2013年3月14日

佐藤会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)

和田専務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様


(問)
 全銀協会長としては、これが最後の会見となるが、この一年間を総括されて、実現出来たことや、やり残したことの、振り返りをお願いしたい。
(答)
 それでは、在任期間の総括と若干の感想を申しあげたい。
 この一年間を振り返ってみると、政治、経済・金融のいずれの面においても、大変大きな転換点を迎えた一年であったと考えている。政治面では、ご承知のとおり、フランス、アメリカ、中国、韓国、そして昨年の日本の総選挙、さらに直近ではイタリアと、世界的に政権に関わる選挙が行われたが、経済・金融面でも、グローバルベースで構造変化が進捗した一年であったと思う。
 まず、海外経済を見ると、この一年間を通じて基本的には緩やかなスピードではあったが、持ち直しの兆候が出てきているように思う。イタリア総選挙の影響は懸念されるし、明確な回復に到るにはまだかなり時間を要すると見られるものの、各金融ご当局の努力により、欧州債務問題に対する市場の警戒感は、一時期に比べれば後退しつつあると考えている。
 また、財政の崖の一部を回避した米国経済は、ケースシラー指数に見られるように住宅市況も持ち直しており、シェール革命による景気の浮揚効果もあって、緩やかな景気拡大の基調にあると考えている。今後、景気回復の足取りがより確かなものになれば、今年中にもいわゆるQE3と言われる超低金利政策の見直しの議論も視野に入ってくる可能性があると思われる。中国経済も、構造問題を抱えつつも、景気対策の効果によって、足元小幅ではあるものの成長ペースが回復しつつあるというように考えている。
 一方、世界の需要構造は大きく変化し、新興国の持続的成長が世界経済を牽引する状況となっており、世界経済は益々多極化、あるいは無極化という言葉を使う方もいるが、していると思う。「アジアの時代」への潮流はそうしたなかでも変わらず続いているが、アジアが「世界の工場」から「世界の市場」に成長していることは間違いないと思う。
 成長の主力となる地域、市場、あるいは産業が、今申しあげたように交代しつつあるという構造変化の中で、企業のグローバルな事業展開のあり方も世界的に変化し、日本企業も従来の「良いものを作れば売れる」という、いわばプロダクトアウトの発想から、「売れるものを作る」という新たなマーケット・イン的な発想による新興国市場の「創造」がますます求められる状況ではないかと思う。
 そのなかで、我々が留意しなければならないのは、貿易を通じた世界経済の一体化や資本移動を通じた世界の金融市場の一体化が進捗していることである。別の言い方をすれば、ある国で生じた危機が他の国に伝播しやすい「フラット化」がより進展しているということである。昨年の秋にかけて、欧米経済の減速が中国、アジア、ひいては日本に波及し、また、直近では中国の減速が欧米経済のマイナス要因にもなった。現在、世界各国が共通して展開している金融緩和策の進展によって、世界経済はますます相互連携を深めており、この点については充分な留意が必要であろうと思っている。
 このグローバルベースでの超金融緩和政策の同時進行に伴う過剰流動性の増大は、この場でも以前お話ししたこともあるが、今後、おそらく世界的なレベルにおける経済、金融市場のかく乱要因になり得るということをはっきりと認識しておく必要があると考えている。
 また、先進国の財政事情は戦後最悪の状況であり、財政再建を否応なしに進めざるを得ない状況である。その意味では、財政の再建と超低金利政策が全世界で同時並行的に展開される極めて希有な状況となっている。
 こうしたなかで、世界経済はブロック経済化の流れが進み、また、積極的な産業政策と「官」の役割の増大といった構造的な変化や、シェール革命による世界のキャピタルフローの変化など、この1年間だけを振り返ってみても、おそらく今後5年後、あるいは10年後に振り返ってみれば、2012年は世界経済の大きな転換点であったと言われるかもしれない1年であったと総括できると思う。
 一方、わが国の経済に目を転じてみると、昨年の政権交代以降、マーケットでは解散前と比べて、本日は、為替が1ドル80円から96円まで下落し、日経平均株価は8,829円から12,381円まで上昇している。ちなみに、私が全銀協会長に就任した昨年4月2日の為替は83円19銭、日経平均株価は10,083円であったので、いかにこの間、スピーディーに株価の上昇や円の下落が進んだかということをお分かりいただけると思う。また、2月の政府の月例経済報告では、景気は「下げ止まっている」とされ、景況感が上向いているという判断が示されたところである。
 こうした意味では、わが国は、いろいろとプラスの面が出てきているわけであるが、依然として昨年までの急激な円高を背景とした国内産業の空洞化のさらなる進展と、それに伴う雇用の減少という構造問題を抱えている。また、六重苦と言われるエネルギーコストの負担や高い法人税などの課題は引き続き残されており、今後も不断の構造改革が必要であると認識している。
 特に内需型の産業の振興による国内雇用の確保は、デフレ脱却、社会の安定化にとって喫緊の課題であり、我々金融機関の果たすべき役割も非常に大きいと考えている。
 さて、ご質問にあった全銀協の取組みについてお話しすると、昨年4月に全銀協会長に就任した際に、今年度を「大震災からの復旧・復興を確かなものとし、新しい日本の礎を築く一年」にしたいと申しあげたが、こうした環境の中で、この一年、銀行界として、震災復興はもとより、国内成長産業の育成と雇用の確保、そして、アジア新興諸国の活力を取り込む仕組みづくりなど、次のステージへの足場固めを行ってきたと認識している。
 ここで、就任会見の際に掲げた「3つの柱」に沿って、この1年間の全銀協の活動を振り返ってみたいと思う。
 まず、第1の柱は「金融界内の『ヨコの連携』の一層の強化による、震災復興への貢献と日本経済の力強い復活に向けたフレームワーク創り」である。
 今月11日で震災から丸2年を迎えたが、これまで震災復興への貢献を最優先課題として、特に二重ローン問題の解決に向けて取り組んできた結果、2月末までに同意成立・買取等支援決定件数は、個人で269件、法人では214件、これは産業復興機構で93件、東日本大震災事業者再生支援機構で121件の合計であるが、着実に数字が積み上がり、目に見えた成果が表れてきたと認識している。
 一方で、復興が本格化するにつれて、二重ローン問題に限らず、さまざまな問題解決ニーズや復興事業に関する金融面でのサポート要請が出てきているが、震災復興を「今、そこにある課題」として捉え、関係ご当局ともご相談しながら、今後も復興支援に向けてできる限りの対応を行い、金融機関としての社会的使命を果たすべく、真摯に取り組んで参りたいと考えている。
 次に、中小企業金融の円滑化についてであるが、この3月で、ご承知のとおり、中小企業金融円滑化法の期限が到来する。先日も、関係各大臣との意見交換会でも申しあげたが、「円滑化法の期限到来後においても、民間金融機関の融資スタンスに不安を持たれることの無いよう、借り手の皆さまへの説明をしっかりと行いつつ、金融の円滑化に全力を挙げて取り組む」ということを、先月改めて申し合わせたところである。金融業界全体が一丸となって、中小企業の方々の資金調達に支障をきたすことがないよう、今後も不断の努力を続けて参りたいと考えている。
 次に、第2の柱は「金融当局との『タテの連携』の一層の推進による、より健全な金融制度の枠組みを目指した取組み」である。この1年間でバーゼルIIIなどの国際金融規制の具体化や、FATCA等の諸外国固有の規制について、いくつか動きがあった。また、国内でも「議決権保有制限の見直し」や「金融機関の秩序ある処理の枠組み」など、金融システムの新しい枠組みについての議論が進展している。こうした動きに対しては、ご当局との「タテの連携」を強化し、金融界からも積極的に意見発信し、建設的な議論をご当局と積み重ねさせていただいた。
 昨年、「金融業界と金融当局が同じ目線に立って課題と目標を設定し、その達成に向けて「共働」していく持続的な対話の場」として、新たに「官民ラウンドテーブル」が設置されたことは、大変有意義であったと認識している。
 このように、関係者が一堂に会し、金融界が抱える問題や将来展望について、官と民が率直に意見を交換し、コミュニケーションを深める取組みは、わが国金融市場の健全な発展のみならず、わが国の戦略産業として金融業をより強化、進化させていくうえでも、大変多くの示唆が得られるのではないかと考える次第である。
 次に、個別の問題について、少し申しあげたいと思う。まず、全銀協TIBORに関して申しあげる。全銀協としては、TIBORを取り巻く環境や、昨年実施した一斉点検の結果などを踏まえ、TIBORの仕組み自体に特段の問題はないという認識は、現在も変わりはないが、LIBOR不正操作問題を契機とした金融指標へのガバナンス強化を求める国際的な動きの強まりを受け、TIBORについても、指標としての信頼性・透明性を一段と高めるべく、昨年末以降、国際議論を踏まえた具体的な検討を続けてきている。
 その内容について、現時点では詳細をお話する段階ではないが、これまでのIOSCO等における国際的な議論も踏まえると、TIBORのあり方の検討に当たっては、主に二つのポイントが存在していると考えている。すなわち、1点目、「リファレンス・バンクにおけるガバナンス等の向上」、および2点目、「TIBOR運営機関自身のガバナンス等の向上」について、今後、詳細を詰めていく必要があると考えている。
 その他、レートの定義の明確化や実取引の参照などについても、国際的な議論も参考に、今後、必要に応じ、TIBORのあり方について、検討を継続していくことになるのではないかと思う。
 全銀協としては、こうした検討を具体的に行っていくには、プロセスの透明性・客観性の確保が重要であると考えている。そこで、有識者やその他関係者を含めたより幅広な議論を行っていくため、「TIBOR運営の在り方に関する検討委員会」を新たに設置するなど、準備を進めているところである。
 もう一つ、個別課題として、郵政民営化に関して申しあげたいと思う。私は会長就任早々、国会に参考人として招致されたが、4月に郵政民営化法等改正法が成立し、9月にはゆうちょ銀行の新規業務認可申請が行われた。これに対し、全銀協をはじめ、民間金融8団体が結束して共同声明を発表するとともに、郵政民営化委員会や、この記者会見の場所でも繰り返し主張を述べさせていただいた。
 12月に郵政民営化委員会において、一定の条件つきで新規業務を認める意見が出されたが、我々としては到底容認できるものではない。現在、関係ご当局において、慎重な審議がなされていると認識しているが、引き続き、状況の推移を見守りつつ、必要に応じて、何度でも我々の意見発信を行って参りたいと考えている。
 第3の柱は「より安心・安全で親しみやすい銀行を目指した取組み」である。まず、でんさいネットについて、申しあげたいと思う。参加金融機関、および関係者のご努力により、2月18日に無事に開業することができた。この場を借りて、改めて厚く御礼を申しあげたいと思う。
 今後、「でんさい」の利用拡大を図るステージに移行するが、まずは利用者登録、すなわち企業のお客さまが金融機関を通じて、「でんさい」に登録をしていただく必要がある。そうした裾野の拡大が、足元では必要と思われる。今後、「でんさい」がわが国の新たな決済インフラとして定着し、特に中小企業の皆さま方の資金調達に貢献することを、全銀協としても目指していきたいと考えている。
 また、金融犯罪などに関する動きとしては、誠に遺憾ながら、近時ネットバンキングの偽画面を利用した不正やATMのスキミングなどの新手の金融犯罪が発生しているが、こうした事態に対しても、関係ご当局とも連携し、犯罪抑制に向けて一層の対応強化に努めて参りたいと思う。
 最後に、金融が今後果たすべき役割について、この1年間の活動を振り返ってお話したいと思う。先ほど申しあげたように、足元では円安・株高が進み、賞与のアップなどの明るい話題も出てきているが、その背景には、安倍政権が企業重視の政策を打ち出されていることで、海外投資家の買いを促している面があるのでないかと考える。
 このフォローのトレンドを維持、拡大していくためには、市場の期待に沿う形で、企業の競争力を強化し、日本の潜在成長率を高めるよう、今後、政・官・民が一体となって成長戦略をスピーディーに具体的アクションに結びつけていくことが、極めて重要になると思われる。
 そうしたなかで、金融の果たすべき役割について申しあげれば、金融機関の本来機能として、高度なリスクテイク機能を発揮し、成長産業に対して積極的に資金を供給することが、なお一層求められると認識している。同時に、金融業自身を成長産業と位置づけたうえで、我々金融界自らが日本の成長を牽引する役割を担うという強い意志を持つことが求められていると考えている。特に、国内市場における成長産業の育成強化は、企業が海外で獲得した利益を国内に再投資する行動パターンを呼び起こし、それが地方経済の活性化と国内雇用の確保、特に若年層の失業率上昇の抑制に結びつき、社会の安定化をもたらすために、今こそ求められている重要な課題であると認識している。
 産業競争力会議においても、日本経済のデフレからの脱却、あるいは地方経済の活性化に関して、さまざまな成長分野に関する提案がなされ、活発に議論が進んでいるところである。こうしたテーマを具体的に実行していくプロセスにおいて、国内経済、あるいは産業の育成、成長に関して強くコミットするとともに、業界全体が結集して具体的な成果を出していくことが、これからの金融界にとって非常に強い社会的使命であると感じている。
 また、その過程で、我々日本の銀行はアジアの金融市場の発展にも主体的にかかわり、自らの成長に結びつけることも重要ではないかと考えている。アジアの成長を日本の個人資産のさらなる増大につなげるとともに、アジアの経済発展のためのリスクマネーを供給することによって、中堅・中小企業を含めた日本企業の海外進出を積極的にサポートし、日本経済のさらなる発展に貢献することができると考えている。さらに、こうした行動を通じて、アジアにおける日本のプレゼンス向上という役割をも担うことができると考えている。
 金融業は、先ほど申しあげたように、歴史的に見ても新しい時代を迎えようとしていると思う。お取引先の実需にしっかりと目を向けた高度な仲介機能やコンサルティング機能を発揮し、お取引先ごとに異なるさまざまなニーズに対応し、適切なソリューションを提供していくことによって、日本の、そしてアジア、世界の経済の持続的発展に貢献していかなければならないと考えている。
 全銀協としても、今後とも、そうした高い志の達成に向けて、引き続き努力を続けていきたいと思う。


(問)
 2月18日にでんさいネットが開業したが、足元の利用状況等を踏まえて、でんさいネットの果たすべき役割等についてどのようにお考えか。
(答)
 でんさいネットは、昨年4月にシステムの安定稼働等に万全を期す観点から、開業延期を発表させていただいた。その後、参加金融機関の方々にも多大なご協力をいただき、追加の総合運転試験を実施するなど、開業に向けて努力を重ねてきた結果、2月18日に無事開業することができた。
 わが国の決済手段について申しあげれば、従来は基本的に手形と振込という二つの手段が大きな柱であった。手形については、債権の存在を確認できるというメリットがあるほか、不渡処分制度をはじめとして、取引参加者が安心して利用するための制度的な手当ても整っている。その反面、ITとの親和性に乏しく、事務コスト、あるいは盗難・紛失といったリスクがあることも事実であり、最近の取扱高は減ってきている。
 一方、振込は手形のように権利を表示するものが存在しないため、債権者にとっては、支払期日前の資金化が難しいといった課題もあるが、インターネットバンキングなどITとの親和性も高く、広く経済社会で活用されてきている。
 法人企業統計調査によれば、受取手形の残高は1990年度の72兆円をピークに減少に転じ、2011年度は24兆円とおよそ1/3に減少してきている。一方、売掛金については1990年度179兆円から2011年度は192兆円に増加している。
 単純にこの二つを比較することはできないものの、企業間決済の手段が手形から振込にシフトしてきたのではないかと考えられる。
 そうした環境のもと、私ども民間金融機関はABL等、売掛債権を活用した資金調達の普及に努めてきたものの、第三者対抗要件の具備等の事務負担もあり、手形の減少に伴って、特に中小企業の方々の資金調達手段が徐々に狭まってきたのではないかと考えている。
 でんさいネットが取り扱う電子記録債権は、手形決済における事務コストといった課題をクリアすることができると同時に、債権者にとって支払期日前の資金化が容易ではないという振込決済の課題もクリアすることができるという新たな金銭債権として生まれたものであり、今後の活用について大きな期待が寄せられていると認識している。
 これまで支払期日に振込を行うことで決済されていた売掛金が、電子記録債権になることにより、手形の割引のような「売掛債権を活用した新たな資金調達手段」が生まれるわけであり、特にこのメリットは、中小企業をはじめとしたお客さまの資金調達の一層の円滑化に貢献することができると考えている。
 でんさいネットは、現在約500、今後は農林系金融機関も含め約1,300の金融機関の参加が予定されている。1,300もの金融機関がでんさいネットに参加しているということであれば、まさに非常に大きなベースの社会インフラの提供ができることになると思う。
 今後は、利用拡大を図っていくために利用者登録の数を増やし、顧客基盤を拡大していくことが極めて重要である。2月末の利用者登録数は約49,000社となっているが、まだまだ、利用者登録数の拡大が必要であると感じている。この拡大に向けて、我々金融機関も商工会議所などと連携しながら、各種セミナーの開催等を通じて、でんさいネットのメリット、あるいは使い方等について、今後一層宣伝に力を注いでいかなければならないと考えている。お集まりいただいたメディアの方々にもご協力を是非お願いしたい。


(問)
 日銀の正副総裁人事と金融緩和について伺いたい。黒田さんをはじめとした3人の正副総裁人事が国会で同意される見通しとなったが、新体制にどういったことを期待したいのかということが1点と、新体制ではより積極的な金融緩和を進めるということになっていると思うが、先ほどの会長の話の中でも、金融緩和競争による過剰流動性の増大が世界レベルでのかく乱要因になるとのことだが、一方的に金融緩和が進むことの副作用、弊害などについてどのようにお考えになっているか伺いたい。
(答)
 日銀の人事について、評価する立場にはないが、あえて申しあげるとすれば、国会で同意された方が、今後、新しい日銀を引っ張っていくことになると考えている。我々民間金融機関としては、新しく選ばれた執行部に対し、全面的な協力体制を敷いていくということに尽きるのではないかと思う。
 より積極的な金融緩和を推進していく方向性については、先ほど日本経済の概観について申しあげたが、安倍政権が誕生して以降、過度な円高を修正していくという強いメッセージ、それから、日銀と協働してデフレ脱却に向けた金融緩和政策をさらに進めていくというメッセージ、これらがマーケットに深く浸透していくことによって、足元の株価上昇や円高局面からの修正という状況が作り出されてきていることは事実であろうと思う。
 ただ、日本経済の中身をもう少し分析して見ると、例えば、景況感で言えば下げ止まってきていると申しあげたし、今後は、回復に向かっているという判断が生じ得る一方で、設備投資や在庫投資を見てみると、明確に上昇基調に転じたと判断できる状況になってきているとは言えない。総合的に申しあげれば、今後、日本国内における成長の証といったものが明確に出てくる期待はあるが、まだその入口付近にいるに過ぎないというのがおそらく客観的な認識であろう。
 そのような観点からすると、今後とも、安倍政権と日銀が、共に協力しながらデフレ脱却に向けて政策を展開していくことは、日本経済の現状に照らし合わせてみると、非常に有益だと考えているところである。
 一段の金融緩和のためにはどうすれば良いのかという点については、当然のことながら、様々な手段について日銀が専管事項として検討していくわけだが、その効果について、適宜、マーケットの状況を見ながら、あるいは、市場関係者と対話しながら、その効果を見極めていくことになると思う。そういう観点からも、我々民間金融機関も、日銀を含めた関係者とコミュニケーションを密にして、今のフォローの風をしっかりと受け止めながら、この流れが全体として明確な成長戦略に結びつき、日本経済のデフレの脱却へつながっていくことにご協力申しあげることが必要であると考えている。


(問)
 明日、安倍総理がTPPに参加表明するけれども、TPPの参加が日本企業・日本経済にどういう影響をもたらすと見ているか。参加するにあたって、農業の競争力強化をしなくてはいけないと思うが、まず何から取り掛かるべきとお考えか教えていただきたい。
(答)
 全銀協の会長の立場でTPPへの参加について申しあげるのは適切ではないので、個人的な見解として申しあげる。TPPへの参加というやり方を取るかどうかは別として、その他のFTAも含め、特にアジア経済の成長にフックをかけて、今後の成長の力を日本経済の中に取り込んでいくことは、いずれにしても必要であると考えている。その意味で、TPPと並行しながら、その他のFTAも検討していくことになると思う。ただ、こうしたFTAは、どのようなやり方をとるにせよ、正の面と負の面が当然あり得るわけであり、どこに負の面が出てくるのかということについては、交渉の中で、もう少し具体的に検討されるべきであると思う。
 例えば、ご指摘いただいた農業においては、例を挙げれば畜産などには影響が出る可能性があると思っている。ただ、そのことについては、参加することによるメリット全体の中から、具体的な影響を受ける産業あるいは企業の方々に対して、しっかりと対応していくことが、必要であると考えている。
 要するに、全体として、TPPを含めたFTAが、日本経済の成長に対してどのようにプラスにはたらいていくかということをしっかりと認識したうえで、マイナスの部分について、政府として、あるいは我々民間の努力も含めて、しっかり対応していくことが、今の日本にとって必要であり、それを判断する大変重要な局面に来ていると考えている。
(問)
 農業の強化、具体的に何から取り掛かるべきか、教えて欲しい。
(答)
 どこにプライオリティがあるかという問題は非常に難しいことであると思う。一口に、農業といっても、米、野菜、果物、畜産品と、項目によってそれぞれ全く異なる。例えば、果物について申しあげれば、青森のふじ、山梨の桃、あるいは広島のレモンなど、全部挙げたらきりがないが、そうしたものは、今の段階でも充分競争力を持っており、輸出をすれば外貨を稼げるレベルのものはたくさんある。野菜も同様である。我々が日頃感じている以上に、日本の農産品については輸出競争力がすでにあると思う。したがって、それぞれの項目によって別々の対応をとっていくことが必要であり、農産品によって、きめ細かく具体的な対策をとっていくということが、大切であると思う。
 また、特に、米の問題に関わってくるかもしれないが、農業全体の生産性を上げることが、農業の成長力を高めるうえで非常に重要である。私も産業競争力会議で申しあげたが、仮に今の日本の農業の生産性を50%上げることができれば、GDPにおいてさらに4兆円を稼ぎ出すことができるし、6次産業化と言われるクラスターを作ることができれば、10兆円のGDPの増加が見込まれる。これは、一朝一夕に出来るものではないが、はっきりとした目標を定めながら、そこに向けた具体的な対策を一つずつ講じていくことが、非常に重要であると思う。
 同時に、これも産業競争力会議で申しあげたが、農業を他の産業との対立軸として捉えるのではなく、日本経済の成長産業として捉え、それぞれの企業あるいは産業が、農業を成長産業としてどのように活用していけるのかということを具体的に考えていくことで、農家や農協の方々あるいはその他の産業との間に、いわゆるWIN・WINの関係を作ることが可能であると、私は確信している。それを具体的に一歩ずつ実行し、「こういうことが出来るのだ」ということを、パイロットプランでも良いから、具体的にプロジェクトとして完成させていくことが、農業を成長産業とするうえで、非常に重要であると考えている。
 個別行の話になるが、みずほは、農業のために50億円のファンド組成に着手したが、地銀各行においても、こうしたファンドを作ろうという話が広がってきているし、私どもと地銀との間においても具体的なプロジェクトに対してエクィティ性の資金を活用して、農業の成長、あるいは成長産業化、6次産業化を具体的に行っていこうとする取組みが各地でスタートしている。そういうことを、一つ一つ仕上げていくことが、おそらく、今、最も大切なことであろうと考えている。


(問)
 先ほど国内の成長が入口に立ったところ、という発言があったが、アベノミクスで景気の回復という期待がかなり高まっている。そうしたなかで銀行から見て本業の国内融資が今どういう状況なのか、今後の見通しをどう見ているのか。また設備投資に向くような融資が力強く拡大していくようなことになるには何が必要なのか、何が条件と見ているのか。
(答)
 全体の統計でみると、銀行の貸出残高はご承知のとおり少しずつ増えてきており、その傾向は今も続いている。特に地域銀行の融資が増えているが、中身を見てみると、東北地域の貸出が震災復興を要因として増えている。それから、地域銀行の融資の増加のもう一つの特徴として、メガバンクがアレンジするシンジケートローンに積極的に参加されていることが挙げられる。例えば大型M&A案件のファイナンスのシンジケートローンの参加者として地域銀行が入ってくるケースが非常に増えており、それが地域銀行の貸出残高の増加に繋がっていると思われる。
 したがって、足元の状況で申しあげれば、震災復興に加え、主として構造改革のためのM&Aなどを中心に、資金調達のニーズが確かに存在しているのであろうと考えている。ただし、通常の景気上昇に伴う設備投資、あるいは在庫投資によって銀行の貸出残高が目に見えて増えていく状況にまでは至っていないと思われる。そうした状況が起こるためには、アベノミクスの3本目の矢がしっかりと放たれて、1本目と2本目と協働することが必要であり、そのことによってはじめて本格的な資金調達のニーズが出てくることとなるが、それにはもう少し時間がかかると思っている。
 ただ、いくつかのシーズはある。例えば、特に国内の成長産業に焦点を当てると、産業競争力会議の中でこれからも議論していくこととなるが、一見しただけでもいくつかの分野が見えている。
 一つは再生可能エネルギーである。メガソーラーのプロジェクトが全国でかなり進んでいることはご承知のことと思うが、我々が手がけているところで言えば、鹿児島県におけるメガソーラーのプロジェクトが挙げられる。あるメーカーの保有していた非常に大きな土地を他の会社にご紹介申しあげ、現在、その会社がメガソーラーのプロジェクトを進めているが、これは明確な設備投資資金に繋がっていると言える。メガソーラーのプロジェクトは、現在進行中のものだけでも相当数ある。
 それから風力発電も例にあげられる。例えば、みずほについて申しあげれば、福島県沖で洋上風力のプロジェクトをこれから立ち上げようとしており、また洋上だけではなく、地上の風力発電のプロジェクトもいくつか出てきている。このように、まず一つ目としては、再生可能エネルギーの分野において国内の資金需要の増大の要素があると思う。
 二つ目は前の質問にあった農業である。先ほど申しあげたとおり、貸出によるか、エクィティによるのかは別として、そこにも大きな資金需要が出てくる可能性は今後あり得る。
 三つ目は、高齢者ビジネスである。今後少子高齢化が進むということがよく言われているが、一つの事象として、高齢者向けの住宅が枯渇していくことが明らかになっている。
 例えば、高所得者層の介護付き住宅のニーズが発生してくるが、これは富裕層の高齢者に関する課題であり、実は、より深刻な社会的な問題は、今後低所得者層の高齢者の方の住宅が不足してくることである。しかしこの問題は、同時に、例えば少子高齢化で廃校になった小学校を、地公体、あるいは国と連携しながら低所得者層向けの介護付き住宅に転換していくといったアイデアなどを通じて資金の借入れニーズに繋がっていく可能性を含んでいると思う。
 それからもう一つだけ申しあげると、観光やいわゆるクールジャパンといった分野がある。これらに関して非常にソフトなイメージを持たれる方も多いと思われるが、クールジャパンを本格的に展開することによって、ハードの面でもプロジェクトが進んでいくと思う。日本の文化、あるいは食品、アニメも含めて、この発信力は非常に強く、シンガポールで、クールジャパンの製品を展示するビルが建ちつつあるなど、この分野にも資金ニーズが出てくると思う。
 他にもいくつか例があるが、そうした観点で国内の産業に目をつけ、しっかりとリスクマネーを供給していくことが、先ほど1年の振り返りのなかでも申しあげた、健全なリスクテイク能力の発揮であると思っている。残念ながらバブル崩壊後、そうした分野に十分な考え方が行き届いていたのか、という議論があるため、いま安倍政権の誕生を受け、我々金融機関もしっかりと国内の資金需要に対応しながらリスクをとり、産業を育て、国内の雇用に結び付けていくことが大変重要ではないかと考えている。


(問)
 電力の制度改革に関して、一点伺いたい。電気事業法の改正について、発送電の分離が柱の一つになっていると思う。今後、順次必要な法案が出されていくことになると思うのだが、発送電分離に関して電力会社の信用力の低下ということを懸念する声が自民党等の中から出てきていると思うのだが、金融機関の立場からのご見解を伺いたい。
(答)
 発送電分離の話は、ある意味で日本のエネルギー問題の重要な一つを構成していると思っている。
 私自身、産業競争力会議の中で主査を務めるテーマが二つあって、一つは「クリーン・経済的なエネルギー需給実現」、もう一つは「健康長寿社会の実現」であるが、産業競争力会議の中で様々な角度で議論がなされるなか、ご指摘のあった発送電分離の話についても、一つのテーマになっていくのではないかと思う。
 日本のエネルギーという観点で申しあげれば、日本の産業競争力の維持・強化のためには、安価で十分な電力量を確保するということがどうしても必要となると考えており、この点は非常にクリアなことであると思っている。問題は、どのような形で十分な量の安全なエネルギーを確保するかということであり、発送電分離の話についても、今後、こうした観点から議論が行われていくことになるのではないかと思っている。
 これは今後の議論であるので、今ここで明確にコメントすることは控えるが、発送電分離は様々な形が考えられるので、どのような形であれば安全に安定した電力供給ができるのかということに焦点を当てながら、別途、検討が行われていくであろうと考えている。
 発送電分離については、政府や電力会社それぞれの考え方があり、これから摺り合わせが行われていくと思われるが、金融機関の立場から申しあげれば、わが国の産業の競争力という観点からもしっかりと見ていく必要があると同時に、我々自身がすでに資金を供給している各電力会社の将来像にも関わってくる話でもあるため、重要な関心をもって見ていかなければならないと考えている。


(問)
 2点質問がある。金融円滑化法が今月末で期限を迎えるが、その代わり、今日一部報道にあったとおり政府が新たに金融機関の融資スタンスについて監視を強化するとか出ていたと思う。退場すべき企業が存続していることで、価格のメカニズムが壊れてデフレの要因にもなったとの指摘が一部あったようだが、銀行界としては企業再生にどういうふうに取り組もうとお考えか。
 2点目は、これは個別の質問だが、西武ホールディングスについて、サーベラスが先日TOBを発表して役員派遣を提案しているが、主力銀行としてどうお考えか。
(答)
 金融円滑化法にからんだ企業再生の問題だが、これは何度も申しあげているとおり、我々銀行界の基本的なスタンスとして、中小企業に対する金融の円滑化は本来的な業務である。金融円滑化法が切れる3月末を越えても、我々の融資スタンスが変わることは一切ないと再三申しあげ、申し合わせも行ってきた。
 そのなかで、ご指摘のような本来退出すべき企業が残ってしまうのではないか、という質問について申しあげれば、我々は基本的スタンスとして、取引先企業の財務体質だけではなく、生産している商品のことや、あるいはこの企業がその産業の中でどうやったら生き残れるのか、といった点についても、コンサルティングしながら一緒に考えてきた。そのなかには、どう考えても立ち行かないという企業も当然あるが、そのような先に対しても、金融支援等も含め、しっかりとコンサルティングをしてきたつもりであるし、今後もそうしていきたいと考えている。
 企業再生という観点についてもう一点だけ申しあげると、本来助けていくべき企業かどうかについては、企業が商流の中で占めている状況や、ある産業の核となっているといった観点は非常に重要であり、例えば公的資金を注入する様なケースにおいては、助けていくべき企業や産業というものを、どういう観点で考えていくか、ということは今後の課題であろうと思っている。
 それから、もう一つのご質問の西武ホールディングスについては、個別の話であるため、会長としてコメントすることは差し控えさせていただきたい。事態が動いている話であるため、事実関係についてしっかりと確認しながら、対応していきたいと考えている。


(問)
 一般論として、メインバンクとして企業への役員派遣について質問したい。かつて、御行でも益荒男派出夫ではないが、いろいろな人を送っていたと思うが、いわゆるメインバンクが問題企業、問題貸出先に人を送ることの銀行としての目的と意義と効果というものがどこにあると見ているのか。
(答)
 銀行がお取引先に人材を派遣する場合には、様々な目的があると思われる。実務上のニーズから、例えば、海外経験のある人材を派遣して欲しいとか、財務の経験のある人材を派遣して欲しいなどといったお取引先の要請に応じて、若い行員を派遣する場合もあれば、部長クラスや役員クラスを派遣する場合もある。お取引先の要請にお応えするという意味においては、極めて自然な行動であると思う。
 意義ということで申しあげれば、人材派遣という形でお取引先の経営をサポートしていくことは、金融機関の果たすべき役割の一つであると思っている。効果ということについて申しあげれば、派遣先であるお取引先が、健全に成長していくことがひとつの効果であるが、ご質問は、おそらく、コンフリクトのようなものをイメージしてのことであると思われるので、あえて付言すれば、銀行と企業の間には、当然のことながら貸出人と借入人の関係があるので、例えば、我々が取締役として人を派遣する場合には、派遣された人間は、お取引先の人になりきり、取締役の善管注意義務などの観点からも、そのお取引先の取締役として行動するので、コンフリクト・オブ・インタレストが発生する余地は全くないと考えている。銀行からの人材派遣については、様々な目的と効果が期待されるが、ご指摘あるいはご心配いただいているようなコンフリクトの問題はきちんと整理したうえで、派遣していると考えていただきたい。


(問)
 日銀の話に戻るが、来週新しい体制が発足すると同時に、白川総裁が率いた日銀の5年間が終わると思う。この5年間を民間の金融機関としてはどのように見ているのか。
(答)
 白川総裁について、私は昔から存じあげており、また、国際会議などの場でもご一緒させていただいたことが数多くある。2008年4月に総裁に就任されて以降、今まで大変尽力されてきたと思う。就任後すぐにリーマンショックが起こり、近時の欧州債務危機に至るその間の流れを振り返ると、まさに激動の時期を舵取りしてこられたと思う。白川総裁の功績として、一つ明確に申しあげられることは、日本の金融システムをしっかりと守っていただいたということであると思う。その点についてあまりメディアではとりあげられないが、間違いなく総裁の功績であったと思う。デフレと闘うという点において、白川総裁の行動が十分ではなかったとのいくつかの指摘を聴いたことがあるが、実は、中身をよくみて見ると、在任期間中絶えず超低金利政策を推進し、従来の日銀と比べてかなり踏み込んだところまで緩和を拡大してきたのも、まさに白川総裁であるということは間違いのない事実であると思う。政策の表現の点でマーケットから十分理解されてこなかったということが、もしかしたらあるのかもしれないが、その点については、最終的には皆さま方の評価に委ねるべきだと思っているものの、私個人としては、先ほど申しあげた白川総裁の功績、すなわち、この激動の期間を通じて日本経済を安定的に引っ張ってこられたことに対して、高く評価されるべきであると思うし、また、敬意を表したいと考えている。


(問)
 金融政策のことであるが、日銀当座預金のいわゆる付利0.1%を下げるのかどうかということが今後焦点になると思うが、それについての考えを聞かせて欲しい。
(答)
 日銀当座預金における超過準備に対する付利金利を、ゼロに引き下げるとかマイナスにするという話は、新しいものではなく以前にも行われていた話であり、最近では白井審議委員が海外の講演でそのようなアイデアを披露されたということも承知している。ただ、白井審議委員自身もおっしゃっているとおり、付利金利を引き下げることによる効果については、プラスとマイナスの両面あるのではないかと思われる。プラス面として考えられることの一つは、理論的には、付利金利をゼロあるいはマイナスに引き下げることで、民間銀行が日銀当座預金に預けている資金を引き上げ、成長資金として貸出にまわすということが起こり得るということであると思う。一方、マイナス面ということで言えば、大きくはないにせよ超過準備に対する付利で得ていた収益機会を失い、それによる効果も含め、銀行の貸出姿勢が保守的なものへと変化してしまう可能性について、白井審議委員も含め、指摘されているところである。現在のような環境下、もしも付利金利の引き下げが本格的に議論されるとするならば、そのプラスとマイナスの多寡について、相当慎重な議論が必要だと考えている。


(問)
 最後に一言お願いしたい。
(答)
 冒頭にも申しあげたとおり、足元では、国内の経済もかなり元気が出てきていると思う。グローバルに見ても、特にアメリカ経済の強い回復が見込まれるようになってきたなかで、私は全銀協会長という立場を交代することとなるが、在任中は、和田専務理事、髙木理事をはじめとした全銀協の事務局の方々に大変お世話になった。また、副会長行をはじめとする全銀協会員各行の方々、関係ご当局の方々にも非常に応援していただき、助けていただいた。また、ここにお集まりの報道関係者の方々にも大変支えていただいたと思う。"無事に"と言えるかどうかは分からないが、とにかく一年間やってこられたのは、皆さま方のご理解があってのことと改めて感じるところである。
 報道関係者の方々との質疑については、本日もそうであるが、時にスリリングで、そうした場面について、事務方には冷や汗の出る思いを何度かさせたことであろうと思うが、私自身にとっては、この全銀協会長という立場で、皆さまとここでお互いの意見をぶつけ合うことができたことは、とても有意義で楽しい時間であった。多くの示唆をいただき、また、銀行経営という観点とは異なる見方も勉強させていただいた。この場をお借りして、改めて厚く御礼を申しあげたい。
 次の会長に就任されるのは、三井住友銀行の國部頭取である。昔から、良く存じあげているが、人格、識見ともに大変優れ、立派なバンカーでいらっしゃる。また、全銀協の活動についても十分なご経験を積んでおられる方である。必ずや、その卓越したリーダーシップを全銀協会長として十分発揮され、先ほど私が総括した銀行界全体の抱える様々な問題について、金融界をリードしていただけると確信している。4月からは國部頭取にしっかりとバトンを引き継ぐとともに、私自身も、個別行として全銀協および國部頭取のサポートに全力を尽くして参りたいと思う。
 最後に、皆さまに國部新会長への一層のご支援を心からお願いして、私からのご挨拶とさせていただく。本当に一年間ありがとうございました。