2008年4月17日

奥会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤専務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様

(問)
 この一年を振り返って感想を聞きたい。
(答)
 早いもので一年経ったわけで、いろいろなことがあった。波乱の年であったと思う。
 一年を振り返ってみると、われわれ金融界にとっては、長く続いた不良債権問題がはるか後ろの方に去り、新しいステージへ進んでいく、そしてわが国の金融・資本市場の活性化、国際化、そういった取組みへ大きく踏み出した年であったと思う。
 しかし一方で、経済面では、米国のサブプライム問題の顕現化をきっかけとしたマーケットの大きな乱れ、そしてマネーの流れの変化から来るところの原油高、資源高、円高といった動きのなかで、実体経済への変調も惹起してきたということではないかと思う。
 一方、わが国の政治面では、衆参のねじれが、国会のなかでいろいろな形で影響を及ぼし、3月、4月の動きを見ていると、国民生活にも影響を及ぼしかねない状況となっている。
 そういった意味で、まさに不確実、不安定、不透明、3つの「不」の付いた厳しい一年になったと思うし、これからもこの状況がすぐに明るい、前向きなものに変わるということではない。これを前提にいろいろと考えていかなければならないと考えている。
 私どもの全銀協の活動としては、昨年4月の会長就任の際に、私は、お客さまの視線・目線に立った活動を心がけていきたい。そしてお客さまの評価・信頼を得ながら、この新しいステージを進んでいくための基礎となる年にこの一年をしたいと申しあげたかと思う。
 そうした観点から、19年度の全銀協の活動の目標というものを2つ設定した。一つは、「金融サービスの安心と信頼の確立」、そしてもう一つは、少し大きな課題であったが、「わが国金融・資本市場の活性化と競争力の強化」の2つを掲げ、いろいろな取組みをしてきたわけである。
 少し具体的に振り返って見ると、まず第一点目の「金融サービスにおける安心と信頼の確立」については、「貯蓄から投資」への流れのなかで、お客さまが安心・信頼して銀行取引ができる、そのための整備を行ってきたわけである。
 7月には、年金記録問題に関し、お客さまの立場に立って、真摯に対応をしようということで、全銀協のなかで申し合わせをした。また、同時に、「反社会的勢力介入排除に向けた取組みの強化」についても決議を行った。
 そしてその後、9月に大きな制度変更となる、金融商品取引法が施行されたが、それに至るまでの間、そして事後についても、円滑に法の施行が進むように会員向けの様々なサポート活動、お客さまへの広報活動ということに心がけて取り組んできた。また、この法律で定められた認定投資者保護団体をこの全銀協のなかに設置することも決定した。
 さらに、今年の1月に入ってからは、耳の不自由な方、外国人の方等への、いわばバリアフリーということになるかと思うが、これをソフト面から支援するために、いわゆる「コミュニケーションボード」を作り、銀行以外の金融機関の皆様にも配付をさせていただき、既に5万枚を超えるボードが利用されていると聞いている。
 加えて、2月には、預金者保護法の対象となっていない盗難通帳およびインターネットバンキングの犯罪被害の補償について申し合わせを行い、金融犯罪に対する社会的問題への自主的な取組みを行ってきた。
 次の大きな二点目の「わが国金融・資本市場の活性化と競争力の強化」についてであるが、これは、グローバルに展開している企業を含め、一元的かつシームレスな金融サービスを提供することへの期待が高まっており、利便性を高めることについて、われわれはいろいろと努力をしてきた。
 そういったなかで、金融審議会における建設的な議論を得ることができ、12月には、一つは保険の窓販が予定どおり全面解禁され、長い間いろいろと要望してきた金融商品のワンストップチャネルでの販売が実現し、お客さまにとっての利便性が一段と向上したと思っている。
 もう一つは、銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直しについてであるが、これも大きく前進し、同時にコモディティデリバティブの現物取引、それから排出権の問題、そしてイスラム金融、こういったことも含め、銀行の業務範囲の拡大についても道筋がつけられ、3月には、金商法等の改正法案が国会に上程された。
 これらの見直しは、お客さまの金融ニーズが一段と高度化・多様化していくなかで、わが国の金融産業の国際競争力の向上という意味で、大変タイムリーな改革と捉えている。今後、こういったグローバル化のなかで、他の国との制度面でのイコールフッティングが益々整備され充実していくことが、大変期待されるところである。
 それから、前にも申しあげたが、税制改正の面で非常に心配していた5つのいわゆる租特措置について、なんとかぎりぎりに2ヶ月の延長が認められた。東京オフショア市場の問題や、外債レポにかかる租税特別措置であるが、これがなんとか回避された訳である。今後については、これは与野党意見が一致している訳なので、是非恒久化に向けて、両党の合意形成に努力していただきたいと思っている。
 それから、将来に向けた新しい取組みについてであるが、そのなかで特に触れるなら、電子債権記録機関の設置について決定したことがある。ペーパーレス金融決済システムの構築に向けて、第一歩を踏み出したと思う。実際の実現には、まだまだ時間がかかると思うが、今後、それに向けた議論、具体化を進めていきたいと考えている。
 これまで申しあげたこととは次元が異なるが、今年度にあった最大のイベントは、公的金融改革、とりわけ昨年10月の郵貯民営化であると思う。郵貯民営化という言葉が、その字句どおり正しいかどうかは、私は前に申したとおり疑問があり、あくまで官営から官有への形態変更であると思うが、まずはスムーズにスタートできたということは、通過点であるが、評価している。
 今後、郵政改革本来の目標を達成していくためには、まずは規模の縮小が大きな問題である。しかも、規模の大きさ故に経営管理が問題となることがないよう、縮小と経営管理の充実をしっかりとやっていただければと思う。官有ということになると、株主責任という観点からは、実質的に政府が100%を出資する株主であるので、私どもが従来から主張している暗黙の政府保証ということになるかと思う。何か起きたときに、政府として株主責任を求められるということは、東京都が新銀行東京に追加出資を行った例を見ても、やはり暗黙の政府保証を期待するということになるかと思う。この暗黙の政府保証の下で不公正な競争が行われることのないようにしていくことが最重要課題だと思っている。
 関連して、ゆうちょ銀行の全銀システムへの加盟問題についてであるが、昨年来、特に昨年秋からの第三者評価等により、主要な課題に対する対応方針等についても実務的な検討は終了したと考えている。したがって、ゆうちょ銀行から正式に加盟申請を受理したうえで、今後内国為替運営協議会において加盟審議を行う予定となっている。
 こうした流れのなかで、この平成20年度を展望すると、今年度は先程まで申しあげたような厳しい流れがさらにしばらく続くと思う。そうしたなかで、今まで以上に銀行が、その使命・役割を発揮して、お客さまに対し、揺ぎのない信頼を勝ち得ていく努力を続けていかなければならない。そうすることが、わが国の金融・資本市場の発展に繋がると思っている。
 私ども全銀協は、業界を代表する立場として、その前提となる自由な競争の促進とお客さまに安心していただける環境整備について、不断の努力を続けてまいりたいと考えている。
 最後になるが、この一年間、全銀協の会長を務めるにあたり、ここにお集まりの皆様をはじめとして、全銀協職員の皆様、そして関係者の皆様に大変支えていただいた。改めて厚く御礼申しあげる。
 来週からは、みずほ銀行の杉山頭取が全銀協の会長に就任されるわけであるが、ご承知のとおり、杉山頭取は、豊富なご経験と実績をお持ちで、かつ大変卓越したリーダーシップをお持ちの方である。どうか、引き続き杉山新会長への一層のご支援をお願いして、私の一年の回顧とさせていただきたいと思う。
 本年一年、大変ありがとうございました。


(問)
 郵貯に関してであるが、預入限度額1,000万円を撤廃することを郵貯側が求めており、全銀協が主張する規模縮小と方向性が食い違っているように見えるが、この点を会長はどのように受け止めているか。
(答)
 さきほども触れたとおり、郵貯は180兆円を超える巨大な規模を有しており、官から民への、民間市場への移行を円滑に進めるためには、規模の縮小が大前提になると思う。規模の縮小と、民間企業になるための経営管理のシステムを有効に動かしていく、作り上げていくということを、並行して行っていくことが非常に重要と思う。
 加えて言えば、暗黙の政府保証、実質的な100%の政府保有会社ということであるから、これを民というためには、一定のサブスタンシャルな保有を手放して民に移していくということにならない限り、民とは呼べないわけである。官有というものの実態が解消されるまでは、私どもは流動性の預金1,000万円という枠の解除はすべきではないという、従来の主張をそのまま続けてまいりたいと思っている。


(問)
 昨日、政府がイギリスの投資ファンドのTCIにJパワー株の買い増しを制限する勧告を出したが、そういった勧告などを含めて保護主義政策的な動きが広まっているように思えるが、こうした流れについてどうお考えか。
(答)
 私は決してそうした流れだとは思わない。JパワーへのTCIの20%引き上げという案件については、外為審の特別委員会のなかで幅広く議論された結果であって、その結果については、私は妥当だと思っている。個人的にも、Jパワーというのは、いわば公共事業、電力、発電、送電、将来的には、原子力発電を計画しているという、我々の生活の根本にかかわる企業であるから、外為審の原則から見ても例外的になるであろうし、OECDの自由化のコードから見ても例外的なものになるというのは、極めて合理的な考え方ではないかと思う。
 むしろ、TCIがなぜそこまでJパワーに拘るのか、聞いてみたい。投資というのは、いろいろなチャンスがあるわけであるから、これ一つをとってなぜそこに拘るのか、むしろいろいろなチャンスがあるのだから、そういうチャンスを活かせばいいのであって、何もここに集中して拘る必要はないのではないかと、個人的には思う。


(問)
 先日、G7で発表されたFSFの金融機関への提言について、邦銀を含めた金融機関に対して、証券化商品を厳しい基準で償却して見積もって開示するよう勧告されたと思うが、そのような勧告をどのように受け止めているか。またビジネスへの影響をどのようにお考えか。
(答)
 証券化商品の開示について、詳細は承知していないが、すでにかなりの部分を開示してきており、日本の銀行にとって、大きな影響が出るとは思っていない。今までも有価証券の開示、証券化商品に関する自主的な開示を行っており、それを後押ししようとする動きだと思うが、先取りして対応している部分もあり、さほど影響はないのではないかと思う。


(問)
 サブプライム問題に関連して、当初は日本の金融機関は影響が少ないということであったが、みずほフィナンシャルグループでかなり評価損が膨らんでいるという話もあり、サブプライム問題について、日本の金融機関への影響は、未だ少ないというふうに見ていいのか、お考えを伺いたい。
(答)
 少ないか多いかというのは、それぞれの金融機関にとっての相対的な問題だと思うが、影響は限定的ということは、事実だと思う。世の中というのは常に動いているし、マーケットも動いているので、どこまで引当をし、償却をすればということになるかもしれないが、3月期決算においては、日本の金融機関について言えば、相当なところまで対応は終わっている。結果においては、大きな赤字になるわけではないし、連結ベースで見ても下方修正はあったとしても、私としては限定的という言葉の範囲内だと思っている。


(問)
 2つあって、1つは、一年間を振り返ってみると、株式マーケットのところでいうと、銀行株は相当に株価を下げたと思うが、サブプライム問題が限定的であるのはたぶんそうなのだと思うが、それにしてもあまりに大きく下げたなと。これはいったいどういう評価をマーケットから受けたからこういうことになったのかということについて、お考えをお聞かせ願いたい。
 2点目は、銀証間のファイアーウォール規制の見直しや、金融グループの業務範囲の拡大の動きのなかで、個社の話でいうと、要するに証券業務に対するビジネス・チャンスが出てくるのかなというように思うが、そうしたなかで、大和証券SMBCというビークルで引き続きこの大きなビジネス・チャンスを乗り切れるのかどうなのか。何か考えがおありか、お聞かせ願いたい。
(答)
 まず最初のご質問だが、株式マーケットのことについては、私もプロではないため的確な答えはできないし、的確な答えもないのではないかと思う。確かに日経平均の下げとの関係においては、銀行株がアンダー・パフォームしたことは事実だと思う。米国におけるサブプライム問題、金融機関の大赤字や減益が続出したこと、また、証券会社についてもベア・スターンズが救済されたことなど、今まで金融を巡るマーケットが非常に動いたことや、さらに引き続き何か起きるのではないかといった懸念が、やはり投資家のなかで金融株についての売り要因の一つになった。それからもう一つは、銀行株を含めて、非常に株数が多く、外国人の保有株も多いことから、海外ファンド等の、流動性対策で、かなり売られたということが、大きな理由かと。もちろん日本の銀行も、限定的とはいえ、当初の見込みからいくと、おそらくボトムラインも下がるであろうから、そのようなことが影響したのではないかとも思っている。
 われわれとしてはこのような状況で良いと思っていないので、今年度、日経平均をアウト・パフォームしていくよう、やはり日常の業務活動をしっかりとやっていかなければいけないと思っている。
 2つ目のご質問だが、個社の話については何とも申しあげられないが、私は今回のファイアーウォール規制の見直しは、銀行にとっては、または銀行系の証券会社にとっては、確かにビジネスチャンスであると思う。ただ、大和証券SMBCと個社の問題として、検討しなくてはならないことが何かあるかというと、まだそこまでは行っていない。やはり今後、いろいろ検討していくということになるであろう。変化があるのかないのかは分からないが、しっかりと検討していかなければならないと思っている。


(問)
 2006年ようやく不良債権の問題が決着が着いたようだが、その時点でサブプライム問題が起きて、そのタイミングで大手銀行全体として、海外での戦略をようやく収益を伸ばしていこうという環境だったが、サブプライム問題が大手の銀行全体の海外戦略にとってどういう影響があったかということについて、ご意見をお聞かせ願いたい。
 こういう問題が、アメリカ、欧州で起こったことで、この問題が起きたから、もう少しアジア中心に銀行の戦略が向かっていくのではないかということも考えられるが、いかがか。
(答)
 海外戦略は各銀行によってそれぞれ同じ言葉を使っていても、やり方は違うので、私が全体の話をすることは、できないと思うが、サブプライム問題が起きたことによって、海外の、いわゆるレンディング、クレジットのマーケットにおいて流動性が不足して、クレジットクランチが起きているということは事実だと思う。一時非常に行き過ぎて、少し戻りつつあるにしても、まだ日本とは比較できないようなスクイーズが起きている。われわれにとってある意味ではビジネスチャンスがある。しかし、われわれも海外でやる以上はファンディングを外貨でしなくてはいけない。そこに、出し手が十分あるのかどうかというような問題があるから、チャンスではあるが、やはり慎重に、しかし前向きにやっていきたいということではないか。
 いま申しあげているのは、コマーシャル・バンキングとしてのレンディング・ビジネスであるが、証券ビジネスということになると、かなり傷んでいるというのも事実だから、これをどういうふうに立ち直らせて、次にいくかというのは、大きな課題ではないかと思う。レンディングのマーケットからいけば、日本の銀行というのは、サブプライムで傷んだとしても限定的なので、そういった意味でのチャンスはある。特に、個別の銀行でいうと、資源関連、運輸関連といったプロジェクト・ファイナンス等が引き続き大きなチャンスであり、日本の銀行は貸出余力がある。そういったエクスパーティーズのある、発揮できる分野では、まだまだチャンスがあると思っている。それからネットワークの面でも、おそらく日本の銀行では、不良債権のときにいっぺん閉じたものを再開し、さらにそれを拡大していくという流れは変わらないというように思っている。


(問)
 今日でベア・スターンズの3月中旬の実質的な破綻から1か月が経ったわけだけれども、その後、米銀の決算なども出ているが、サブプライム問題、今、どういう局面まで来たのかということである。まだ、その抜本的なものは終わっていないとすれば、言われているような公的資金の導入などが必要なのかという点について、お考えを聞きたい。
(答)
 海外の現在の情勢を私もすべてを把握しているわけではないが、G7でいろいろな申し合わせが行われているので、前も申しあげたが、私はこの1-3月期でサブプライムという証券化商品の評価ということについては、大体落ち着いてくるのではないかと思っている。ただ、問題は、この影響が、米国経済、欧州の経済といった実体経済に影響を及ぼしてくるということになれば、これは違う意味でのインパクトが出てくる。そうなるとデカップリング、リカップリング、いろいろ言われていたけれども、やはりアジアの景気にも影響してくるだろうから、そうなると、これから世界経済がどうなるかというところに、心配は移ってくる。だから早く証券化商品の問題というのは、解決をして、そこについての処理が終わったという終息感を出して、次に移って行かないといけないと思う。1-3月期、または証券会社でいけば一部、12-2月期を見ていると、去年対比、同期対比半分とか、かなり減益になってくるであろうから、評価については相当厳しい。これに対して引当なり償却をして、資本が足らない分については、マーケットなり、投資家から調達をして、資本基盤を拡充、強化していく、補強していくというプロセスがこれから続くのだと思う。


(問)
 銀証のファイアーウォールの話であるが、昨年12月の金融庁のプランで大分前進したとは思うが、投資銀行業務ということでいうと、銀行の出資規制、プライベート・エクイティとか、プリンシパル・インベストメントといわれたときの出資規制の撤廃というのは、まだ手付かずなのかなと思うが、その必要性とか、今後求めていく必要性はどのようにお考えか。
(答)
 やはりいろいろ議論していく余地はあると思う。


(問)
 郵貯限度額の撤廃に関連して、全銀システムへの加盟について申請があったら審議するということだが、一部、システムへの接続について、考え直した方が良いのではないかという意見もあるようだが、今後の審査への影響はあるか。
(答)
 再拡大につながらないということを前提として、民営化がなされている。これは民営化委員会も言っている。それについては、しっかりとやっていただかなければいけない。再拡大につながるということであれば、これはそうすべきでない。われわれは、そこを粛々としっかりと言い込んでいきたい。全銀システムは全銀システムの問題である。しかし、こういう意見が出てくる背景を、民営化委員会はしっかりと認識してもらいたいということである。


(問)
 日銀総裁は空白期間を作るべきではないとおっしゃっていたが、結果的に空白期間ができて、また副総裁が総裁に昇格したが、現在まだ副総裁は空白であり、この現状と白川総裁への評価をお聞かせいただきたい。
(答)
 白川総裁は、生え抜きの方で、実務にも長けている。金融経済の舵取り役として、そして物価、通貨の番人という観点でみても、国際的な経験、ネットワークもあり、白川総裁が決まって良かったと思っている。国際的な信認が揺らいでいくなかで、タイミング的にもギリギリ間に合って良かった。去年の夏から、今年も引き続き大変厳しいマーケット環境にある。そういうなかで、大いに力を発揮していただけると期待している。


(問)
 日銀総裁が空白になる、租税特別措置法もギリギリまでどうなるかわからない、など日本のビジネス環境にかなりリスクがある、ということを言う海外の投資家もいる。政治の混乱だと思うが、与党、野党に対して言いたいことがあれば言っていただきたい。
(答)
 政治と経済は深い関係にある。政治が混乱すれば、経済の舵取りも混乱する。そういう意味では落ち着いていただきたい。前回の会見で、東京オフショア市場の源泉税の特別措置が戻ってしまったらという質問に対して、仮定の話は何ともいえないが最後の良識を信じていると申しあげ、結果的にそうなってくれてほっとしているが、不安を煽ったのは事実である。
 私個人として、一人の有権者として見た場合、変調が起きたとすれば、その責任を誰がとるのか。結局、われわれ国民、有権者、投票者が期待していたもの、予測していたものと違うことが起きている。こうした事態を投票者も予測していたわけではない。しかし、こういう結果を受けて、自分たちの生活に影響を及ぼしてしまっている。責任を負うということについては、最終的には、投票者としての責任をどう果たしていくか、反省していくか、ということに繋がっていく。それが正常な民主主義と思っている。時間がかかると思うが、これは大きな教訓となると思うし、投票者としての良識を信じていきたい。


(問)
 経営問題として注目された新銀行東京の問題だが、どのように考えるか。都議会が出資を決めたことについてはどうか。また、スコアリングモデルについて限界があったのではないか。
(答)
 前回の会見で申しあげたとおり、銀行業というのは簡単なものではない。
 出資については、議会で決めたことでありコメントは差し控えたい。
 スコアリングモデルは、それ自体が悪いということではない。スコアリングモデルだけを信じる銀行はない。ベースは対面で、いろいろ調べながら、スコアリングモデルを併用していくということであり、銀行によっていろいろなパターンがあると思う。スコアリングモデル一辺倒では、日本の場合は、なかなかうまくいかないと思う。
 コンシューマーファイナンスの場合は、そういうケースもあるかもしれないが、法人取引は、そのモデルだけでは上手くいかない。やはりクレジットを見るわけだから、お金の流れとかヒトとか、会社のモノの流れとかを見ていく必要がある。


(問)
 読売新聞の夕刊で、コシ・トラストという会社の関係で、三井住友銀行の担当者が410万円の便宜供与を受けていたという記事が載っていたが、これが事実とすれば、銀行界の信頼を揺るがすものだと思うが。
(答)
 報道があったことは承知している。コシ・トラストの問題は前回も質問いただいたが、この問題については、私ども銀行の貸金について、貸出とその後の管理につき、至らない点があったことについて、預金者、株主、世間の皆様にいろいろご心配をかけて申し訳ないと思っている。今回の件については、事実について調査中だが、一部それに近いことがあったことは確認している。公私の峻別にかかわることで違背があったことについて、誠に残念で申し訳なかったと思う。
 コシ・トラストについては、刑事告訴も含め、捜査当局と相談中であり、詳細については申しあげられないが、一部そういう事実があったことは確認できており、残念であり申し訳ないと思っている。深くお詫び申しあげる。


(問)
 最後に一言、会長から。
(答)
 1年間ありがとうございました。また、引き続き全銀協の活動に、ご支援賜りたいと思います。どうもありがとうございました。