の銀行、金融機関に対する影響もかなりあるのではないかと思う。それが一つだけでなく、アメリカ、またはヨーロッパにおいて、うわさがうわさを呼んで連鎖していくことを、私は一番おそれているが、マーケットは常にそういう部分を持っているから、そうしたことがまずないように、各国の当局はしっかりとグリップしていただきたいと思う。日本の銀行といえども、米国、欧州の金融機関、証券会社には与信をしており、回収不能になれば影響は当然あると思う。われわれ、特に3メガや、証券会社といえども大手は、欧米で金融機関、証券会社との取引はそれなりにあり、そうした意味では影響がないということは言えない。だからこそ、やはり早め早めに各国当局は未然に防いでいかなければいけないと思うし、今回のベア・スターンズについてもJPモルガンチェースが早めに対応をしたことは、マーケットを落ち着かせるという意味で大変良い動きであったと思っている。


(問)
 日銀総裁人事の話に戻るが、先程空席は避けるべきだという話があったが、一度不同意になり、今回の提案もどうなるかわからない現状で、仮に明日の任期でまた不同意となって空席になった場合、金融市場が混乱しているなかで、どのような影響が出ることを懸念されているか教えていただきたい。
(答)
 関係者が最大限努力されるから、そういう事態は避けられるものと思っている。それが実現しなかったときの影響は、具体的に申しあげる立場にないので、今問われてもすぐに答えられないが、日本の政治に対する不信感、そこから経済・市場に対するネガティブな影響が起きるのは当然である。今の大変難しく、ちょっとしたことでも増幅されるような金融情勢・マーケット情勢にあって、そうしたことがあってはならない。日本発で何か新しいそういう不安を起こしてはいけないと思う。


(問)
 今の質問に関連するが、日銀総裁の空席が現実味を帯びたり、立法府がなかなか物事を決められないという状況が続いている。暫定税率でも同じようなことがいえると思うが、そうした政治状況が、足元だけでなく、もう少し長い目で見て日本の経済の足を引っ張るリスクや懸念について、どのような認識をお持ちか。
(答)
 日銀総裁の問題一つとっても、予算についても、決まらなければどんどん遅れるわけであり、経済が重要な時期を迎えているときに、こうしたことを避けなければいけないということは十分わかっているはずである。
 国際的にも信認の問題、信用の問題、日本のガバナビリティの問題、ということに対して大きなクエスチョンマークがつくということは、実業界に身を置く者として、そして一国民として、避けてほしいという気持ちが立法府にどう伝わっていくかという問題ではないかと思う。そうした気持ちと、今行われている政治の、いわば駆け引きの落差があまりにも大きすぎる。もしそうしたことで景気が後退したり、マーケットが乱れることがあったとすれば、その責任は誰が取るのかということを十分考えていただきたいと思う。そうした状態を作ったのは、投票者である国民であるということも事実であるが、やはり現在の状況は大変厳しい時期だけに、政治に携わる皆さんはしっかりと認識して、誤った方向に行かないようにしてもらいたいと思う。

別添資料:奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)