2011年4月14日

奥会長記者会見

和田専務理事報告

 事務局から2点ご報告する。
 1点目は、「東日本大震災・福島原子力発電所事故への対応にかかる要望」についてである。
 今回の震災により、社会インフラ等の被害が極めて甚大であること等に鑑み、金融機能の強化・拡充の観点から、お手許の資料のとおり要望を取りまとめた。
 今後、各方面に対して要望を提出し、状況に応じた一層の支援措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
 2点目は、正副会長の内定についてである。
 本日の理事会において、お手許の資料のとおり、7月以降の正副会長を内定した。正式な選任は、6月の理事会において行う予定である。本件については、奥会長からご説明いただく。
 事務局からの報告は以上である。

 

会長記者会見の模様

 

 私の方から次期会長についてご説明させていただく。
 前回、私が当面3ヶ月を目処に会長を続投することを申しあげた。先月であるが、みずほ銀行西堀頭取からの申し出を受けて、現在、全銀協では、東日本大震災という国難に対するために、昨年度の体制を継続して暫定的に私が続投をしている。このようななか、先日、みずほ銀行の西堀頭取から「現状、先般のシステム障害の事後対応の陣頭指揮を執っており、この対応には時間がかかるため、本年度の全銀協会長の就任は辞退したい」こういう申し出があった。
 私の現在の続投は、危機対応としての異例なかたちであることから、あまり長く続けることは如何なものかと思い、副会長である三菱東京UFJ銀行の永易頭取にご相談した。
 その際、永易頭取の方から「このような国難かつ緊急事態に際し、全銀協がこれまで以上に一致団結して取り組む必要があると考えており、そのような事情であれば、自分の経験を銀行業界のため、ひいては国のために活かして、是非ともお役にたちたい」との大変力強いお申し出をいただいた。
 ご承知のとおり、永易頭取は私の前の全銀協会長で、リーマン・ショック後の金融の危機的状況の中において、本邦の銀行業界をしっかりとリードしていただいた方である。三菱東京UFJ銀行は名実ともに日本のリーディングバンクであり、こういうことを踏まえると、この難局を全銀協としてしっかりと対応していくにはもっとも相応しい方であるというふうに思い、私としても永易頭取にお願いしたいと、思い至ったわけである。こうした考えを副会長にもご相談したが、「そのとおりである」ということであった。そこで、本日の理事会に付議して全会一致で永易頭取を本年7月1日から来年の3月31日までの全銀協会長として内定させていただいたわけである。


(問)
 来年4月1日以降の全銀協会長は、今回辞退されたみずほ銀行が会長行を務められるのか。また、みずほ銀行のシステム障害に関連して、3月25日の給与振込み集中日に、全銀協または個別行としてどのような協力をされたのか。また、みずほ銀行からシステムトラブルの原因について何か報告はあったのか。
(答)
 本年7月からは永易頭取が全銀協会長に就任される。来年4月以降については、当然ながら、現段階では未定である。これは然るべき時期に次の会長であられる永易会長がお考えになって選定されるということで理解している。
 3月25日は給料の振込みが増える日であるが、まず全銀協としては、連休の最終日の3月21日に会員各行に対して、今回の事態を踏まえて、お客さまとよくお話しいただき、できるだけ各行で協力のうえ、前倒しでお持ち込みいただけるよう、お客さまに依頼していただくお願いをした。実際には、私ども個別行にも従来に比べて多くの振込みが持ち込まれており、今回の件について、各行に協力をお願いした効果はあったのではないかと思う。
 システム障害の原因について報告があったかどうかということだが、これについては、全銀協自体はそういう報告を受ける立場にないが、西堀頭取からは、現在、この件に関する調査委員会を作って、原因を調査中とのお話があった。いずれそういった調査結果が公開されると理解している。


(問)
 3月11日に東日本大震災が発生したが、2010年度の決算見込みと来年度の見通しについてのご所見を聞かせていただきたい。あわせて、足許の資金需要および今後の見通しについても教えていただきたい。
(答)
 2010年度の決算見込みであるが、一般的に言うと、第3四半期、12月までの業績は、特に上期の債券オペレーションが好調だったことと、不良債権処理コストが比較的低水準におさまったことから、収益は順調に推移してきたと思われる。
 ただ、決算月の3月に、東日本大震災が起きたということで、その地域に支店・本店を持っている銀行とそうではない銀行とでは、かなり影響が違ったかたちで現れてくるのではないかと思っている。
 また、株式相場がかなり下落したので、それに伴う減損処理も上乗せされるため、銀行によってまちまちな決算内容になると思っている。
 今期についてどうかということだが、景気の先行きもあわせて見通すことは非常に難しいと感じている。
 その要因として、ひとつは資金需要がどういうかたちで出てくるのか。3月の地震発生後、大企業を中心に手許資金の手当てに関する相談をされる企業が増えている。そういう意味では、リーマン・ショック後の状況と同じように資金需要は確かにあるが、これから先、震災により、景気が減速することになると、こうした状況は少し変わってくるかもしれない。もう一つは、クレジットコストがどうなるのか。これは地域によって、特に被災地域がどうなるのかということに影響を受けるし、今後、長期金利がどういった動きをするのかということにも影響を受ける。したがって、正直言って今期について語るのはまだ尚早だと思う。
 資金需要であるが、全般的な統計から見ると、貸金は17ヶ月連続で前年割れという状況が続いている。これが、今後どうなるのかというのは、震災直後の対応に係る資金需要と、その後の復興に向けた前向きの資金需要など、いろいろなものがあるので、これらの動きを注視して我々も対応していかなければならない。
 それ以上に大事なことは、やはり被災地域の中小企業の方への融資をどのようなかたちでやっていくかということだと思う。それについては、本日配付した要望にも関連するが、政府や政府系金融機関の融資、保証協会の保証制度などを活用しつつ、民間としてできる限り資金需要に対応していく必要があると思っている。


(問)
 夏の電力不足に向けて、各業界で節電対策を検討しているようだが、銀行業界では、どのような取組みを検討しているのか。また、今回の原発事故により東京電力の経営への影響が懸念されるが、引き続き支援を続けられるのか。
(答)
 電力不足の問題であるが、現在、大口500kw以上の事業所に対しては、前年ピーク時対比25%、それから、それ以下のところは20%、個人・家庭では15~20%ということが、政府の方針として打ち出されつつあると認識している。
 私ども銀行界というのは、メーカーの工場と違ってなかなか電力のコントロールは難しい。例えば、電算センターというのは、どうしても動かさなければならない。それからいろいろな事務をやっているセンターも、我々がオペレーションを続けるうえでは動かし続けなければならない。こういうことで、実際にどこでどうやって節電していくか、頭を悩ましているところである。
 急にサマータイム制を導入しようとしても、我々の生命線であるシステムは、いろいろなところに全部時計がはめ込まれている。それをツー・クロックにしないといけないわけである。これは非常に難しく、そう簡単にはできない。今、システムをいじるということは、二次災害に繋がるリスクが生じるといったことになるし、やはり、もっと落ち着いた時期にやらないといけない。だからサマータイム制については、導入されるのであれば、数年かけて、銀行界だけではなく、そういった運動を2000年問題が起きたときのように対応していく必要があるのではないかと思う。
 それ以外のところは、非常に地道な努力をベースとして、節電というかたちでやっていく必要がある。ただ、頭の中でいろいろ議論しているところでは、それぞれの銀行の中で、支店の時短を行うとか、それから輪番休業するというのは、アイデアとしては議論しているけれども、実務的にどうするかということの詰めがまだ途中である。今後、そういうものをしっかりとまとめていきたいと思う。一方で、電力の供給側の東京電力にも、是非とも電力の増量に向けて、こういう時期でもあるが、その努力をしていただきたいと願っている。

 東京電力の経営の問題については、当社は電力事業という、まさに、その地域独占の公益事業であるので、日本の産業、それから個人の生活にとって欠かせないものである。特に東京電力は、日本のGDPの40%を占める地域に電力を供給している。人口だと、たしか36%くらいだったと思うが、そういう大変重要な地域の電力供給を担っている。そこで、電気を止めるわけには当然のことながらいかない。こういった公益事業に対する法律として、電気事業法があり、そして原子力発電については、昭和30年代からいろいろと議論をしてきて、国の方針として原子力利用を進めていく、すなわち、日本の産業の電力源として原子力というものを増やしていく、という方針のもとに進められている。
 そして、原子力発電については、当然のことながら、何か起きたときのために、原子力損害賠償法というものがある。原子力損害賠償法というのは、昭和36年にできたもので、そこには、まず、被害が起きたときには、「被害者の保護」、それと同時に、「原子力事業の健全なる発展を確保する」という、二つの法律上の目的が謳われている。今回の話は、因果関係からいくと、地震であり、津波である。そして、結果的に想定以上の津波が来て、これが被害を拡大し、放射能汚染という事態をもたらしている。今は、この部分だけが非常に取りあげられている。被害に遭った方々のことを考えると、本当に心からお見舞いを申しあげる次第だが、やはり因果関係を考えていくと、原子力損害賠償法の第3条の本則と、それに付随する但し書き、これをよく読み、そしてこの法律ができた当時の国会での答弁録、さらには、もう一つ前へ遡れば、原子力発電を導入するまでの、いろいろな委員会の議事、これを読んでいく必要があるのではないかというふうに思っている。
 但し書きというのは、非常に巨大な天災地変の場合には、政府は必要な措置を講じるということになっているわけだが、本件がこれに当たると考える余地が十分あるのではないかと思う。経団連の米倉会長も言っておられたけれども、当時の中曽根科学技術庁長官が、その一つのメルクマールとして、関東大震災の3倍ということをおっしゃっている。先般の東日本大震災というのは、規模でいくと、その30~40倍になるといわれている。こういったものを、どう考えるのかということになる。
 それから、もちろん被害者の方、避難しておられる方のことを考えないといけないのだが、もう一つは、同時に、この法の趣旨である「(電力供給事業の)健全な発展」という観点から言えば、やはり東京電力のみならず、各地の電力事業者が、きちっとマーケットで、自立できる財務内容を保つことが、すなわち「健全な発展」ということと考えられるわけであり、やはりこれを、国としてしっかり受けとめていただいて、マーケットにコミットしていただく、これは大変大事なことではないかというふうに思っている。法律の解釈をここでするつもりはないが、いずれにせよ、やはり被害者の早期救済と、それから電力供給事業の健全なる発展と、この二つの目的を果たすために、政府としては、ぜひ力強いコミットメントをしていただきたい。総理も、政府として支援するというふうにおっしゃっているので、私どもはそれを信じている。
 それから、我々が3月末に、それぞれ個別に実施しており、シンジケートローンではないので正確にはわからないが、一応、総額で2兆円近い金額の融資を行ったということも、私どもはこういう電気事業法とか原子力損害賠償法というものを常々読み込んでおり、それを前提に行ったものである。そして、こういった公益事業というものを守り、日本の産業を守り、そして住民の安全を守るということに社会的使命を感じて融資をしているということであるので、ぜひご理解をいただきたい。


(問)
 東京電力あるいは電力事業者がきちんとマーケットの中で自立していけることこそが健全な発展であるとのことだが、今の株価や社債市場を見ると、すでにいろいろな影響が出ているように見えるが、どう見ているか。
 被災地への対応について、現地の中小企業への融資、資金ニーズにどう対応していくかということについて、もしいま見えていることがあれば、もう少しお聞かせいただきたい。
(答)
 まず、後者の質問についてお答えする。地域的には地域金融機関のウェイトが高い。本日の新聞によれば、補正予算に緊急の信用保証や融資制度が盛り込まれるということなので、そういうものを活用しつつ、しっかりやっていくということではないか。私ども民間金融機関としての対応にはどうしても限界がある。こういう大きな天災が降りかかると、ゼロからスタートするどころか、マイナスからのスタートを余儀なくされる方もいる。例えば個人の方でいえば、住宅ローンで、旧債を抱えながら新しい借り入れを起こすということもあり得る。そのような場合、新・旧のローンを合わせて期間を長く延ばすとか、金利を下げるとか、お客さまにできることをきめ細かく民間金融機関はやる必要があると思う。同時に、中小金融機関は、緊急な資金ニーズには信用保証をフルに活用していくとか。もう少し大きな話をすれば、マイナスのスタートとなるような部分をエクイティで埋めるような制度を作るとか、これからいろいろな話・アイデアが出てくるだろう。そういった金融面の仕組みをフルに活用していかなくてはならないと思う。
 次に、東京電力の株については、今回のショックで大幅に値下がりした。電力債も100に対して93くらいであり、今、マーケットで(債券を)発行するのはなかなか難しいかもしれない。(市場が)何を不安に思っているかというと、最終的に東京電力は事業の健全性を保つことができるのかということであり、我々は、この点については、やはり政府の一定のコミットメント・支援が必要だと思っている。通常の同社の経営に対しては、我々は今までも年度末に支援してきたが、賠償の話になってくると、それは原賠法に基づいて粛々と対応していただきたいと思う。それにより、債券マーケット自体にも好影響を与えるのではないかと思う。今の市場においては、政府がどう出るのか、法律がどのように適用されるのかということをマーケットが見ている状況であるので、いち早く、国が強い支援体制を打ち出して、具体的な対応をしていただきたいと思う。


(問)
 会長が先ほど、大企業の資金ニーズが見えてきたとおっしゃられた。金融庁の貸出の検査マニュアルも緩和されたが、銀行としての融資の査定基準というのは、どのように変わってくるのか。つまり、社会使命としては、金融機関の責任を果たすためには積極的に貸したいと思うが、一方で、査定が甘いと今後不良債権につながると思うので、その辺のバランス等をお聞かせいただきたい。
(答)
 今回の検査マニュアルの一部緩和というのは、大企業というよりは、特に中小企業のことを念頭に置いた措置なので、それはそれとして必要なことだと思う。大企業についていうと、いろいろなサプライチェーンが切れてきており、部品が納入されなければ生産もできない、工場を何ヶ月間か止めなければいけないという状況で、その間の運転資金をどうするのか、ということになる。そういった資金ニーズは出てきている。おそらく今のところは復旧というよりは、まずは現状の困難な状況をどう打開していくか。それが終わると今度は復興への道筋が出てくるので、それに伴う資金需要が出てくるかもしれないが、今のところの資金ニーズは、どちらかというと現況に対応するための資金需要だと見ている。今後、特に中小企業についてはマニュアルの緩和による対応というものが当然出てくるだろうし、大きな被害を受けている地域金融機関には公的資金という話も出てくるとみられるが、そういうことを通じて円滑な資金供給の手段が確保できるのではないかと思う。


(問)
 公的資金のことでお伺いしたい。金融庁は、東日本大震災の被災地の金融機関が公的資金を受け入れやすくするために金融機能強化法を改正して「金融機関の経営責任は問わない」という方針を明らかにしている。こうした金融庁の方針を銀行界の代表としてどのように受け止めているか。
(答)
 今回のこういった未曾有の災難というのは誰も予想していなかったことであり、しかし片方で金融機関としての機能は続けていく必要がある。そうなると一時的に公的資金というのは出てくる。これは経営責任を問うような話だったかというと、それは経営のミスや不手際によってということではないので、経営責任を問うのは過酷であると。したがって、それを問わないということが今後決められるのであれば、非常に適切な対応ではないかと考える。


(問)
 すでに仙台銀行が、金融機能強化法の適用の申請を検討するということを公表しているが、被災地の他の金融機関も仙台銀行と同様にこうした制度を積極的に利用すべきとお考えか。
(答)
 「べき」かどうかは別にして、個々の金融機関がご判断されること。それを受けて金融庁がご判断していくと思うので、「べき」かどうかというのは、私はお答えする立場にない。


(問)
 原子力損害賠償法の話だが、会長の考えとしては、3条の但し書きを適用するべきではないかというお考えでよいか。そういう法律があるにもかかわらず、「一義的に東電の責任だ」というふうに政府が繰り返しているのは、今の事故後の対応の不手際に国民が怒りを感じていることへの配慮があろうかと思うが、その部分についてどのようにお考えか。
(答)
 私は、弁護士でも学者でもなく、また法律を解釈する立場にもないので、何とも言えないが、私なりに法律を読みこんだ印象としては、3条但し書きの検討余地もあるのではないかということ。
 「被害者救済」と「原子力事業の健全性の維持」という二つの目的を実現するというのがこの法律の趣旨と理解しており、私はそういった(但し書き適用の)検討余地があると思う。いずれにせよ大事なのは、これらの二つの目的を達することであり、そのためには、政府の関与が必要であるということを申しあげている。政府は本則で「第一義的に東電に責任がある」という考えをしているが、但し書きを適用するという考え方を採る余地もあるのではないか。そのうえで、どうような対応をすべきと判断するのかということだと思う。今回のケースは、初めての出来事だから不手際というのはある。そして、原子力発電所の問題が、ここまで大きくなるとは思っていなかったけれども、実際に被害を受けていらっしゃる方がいるわけだから、その救済をしっかりやっていくということと、冷静に本件の因果関係を辿ってみて、国の関与をどうするかということをしっかりみていく必要があるのではないかと思う。政治としてみれば、住民感情というのを大事にされるだろうし、それはそれで十分理解できるが、その一方で因果関係を辿っていくときに、国の関与についても十分みていかなければならないと思う。


(問)
 東電向け融資の査定分類というのは、今後、普通に一般企業と同じような目線で査定分類されていくことになるのか。例えば、格下げとか株価、収益見通し等色々あるかと思うが、そこらへんを教えていただきたい。
(答)
 これは、今は検討していない。今後、同社の決算が出てくるので、その時点で考えるということになる。


(問)
 3点質問する。1点目は、節電計画であるが経団連では業界内で達成のために、融通をしたりすることを呼びかけるということを言っている。全銀協として、例えば銀行の場合は店舗の多い少ないも、電力の節電できる余地というか、弾力性が変わってくると思うが、業界全体として目標を達成するという可能性はあるのかどうか。
 2点目は、東京電力に対して銀行全体としては2兆円(融資した)ということで、おっしゃるようにマーケットで調達ができるようになるのが望ましいとは思うが、それが叶わなかった場合には、金融機関として追加融資などについては支える余地はまだあるのかどうか。
 3点目は、東京電力の賠償について、他の電力会社と協力して基金のようなものを作って返していくという案が、政府内で浮上してきているが、他の電力会社も含めて負担をするということの実現可能性などについて、どのように考えているか。
(答)
 1点目の、節電のことについてであるが、今事業所単位という話が出てきているが、私どもは法人単位やグループ単位、または業界ということを考える必要があると思っている。例えば、全銀協ではシステムを動かしているので、これを止めるわけにはいかない。そこに節電の余地があるかというと極めて乏しく、その他の部分で全部電気を消さないといけないということになるわけである。そういうことを含めて、どういう枠組みでやっていくのか、業界にするのか、フィナンシャル・グループ単位にするのか、そういうことも含めて、検討していく必要がある。事業所単位というよりは、法人単位やグループ単位にしてくれという要望が当然考えられると思う。その場合に、例えば、本店ビルは500kw以上使用しているといっても、テナントで入居している場合は、不動産会社がやるのか、という話になってくるし、そうするとそこを除いた場合はどうなるのかといった、複雑な問題が色々あるので、それを解いていく必要がある。
 2点目の、東京電力の追加融資の問題は、やはり東京電力から追加融資(の要請)が出てきたときに、融資判断に耐え得るような財務の健全性が保てるということが条件になってくる。そうすると、例えば、今単純に言うと、普通の債券を発行できるのがシングルA格であり、そのくらいの財務体制をどうやって保っていくのかということも、ひとつのメルクマールになってくると思う。金融機関としては、ニーズが出てきた場合に、(原賠法などの)法律の解釈、それから今後の同社の財務の変動を含めて総合的に検討していくことになる。
 3点目の、他の電力会社と組んでうんぬんという、そのスキームについては、私も新聞で読んだ程度なので、現時点でコメントをする段階にはない。


(問)
 1点目は東京電力の経営責任であるが、先ほどの一連の発言を聞いていると、「現経営陣に経営責任はない」と会長は考えているという理解でよいか。
 2点目は、東京電力はつぶしてはいけないという考えの根拠は、大概において電力を供給するのは東京電力しかないからということである。ある意味、電力を人質にして、東京電力をきちんと守らないといけないという理屈が多く、先ほどの会長の発言もその論にのっていると考える。一方で、世界では電力を自由化している国・地域がある。結局、地域独占に胡坐をかいて、東京電力のガバナンスが緩んでいたのではないかという指摘も一方であり、足許はともかくとして将来の仕組みとして、電力業界のあり方、東京電力のあり方を、そこはメインバンクとしても関与されていると思うが、どのように考えているか。
(答)
 1点目の、東京電力のトップの経営責任については、経営責任をうんぬんする立場にない。
 2点目の電力産業の今後についても、今私に何か確定的な意見があるわけではないが、民間の事業者として独り立ちをしていくということが基本的な電力事業者としての生き方だと思う。ただ、これについては繰り返すようであるが、人質という話もあったが、東京電力の電力供給というのは日本の産業の最大の源泉である。そこをしっかりと守っていくためには、やはり今までの(電力事業政策に係る)経緯、国策としての位置付けもあるし、そういった意味では、国としての関与はいざという時にはあるべきで、法律にはそのように書かれているわけであるから、それを粛々と履行していくということではないか。


(問)
 復興の関係で、与野党が財源捻出のために、国債を日銀に直接引き受けさせるという議論が繰り返しなされているが、銀行界は国債の大量ホルダーとして、今後、まだ規模はわからないが、日銀が出てこないと国債を消化できないという懸念をお持ちかお聞かせいただきたい。
(答)
 今回の復興に際しての復興債を消化するのに、日銀引き受けをするかということについては、それはしてはならないと思う。日本の個人金融資産というのは、1,500兆円あり、今の低金利の中で、ある程度金利を付けることによって、個人の消化も十分可能かもしれない。国債、復興債に頼る場合も、民間で消化していくことが筋であると思う。


(問)
 金融界の電力消費量は、東京電力管内の1.6%程度であると思うが、こうしたなかで25%節電に協力されるということだが、顧客への利便性の低下とコストとベネフィットとの兼ね合いで、政府とどういう折衝をなされているのか。また、システム負荷という点で、中長期的に五・十日の決済集中日の平準化といった問題に取り組むお考えはあるか。
(答)
 システムの負荷について、当行では、電算センターで全電力消費量のうちの約10%の電力量を使っている。事務センターまで入れると約25%使っている。また、約15%が本部で使っており、残りの60%が営業店である。したがって、25%という節電目標は、営業店にも協力してもらって、相当のことをやらないと達成できない。したがって、ご指摘のとおり、顧客の利便性の問題とどのようにバランスを取っていくかということに直面することになる。そうしたときには「共助」、すなわち、共に助け合うという精神で、できるだけお客さまに迷惑をかけないやり方で、電力のピーク時を避けたかたちで、例えば、午前中だけ営業店を開いて午後からは閉めてしまうとか、そういうことが可能かどうか。我々は、大変大事な決済業務を行っているので、その決済に響くようなことを避けるということになれば、時間の短縮というのは、一つの具体的なかたちでもある。輪番に休むということも検討はしているが大変難しい。したがって、そういったことと、普段からの節電というものを、こまめに履行して達成していくしかないと思っている。まだ政府というか、金融庁とそういうことを本格的に折衝するという段階ではない。
 五・十日については、日本の商慣習としてあるわけで、お客さまの協力をいただかないとできない。お客さまにも平準化についてご協力をいただく、決済の日を5日ごとにしないとか、そういうことをお願いすることになる。そういうことも共助の精神からいけば、いざとなればお願いしなくてはいけないかもしれないが、なかなか商慣習を、こちらに合わせてくれといっても時間がかかるし、そううまくいくものでもなく、実効性については疑問がある。

別添資料:奥会長記者会見