2014年1月16日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 本日の理事会において、12月26日に金融庁から行政処分を受けたみずほ銀行への対応を審議し、全銀協として同行を注意処分とする措置を決定した。
 事務局からの報告は、以上である

会長記者会見の模様


(問)
 2点お伺いしたい。今年の景況感、市場の見通し、それに伴う銀行界の役割をお伺いしたい。加えて念頭にある課題があれば併せて伺いたい。
(答)
 2014年のグローバル経済について一言で言うと、米国をはじめとする先進国経済の回復に支えられて、緩やかに回復色が強まっていく年だと見ている。
 日本経済もその回復する先進国経済の一翼を担う、というのが基本的な認識である。まずは、消費税率引き上げ後に予想される景気落ち込みからの反発力が試されるわけだが、政策面では5兆円の経済対策のほか、復興特別法人税の廃止など、1兆円規模の減税措置の策定も着手されている。加えて、足元、製造業・非製造業ともに機械受注の増勢が明確化しているほか、有効求人倍率も6年ぶりに1倍を超えてくるなど、民間部門の自律回復力も強まってきている。堅調な米国経済や円安による輸出環境の改善等も期待され、年央以降、景気回復基調に復していくと見ている。
 総じて言うと、2014年の日本経済は、消費税率引き上げを乗り越え、経済再生に向けた地歩を固める年と位置づけられるのではないか。
 こうした点を踏まえると、マーケットについては、「実体経済の改善を確認するに従い、株価は上昇し、長期金利も将来的には徐々に上昇、日米の金融政策の方向性の違いが明確になるなか、基本的には緩やかな円安・ドル高基調が続く」という、今までの見方を変える必要はない、と考えている。
 一方で、今後1年を見通しての金融市場の注目点について申しあげると、日本については、生産・所得・支出の好循環が実際に回転し始めるのかどうか、ということではないかと思う。昨年は、日銀の異次元緩和をはじめとしたアベノミクスの三本の矢、特に金融・財政政策の取組みが金融市場の中心テーマであったが、本年は、企業や投資家等の民間部門がどう動くかがより注目される年だと考えている。消費税率引き上げの実体経済への影響度合いや、企業業績が2013年対比でさらに改善していくのか、といった点も、マイルストーンとして市場では意識されるだろう。
 海外市場については、米国の金利上昇リスクがポイントだと思う。
 米国では、昨年12月にテーパリングの開始が決定されたが、今後、米国景気が市場の想定よりも力強く回復していくような場面においては、市場はタイトニング、金融引き締めの前倒しを織り込みにいく可能性がある。そういった局面では、一時的かもしれないが、米国の金利が不安定化することや、新興国市場だけでなく、金融市場全体が動揺することもあるだろう。本年はそういった場面が出てくるかもしれないと見ている。
 総じて言えば、米国の景気回復が鮮明となるなか、世界経済は緩やかに回復していき、金利や株価もそうしたファンダメンタルズを反映していくというのが基調にあり、二極化が進む欧州経済や新興国情勢等には目配りが必要ではあるが、米国景気動向、および、日本のデフレ脱却へ向けた民間部門の動向が金融市場のメインテーマとなる、というのが2014年の市場の構図になると思う。
 銀行界の課題と役割については、先月の会見で詳しく申しあげているが、いずれにしても、我々銀行界には、実体経済をしっかりと支えていくとともに、自らも成長産業として経済をリードしていくことが求められている。アベノミクス二年目となる2014年は、政府にとっては成長戦略や規制緩和の「実行力」が問われる一年となるが、我々銀行界も、知恵を絞って、お客さまの新しい取組みを支援して参りたい。


(問)
 消費増税の影響について伺いたい。先ほど景気が落ち込む場面が出るであろうというお話があった。政府も補正予算案で景気対策を打ってくるということになっているが、内容は公共事業が多いということで、一番影響が心配される消費者マインドの冷え込みに対して、効果がない、もしくは効果が出るまでに時間がかかるという意見も出ているが、この点についてどのようにお考えか教えて欲しい。
(答)
 まず2014年度予算案全体に対する評価について申しあげたい。
 来年度の注目点は、先ほども申しあげたとおり、消費増税のマイナス影響をいかに乗り越えていくかということであるが、来年度予算案を見ると、インフラ整備や法人減税など、企業向けを中心に様々な景気支援策が講じられている。先に閣議決定された今年度補正予算と併せて考えると、一定の景気下支え効果が見込まれるのではないかと思っている。
 また、成長戦略関連でも幅広く予算が手当てされており、中長期的な成長押し上げ効果も期待できると考えている。
 財政の健全化という意味においては、基礎的財政収支が13年度から比べると5.2兆円改善するなど、財政再建に対して一定の配慮が行われたことも評価できると思う。
 もっとも、一方で、一般会計規模が約96兆円に達するなど、歳出の膨張に歯止めが掛かっていないのも事実である。わが国の財政状況は非常に厳しく、政府におかれては成長戦略の着実な実行とともに、財政健全化に向けた取組みについても、引き続き手綱を緩めず、民間部門の自律的な回復力を見極めたうえで、歳出削減等を含め、必要な措置を果断に実施されるよう強く期待する。
 ご質問にあった、個人消費への影響という点については、先ほどご指摘のような声が一部にはあるが、13年度補正予算案に、「低所得者層への臨時福祉給付金」等が盛り込まれていることに加え、一連の予算案に盛り込まれた各種の施策が、全体として相応の景気下支え効果を発揮し、家計部門に対しても間接的にプラス効果が及んでいくことから、消費増税のマイナス影響を十分吸収することができるのではないかと考えている。
 すなわち、即効性のある公共投資が積み増されているほか、企業向け減税などを通じて設備投資にもプラス影響が現れることが期待される。
 さらに、先ほども申しあげたとおり、11月の有効求人倍率が6年ぶりに1倍を超える数字になるなど、企業の間で前向きな姿勢が広がり始めている。これは、私も経営者の方々とお話するなかで実感しており、明るい材料である。
 これらは、いずれ雇用者所得の拡大というかたちで、家計部門にもプラス影響が波及していくことになると思う。
 ちなみに私どものグループのシンクタンクである日本総合研究所では、一連の予算案は、2014年度の実質GDPに対して0.8%ポイント程度の押し上げ効果があると試算している。
 こうしたことから、先ほども申しあげたとおり、今年4~6月期にはマイナス成長となることは避けられないものの、7~9月期以降は、予算に伴う政策効果等もあり、消費増税のマイナス影響を十分吸収することができるのではないかと見ている。


(問)
 この1月からいよいよNISA制度が始まったが、感触や手応えをどのように見ているか。
(答)
 1月からNISAがスタートしたが、一言で言うと、良い感触である。先月の会見でも少し申しあげたが、NISAは、まさに若い世代をはじめとする、これまであまり投資をしてこなかった多くの方々が投資というものに関心を持って、将来に向けた資産形成に取り組むきっかけとなる商品であるし、ひいては「貯蓄から投資へ」という流れを本格化させる可能性のある商品だと思っている。
 1月に入ってからまだあまり日が経ってないので、データが十分とは言えないが、少し状況を説明させていただくと、当行の投資信託の販売実績を見ると、投資信託の購入者の約6割がNISA口座を利用して購入したお客さまであり、新たな制度が、順調に立ち上がりつつある手応えを持っている。また、NISA口座を利用した投資信託購入者の約4割がこれまで投資を行った経験のないお客さまである。このことは、NISAが個人投資家の裾野の拡大を図るうえで大変有効な商品であることを示唆していると思う。したがって、今後も、私どもとしては、NISAの普及、利用拡大、そして、投資者の資産形成ということについて積極的に取り組んでいきたいと考えている。


(問)
 昨日、東京電力の再建計画が正式に認められたが、これについて、債権者としてどのように見ているのか。
(答)
 昨日、新総合特別事業計画が認定された。一言で申しあげると、新しい総合特別事業計画は、これまで以上に国、そして東京電力が一歩前に出て、福島復興の加速と企業価値の向上を図るための枠組みであり、メイン銀行としても高く評価しているし、着実な履行を期待している。
 昨年12月20日に、原子力災害からの福島復興の加速に向けて、国と東京電力の役割分担が明確化され、国が前面に出るという具体的な方針が閣議決定された。この閣議決定の中で、東京電力には更なる経営改革が求められ、その改革のためには金融機関の一段の関与・協力が不可欠と明記されたと理解している。これを踏まえて、今般、新総合特別事業計画が認定されたわけである。
 今回認定された新総合特別事業計画において、金融機関への協力要請というものがあるが、大きく言うと、三つの塊になるのではないかと思う。一つ目は、電力システム改革を先取りしたホールディングカンパニー制への移行。二つ目は、アライアンスなどの成長戦略に対する新規融資。そして三つ目は、私募債形式によらない融資。この大きく言うと三つの項目があると思うが、各項目に関して機構および東京電力との協議の結果に応じて、適切な対応を行うことを要請するという内容である。
 一つ目と二つ目、ホールディングカンパニー制への移行と成長戦略に対する新規融資ということに関して言うと、現段階においては具体的に案件が見えていない段階であるので、コミットしようもないが、案件が具体化した段階において、新総合特別事業計画に記載された条件や前提を確認しながら個別に判断していきたいと考えている。
 それから、三つ目の私募債方式によらない融資ということについては、現時点では時期を申しあげられないが、東京電力の経営状況等に応じて、私募債形式によらない融資が可能か否か、真摯に検討していきたいと思う。
 このように今回の新総合特別事業計画は、全体のパッケージとして、金融機関に対しても相当踏みこんだ厳しい要請が盛り込まれているが、国そして東京電力も一歩前に出る趣旨を重く受け止めて、私どもとしても東京電力の経営改善状況を確認しながら、これまでと同様に今後も可能な限り協力をしていきたいと考えている。


(問)
 昨年は三井住友銀行を含めて、アジアの銀行への大型の出資が相次いだ。今後、邦銀、とりわけメガバンクがアジア地域で果たせる役割みたいなものをどう考えているか。また、邦銀による出資が今後も続くと見ているのか伺いたい。
(答)
 メガバンクの今後の戦略とアジアとの関係ということであるが、これは、各行で少し違いがあるかもしれないが、総じて、これから大きく成長していくアジア、ここに国際業務の一つの中心を置いていくというのが、おそらく各行共通した戦略になると思う。アジアは、日本との距離も近く、また、文化的にも非常に近しいものを持っている地域であり、今後大きく成長していくマーケットである。アジアの成長の果実を私どもの今後の成長戦略の中に取り込んでいくことが大事だと思う。
 また、安倍総理がアジア、ASEANを歴訪されているが、日本とアジアの繋がり、アジアにおける日本の立ち位置、これをしっかりと作り上げていくということが、国の戦略としても非常に重要だと思っている。私どもは、アジアに進出している多くの日本の企業のお手伝いをする、そして、アジアに進出した日本の各企業は、現地で単に生産をするだけでなくて、現地で販売活動をしていく、あるいはサプライチェーンを作り上げていく。そのお手伝いをするためにも、アジアでネットワークを拡大すること、さらに、私どもが提供するサービスの質を高めていくことが今後大事になってくると考えている。
 それから、私どもも含めて、各メガバンクはアジアの現地銀行に出資している。アジア地域で業務を展開していくにあたって、自前の店舗ネットワークを拡大していくということともに、地場の金融機関と提携し、私どものサービスの補完をしていく、このオーガニックな部分とインオーガニックな部分を併せて展開することが大事だと考えている。
 今後、出資を継続するかどうかについては、これは個別行として答えさせていただくが、これまで当行はアジア各国の地場のリーディングバンクに出資しており、今後も私どもの戦略に合致する案件があれば、継続していきたいと考えている。


(問)
 みずほフィナンシャルグループが昨年末に委員会設置会社への移行を表明した。邦銀大手行では、りそなホールディングスが導入しているが、グローバルなプレーヤーの中では、委員会設置会社が多いと聞いている。SMFG・SMBCにおいても、いろいろと検討されていると思うが、委員会設置会社のメリット、デメリットについて、どのように評価し、SMFG・SMBCとして、どのようなお考えなのかお聞きしたい。
(答)
 今回、みずほフィナンシャルグループが委員会設置会社への移行を発表された。同社のプレスリリースでは、「取締役会による執行に対する監督機能の抜本的な強化、特に社外者によるチェックアンドバランス機能の積極的な活用」、こういう観点から委員会設置会社へ移行するとおっしゃっている。
 私は、コーポレートガバナンスのあり方については、各社の置かれた状況によって様々ではないかと思っている。コーポレートガバナンスの強化を図るために、どういう形態をとるのがいいのか、これはまさに各社の経営判断だと思う。
 私どもがどうかということだが、私どもSMFG・SMBCは、監査役設置会社として、監査役による牽制機能を活用しながら、社外取締役、社外監査役を選任し、外部の視点を経営に取り入れている。毎回、取締役会で社外の方から大変活発なご発言を頂戴しており、社外の方の目を経営に取り入れることは非常に有効だと感じている。
 さらに、SMFGでは、取締役会の中に監査委員会、リスク管理委員会、報酬委員会、人事委員会を設置し、かつ社外取締役が全ての委員会の委員に就任しており、こうしたガバナンス体制は有効に機能している。
 こうしたことから、各企業が自社の状況を踏まえ、経営判断として選択していくものだと考えている。


(問)
 2点伺いたい。
 一つは、先ほど出た消費税増税を控えてATM手数料について伺いたい。今年4月以降、手数料はどうされていくのか、増税分をそのまま上乗せしていくという理解でいいのか、お考えをお聞きしたい。
(答)
 ATM手数料等の銀行手数料に対する対応というのは、各行それぞれで判断することであるので、全銀協としてどうこう言うものではない。個別行として当行の対応について申しあげると、基本的には消費税率の引き上げ分を手数料に上乗せさせていただく方向で考えている。決定し次第、お客さまには通知をさせていただきたいと思っている。


(問)
 もう一つ。直接銀行とは関係ないのかもしれないが、決済手段としても注目を集めているビットコインについて、見解と可能性についてお考えをお聞かせ頂きたい。
(答)
 最近、大変話題になっているが、ビットコインをはじめとする仮想通貨については、銀行システムを介さない新たな決済手段として、その動向には注目している。
 利便性の面では、金融機関を介さずに送金ができ、投資対象としての側面もあって、世界的に利用が拡大していると聞いている。
 一方で、マネー・ローンダリングに活用される危険性もあると思っており、一部の海外当局で、その利用を規制する動きがあるという報道もある。また、現状そうなっているが、一般の通貨とは異なり、国や中央銀行による裏づけがないので、非常に価値変動が激しい。さらに、よく言われる通貨の根源的機能である「価値の尺度」であるとか、「価値の保存」といった観点からも、まだ流動的な存在なのではないかと見受けられる。
 したがって、まだ確たることを申しあげることは難しいが、少なくとも、現時点において、ビットコインが通貨に類似する性格を持って、実際に決済手段として利用されていること、かつ、今後さらに利用が拡大する可能性があることを考えると、利用者の保護、資金決済の安全性の確保、利便性向上等の観点、さらには犯罪を防止するという観点から、法令上の位置づけを明確化して、適切な規制のあり方を検討する必要があるのではないかと思っている。一義的には、関係当局において検討されるということだと思うが、私どもとしても可能な範囲で考え方を整理していきたい。


(問)
 昨年くらいからアベノミクスを背景に、先ほど会長もおっしゃられたが、成長産業とか成長分野の融資が課題になっているが、実際のところ、現状、手応えとか成果はあるのか。今年の目標等も含めて、どんな状況か。収益につながるような貸出というのは、引き続き海外になってしまうのかどうか、最近の貸出事情も踏まえてお聞かせいただきたい。
(答)
 アベノミクスがスタートして以降、特に財政政策、金融政策によって、市場環境は好転した。円高の修正、それから株高ということで、それが日本経済に好影響を与え、足元の景気は回復してきている。加えて、やはり、経営者のマインドが大きく好転し、ポジティブになってきている。経営者のマインドを含めて、日本の景気に間違いなく非常にプラスの影響が出ていると思う。
 銀行貸出については、以前も申しあげたかもしれないが、改善傾向が続いている。全銀協が公表した12月の貸出金残高でも前年同月末比プラス3.3%ということで、これは28カ月連続で前年同月末比の増加となり、増加基調が続いている。内訳は、大企業、個人が多いわけだが、中小企業向け貸出も7月以降5カ月連続で前年同月末比プラスとなってきている。また、当行で中堅中小企業を所管している法人部門の貸出を見ても、昨年2月に前年同月末比プラスに転じたと申しあげたが、前年同月末比プラスという状況は足元までずっと続いている。したがって、銀行貸出という面では、非常にいい数字が出てきているということだと思う。
 中堅中小企業向け貸出は前年同月末比プラスと申しあげたが、設備投資向けが多く出始めているかというと、まだ、貸出にはそれほどはねていないという状況だと思う。したがって、貸出の伸びは、例えば、クロスボーダーのM&Aであったり、MBO、LBOであったり、一部の設備投資ということである。
 設備投資の状況について少し申しあげると、まさに今日、機械受注が発表されたわけだが、前年比16.6%の増加ということで、非常にいい数字が出てきている。機械受注は、設備投資の先行指標であるが、ちょうど昨年の8月から2桁を上回る前年同月比の増加という状況が出てきている。加えて、日銀短観においても、今年度下期の設備投資計画が中堅中小企業で上方修正されており、中堅中小企業の設備投資も、取組みが徐々に拡大してきていると見ている。
 これは、私どもの営業店でお客さまと話をしている中でもやはり実感として感じている部分であり、今年の中堅中小企業を含めた設備投資の回復については、私自身、期待をしている。ただ、前にも申しあげたが、中小企業も手許に潤沢な現金を持っており、また、一部には設備投資減税の状況を見つつ待っているお客さまもおられる。貸出にストレートに出てくるには少し時間がかかるかもしれないが、今の設備投資に関連する諸指標の動きを見ていると、期待をしていいのではないかと思っている。
(問)
 ボリュームというか、例えば収益につながるような貸出という点では、やはり海外になってしまうのか。
(答)
 一言で言うと、これからの銀行の貸出収益の伸びがどちらが大きいかというと、海外の業務だと思う。国内は、貸出残高は反転してきているが、一方で貸出利ざやは低下してきている。この利ざやの低下の原因は、一つは市場金利の低下であり、もう一つは競争の激化ということだが、未だ利ざやの低下傾向が続いているので、貸出金収益という意味では、そう大きく伸びない状況がしばらく続くと思う。
 一方で、海外については、貸出金額は引き続き増加が予想されるし、貸出利ざやについても、昨年の上半期などはアメリカのボンドマーケットが非常に好調だったので、利ざやの拡大傾向は少し止まったのだが、それでも利ざやはフラットか少し改善という状況なので、貸出金収益は今年、来年も伸びていくと思う。


(問)
 先ほど、邦銀もアジアに軸を置きながら出資、あるいはオーガニックで事業を拡充していくとおっしゃられたが、御行が出資されているところとか、新興国の景気減速等に鑑みると、そんなに簡単に投資した分の収益が得られるのか、まだ得られていないのではないか、という気がしている。こういった投資は、中長期的に見て、どのくらいのタイムスパンでペイするものなのか。また、実際に、シナジーは出ているのか。
(答)
 アジアの銀行に出資をしている、その投資の回収期間という観点でいうと、私は、アジアについては、少し長い期間で見ている。アジアは各国によって規制も違うし、発展段階も違う。中期的には間違いなく成長するが、例えば、昨年には、米国FRBがテーパリングを行うという観測によって市場が荒れ、新興国経済が減速するという事態が実際に起こっている。こうした事態は、アジアに限らず、新興国では、今後も発生し得ると思うので、アジアでの成長、投資回収については、少し長い視点で考えていきたいと思っている。
 シナジーが出ているかということだが、私どもでは、昨年インドネシアの銀行に出資したが、まだ出資したばかりなので、シナジーが実現するのはこれからである。一方、ベトナムのエグジムバンクへの出資では、私どもから経営陣を含めて人を派遣し、私どもなりの経営管理手法、営業手法でお手伝いをしている。収益がかなり伸びており、まさに、私どもの経営ノウハウがエグジムバンク自身の企業価値の向上に大きく貢献していると言えると思う。また、私どものお客さまが日本からベトナムに進出した際に、いろいろなサービスを現地で受けられるということで、お客さまのプラスにもなっている。こうした効果が確認できているので、引き続き、この戦略を続けていきたいと思っている。


(問)
 質問が2点ある。1点目の冒頭説明のあったみずほ銀行への注意処分についてどういう効力があるか教えて欲しい。
(答)
 厳重注意ということにしたわけであるが、この考え方を説明する。
 全銀協では会員銀行に不祥事が発生した場合には、事態の内容、それから社会的影響等を総合的に勘案して、処分の内容、あるいは処分の要否を判断しているわけであるが、その際には当局による行政処分の内容を一つの目線としている。具体的には、銀行法27条にもとづく処分または銀行法26条にもとづく業務停止命令が発せられた場合には処分を検討する運営としており、今回、みずほ銀行は26条にもとづく停止命令を受けているので、もちろん全銀協においてもみずほ銀行から事情を伺ったうえで、本日開催した理事会において厳重注意という処分を決定したものである。
 当然のことながら、みずほ銀行におかれては、業務改善命令を受けた業務改善計画、それから追加施策をしっかりと実行していくということを言っておられるわけであるので、その遂行に期待をしているところである。我々全銀協の厳重注意という処分も踏まえて、みずほ銀行はしっかりと計画を履行していかれるのではないかと思う。


(問)
 2点目の質問であるが、東京電力の新たな総合特別事業計画について追加で伺いたいが、昨日の数土新会長の所信表明では、新しい総合特別事業計画は政府、東京電力、金融機関三者による一括合意だと強調されていた。ただ、金融面の中身を見てみると、前回の会見で会長が言っていた真摯に協議するという言葉も盛り込まれていたのであるが、実際には要請という言葉、2兆円の新規融資を要請とか、担保付既存融資の無担保化の要請など、要請という言葉が繰り返し使われていたと思う。なぜここに、合意と要請というニュアンスの差が生まれたのか。「温度差」と感じているのであるが、なぜそれが生じているのか教えてほしい。
(答)
 数土新会長がどういう趣旨で言っているのか、直接聞いていないのでそれについてコメントは差し控えさせていただきたいが、今回は国、東京電力そして金融機関の間で、国と東京電力が一歩前に出て、そして金融機関に対して様々な要請を頂戴し、それに対して金融機関がしっかりと協議をしていくということで合意されたものであると理解をしている。
 先ほども申しあげたが、2兆円の新規融資とかホールディングカンパニーへ移行したときの取扱いなどについては、今例えば2兆円の新規融資について、具体的にどういう資金使途なのか、ということが全然私どももわからない段階であるので、その段階で融資を2年後3年後に実行しますということを確約できるはずのないものである。そういう意味では、将来そうした成長戦略へ向けた新規融資の案件が出てくれば、その時点で私どもは真摯に検討していくという意味で、前回申しあげたわけである。


(問)
 2点質問したい。1点目は、賃上げとりわけベースアップの是非が産業界の大きなテーマに浮上しているが、大手銀行の経営者としてどのように対応される方針なのか教えてほしい。
(答)
 様々な報道がなされていることは承知しているが、少し考え方を申しあげたい。昨年10月1日に「経済政策パッケージ」が閣議決定されており、政府全体として、賃金の上昇や雇用の拡大を伴う好循環の実現に向けた取組みを進めているということは十分に認識している。11月の会見でも申しあげたが、総報酬の引き上げについては、基本的にはその会社の業績動向あるいは将来の見通し等を踏まえて、個々の企業で判断するものと考えている。
 そのうえで、個別行として当行の対応について申しあげると、労使交渉のプロセスを経る必要もあることから、現時点で何かを決定したということはないが、私としては当行の業績も好調に推移をしてきているので、従業員に報いるため、先ほど申しあげた様々な要素を総合的に勘案し、何らかのかたちで賃金の上昇、すなわち総報酬を引き上げる方向で検討したいと思っている。
 賃金の上昇、すなわち総報酬の引き上げの具体的な方法についてはまだ決めてはいない。いろいろな方法があると思うが、ベースアップについては、消費者物価指数の動向をはじめ、様々な要素を勘案して判断していくことになるが、総報酬を引き上げるうえでは、ベースアップという方法以外に賞与の引き上げという方法もあるし、先般来、一部の証券会社が公表しているような、若手や一部職種といった部分的な処遇引き上げという方法など、様々な方法があると思う。したがって、そうした選択肢の中から、どのように対応するのか、これは当然、組合の要求も踏まえながら、よく考えていきたいと思う。いずれにせよ、何らかのかたちで総報酬を引き上げる方向で検討する。


(問)
 アジアの域内でATMを相互に開放し、他の国のキャッシュカードを使えるようにする構想があり、政府も検討すべき課題として捉えていると思うが、銀行界としてどのような対応を考えているか。
(答)
 外国から来た旅行者が日本のATMでキャッシュを引き出すことについては、個別行としては対応する方向で考えている。私どもでは2015年くらいからになると思うが、やはり東京オリンピックの2020年招致も決まり、観光立国を目指して政府も取り組んでおられるので、海外からの旅行者も増えていくと思う。こういった取組みは進めていきたいと思う。
 もう一つ、先般報道されたが、NTTデータがアジアのATMネットワークへの加盟を表明されているわけだが、日本とアジアの経済的な繋がりはますます強まってきており、そういう状況を考えると、アジア各国の金融市場と日本の金融市場の連携強化というのも重要なポイントだと思っている。そのなかでATMというのは、多くの利用者が金融機関と繋がる身近なアクセスポイントだと思う。詳しくは聞いていないが、今回、NTTデータが、アジアオセアニア10か国が参加するATMネットワーク(APN)に加盟されるというのもこういった流れの一つだと思う。
 したがって、よくNTTデータからも話を伺い、私どもの戦略はもちろん、日本とアジアの金融システムの連携という観点から、資するかどうかよく検討したいと思う。


(問)
 再生可能エネルギーについてお尋ねしたい。これまでメガソーラー、太陽光発電に金融機関としてファイナンスの機会が多かったと思うが、経産省も太陽光に偏っているということで、洋上の風力発電の買取りの方針を打ち出しているが、金融機関として風力発電のファイナンス機会、ビジネスチャンスをどう見ているのか、課題があるとすればどういった点があるのか、教えていただきたい。
(答)
 一言で言うと、まず再生可能エネルギーの促進・育成については、日本の国家政策としても大事なことであり、我々金融機関の業務としてもしっかりと取り組んでいきたいと考えている。
 ご質問の中にあったが、私どもも例えば太陽光発電などについては、かなり多くの案件を手がけてきており、継続してやっていきたいと思っている。
 それ以外の洋上風力発電について、当行でどれだけ実績を積み上げているのか、正確な数字を持ち合わせていないが、例えば海外では、洋上風力発電はかなり取り組まれている。そういった海外におけるファイナンスのノウハウなどを活かしながら、国内でも洋上風力発電、おそらく洋上風力は場所によって適地と不適地があるだろうが、そういった問題についても私どもが海外で培ったファイナンス手法を活かしながら、日本のエネルギー政策に資するような再生可能エネルギーの取組みを支援していきたいと思っている。


(問)
 先ほど他の方が伺った賃上げについて、改めてもう一度伺いたい。
 銀行の報酬体系に対するお考えについてだが、昨今、ベアをやらないと「とんでもない会社だ」といった論調になっている。一方で、「社員の頑張りに応えるために総賃金を引き上げる」という考え方は分かるが、固定費としてフィックスさせてしまって良いのか、そもそもベアでやって良いのかという論点はあると思う。そこで、そもそもの報酬体系の考え方について、これはリスク管理、いわゆる今後の業績変動に対する柔軟性という意味で、改めてお考えをお聞かせいただきたい。
(答)
 これは私見ということになるが、従業員の報酬体系において基本給と業績連動の賞与、大きく二つがある。私どもでいうと、従業員の全報酬に占める賞与の割合は約三割である。私はこれを妥当な水準だと思っている。私ども商業銀行ビジネスでは、単年度の収益を求められる面もあるが、やはり、お客さまとのリレーションシップであるとか、取引の維持という中長期的な取組みを重視している。これが商業銀行だと思っているが、あまりにも業績連動の賞与の部分が大きくなりすぎると、短期的な目線が強まってしまう。
 したがって、もちろん比率は変動するが、七割の基本給と三割の業績連動賞与という今の体系が良いのではないかと思っている。
 従業員の基本給ということについては、各従業員の行っている職務の内容、業務の実績、もちろん会社の経営状況等々を踏まえながら検討していくことになるが、総報酬の体系については、今、申しあげたようなかたちで考えている。
 今回、当行、当グループも昨年度に引き続き、この上期も非常に良い決算となっているので、まだ残り3ヵ月あるが、今のような状況で推移すれば、総報酬の引上げを行うよう考えていく。