2011年5月19日

奥会長記者会見

和田専務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様


(問)
 各行の2011年3月期決算が発表されたがどのように受け止めているか。また、震災による今後の銀行界における業績への影響について、どのように考えているか。
(答)
 22年度決算が出揃いつつあるものの、全銀協としては集計が完了していないので、詳細についてはまだこの場で説明出来ないが、被災地にある銀行も大変な復旧作業のなかで、決算に漕ぎ着けられたというご努力に対して、私ども全銀協としても大変敬意を表している。まだ、これから公表するところも残っているが、一般的にいうと、直接的な被害を受けた被災地域の銀行と、間接的な影響を受けたところ、全く影響を受けていないところの三つに分かれる。この三者で業績に大きな差が出ていると思う。
 被災地の銀行を除くと、一般的には、昨年1年間でいえば、特に上期に金利が低下したこともあり、国債のオペレーションで機動的な益出しを出来たという銀行も多く、そして不良債権の問題も前年対比減少し、これら二つの要因から上期はご承知のとおり順調な業績であった。そういう意味では、12月期、すなわち、第3クオーターまでは状況は良かった。ところが、最後になって、金利の動向もあったが、震災影響、それから株式の低下に伴う償却影響もあり、年度を見ると少し明暗が分かれたと思う。全般としては、被災地を除くと業績としてはまずまず良かったのではないかと思う。昨日の小川地銀協会長の会見にもあったように、被災地区においても区々であり、今回の場合、宮城県が地震・津波の影響をもろに受けていることから影響が大きい。もちろん、福島・茨城も影響があったが、東北3県、岩手・宮城・福島でいくと宮城が一番被害が大きかったと思っている。まだ、決算を公表していないところもあるので、何とも言えないが、昨年度の決算は概ねこういうことではないかと思う。
 今年度であるが、一般の景況がどうなるかということであり、非常に見通しが難しい。今日、GDPの速報値が公表されたが、1-3月の速報値は我々が見ていたよりも落ち込みが大きい。特に3月の単月、しかも20日間くらいでどんと落ちているという感じがする。前期比でマイナス3.7%という数字が出ている。これから先を見る場合、今年度の第1クオーター、そして第2クオーター、この辺がどうなるかということであるが、一つはサプライチェーンの復旧をどうみるか。被災した地域に限らず、この地域から始まるサプライチェーンが全国的にどういう影響を受けているかということであるが、これは業種によって随分違う。4月から復旧したところもあるが、全般的には6月、7月にならないと本格的な復旧にならないというところもあるので、当初見ていたよりも時間的に後ろ倒しになる可能性があり、景気回復が遅れることもあるのではないか。第1クオーターは前期比かなりの落ち込みになるだろうが、第2クオーターではぐんと上がるということになるのか、当初の見込みより少し回復のスピードが落ちるのではないか、と思う。
 次に、電力不足に対する心配がある。これが企業マインドに重くのしかかってくるのではないか。当初は東京電力管轄内の話で済むかと思っていたが、浜岡原発の停止のほか、美浜原発の点検からの再開の遅れとか、今後、新たに点検に入る発電所もでてくるため、全国的な原子力発電の問題による電力不足というのは非常に重くのしかかってくるということ。ひいては、企業マインド、さらには消費マインドに影響してくるということもあり、先行きについて成長力の回復が少し鈍ると思う。そういうなかで、銀行業績であるが、復興需要というものに期待を寄せる、復興需要によって貸金が伸びるという見方もあるが、4月末の数字は前年度比でいくとまだマイナスであり、18ヶ月連続のマイナス。落ち込み幅は改善してきているということもあり、今後どういう資金需要が出てくるのか、中堅・大企業、そして零細、この辺をよく見ていく必要があると思う。思ったよりもサプライチェーンの落ち込みがなかったという業種においては、当初予定していた借入の金額を縮小するとか、それを取りやめるという動きも出てきている。今後、1、2ヶ月を見てみないと動向はよく分からないが、我々のところでいう、預貸金で収益が大きく上がるというようなことにはならないのではないかと見ている。一方、不良債権、クレジットコストの方であるが、これはやはり、少し慎重に見なくてはならないと思っている。これは地域によって随分違うと思うが、間接的に影響を受けている地域もあるので、慎重にみておく必要がある。また、国債からの収益も金利は低下しているが、非常に危うい動きでもあるため、比較的慎重にオペレーションをやっているということもあり、我々としては前年度対比マイナス、減益とみている。私どもの銀行としては業務純益ベースでみると前年度よりも水準は低くなるであろう。個別行ではこのような状況であり、それぞれの銀行で状況は区々ではあるが、全体の見通しについては、今、申しあげたとおりではないか、というふうに思う。


(問)
 今日午前中に民主党のプロジェクトチームにおいて、全銀協が二重ローン問題に関して発表されたようだが、全銀協としての、二重ローン問題への対応の基本方針を教えてほしい。また、地銀協などは債権について簿価による買取りを強く求めているが、その点についてお考えを聞かせてほしい。
(答)
 今日、民主党の方から説明を聞きたいということで、全銀協から説明を行った。それはそれとして、現在、全銀協では、二重ローン問題の解決に向けた考え方について、中間整理をしており、最終的なとりまとめの最中である。
 二重ローン問題というのは、いつも天災のときに出てくる問題であって、阪神・淡路大震災のときにも出てきた。私も被災地の宮城・福島へ行って、いろいろとお話をお聞きしてきたが、阪神・淡路大震災を経験した人間からすると、今回の津波の影響というのは極めて甚大である。津波によって街がなくなり、職場がなくなる一方、ローン・借入は残っている。神戸の場合は、一般的にいうと、職場、会社が残ったケースが多いので、今回の震災は、ちょっと様子が違うとつくづく感じている。
 そういうなかで、金融機関と債務者だけでこの問題が解決できるかというと、これはなかなかそうはいかない。したがって、これは国の積極的な関与をいただきながら、金融機関・債務者・国、それぞれがこのリスクを分担していくということが必要なのだろうと思う。
 今までの他のケースとの公平性とか、「金融規律の維持」をどうするかということも大きなテーマになるが、先ほど申しあげたように、今回の震災は前例とはちょっと違うなという感じがあるので、ここをどういうふうに考えるか。被災地の金融機関の方は、今言われたように、簿価買取りということを言っている。「地震・津波によることだから、これは別に考えてもいいのではないか」ということだと思うが、それはそれとして理解はできる。しかし、他の要素も考えていくと、国、金融機関、更には債務者の三者がどういうふうにリスクというか、損失を分担していくかをケース・バイ・ケースで考えていかなくてはならない。
 一律にこうだということはなかなか出来ないわけであって、二重ローンに係る旧債務の負担軽減について、一律に債権放棄をしたら良いではないか、債務免除したら良いではないかというご意見もあるが、それにはモラルハザードの発生という問題もある。やはり、個別のケースについて、どういうふうに対応していくかを考えるということであろう。
 一方、二重ローンに係る新債務の負担軽減については、例えば、新たに東日本大震災用の融資保証制度も出来ており、従来のものに加え、そういったものをどう駆使して円滑な融資態勢を現場で組んでいくかということ。被災地でお聞きした話では、「融資を行うことは、先が読めるということが前提であるが、街もなくなってしまい、そこに残された企業の周辺にどのように街が出来ていくか分からないのに、本当にお金を貸せるのだろうか」ということであった。これは、本当に我々の想像を絶する環境の中での融資判断を求められるということである。また、「街づくりや産業の再興をどうするか、更に個々の企業の再生がそれにどう組み合わされていくか、こうした構図がないとなかなか難しい」ともお聞きしており、単純に、例えば、「神戸でこうでした」という話ではなく、本当にケース・バイ・ケースで対応していかないといけないと思う。
 それには、さきほど言ったように、金融機関、債務者の間だけの話ではなく、まさにコンサルティング力ということだが、街・地域の産業の再生・再興、または産業の新興とのリンクで考えていくという大変難しい作業であると認識している。
 いずれにしても、二重ローンの問題は、今後、地域の金融機関の話も受け止めながら、さらに詰めて参りたい。結論としては、色々な手段を準備して、ケース・バイ・ケースで適切に対応していくということであると思う。


(問)
 東電の賠償スキームに対する評価についてお聞かせいただきたい。閣僚からは、銀行に対して債権放棄を求める声があるが、この対応についてもお聞かせいただきたい。
(答)
 賠償スキームについて触れる前に一言申しあげると、この場でいつも原子力損害賠償法の3条但し書きについて言ってきたが、今回のスキームというのは、基本的に3条但し書きの話ではなくなっている。どうしてかなぁ、と思う。なかなか難しい話ではあるが、閣内では与謝野大臣が、そういう話をされているということを新聞で読んだが、私はそこの結論に至るインナーの議論がオープンにされても良いのではないかと思っている。3条但し書きというものをわざわざ規定していることの意味合いを踏まえ、国民に対して説明する責任があるのではないかと思っている。おそらくこれは、私だけではなく、国内の関係者、海外の投資家、または法律家が、大変強く関心を持っており、私はこの点については説明を果たしていただきたいと強く思っている。
 そのうえで、今般、賠償スキームが出来たわけであるが、それについては、私は曖昧なところは残っているけれども、第3条の本則と、16条の損害賠償のやり方というものを考えていくと、かなりそういうものを取り入れた形になっていると思っている。ただいくつかの点で曖昧さが残っているので、今後、国会の場において議論されるものと認識している。
 この新しいスキームというのは、被害者の救済というものに重きを置き、同時に原子力事業というか、電力の安定供給を果たしていく、それから同時に金融市場の安定化ということにも触れており、このことを是非しっかりと守れるようなスキームにしていただきたい。13日の発表のなかに、「これまで政府と原子力事業者が共同して原子力政策を推進してきた社会的責務を認識しつつ、原賠法の枠組みの下で、国民負担の極小化を図ることを基本として東京電力に対する支援を行う」と書かれている。細かい話になるが、この支援というのは、かつての昭和35年から36年にかけての原賠法に係る国会審議のなかで、国による融資、補助金というのが入っており、これで支援すると答弁されている。したがって、そういうものをもとに、今回、「具体的な支援の枠組み」として示された9項目をどのように実現・運用されていかれるのか。9項目のうちの第3番目に、「設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるようにし、原子力事業者を債務超過にさせない」と、大変踏み込んだところまで書かれている。それから「電力の安定供給に支障が生じるなど例外的な場合には、政府が補助を行う」という項目が入っている。これらは具体的にしっかりと実現していただきたい。そういうことになってくると、確かに被害者への補償には上限はないが、今回の場合、原子力事業者である東電においては、(東電への)援助が行われることを通じて、賠償に一定の上限ができるのかな、というふうに私は理解している。この上限というのがどういう形で実現していくのか、これを注意深く考えていきたいと思っている。そのような観点から、原子力損害賠償法のなかで、このスキームをしっかりと考えられてこられた方がいらっしゃるわけで、その線に則って、しっかりと具体化をして、曖昧なところについて更に詰めていただきたいと思う。
 それから債権放棄という問題は、このところ少しご発言はトーンダウンしているようにも思われ、あまりここで改めて刺激することは避けたいと思うが、私見を述べれば、今回の場合、原子力のオペレーションによって生じた損害と言われるが、原因はいつも言っているように地震であり、津波であって、それがオペレーション上の問題を引き起こした。この因果関係を常に頭に置いておかなければならない。そのうえで、今回の場合、原子力損害賠償法という法律があって、そこに出てくるのは、国と原子力事業会社であり、両当事者が、どういう賠償の分担をしていくのか。この両者で問題を解決していく、分担していくということであり、その他の債権者、株主とか社債権者、金融債権保有者、納入業者、そういう方たちには負担を負わせないという枠組みであると、私は理解している。よって、債権放棄云々という話がでてくるのは、どうしてかなと思っている。こういう法律があって、その法のもとで、先ほどの9項目から成る支援が行われることが書いてある。法治国家である以上、この原賠法の枠組みのなかで、しっかりとやっていただければ、債権放棄という話には至らないというふうに理解している。


(問)
 政府内での議論について、結論に至る過程をオープンにしても良いのではないかという話があった。私もそのとおりだと思うが、今回のスキームを巡る話を紐解くと、3月末に御社を含めた銀行が2兆円融資されている。あの前の段階で奥会長が経済産業省の松永次官にお会いになっているが、その際の議論はどんな話だったのか、オープンにしていただけないか。経済産業省の松永次官を訪ねてどんなやり取りがあったのか。
(答)
 松永次官とお会いしたことは確かである。意見交換したことも事実である。私は過去の経緯、すなわち、原賠法の立法趣旨等に係る国会審議において、当時の中曽根科学技術庁長官の答弁、池田科学技術庁長官の答弁で、法律上の解釈がどういうふうに捉えられていたのか、その辺を踏まえて考えていただきたい、と申し入れをしただけである。


(問)
 6,000億円の融資をされていると思うが、東京電力の経営について、その当時はリスクをどのように分析されたのか。東京電力の株価がすでに下がっていた局面で、また、もちろん原発事故も起きていた局面で、融資する側として、リスクをどのように考えていたのか。
(答)
 当時の段階で原子力発電所事故の被害がどの程度になるか、なかなか分かりにくかった。しかしながら、それよりも大事なことは、やはり公益事業としての電気事業者の電力供給を止めてはならない訳であり、1年なら1年以内の計画を作成していただき、そのうえでしっかりと電気を供給できる体制を支援しないといけない。それから、社債マーケットや、下落していた株式マーケットに対して、銀行が支援することを以って、ある意味でそれらの市場を守っていかないといけない。それから納入業者にも当然安心をしていただかないといけない。それに加えて、電気事業というのは、法律で、先ほどの原賠法の話もあるが、電気事業法で価格転嫁も含めてきちんと事業者が電力の供給責任を果たせる形になっている。そういうものを読み込んで、弁護士意見もとって、融資をした。したがって、この点について何の懸念をお持ちなのかどうかは知らないが、我々は、株主代表訴訟を起こされるとか、そういうことはないと思っている。


(問)
 東京電力の関係で、賠償スキームは先日出たが、これはいずれ法律を作ることが必要で、そうでなければ実際には動き出さない。しかしながら、そこを巡ってなんとなく動きが鈍いというか、予定どおりのスピードで進んでいないように思うが、どう見ているか、あるいはそれに対してどう思っているか、教えていただきたい。
(答)
 そこは大変懸念している。先ほど申しあげたように、この枠組みというのは、原賠法の建て付けの中での一つの解決策であり、市場にも配慮した形でとなっている。被害者への賠償、電力の供給責任、それから市場への影響排除を実現する枠組みである。
 こう言うと問題かもしれないが、それでまとまっていたのに、どうして市場に波紋を呼ぶような発言がなされるのか。一筋縄ではいかないことは分かっているが、この三つの目的を達成するためには、やはり意思統一をしっかりしていただいて、具体的なものにしていただきたいということに尽きる。
 高官・閣僚の発言には、私どもは非常にナーバスになっている。私どもがナーバスになっているということは、内外の投資家・市場関係者は更にナーバスになっている。したがって、格付会社の格付けはS&Pもムーディーズもすぐに格下げになってしまった。この辺りはよく配慮していただきたいと思う。


(問)
 今、まさに奥会長が言われたように、格付会社とかが閣僚の一言一句で、かなり債権者や銀行、東電の格付けを変えたりしている。邦銀の海外におけるプレゼンスというかステイタス、競争力に関して、東電の先行きが分からないなかで、海外の投資家は東電や債権者に対してすごく関心を持っており、大丈夫なのかなという不安もかなり高まっていると思う。そういう意味で邦銀のポジションというか、競争力に懸念の声も出ているかもしれないし、海外の金融機関にとってみても日本の銀行はどうなのかということになると思うが、その辺のところはどう見ているか。
(答)
 おっしゃられた部分はある。だから日本の銀行が海外で競争力を維持するためにも、この枠組みというのはしっかりと国がイニシアチブをとってやっていただきたい。それによってマーケットが落ち着き、海外に進出している日本の銀行も、レイティングが落ち着くということではないか。
(問)
 心配されていらっしゃるか。
(答)
 ないことはない。この問題は大きい。最後に2兆円のお金が出ているわけだし、従来からの部分を含めると借入れは増えているわけだから、やはり格付機関がどう思っているかという点については、我々としてはナーバスである。


(問)
 私はほとんど東京にいないで福島にいるのだが、東京に帰ってきて実に高邁な議論が繰り広げられているのでびっくりしている。福島県だと1世帯100万円の金が1ヶ月でなくなってしまう、来月には首吊りするんじゃないかと言っているのに、あまりに高邁な話がされていてびっくり仰天している。銀行が債権放棄の要求を受けてしまうということは、そういう人たち、つまりお金をもっと出してもらいたいと思っている人たち、賠償してもらいたいという人に対して、私の理解だとネガティブに受け止められていると思っている。債権放棄というリスクに怯えて、どこも東電に対してこれから何もしなくなってしまうと思うので。
(答)
 東電に対してか。
(問)
 そう、つまり、銀行が債権放棄をしてしまうと、他の債権者たちがこれはヤバイなということになって、東電との関係がネガティブになってしまう。余計に東電が追い詰められることによって、賠償ができなくなってくるという感じがするのだが、その辺はどのようにお考えか。
(答)
 当然、現地で賠償を受けられる被災者の方々はご心配だと思われる。本当は国が一番前へ出て、(賠償は)国がやりますと言ってくれれば一番安心である。それは、例えば、原賠法3条但し書きによれば、仕組みははっきりしていないものの、東電は免責され、国が(賠償)しなければならない。そういう考え方である。ただ、それを今更言っても仕方がない。
 二つ目は、機構ができたら、機構が前面に立てば安心、という考え方がある。
 三つ目は早さである。早く賠償をしないといけない。今国会中に補正予算で手当てしてほしいというのが現地の方の本当の気持ちだと思う。
 四つ目は、銀行が債権放棄を求められたら、他の納入業者はどう受け止めるのか。それを心配される方もいる。結構大きな納入業者が、たくさん燃油を売ったり、石炭を売ったりしているわけだから、心配しておられる。そうした気持ちは私も理解できるし、先ほどマーケットのことばかり言って高邁な話だとおっしゃったが、そういうところも含めて、影響が及ぶ発言は控えないといけないと思う。おっしゃるとおりである。


(問)
 先ほど枝野官房長官のご発言がちょっとトーンダウンしているとおっしゃっていたが、午前中の記者会見では、枝野官房長官は「国の支援を受ける限りにおいて、一般の民間企業とは違うと認識している」というようなことをおっしゃっていた。それについてどう思われるかが一つ。もう一つは、先ほどもスキームの具体化を出来るだけ早くというお話だったが、国の責任が見えないという批判が一部にある。それについても教えていただきたい。それから三つ目だが、項目の中で、「金融機関の協力」ということが書いてあるが、「債権放棄」という言葉が踊っているのも、金融機関に協力してもらうという文脈の中で出てきていると理解している。債権放棄をすると多大な影響があるというのであれば、金融機関として何ができるのかということをどうお考えなのか、例えば、全銀協というか、業界全体で、個別企業に対する話なので難しいとは思うが、何かできることがあるのか、お考えがあれば教えていただきたい。
(答)
 私も全部議事録を読んだわけではない。そういう感じがしているけれども、枝野官房長官の発言が本当にトーンダウンされたかどうかはわからない。ただ、はっきりしていることは、今回の枠組みは、重要なポイントはカバーしてくれているということ。賠償スキームに係る公表文書では、「具体的な支援の枠組み」の一項目として、「原子力事業者が負担金の支払いにより、電力の安定供給に支障が生じるなど例外的な場合には、政府が補助を行うことができる」とされており、東電が、いろいろと叩かれてリストラを行い、支払能力に関する問題が顕在化する前に、政府は補助をすると(書かれている訳である)。それから、繰り返すようだが、「これまで政府と原子力事業者が共同して原子力政策を推進してきた社会的責務を認識し」という記述は非常に重い言葉だ、と私は思っている。したがって、そういう意味でいくと、補助、支援というのは当然出てくると思うが、どういう形で、どういう場合に出てくるかというのが分からないので、皆さんの不安心理や懸念に繋がるのであろう。これは、今後の国会審議の中で、より具体的に、見える形で議論していただきたい。今回の枠組みは、被害者救済と電力事業・原子力事業の健全な発展、市場の安定化に資するスキームであるわけだから、それをしっかりと確保できる形にしていただきたい、ということである。
 協力については、私どもよりも、東京電力さんがどういう協力をお願いしてこられるのかということであり、我々はこれまでも貸金について協力をしてきているし、今後そういうご要望があれば、いつも申しあげているように、(東電の)健全性が保たれる限りにおいてはそれを前提に協力をしていく。それ以外に何か協力をすることがあれば、それは個別にお申し出について検討を行うということである。その協力の中には、現在のところは、債権放棄とか金利減免というのは念頭にはない。


(問)
 質問は2点ある。1点目は東京電力に対するエクスポージャーを教えてほしい。銀行あるいはグループとして保有する、株やローン、社債があれば。2点目は原賠法の枠組みの中では、「ステークホルダー、即ち株主・社債権者・金融債権者・納入業者は免責されている。(賠償は)国と原子力事業者の問題である、そういう枠組みになっている」とおっしゃったが、一方で資本市場の理屈では、巨大な債務を負った場合、どこから、毀損していくかという考え方、ルールがあると思う。まずは、株から毀損していって、順番が決まっている。そのなかで、今回の枠組みは、会長がおっしゃっていたとおり、株も毀損しなくていいスキームになっている。市場の安定ということを言っていたが、これは市場の規律をないがしろにするものではないか、というような指摘もあるし、私もそう思う。この辺りはどのように整理をつけているのか。
(答)
 1点目の、私どもがいくら持っているのかは、申しあげることはできない。ただ、株式に関しては、前期で800億円強の減損を実施している。社債については保有していない。
 2点目の質問であるが、資本主義の中で、おかしいではないかということかもしれないが、電気事業、その他の公益事業も一部そうであるが、特別の法律をつくって、具体的には、電気事業法、さらに原子力については、原子力損害賠償法あるいは原子力損害賠償補償契約法といったものをつくって対応してきているわけである。国によっては原子力については国営、または公的機関がやっている。そういう例から見ると、一般の事業会社とは少し違うということになる。今回の賠償の問題も、一般の不法行為責任ではなく、原賠法にもとづいてやるということであるから、(通常のケースと)同列に考えるのは違うということになる。
(問)
 1点目のエクスポージャーの件、東京電力は、スキームは詳細なところは固まっていないが、文書を読むと、東京電力に対する援助、支援は無限に何度でも債務超過に陥らないように行うという趣旨のことが書かれてあって、それはすなわち、広い意味で、東京電力にエクスポージャーを持っている人も守られると。国が前面に出ることで三井住友銀行のエクスポージャーも守られるということであるから、どれだけエクスポージャーがあるんだというのを公表する責任があると思うが、いかがか。
(答)
 現段階では、私はそのようなことを考えていない。その責任はないと考えている。


(問)
 今の質問に関連してだが、そのエクスポージャーがある一方、機構を使って、各電力会社から負担金等を徴収し、東電へ資金支援をするスキームになっていると思う。スキームの大枠が固まる一方、(貸金は)期日が来れば返済が進んでいくことになる。一年以内に返済するという場合、この4月からどんどん返済が始まることになると思うが、返済は始まっているのか。今の段階は。
(答)
 まだ(返済)期日は来ていない。
(問)
 いつからか。
(答)
 それは、ちょっと私は記憶していない。ただ、申しあげたいことは、そういうことを今後どのように考えていくか、このスキームの枠組みと他の要件の中で我々は東京電力さんからどのような要請があるのか、それを受けて個別に考えていく、ということになる。


(問)
 先ほど、金融機関の協力のお答えのところで健全性が保たれる範囲で協力していくというふうにおっしゃったが、これは、東電から追加融資を求められた場合は、基本的に応じるということか。それから、もし東電から追加融資の要請があった場合に、どういった条件だったら応じることができるか教えていただきたい。
(答)
 今、具体的にそういうお話はないので、今後このスキームの固まり具合をみながら、東電さんからどういうご要請があるのか、そこで考えていきたいというふうに思っている。
 ただ、今回の賠償スキームの「具体的な支援の枠組み」では、「設備投資等については、機構が援助できるようにする」とされていることもあり、そこも含めて、この機構の機能と我々の金融機能とがどのように関係していくのか、原子力の問題、原子力の設備関係は機構で、他のところは銀行、ということになるのか。
 そういうことも、今後、このスキームの固まり具合と東電さんのご要請等を念頭に置き、よく協議しながら考えていく。
 しかし、前提はやはり、(東電の)健全性が保たれること。原賠法で言っている健全性も含めて健全性が保たれるということ、財務の健全性が保たれるということである。